WORKING QUADS News Letter Novemver 14, 1999
(The Independent Living that supports the intellectual productive activities by Quads)
The Vocatinal Rehabilitation Conference in Tokyo in 1999
「日本職業リハビリテーション学会 第27回大会(東京)」
介助が必要で、運転免許取得不可能な四肢まひ者の
就労の問題が未解決のままであることを 話しに行きました

(四肢まひ者の知的生産活動とネットワーク活動)
 清家一雄@WORKING QUADS



岩崎貞徳さん。比治山大学短期大学部教授。
HIJIYAMA JUNIOR COLLEGE / Professor: Department of Early Childhood Education
松田信夫さん。山口大学教育学部 教授
酒井ひとみさん:YMCA米子:広島大学大学院

『ワーキング・クォーズ』関係者各位
1999年11月11日
  
   清家 一雄    重度四肢まひ者の就労問題研究会・代表
   『ワーキング・クォーズ』編集部
   "WORKING QUADS" HomePage 制作提供
  〒810 福岡市中央区大手門  Tel +81-92-735-   Fax +81-92-735-
  kazuo_seike@msn.com  seike@ma4.justnet.ne.jp
   http://www4.justnet.ne.jp/~seike/
前略
 1997年07月、日本職業リハビリテーション学会 第27回大会(東京)に参加しました。

 論文中にも、以下のように書いていますが、 東京まで出かけていったのは、職業リハビリテーションの中で、 介助が必要で、運転免許取得不可能な四肢まひ者の就労の問題が未解決のままであることを 話したかったからです。

 「ADL自立の軽度の人たちには就労の仕組みやサポートもかなり整備されているが、ADLに問題のある四肢まひ者など最重度の人たちの就労問題は、職安、ケースワーカー、養護学校の就職担当の専門家などでもほとんど、取り上げられないようである。当事者たちが個人的にやらざるを得ないのが現状である。

 『街で生活したい』『きつくてもお金をもらう仕事をしたい』という四肢まひ者もいるということを、四肢まひ者自身、家族、施設、病院、社会一般、納税者、そしてより決定権のある人たちへ伝え、考える素材となれば幸いである。

 以下の文章は、日本職業リハビリテーション学会 第27回大会(東京)で発表した論文の 「日本における要介助の(運転免許取得不可能な)四肢まひ者の 就労の現状(12事例)と職業リハビリテーションの課題」 の文章の一部です。

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日本における要介助の(運転免許取得不可能な)四肢まひ者の
就労の現状(12事例)と職業リハビリテーションの課題


清家一雄
重度四肢まひ者の就労問題研究会; 代表
佐賀医科大学医学部講師

1. はじめに−目的

 頚髄損傷者を代表例とする四肢まひ者には知的機能障害はない。しかしその身体的機能障害は、身体障害の中では最重度である。本論では、四肢まひという(一次的な障害、WHO・世界保健機構のいうインペアメントimpairment)をもち、移動能力や書字能力などの日常生活動作能力の不足(二次的な障害、ディスアビリティdisability)に苦労している個人たちが、知的生産活動を行い、「生活の質(Quality of Life)」をいかにして改善していくのかを考察する。

2. 対象と方法

 2.1 対象

 日本では、日常生活において他者の介助を必要とし、車の運転ができない、四肢まひ者は、社会生活はもとより自宅で家族と生活することさえ困難で、病院に長期滞留する人や施設生活者が少なくない。就労に関しては、公務員の障害者職員採用特別枠でさえ、自力通勤可能で介助不要の者との条件があり、四肢まひ者の就労問題は未解決のままである。「障害者の雇用の促進等に関する法律」上も、上肢、下肢それぞれ1級を2つ持つ四肢まひ者は不利である。

 2.2 方法

 著者は、1989年、「重度四肢まひ者の就労問題研究会」の活動を始め、会報「WORKING QUADS(ワーキング・クォーズ)」第1号を編集発行した。「仕事」と「介助」がテーマである。最初は近所の3、4人の重度障害者で始めたが、「WQ」 No.10では編集者6人、執筆者は66人である。

