見上げれば芽吹いた木の葉を
勢いよく鳴らして渡る風がある
あの風の色が見えるレンズがあればいいのに
そのレンズを僕の眼鏡に入れれば
この世界は一瞬一瞬を新しい色彩に
塗り変えられていく移り変わる絵画に違いない
その筆さばきを
変わるままの世界の驚きを見ていたいから
僕の体も風に触られて
一瞬一瞬に色を塗り替えられていく
風の楽しいキャンバスに相違ない
明るい色彩ばかりで描かれた
春の山は笑う
風は風で色を分かち合い
木の葉から萌黄をもらい
躑躅色をどっぷりとつけて
タンポポの黄色に
綿毛はこんもりと盛った点描
青い空を背景にあしらって
その山の遥か上
鳥はきっと風の色合いを見ながら
その流れに乗っている
だからあんなにも人の目には
奇跡的にも見える見事な飛翔
僕を励ましてくれる風の色
うつむいた心を空に向けさせてくれる
凍てついた心を温めてくれる
すべてが移り変わる流れであることを教えてくれる
その色彩を見ることができるのならば
このせせこましい胸の内も
新しい世界の深みに広がりを見せるのかも知れない
いつか風の色の見えるレンズを手にしたい
この世界の変わりゆく色彩を
憧れと驚きを持って見ていたいから
心撓めて風の色彩を感じるようになるのだ・・・・・