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    WORKING QUADS News Letter on March 17, 2000
    WORKING QUADS 2000、
    WQNL C4頸髄損傷者と介護保険、
    「こんな暮らしがしたい」 by 金子寿

    (The intellectual productive activities by Quads)








    Kazuo Seike
    president, "WORKING QUADS"
    "Working Quads" Editoriak Office
    "WORKING QUADS" HomePage produce
    Fukuoka-shi, 810 Japan
    Tel +81-92-735-
    Fax +81-92-735-
    kazuo_seike@msn.com
    seike@ma4.justnet.ne.jp
    http://www4.justnet.ne.jp/~seike/

    "WORKING QUADS" News Letter
    on March 17, 2000

    清家一雄@WORKING QUADSです。

    介護保険直前のこの時期です。

    「日本の公的介助者制度(公的ヘルパー)は十分か」
    「家族がいなくても街中で生活できるか」
    というテーマでやっています。

    金子寿さんは、C4頸髄損傷者で、
    イマセンあご操作電動リクライニング車いすの利用者です。

     金子寿さんは、国際的な観点で
    活動している頸髄損傷者です。

    1985年、F.L.C.を発足。
    1990年、アメリカ合衆国カリフォルニア州
    バークレー市研修旅行。
    1992年、マレーシア訪問。
    1996年、イギリスに調査研究旅行。
    『訪英報告書』、「電動車イスで見たイギリス
    〜イギリスにおける障害者のパワーと実践〜」、
    著:金子寿/F.L.C. ( Friendly Life Community )
    1997年03月31日発行

    金子寿さん(FLC)は、
    同じ障害を持つ仲間たちのために、
    「国内外を問わず、私たちの出来ることから
    支援していこう」という考えで、
    「途上国への支援」として、
    15ヶ国以上の国々に約120台の車いす,
    障害児の訓練のための玩具,
    介助マニュアル(英訳)等の寄贈を通じ、
    各国の障害者やリハ関係者との交流を続けられています。

    下記の金子寿さんの原稿は、
    FLCの機関誌『飛璃夢』からの転載です。
    原題は、『不安だらけの介護保険』です。

    "WORKING QUADS" HomePage(清家一雄)は、
    介護保険の中核は、ケアプラン作成権限だ、
    と考えていますので、
    金子寿さんの文中にあります
    「本人の『こんな暮らしがしたい』という希望」
    という言葉に注目しました。

    読んでいただければ幸いです。


    ++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++++

    『不安だらけの介護保険』

    C4頸髄損傷者と介護保険、

    本人の「こんな暮らしがしたい」という希望

    金子 寿

    2000年1月24日 11:00




     いよいよ来年度から介護保険がスタートします。しか
    し、当初から懸念されているサービス提供の地域格差は
    是正されるめどもないまま、この10月から全国の市町
    村で要介護認定が始まりました。利用者は、現在のサー
    ビスが介護保険の導入に伴って切り下げられるのではな
    いかという不安だけでなく、厳しい財政事情のもとで今
    以上に拡充される見通しがあるのかないのか、先の見え
    ない不安を感じています。

     さらに、介護保険は、保険料や1割の自己負担などの
    費用の課題、医療の専門化が中心になって行われる要介
    護認定の課題、不確定な要素が多いまま、見切り発車で
    始まっています。

     まず、被保険者(保険対象)は、65歳以上の加齢に
    伴う疾病により要介護の高齢者が「第1号被保険者」、
    40歳以上の加齢に伴う疾病により要介護状態になった
    人が「第2号被保険者」です。第2号被保険者の「加齢
    に伴う疾病」とは、特定15疾患、いわゆる難病、リュ
    ウマチ、脳血管障害、ALS(筋委縮性側索硬化症)の
    方などが含まれています。

     これらの第2号被保険者の方へも、介護保険を適応せ
    ずに、現在でも在宅サービスの対象者として、すでにホ
    ームヘルパーなどのサービスを提供している自治体があ
    ります。なのに、加齢に伴う疾病として介護保険の対象
    になることに大きな問題があります。たとえば、自治体
    によっては、それらのリュウマチや脳血管障害による障
    害者の方は、障害の等級などに関係なく、その生活実態
    に応じてホームヘルパーの派遣が行われます。

