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"WORKING QUADS" News Letter 2001--040
Walt Laurenceさんとお会いして− 吸引や人工呼吸器の介助行為と医療(類似)行為 by 土岐明子


Walt Laurenceさん。全国頚髄損傷者連絡会・京都大会で。2001年05月26日。


"WORKING QUADS" News Letter
on May 30, 2001


清家一雄@WORKING QUADSです。


"WORKING QUADS" HomePage Writerの、
土岐明子さんから、
「Walt Laurenceさんとお会いして
−吸引や人工呼吸器の介助行為と医療(類似)行為」
という原稿をいただきました。

土岐明子さんは、
関西労災病院の医師の方です。

月26日に、京都で、
カナダ人の人工呼吸器利用の頸髄損傷者、
Walt Laurenceさんとお会いされ、
お話しされたそうです。

日本とカナダの話など、
人工呼吸器利用の
介助必要な四肢まひ者の自立生活にとって、
示唆に富むご助言だと思います。


読んでいただければ幸いです。


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Walt Laurenceさんとお会いして
−吸引や人工呼吸器の介助行為と医療(類似)行為


土岐 明子
関西労災病院 医師

2001年5月27日 20:01


5月26日、京都のパルルプラザ京都で、
私は、ウオルトさんにも質問をしていたりして、
左の端でビデオを取りながら聴いていました。

ウオルトさんの話はとても衝撃的でした。
まずあのレベルの人があれだけの活動を行いながら
30年以上生存されているということです。
私の今まで見たことのある高位頚損の方はみな
痩せて声も小さい方ばかりで、肺炎などにかかりやすく
まず生きることで精一杯で、自分の生活や夢について
語ることなど考えられず、病院から離れることさえ
大変な方ばかりでしたから。
そして、よく脊損の教科書を見るとひとつの部屋に
たくさんの頚損の方が人工呼吸器のタンクにつながれ並んでいる
写真が載っていますが、その中にウオルトさんもおられたと聞き
そんな昔の方が今もこうして元気に生きておられるということに
驚き、不思議な感じさえしました。

今回ウオルトさんの話を聴き、日本の今の状況と一番違うのは
個人の意識ではないかと思いました。ウオルトさんは
医療的なケアは必要ない。自分で介助者に吸引のやり方の
指導ができるし人工呼吸器についてもすべてを説明することができる。
そして自分の管理は自分でできるといわれていました。
日本ではなかなかこうはいきません。

若い患者さんではこのような考え方ができそうな人も
おられますが、多くの人は自分で自分の管理をするという考え方が
欠けていると思います。環境がそうさせていることもあります。
患者は素人で情報がないと自分で考えることもできず
お任せするしかないからです。この点は私も気をつけないと
いけないと思います。自分の体の管理もできず、生活について
考えたり、仕事をすることなどできるはずがありません。

もうひとつ違いがあります。
状態が安定していても吸引や人工呼吸器の使用が常に
必要な人にとって、それは生活の一部であって体交や食事介助と
同じ介助だと思います。しかし今の日本ではそれは医療行為であり
医師や看護婦しかできないことになっています。このため
このような行為が必要な人が生活できる場所は著しく制限されています。
家族がいればまだ在宅という可能性がありますが、家族がいない人、
いても介助者として望めない人は、介助を受けながら生活できる
施設にも入れず、病院へ入るしかありません。その病院も入院期間や
介助量の問題からなかなか受入先がなく、送る側としては
不安を感じざるを得ない病院へしか送ることができません。
この人が自分や自分の家族だったら、と思うととても悔しい思いがします。
この点については当事者からもっと発言していただきたいと思います。
医療者から率先して言うことは難しい問題ですから。

会場で何度か出ていた意見ですが、急性期にかかわる医師に
もっと勉強していただきたい、というものがありました。
本当にそうだと思います。私も何人か呼吸器依存の頚髄損傷者に
関わってきて、どうしたらいいのだろうと思うことがありますが
日本の医療者からの有益な情報はまだ余りありません。
大体、海外の文献を読んで勉強することがほとんどです。
そこで勉強したことをたとえばパラプレジア学会などであった
先生と話すと、そんなことは知りませんと言われ、残念な思いを
何回かしました。毎日試行錯誤です。でも患者さんが肺炎などの
合併症を起こさず退院するとうれしいですけどね。今回のような
会に参加できてまた新しい刺激を受けることができ、よかったです。
ひとつ注文をつけるとすれば、医師への宣伝をもっとすべきでは
なかったかと思います。学会に行ってもこの方面の情報はほんの
一部の場面でしか出てきません。

今回この会に参加できてとてもよかったです。
以前相談した、小児の頚損の方は人工呼吸器をつけ、自宅へ
退院することとなりました。おかげ様でコンピューターの
使用も何とかできそうです。まだまだ問題はあり、
改善すべき点もありますが、また一緒に頑張っていきます。
いま、もう一人人工呼吸器をつけた26歳の頚損の方が
入院しています。まだまだ長い人生です。少しでも力になれたら
と思います。


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ご感想、ご助言をお聞かせいただければ幸いです。

2001年05月30日、福岡にて

清家 一雄
重度四肢まひ者の就労問題研究会; 代表
『ワーキング・クォーズ』編集部
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