風のささやき

砂山

一緒にお山を作ろうと子供に誘われた
直ぐに背中を丸めて小さな手で
砂を集める子供の横で
手を汚さないように足で砂を掘り返していたら
子供に凄く怒られた

それで久しぶりに砂を触る手
表面はサラサラと乾いて白く
春の陽ざしを吸って温まっている
少し掘り出すとしっとりと濡れた砂が出てきた
優しい手触りだ
体の中に砂を通じで
染みこんで来る何かを感じる

その砂を運んで山を高くするだけの
終わりの無い作業なのだが
どこか無心になれて楽しい
時々子供が山の形を整えている
僕も飾り付けに白い砂を頂上にこぼしたりして

近くには一本の大きな欅
もう若葉で一杯だ
やがて強い陽ざしから子供たちを守って
もう何十年をそこで過ごしてきたことだろう

この公園には昔僕も
毎日のように遊びに来ていた
欅の下には大きな滑り台があって
子供たちが上から下にと
飽きずに滑り降りていた
賑やかすぎる声があった
僕はむしろ下から上にと
上がって皆の邪魔をしていたな

春になれば桜が花をつけた
散る桜にもさして寂しさは感じずに
動き回る手足をもっともっと動かしたいと思った

背が伸びて目線が高くなって
いつからか公園に来ることも無くなって
砂に触れることもなくなり
無心に遊ぶ楽しさを忘れてしまった
どれだけの豊かさを失って
人は生きて行くのだろう

春の風が気持ち良い
その中で無心に砂を積む時間の豊かさを
子供に教えられていた