     介護保険では、医療専門家主導によるADL(身体機
    能)を基本にしたコンピューターによる一次判定と、か
    かりつけ医の意見書を加えて、介護認定審査会で最終的
    な「要介護度」が出されます。コンピューターや医師は、
    身体機能の評価はできても、はたして一人ひとりの生活
    実態や、本人の「こんな暮らしがしたい」という希望に
    耳を傾けてくれるのでしょうか。ましてや、介護認定審
    査会が対象者一人にかける審査時間は、ほんの十数分と
    いわれています。

     このような判定を経て出された要介護度が、現在より
    低く判定された場合に、サービスの切り下げ、「引き下
    がり」問題が起こってしまうのです。最近になって、国
    などは引き下がり問題について、「介護保険で対応でき
    ない部分は、これまでと同様のサービスが行われるよう
    何らかの方策を行う」ことを表明しています。介護保険
    法の付帯決議にもその旨が明記されていますが、たとえ
    介護保険とこれまでの障害者施策の併給が可能になった
    としても、現在のように、ホームヘルパーなど一つのサ
    ービスで全額を利用できる分けではありません。

     それから介護保険は、「保険方式の導入による相互扶
    助」と「利用者の権利性を基本にしたサービスの選択制
    を保障すること」を基本にしています。果たして選択は
    保障されるのでしょうか。サービス料の確保が今後の大
    きな課題であり「保険あってサービスなし」は大きな問
    題です。

     介護保険によって、社会福祉法人など既存の供給主体
    をはじめ、市民団体や民間企業の参入規制を大きく緩和
    し、多様なサービス業者が一気に増えることが予想され
    ます。しかし、民間企業は参入もすれば撤退もします。
    儲からなければ、即撤退になってしまい、そこには当事
    者の都合はありません。

     また、介護をはじめとする福祉制度は、これまで「措
    置」という形で運用され、行政の裁量が基本でした。措
    置によって作られてきた制度は「お世話」の域をでず、
    未だに、ホームヘルパーが週2〜3回程度しか派遣され
    ない自治体は多くあります。措置は行政の処分であり、
    生活実態よりも障害の等級などを利用の基準・制限にし
    てきたからです。

     介護保険の議論はそもそも、高齢社会の到来を間近に
    して、社会全体で支えることができるシステムを創設さ
    せることから始まりました。これまで家族や当事者だけ
    の問題として片づけられてしまう介護を、社会全体の課
    題として位置づけたことには大きな意義があったと思い
    ます。

     しかし、介護に関わる本質的な課題は、まず、自立の
    意味を明確にし、それを具体施策に位置づけることであ
    って、「租税か保険か」の財源論で片づけてはならない
    と思います。これまでの福祉施策は、「在宅か施設か」
    の二者択一です。この実態が抜本的に改革されなければ、
    措置制度から契約に変わったとしても、どんな意味があ
    るのでしょうか。本人の望むサービスがない中では、む
    しろ契約と称して「選ばせられる」ことの方が問題は深
    刻です。

     1994年に厚生省の諮問機関「高齢者介護・自立支
    援システム研究会」は、高齢者の新介護システムについ
    て、下記のような基本理念を打ち出しています。

     『従来の高齢者介護は、どちらかといえば高齢者の身
    体を清潔に保ち、食事や入浴の面倒をみるといったお世
    話の面にとどまりがちであった。今後は、重度の障害を
    有する高齢者であっても、たとえば車イスで外出し、好
    きな買い物ができ、友に会い、地域社会の一員として様
    々な生活に参加するなど、自分の生活を楽しむことがで
    きるような、自立した生活の実現を積極的に支援するこ
    とは、介護の基本理念としておかれるべきである。』

     真の意味でこの基本理念が実現されることを願わずに
    いられません。介護の必要な障害者の、「一人暮らしを
    したい」「仕事に就きたい」、そんな思いが実現できる
    システムの構築こそが、もっとも肝心なことです。内容
    に多少の差異はあっても、それは障害種別や若年・高齢
    者に関係なく言えることだと思います。

     そして、介護保険は実質的に始まっています。私たち
    は今後取り組まれる福祉再編の中で、介護保険の矛盾や
    課題を検証し、その動向に注目していく必要があると思
    います。


    F.L.C.(Friendly Life Community)会報 :
    飛璃夢65号(1999年10月発行)より転載


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    ご意見、ご感想、ご助言をお聞かせいただければ幸いです。

    2000年3月17日、福岡にて


    on March 17, 2000

    (by Seike)


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    清家一雄、代表者、重度四肢まひ者の就労問題研究会
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