"WORKING QUADS" HomePage

"WORKING QUADS" News Letter 2000
the Perfect Helper ( Attendant )
完全無欠のヘルパー

−公的ヘルパー制度の日誌への記載と利用者個人のプライバシー−
後郷 法文 さん/Mr. GOGO, Norifumi


後郷 法文 さん/Mr. GOGO, Norifumi


完全無欠のヘルパー
−公的ヘルパー制度の日誌への記載と利用者個人のプライバシー−
  by 後郷法文


"WORKING QUADS" News Letter
on August 6, 2000



Kazuo Seike ( seike@ma4.justnet.ne.jp )
http://www4.justnet.ne.jp/~seike/

清家一雄@WORKING QUADSです。

"WORKING QUADS" (HomePage)は、
四肢まひ者の
「知的生産活動(就労)」、
「介助(自立生活)」、
「健康(褥創対策、排泄管理)」
を重要なテーマとしています。

今回は、四肢まひ者と「介助(自立生活)」、についてのものです。

"WORKING QUADS" HomePage Writerの
後郷法文さんからの原稿です。

「完全無欠のヘルパー」というタイトルですが、
内容は、公的ヘルパー制度の日誌への記載と
利用者個人のプライバシー、
という新しい、重要な問題です。

他人の手助けを受けながら、
自己決定権、自己決定責任を中核とする
自立生活を指向する
介助が必要な四肢まひ者にとって、
避けがたく、困難な問題です。

自立生活を目ざす若者からの
体験談とコメントです。

読んでいただければ幸いです。


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完全無欠のヘルパー

公的ヘルパー制度の日誌への記載と
利用者個人のプライバシー



後郷 法文 さん/Mr. GOGO, Norifumi

後郷法文

2000年7月22日 19:15

どーも、ひさしぶりです。 GoGoです。


 "完全無欠のヘルパー"って、どんなんだろう?なーん
て、考えることがある。

よほどヒマなヤツだナーなんて思われそうだけど、ヘル
パーさんたちの存在の重要性を考えるなら、やはり理想
のヘルパー像なるべきものが議論されてもいいと、ぼく
は思う(もちろん、利用者の理想像も当然議論されるべ
きだが、それはまた、次の機会に^^)。

 これは、いわゆる"介護サービスの質"の話で、もっと
いえば、ヘルパーさん個人の資質の話。

 最近では、ヘルパー養成講座なるものが各地で開かれ、
続々と福祉社会を担う優秀なヘルパーさんが誕生してい
る。だけど、もう少し意識の充実の面に力をいれてもい
いんじゃない?とか、思ったりする。そう、心・技・体
でいうなら、"心"の部分ね。"技"の部分は、様々な介護
テクニックが専門家によって伝授されてるみたいだし、
経験で補うところも大きいと思う。"体"の部分は、自分
に無理がかからない程度の介護ですむ対象者を選ぶこと
で解決する(?)だろう。でもって、問題は"心"の部分。
ここには、いろんな要素が入ってると思うけど、今回は
利用者のプライバシーについて考えた。

 ぼくの知ってるヘルパーさんは、気持ちのやさしい、
思いやりのある方々ばかりで、いつも対象者に気を配っ
てくれて、多少のわがままも快く許してくれる。人の喜
びを自分の喜びに変えているようで、それは素晴らしい
素質だと感心してしまう。それはそれでいいのだが、こ
れが行き過ぎるとねぇ…とか、ちょっと贅沢に思われる
かもしれないような問題も起こる。

 たとえば、以前にうちにきていたAさんは、会社の決
まりだからといって、ぼくが昼食に何を、どれだけ食べ
たとか、おしっこの量はいくらで、色は何色だとか事細
かに日誌(?)につけていた。さらに、家族へも報告。
日誌のなかには、今日の体調やご機嫌や遊びにきた友達
のことに至るまであったから笑ってしまった。で、気に
なるこの日誌の行方はというと、一ヶ月ほどぼくの家に
置かれ、ひとしきり家族を楽しませた後は、事務所に引
き取られ、新しい日誌と交換される。

