このぺーじは、農業土木学会発行の土地改良事業計画設計基準 設計 「水路工」を参考にしている。
この基準は、下表の適用範囲程度の比較的大規模な水路を想定していますが、それより広い範囲を適用可能としている。
用水路 | 排水路 | |
基準の適用範囲 | 3〜20m3/s | 5〜50m3/s |
基準の適用可能範囲 | 0.1〜40m3/s | 0.2〜100m3/s |
算定に当たっては、
同基準 図−6.6.2(用水路)及び図−6,6,3(排水路) 水路余裕高算定と水路壁高決定のフローチャートを参照
水路余裕高の算定にあたって考える事項
標準的な水路余裕高の算定方法は、
1 水路の目的・・・用水路、排水路、用排兼用
2 水路の型式・・・開水路、トンネル、暗渠、射流・急水路、水路橋
3 断面形状・・・無ライニング、ライニング水路(台形断面水路)、擁壁型(フルーム、擁壁水路、箱形暗渠、既製品水路など)
を考慮して算定する。
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水路余裕高を決める要因と算定式への反映方法
水路余裕高決定のための要因として次の4つの要因が考えられ、それぞれ係数処理され算定式に反映されている。
1 粗度係数
粗度係数は、水路表面の粗度、草生、水路の湾曲、断面形状、流速、径深
土砂の堆積と洗掘、浮遊物質、将来の維持管理状況等多くの要素により変化する。
粗度係数に対する水路湾曲、堆砂、植生の影響は次のとおり、
(1) 湾曲の影響
水路の蛇行が著しい場合は粗度係数の値が増大する。
(2) 堆砂する砂の性質に支配されるが、砂州や砂れん(滑落した砂がつくるスダレ状の美しい模様。)のように堆積が一様でないものについては粗度係数の値が大きくなる。
(3) 植生の影響
水路内面の雑草、水草、藻類の繁茂により、粗度係数の値はかなり大きくなる。
水路の型式 | 余裕高への反映 | α値 |
無ライニング、ライニング | 水深の5% | 0.05 |
擁壁型(フルーム、擁壁水路、箱形暗渠、既製品水路など) | 水深の7% | 0.07 |
2 流速水頭
水路を流下する流れは、運動状態にある以上常に流速水頭を持ち、この水頭は静水頭に変わり水面を上昇させる可能性をもっている。
水路の障害の程度 | 余裕高への反映 | β値 |
流速水頭による水面上昇要因が特に考えられない水路 ○例示 ゲート、スクリーン等水位堰上げ施設が下流にない。 ゲート、スクリーン等水位堰上げ施設があっても、その施設に余水吐き、バイパス等の施設がある場合など。 |
流速水頭の50% | 0.5 |
水路の規模、需要度や構造物の配置等により水面上昇が 予想される場合 ○例示 ゲート、スクリーン等水位堰上げ施設が下流にあり、 その施設に余水吐き、バイパス等の施設がない場合など。 |
流速水頭の100% | 1.0 |
3 水面動揺
水路中の流れは、構造物(ゲート、落差工、急流工、ポンプ場等)、風等により波動を起こし水面を動揺させる。
水面動揺の程度は、通常10〜30cm程度と考えられる。
設計にはその半分5〜15cmを加えるが、その値は、次の点に着目し決定する。
設計に当たっては、この着眼点から個々の場合について検討し、現地に即した余裕高の修正が必要であるが、設計基準では水面動揺の余裕高として、反映させている。
着眼点 | 着眼点の内容で重要とする場合 | 着眼点の項目に1つ以上該当する水路のhw値 | 着眼点の項目に該当しない水路のhw値 |
1 規模、重要度、立地条件 | 広い地域に関係する重要な幹線水路 人家に近い盛土水路 |
0.10m≦hw≦0.15m を加える |
0.05m≦hw<0.10m を加える |
2 工種 | サイホン、トンネル、円形、馬蹄形暗渠等の直上流部 | ||
3 構造物の配置と水路の湾曲 | ゲート、スクリーンや水路の急な湾曲等、堰上げを起こしたり波動の原因となる構造物の上下流部 | ||
4 管理 | 分水工、余水吐等の管理情況によって、予定以上の流量が水路を流下することがあると考えられる場合 |
4 流量比率による余裕高
余裕高は、水路が遭遇する不足の事態に対処するもの。
水路には、最低限この流量を流せる断面を持たせる。
要因 | 余裕高への反映 | 最低断面の確保値 |
流量比率 | 余裕高を含んだ通水可能量/設計流量>=1.2とする。 | 1.2Q |
5 洪水の流入
用水路は通常、洪水を水路に流入させないこととしてるが、やむを得ず流域の洪水(地域の雨水排水)を取り込む場合はその流量を対象とした水深に10cmの余裕をもたせる。
要因 | 余裕高への反映 | 値 |
用水路への洪水流入 | 洪水時流入水位量の等流水深に10cmの余裕を加える | df+0.10m |
排水路への洪水流入 | 洪水時流入水位量の等流水深に30cmの余裕を加える | df+0.30m |
