1999年1月26日掲載 佐賀新聞「くわるてっと」シリーズから。
注(これは1997年11月から1999年4月まで、画家末安美保子、音楽
家筒石健昭、ライター金丸弘美、作家中島虎彦の四人が交替で、毎週水曜日にそ
れぞれの専門分野についてずいそうを連載したもの)
第15回 「働く四肢マヒ者たち」 中島虎彦
五年ほど前から「重度四肢麻痺者就労問題研究会」(福岡市中央区大手門。代
表清家一雄。電話093−735−)というしかつめらしい会の一員となってい
る。これは福岡を中心に大分、広島、徳島、佐賀などの翻訳業、司法書士、九大
留学生、水道局職員、詩人、学習塾経営など七人のスタッフからなり、そのうち
六人までが頚髄損傷やポリオなどの重度障害者である。
全国の四肢マヒ者たちの自立と就労に関する情報をデータベース化し、それを
必要とする関係者にパソコンなどを通して提供することをめざしている。なにし
ろここ数年の重度障害者たちへのハイテク機器の浸透ぶりはめざましいものがあ
り、それらを駆使して新しい職域が探られている。ひと昔まえの四肢マヒ者たち
には思いもよらなかったことである。
その内容を二年に一度くらい「WORKING QUADS(働く四肢マヒ者
たち)」という雑誌にして発行している。今までに六十人以上の先端的な実例を
紹介してきた。「QUADS」とは「四重の」という意味で、頚髄損傷など四肢
マヒ者たちの略称となっている。最近はこちらのほうを会の通称として呼び合っ
ている。また年に一、二度は電動車いすで博多へ集まり親睦を深めている。運営
の費用はトヨタや丸紅の財団から基金を受けてまかなっているが、身銭を切って
同人誌を発行している私などにはちょっと違和感のあるところだ。
それだけの活動なのだが、手足の動かない四肢マヒ者たち自身が情報を発信し
あい、不備な交通機関を乗りついで遠路集まることそのものに、現代では希少な
意義があると言えるだろう。ただ、佐賀の西の端からひとりだけ参加しているの
は、頭ごしの感じがぬぐえないので、県内からもっと気楽にアクセスしてもらえ
ればありがたい。
こう書いてくるとえらそうに聞こえるが、私は名前があるだけで、実際の作業
を一手に引き受けているのは代表の清家一雄である。彼の紹介は「障害者の文学」
に詳しいので省くが、昨年の末からは斎場教授の紹介で佐賀医科大学の非常勤講
師もつとめている。彼の行き来し方そのものが頚髄損傷たちのデータベースとな
っていて、良くも悪くも刺激を投げ与えている。
彼は自他ともに認めるパソコン狂で、昨年は独力で会のホームページを開設し
ている(http://www4.justnet.no.jp./〜seik
e/)。私はもっぱらそこに記事をフロッピーで送っているだけである。インタ
ーネットカフェからも見られるので、よかったらご覧ください。それにしても、
これだけのデータに身近に接しながらも、肝心の私の自立への歩みは遅々とした
ものである。
もちろん、重度障害者が万難を排して定職につけば、それで手放しに称えられ
るわけではない。障害者内部には「障害者が健常者にまみれて働くのは、資本主
義の経済効率一辺倒の弊害の片棒をかつぐだけだ。たとえ働けなくとも、介護を
通してまわりの者に愛とやさしさの意識を目覚めさせることができる、そういう
大切な仕事がある」という反発を抱く人もある。また「一部の成功例にすぎない」
とも見られがちなので、そういう声も視野に入れてゆかねばならないだろう。
- Attendant (介助) - Housing (住居)
- Wheelchair (車いす) - Automobile (自動車)
- Personal Computer (パーソナルコンピュータ)
- Environmental Control System (環境制御装置)
- Books (情報(書籍))
- Health (健康) - Public Support (公的支援)
seike@ma4.justnet.ne.jp
QZE07711@niftyserve.or.jp
YS2K-SIK@asahi-net.or.jp