"WORKING QUADS" HomePage
無年金の問題 The Problem of No Pension
中島 虎彦 さん
WORKING QUADS 編集者
編集者から From The Editorial Office
中島虎彦・編集者のプロフィール
中島虎彦
へ
中島虎彦:『ワーキング・クォーズ』編集者:佐賀県嬉野町在住
1997年8月27日、第12回リハ工学カンファレンス佐世保の会場で
無年金の問題
1997年10月30日
謹啓 「WORKING QUARDS」 清家一雄 様
先日お送りいただいた電子メールのプリントアウト束のうち、国民年金の減免
手続きに関する意見を参考にさせてもらい、私も次のような要望書を作成し、関
係の部署へFAXしました。ご参考までに文面を送ります。私は現在パソコン通
信をやっておりませんが、こうしてその控えを送って下さる方がおられて、とて
もありがたいと思っております。
嬉野町 中島虎彦
私は1種1級の障害者ではありますが現在無年金でございます。というのは、
昭和49年、大学3年(21才2カ月)の時に器械体操の事故で頚髄損傷を受け
障害者になりましたので、その当時は国民年金制度に加入していませんでした。
当時国民年金は20才になった時点で任意加入ということになっていたと思いま
すが、その頃大学生というのは一種のモラトリアム状態として、国民年金に加入
するのを卒業まで猶予されるという暗黙の了解のようなものがあったのです。ど
うせ卒業すれば就職先の厚生年金に加入するのだし、在学中は親がかりの身でも
あるからなるべく負担のかからぬようにという配慮があったのでしょう。その証
拠に他の高卒の兄弟たちには20才の時点で役場から加入要請の通知が来たのに、
私の場合は何も来なかったので両親もほったらかしておいたのです。
その結果、ちょうど制度の谷間に落ち込むように私は無年金者となりました。
無年金となる例は他に一般家庭の専業主婦が障害者となった場合などがあります。
こういう事態にはやはり行政側の不備が責められてもしようがないでしょう。
そのため、私の所属する全国脊髄損傷者連合会ではもう15年ほども前から、
無年金者の救済を陳情項目の第一番めに立てて活動を続けてきましたが、厚生省
は「拠出制の年金で保険料を納めていない者の場合、支給の対象とはなりえない」
という原則論を掲げ続けてきました。確かにそれは正論ではあるのですが、厚生
年金や共済に加入するサラリーマンや公務員以外の者(農家、自営業、主婦など)
にとっては、国民年金が唯一の社会保障制度(民間の生保を除いて)なのですか
ら、それが受給できないということになると、社会復帰や自立に大きな支障が出
てきます。また他の施設入居者や労災の障害者などと比べて憲法の「平等の精神」
にも抵触することになります。
こういう事情をさすがに政府も勘案して、昭和60年前後でしたか「特例納付
制度」というのを設けて、私たちのような障害者の場合、受傷時から20才時ま
で逆上って保険料を納め直せば何らかの道が開けるような話があったのです。そ
こで私も1年1カ月分逆上って納め直しましたが、何の音沙汰もありません。そ
れどころか、それ以後もずっと健常者と同じように毎月12800円の保険料を
払い続けております。つまり無年金者の保険料で年金受給者の財源を支えている、
というような何とも奇妙な構図となっているのです。
もちろんこのまま65才まで長生きすれば、その時には晴れて「年寄り」とし
て年金を受給できるでしょうが、頚髄損傷というのはどうしても平均余命が短い
のですから、とてもそれまで生き延びているとは思えません。すると保険料は掛
け捨てということになってしまいますね。その理不尽を福岡の障害者仲間に問い
合わせたところ、彼らのうち幾らかは「減免」手続きを取って保険料を納めなく
ともよくなっているというのです。そのかわり65才からの受給額は三分の一ほ
どに減るということです。額はともかく、減免してもらってもなおある程度は受
給できるというところが、私にはちょっと腑に落ちませんでした。そんな便宜が
あるとは一向に知りませんでした。出来れば私も手続きをしたいと願っています。
現在私は「特別障害者手当」という手当を月額26000円ほどいただいてい
ます。それだけでも大きな助けとなって感謝しておりますが、その口座から国民
年金の保険料が毎月引き落とされますので、心細さはぬぐえません。主旨の曖昧
な「手当」などという付け焼き刃的なものより、障害者たちが国民の正当な権利
として自尊心を保って受給できる年金制度の、一日も早い確立を望んでやみませ
ん。
こんな私でも新聞や雑誌に原稿を書かせていただいた時には、原稿料から源泉
徴収として1割の税金を引かれ、国民としての責任の一端をわずかながらでも担
っておりますし、今まで二十四年間分の保険料(なんと368万!)を掛け捨て
にせざるをえないのも高齢化社会に向けて若い世代の負担のうちだろう、という
くらいの犠牲的な気持ちで手をつけずにきましたが、もう充分尽くしたのではな
いでしょうか。友人たちの話を聞くにつけどうも間尺に合わないような気がしま
す。
つきましては、なにとぞ「減免」の手続きについてよろしくお計らいください。
また、より本質的な「無年金者の救済」について少しでもお力添えをいただけま
すよう、なにとぞよろしくお願い申し上げます。 不一
嬉野町吉田万財 中島虎彦
"WORKING QUADS" homepageへ
"WORKING QUADS" homepageへのe-mail
清家一雄、代表者、重度四肢まひ者の就労問題研究会
seike@ma4.justnet.ne.jp
QZE07711@niftyserve.or.jp
YS2K-SIK@asahi-net.or.jp