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1から3までの要因から余裕高を次のように算定する。 余裕高を決める1から3の要因から、α、β及びhwを決定し、次式により余裕高(Fb:フリーボード)を求める。 ![]() ![]() ここで、 Fb:余裕高 d:設計水深 hv:流速水深 hw:水面動揺に応じた余裕高 |
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(a)1から3の条件から算定した余裕高から求めた壁高
壁高H=設計水深d+Fb
=設計水深d+αd+βhv+hw
(b)4から求めた壁高
壁高H=1.2Qの等流水深
(c)5から求めた壁高
壁高H=洪水流入時等流水深df+0.1
を求め、そのうち最大の壁高を設計値とする。
計算結果
※ このうち最大の壁高を設計値とする。
※ 水面動揺の項の着眼点の、「工種」、「構造物の配置と水路の湾曲」の重要な内容に該当する場合で、水理的検討により必要と判断される場合は、別の方法により壁高算定を行ってもよい。
(a)1から3の要因から算定した余裕高から求めた壁高
壁高H=設計水深d+Fb
=設計水深d+αd+βhv+hw
(b)4の要因から求めた壁高
壁高H=1.2Qの等流水深
(c)5の要因から求めた壁高
壁高H=洪水流入時等流水深df+0.3
を求め、そのうち最大の壁高を設計値とする。
※ このうち最大の壁高を設計値とする。
※1 水面動揺の項の着眼点の、「工種」、「構造物の配置と水路の湾曲」の重要な内容に該当する場合で、水理的検討により必要と判断される場合は、別の方法により壁高算定を行ってもよい。
※2 小規模な排水路の場合では、最小余裕高0.3mを低減することが出来る
流水が射流となる矩形(長方形)断面における急勾配水路の余裕高は、通常、原則として次式から求める。
ただし、土地改良事業計画設計基準「設計基準 水路工」の適用範囲以下の小規模な射流・急流水路の場合は余裕高が過大となるので、当該基準の「急流工の設計」を参照してください。
用水路 | 排水路 | |
基準の適用範囲 | 3〜20m3/s | 5〜50m3/s |
ここで、v:流速(m/s)
h:水深(m)
ただし、Fb、h は急勾配水路底に垂直方向の高さである。
1 一般の場合
原則として、次の(a)及び(b)のいずれか大きい方の断面を設計値とする。
(円形断面の水理特性を参照のこと)
※排水路の場合は、地域の特性や上下流の水路との関連により余裕高を大きくすることが求められることがある。
(a) 設計流量に対して
ただし、D≦0.6の場合 Fb=D/2(m)とする。
ここで、d1:設計流量に対する水深(m)
D1:高さ(直径)
(b) 用水路で洪水を流入させる場合
ここで、d2:洪水を加味した流量に対する水深(m)
D2:高さ(直径)
2 その他の場合
(1) 最小施工断面のトンネル、不等流のトンネル並びに暗渠の余裕高は、一般の場合の(a)よりも大きくとることができる。
(2) 導水トンネルのように途中から洪水流入がない場合で、
@流量に変化がない。
A急な湾曲が無く流れに乱れがない。
B粗度係数の推定が正しく、悪化の恐れがない。
条件の下では、d/D=0.9程度をとることができる。
これは、円形水路の流速、流量に対する水理特性による。
(3) トンネルの余裕高は、規模、流入洪水量、路線の曲率、最小施工断面等の要因も併せて考慮のうえ決定する。
(4) 不等流の暗渠の余裕高は、水理状況により必要と判断される場合は、一般の場合の(a),(b)から求められるものより大きくとる。
水路橋の余裕高は、原則として
1 箱型断面の場合は、擁壁型水路の考え方による。
2 円形断面の場合は、トンネル及び暗渠の考え方による。
3 短区間の水路橋については、前後の水路とのつり合いから、前後の水路の余裕高を使用することができる。
二次製品水路の余裕高は、『土地改良事業標準設計図面集「鉄筋コンクリート二次製品水路」利用の手引き』によれば製品の種類別に次のように設定している。
ただし、取り扱いを簡素化、省略したものなので、現場状況や水理状況を判断して適用すること。
1 比較的大きな断面を有する製品
製品名 | 適用式 |
鉄筋コンクリート組立柵渠 | Fb=0.07d+0.5hv+0.10 |
鉄筋コンクリート排水フリューム | |
鉄筋コンクリート大型フリューム | |
鉄筋コンクリート水路用L型 | |
ボックスカルバート | |
アーチカルバート |
2 比較的小規模な断面を有する製品
製品名 | 適用式 |
鉄筋コンクリートベンチフリューム | 余裕高表が、『土地改良事業標準設計図面集「鉄筋コンクリート二次製品水路」利用の手引き』にあるので、それを参照して下さい。 |
鉄筋コンクリートフリューム | |
鉄筋コンクリート側溝 | |
鉄筋コンクリートU型 |