WORKING QUADS (「重度四肢まひ者の就労問題研究会」ジャーナル)
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大野直之:介護制度相談センター
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誰でもできる自立生活
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自薦登録ヘルパーってなんだ?

序章
誰でもできる自立生活

自薦登録ヘルパーってなんだ?

 自薦登録ヘルパーとは何でしょうか。東京以外の人には大変分かりにくいものなの
でもう一度説明します。そもそもできたばかりの日本のホームヘルパー制度とは、公
務員であるヘルパーが、非課税世帯のみに行政の都合に合わせて勝手に派遣されてく
るものでした。このころに採用されたヘルパー形態は、今でも地方の市町村に残って
おり、例えば人口2000人の村にヘルパー1人だけ、待遇は村の正職員でもう50歳
代、給与待遇は部長級で村は年800万円もかけているといったものです。これでは
ヘルパーを増やそうにもなかなか増やせません。

 次に厚生省は、ヘルパーを増やすため、社会福祉協議会や(東京なら)家政婦協会
に委託されたヘルパー制度も認めました。地方では、社協ヘルパーは公務員ヘルパー
に準じた派遣形態をとった所が多かったのですが、東京の『家政婦協会への委託ヘル
パー方式』は、市が介護券を障害者に渡し、家政婦協会のヘルパーが来たら時間数に
応じて券を渡し、ヘルパーは券を協会でお金に換えるという方式を取りました。

 当会の都内の中心人物の住んでいる東京都内の市・区では、行政交渉により、この
家政婦協会に自分たちの介護人(男性も含む)を登録させ、特定の障害者専用のヘル
パーとして、厚生省の決めた上限である週18時間まで派遣させることに成功しまし
た。国のヘルパー制度を、(自治体独自の)介護人派遣制度と同じような「当事者が
介護人を選ぶ」制度として使うことができたのです。これを『自薦登録ヘルパー方
式』と呼んでいます。

 自薦登録ヘルパー方式の利点は、当事者の選んだ人が介護人として派遣されるだけ
でなく、派遣時間数が簡単にアップできるという点にあります。厚生省は91年、要
綱でそれまでのヘルパー派遣上限週18時間を撤廃しました。92年には、それをも
とに、各自治体への指導書である『ホームヘルプ事業運営の手引き』を出し、その中
で、「派遣時間数の制限を設けている自治体は早急に改正を」と明記しました。これ
によって東京などでは、93年から24時間介護の必要な人には、毎日十数時間の
ホームヘルパー派遣が実現しました。これは、当事者が人材を探しヘルパーとして登
録するからできたことであり、公務員ヘルパーでは定員を20倍にするなど、10年
以上かかる作業を経なければできないことです。

 当会はさらに、登録ヘルパー方式を全国に広めるために、厚生省と交渉に入りまし
た。厚生省の更生課予算係長は、92年の交渉で「それは大変いいアイデアだ。実施
に向けての学習会をしましょう」といい、連続学習会が始まりました。

 その後、課長補佐も交えた数回の交渉で、更生課は「現状の公務員ヘルパーや社協
の正職員ヘルパーでは重度障害者に対する身体介護は満足に行えない」という認識に
なりました。

 94年3月には、全国主管課長会議で「(これからの事態を解決するには)いわゆ
る自薦登録ヘルパー方式も、検討に値する(つまり自薦登録ヘルパー方式の奨励)」
という意味の指示事項を発表しました。主管課長会議資料に4ページにわたって、そ
の説明を盛り込み、全国都道府県と指定都市の課長に説明がおこなわれました。(9
5年の主管課長会議資料(全57ページ)でも、この部分は(37ページから)独立して
再掲載されています。95年11月の係長ブロック会議では、厚生省は、さらにふみ
こんで、「積極的に図られたい」と書き、この方式を推薦する立場になっています。


 登録ヘルパー制度化交渉を行っている団体、これから行いたい団体は当会に資料請
求してください。必要なら交渉の手順等についてのアドバイスもします。

 次ページに、指示文書の登録ヘルパーについて書いた部分を載せます(一部分)。
介護人派遣事業の交渉にも使えます。


厚生省
平成6年度 社会・援護局主管課長会議指示事項より

4 サービスの内容等について

 @ ヘルパーが提供するサービスの内容をめぐって、利用者から次のような種々の
  問題提起がなされている。

   ア 日常生活のニーズに対応したサービスが受けられない。(量の不足)
   イ 身体障害者の身体介護のための体力や技術に欠ける者が派遣される。
   ウ 障害の特性についての理解に欠ける者が派遣される。
   エ コミュニケーションの手段に欠けるため十分な意思の疎通ができない。
   オ 同性ヘルパーを派遣してほしい。

 A 今後の事業運営に当たっては、こうした利用者の深刻な問題を踏まえその改善
  に努める必要があるが、その際、次のような視点が重要である。
          (中略)

    ウ 重度の身体障害者の中には、身体介護やコミュニケーションに当たって特別
    な配慮を必要とする者が少なくない。こうした者への派遣決定に当たっては、
    利用者の個別の事情を十分考慮し適任者の派遣を行うように努めることは当然
    であるが、こうした対応が可能となるよう実施体制について十分な検討が必要
    であること。この際、身体障害者の身体介護やコミュニケーションの手段につ
    いて経験や能力を既に有している者をヘルパーとして確保するような方策も検
    討に値すると考えられる。

平成7年11月     厚生省
全国身体障害者福祉担当係長ブロック会議資料より

4.身体障害者ホームヘルパー事業
  (4) ホームヘルパーの確保に当たっては、介護福祉士等の有資格者の確保に努める
   とともに、障害の特性に対する理解や利用者との間におけるコミュニケーション
   を必要とすることから、過去において障害者の介護経験を有する者の活用も積極
   的に図られたい。


これを使った交渉の方法は、障害者自立生活・介護制度相談センターの資料集(下
記)をごらんください。

(1998/4/16、電子メール)

(1998/4/25)


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