WORKING QUADS Overseas
Brian Hogan
ブライアン・ホーガン

written by
Kazuo Seike, President,
Research Association on the Work of persons with severely disabilities;


 A.米国の事例調査の結果(1991年11月現在)


 1.事例6:C1・2損傷者





 自力呼吸肺活量400〜500t・人工呼吸装置利
用・C1・2損傷者の自営での有償の知的生産活動を
行い,一人でアパートを借りて生活している事例.


 1960年生まれ,男.1976年1月,高校生の時,自
転車交通事故によりC1・2損傷者となった.Santa
Clara Valley Medical Centerに入院,気管切
開.同年5月,両肺に横隔膜神経ペーサーの手術.
1977年,自宅退院.


 有償の知的生産活動の場所と内容は,自宅でパ
ソコンシステムによる執筆活動と絵画創作を行っ
ている.


 就労形態は自営である.


 生産活動の経緯は,1977年高校復学.1982年,
カリフォルニア州立大学バークレー分校に入学し
た.アクセシブルな大学であることと,障害学生
プログラムをもっていることが選択の理由であっ
た.最初の学年は学生寮に入所した.自然資源経

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済を専攻.1986年同大学卒業.アパート生活を開
始した.現在,有償の執筆活動,(雑誌『Rehabi-
litation Nursing』,新聞『Sacrament Bee』)と,
有償の絵画製作活動を行なっている.


 住居と通勤,通学手段は,自宅は民間アパート
で,木造2階建ての1階である.1寝室,浴室ト
イレ,台所,仕事部屋,居間から構成されている.
改造個所は,玄関のリモコン操作システム,スロー
プである.浴室トイレではシャワー椅子を使用す
る.


 日常生活は、人工呼吸装置,自立生活支援機器,
在宅有料介助者制度を利用してアパートでの一人
暮らし生活である.母親は5年前に死亡.父親は
健在である.兄弟は独立している.現在の生活費
は,アメリカ合衆国のSSI(所得保障制度)を利用
している.


 人工呼吸装置として,夜間8〜9時間の就寝時
は横隔膜神経ペーサー,日中の電動車いす使用時
はニューモベルト(pnemobelt)を使用する.朝晩,
肺に10分か20分,高気圧の空気を入れる.昼に
も入れることがあり,1日に2・3回行なう.肺活量
は,ニューモベルトを使用すれば800〜900ml
増加し,横隔膜神経ペーサーを使用すれば1200
ml増加する.装置使用は,有資格ではない3人
の介助者によって行なわれる.操作は簡単にできる
そうである.人工呼吸装置をつけての事例6の発
声は,非常に鮮明であった.


改段

 人工呼吸器なしで約7時間生存可能である.安
全装置またはバックアップシステムとして,夜中
でも,電話をかければ来てくれる介助者が3人い
る.1500Wの発電機を所持している.ニュー
モベルト用のバッテリーは,12V,70Aで,電動
車いすに駆動モーター用のバッテリーとは別に装
備されている.


 装置の保守管理システムに関しては,ニューモ
ベルトはライフケア社のレンタルで1月700ド
ル,2か月に1回のメンテナンスである.横隔膜
ペースメーカー手術による後遺症や合併症はない.
再手術は,受信機に関し,4年ごとに4〜5回の
再手術を受けたが,最近は10年間の保証になっ
た.電極は最初の手術だけである.横隔膜神経刺
激装置の手術ができる専門病院は全米にも数カ所
しかない.保守管理はニューヨークのドベル研究
所が行なう.リスピレーターの24時間使用による
メンタルストレスはひじょうに大きいそうである.


 横隔膜神経ペーサー手術の費用に関しては,平
均,受信機1個1万ドルを2個,送信器1個1万
ドル,手術料2万ドルである.医療費に関しては,
最初は父親の民間企業の医療保健,1981年以降
はMEDICAL(カリフォルニア州の医療保障制
度)を利用している.


 自立生活支援機器として,電動ギャジベッド,
チンコントロール電動車いす,マウススティック,
スピーカーホン,暖房器具リモコン装置付き,
AVリモコン,照明などの各種リモコンスイッチ,
水を飲むストロー付きポット,ひとりで食事可能な
テーブルの上のサンドイッチなどを活用し,日中,
一人で生活できるように工夫している.電動車椅
子は予備を所持している.


 介助者は,1日7時間半,朝3時間,昼1〜2時
間,晩2時間,有料他人介助者である.その費用
負担は,IHSS(カリフォルニア州の介助者サー
ビス・プログラム)を利用している/ため自己負担
はない.


 勤続年数と現在の生産活動時間は,1977年の高
校復学以降,1991年10月現在までの14年間で
ある.1982年,カリフォルニア州立大学の障害学

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生プログラムを利用しての知的生産活動開始以降
は,9年間である.生産活動時間は,1週間7日,
朝7時に起きて夜11時ごろベッドに上がるという
生活で,絵画製作活動も含めると1週間約60〜
70時間である.


 生産活動による発病はなく,健康である.