 また、別の派遣業社では、(同じ業者から数人来ても
らっているうちの)一人に話したぼくが罹っている病気
のことやら、興味をもってしていることなど結構プライ
ベートなことまでその事業所の全員に知れ渡るのである。
Bさんに何気に質問すると(結構プライベートなことだ
とぼくは思うんだけど)、次の日にきたCさんが答えて
くれるみたいな。これは家族に言わすと、健康を気遣っ
てくれてるわけだし、問題ないんじゃない?ということ
になるのだが、いい大人のぼくとしては、どうもみんな
に管理されているようで窮屈なのだ。大げさな言い方を
すれば、プライバシーの侵害という問題もでてくるんじ
ゃないかとも思う。

 もちろん、やってる側に悪意はちっともない。日誌の
件だって、対象者の健康管理に役立てたり、家族や他の
ヘルパーとの連携を強くする反面、ヘルパーさんの不正
を防止することがねらいらしい。後の例でも、対象者の
ためという以外の理由はない。

 だけど、前の例でいえば、ぼくは健康の管理をお願い
しているわけじゃない。あくまでも日常生活の一部を補
助してもらいたいだけなのである。そりゃあ、重度障害
だから、ほとんど全てに補助が必要だけど…。自分の健
康は自分の責任で維持していくつもりだし、その能力に
問題はない。後の例にしたって、他人の家の中というの
は、とてもプライベートな空間だと思う。そこかしこに
プライバシーがある。

 ここでちょっと、難しくなるけど、プライバシーにつ
いて考えてみよう。プライバシーの権利というのは、ど
んな重度障害者であろうと重要な人権だと思う。多かれ
少なかれみんなが持っている必要がある。プライバシー
が、自己の人格的自律にかかわる情報を管理することだ
と定義するなら、仮にこれが対国家的概念だと狭く解し
ても、福祉事業は多かれ少なかれ公共性を否めないんだ
し、民間の会社の権力だってバカにならないんだから、
やっぱりプライバシーへの配慮の意識を欠くのはマズい
んじゃないだろうか。

 ひとは、いろんな場所で、接する相手や立場によって
いろんな顔を持っている。二面性なんて、よくいうけど、
そんなもんじゃきかないんじゃないか。四面も、八面も、
十六面も、もっともっと持っているはずで、個人の人格
なんてもんはそうした多面体で構成されているんじゃな
いだろうか。それでもって、そうした顔を自分の意思で
使い分けられてこそ、社会に生きるひとりの人間として
うまくやっていけるんだし、自分というの保っていられ
るんだと思う。

 とすると、そうした情報が自分の知らない間に、知ら
ない相手に流れていたりするのは、人格的自律の存在と
して生きていけなくなるということだ。ことに、障害者
に関していえば、現在障害者にヘルパー派遣をしている
民間は国から委託されているわけだから、公的色彩は強
いわけで、問題はさらに大きいといえる。

 だったら、ヘルパーさんなんか頼まなければいいかと
いえば、そんなに簡単な話でもない。重度障害者にとっ
て、ヘルパーさんを含めて他人の助けがなければ、単純
に生きていくことさえ難しいのだから。このジレンマか
ら抜け出すため大きな事業会社の中で頻繁にヘルパーさ
んを変えてもらうという手も考えられるけど、いかんせ
ん、福祉業界も人手不足なので難しいだろう。

 で、結局は、ひとりひとりのヘルパーさんに意識の向
上を訴えていくしかないわけだけど、これもなかなかに
難しい。悪意の行為に対する訴えは誰でも理解できるの
だけど、悪気はないんだから…。どこかのCMのように
「あんたのた〜めでしょ♪」(卵のだっけ?)って、やっ
ぱり思っちゃうもんね。


後郷法文


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ご意見、ご批判も多いと思います。
ご感想、ご助言をお聞かせいただければ幸いです。


2000年8月6日、福岡にて



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    清家一雄、代表者、重度四肢まひ者の就労問題研究会
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