 1996年11月にはインターネット上で"WORKING QUADS" HomePageを開設し、四肢まひ者のハイテクを活用した知的生産活動を支援するためのデータベースを制作提供している。コンテンツは、環境制御装置、電動車いす、リフター、車いす用自動車、ホームヘルパー制度など。1998年5月28日現在、"WQ"hpの編集者は8名、執筆者は162人(hpのみの執筆者は84人)である。アクセス数は、40,957である。

 「WORKING QUADS」は、四肢まひ者の知的生産活動を取り上げている。要介助の四肢まひ者でも、実際に仕事をしている人が、ごく少数ながら現れてきた。就労問題研究会は、実際に働いている人を発掘し、広く知らせている。今回、その中から、12事例を対象としてとりあげる。

 3.2 考察

 頚髄損傷者を代表例とする四肢まひ者には知的機能障害はない。3.1.の事例で示されたように、通勤負担を伴わない自営業が多いが、零細自営から、専門自営、大規模自営、雇用復職、雇用新規採用への道を切り拓いてきている。彼らは、個人的な資質、資産、努力に依存しながらも、考え、工夫し、知恵を出して、生活を改善し、活動・就業の幅を広げてきた。

 時代は変わってきた。補装具交付券による電動車いすの支給制度、国民年金障害基礎年金・特別障害者手当の創設。インターネットに接続可能なパソコンの登場と低価格化、ゴールドプラン・障害者プラン・公的介護保険による公的ホームヘルパー制度の整備、電動車いすのまま運転ができる乗用車の輸入自由化、テレワークの社会への浸透。四肢まひを持つ人々の知的生産活動の環境が少しずつ整えられてきている。

 寝たきりで呼吸器をつけていて、しゃべることもできない四肢まひ者が、頬にセンサーを付けて、笑う筋肉でパソコンの操作ができ、自分の意思表示ができるようになっている。

 二文字一円のワープロ入力をやっている人。自分の部屋で英語を教えはじめた人。テレビのモニターに応募して一年間契約で月15万円稼いでいる人。経済的に恵まれていて、ビル、マンションを経営している人。何も言わないが、出来る範囲でちゃんと仕事をして生きている人がいるということを、世の中に知ってもらいたいと思っている。

 ADL自立の軽度の人たちには就労の仕組みやサポートもかなり整備されているが、ADLに問題のある四肢まひ者など最重度の人たちの就労問題は、職安、ケースワーカー、養護学校の就職担当の専門家などでもほとんど、取り上げられないようである。当事者たちが個人的にやらざるを得ないのが現状である。

 「街で生活したい」「きつくてもお金をもらう仕事をしたい」という四肢まひ者もいるということを、四肢まひ者自身、家族、施設、病院、社会一般、納税者、そしてより決定権のある人たちへ伝え、考える素材となれば幸いである。

 4.むすび−職業リハビリテーションの課題

 要介助の(運転免許取得不可能な)四肢まひ者でも、介助サービス、住居、移動、教育などの条件が整備されれば、働くことも含んだ自立生活が可能である。四肢まひ者の自立度が向上し、介助必要量を減少させ、生産性を向上させる工夫、システム、生産環境開発に関する情報が共有されることは、四肢まひ者自身、家族、社会の人々にとり有益なことである。特別な資産や才能のない四肢まひ者が普通の努力での、一般雇用関係における復職・新規採用、専門職・管理職への就労、就業可能な自営業(在宅、自宅外の仕事場)を可能とする教育、就職の機会、公的介助制度、物的資源による支援システムを考案し、できれば開発を行いたい、と考える。

 "WORKING QUADS" HomePageは、そのためのメディアでありたい、と思う。1999年のテーマは「四肢まひ者でもしぶとく仕事をしよう」、(「デスクワークのための褥創対策」、「ノートパソコンを活用したベッドワーク」)である。

 労働省、職業リハビリテーション、その他の専門家の方々のご支援、ご協力を心よりお願いいたします。

1999年5月28日 福岡

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皆さんも、何か情報、ご意見、ご感想がありましたら、お聞かせい
ただけると助かります。

kazuo seike@working quads
November 14, 1999

(by Seike)


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    清家一雄、代表者、重度四肢まひ者の就労問題研究会