東京都議会会議録に見る捏造問題

「東京都議会会議録の閲覧と検索」から、神の手事件に関連する質疑を検索して転載しました


平成12年第4回定例会 12月8日 一般質問 (転載元

〇 倉林辰雄
 次に、文化財について伺います。
 文化財は、我が国の長い歴史の中で生まれ、はぐくまれ、今日の世代に守り伝えられてきた貴重な民族の財産であります。我が国の歴史、文化等を正しく理解するために欠くことのできないものであり、将来の文化の向上、発展の基礎をなすものであります。
 東京都においても、貴重な文化遺産を保護し、活用することに多くの努力がなされているものと思われます。
 しかしながら、先月発覚した東北旧石器文化研究所の藤村新一前副理事長による前期旧石器捏造事件は、文化財に対する国民の信頼を裏切っただけではなく、歴史をゆがめ、誤らせるもので、許しがたい行為だといわざるを得ません。全く残念な事件と申し上げるところでありますが、こうしたことが起こったことについては、考古学界だけではなく、自治体や教育関係者、マスコミにも問われるべき点が多いと思われます。
 なぜ歴史の捏造というこのようなことが起こったのか、それぞれが深く反省するとともに、今回の事件の検証を進め、その全体像を明らかにすることで、一日も早く国民の信頼回復に努めるべきものと思います。
 そこで、石器捏造事件の藤村氏の関与について教育長にお尋ねをいたします。
 東京都においても、多摩ニュータウン内の遺跡で、この石器捏造事件を起こした藤村氏の関与があったとされるが、どのような関与があったのか、また、藤村氏の関与が明らかになったことから、東京都としてどのような対応をしているのかも伺っておきます。
 今回の石器捏造事件は、さきにも述べたとおり、地域や日本の歴史をゆがめ、正しい歴史教育に重大な影響を与えるものとして、大変に遺憾なことと考えておりますが、教育委員会としては、どのように考え、こうした事件の再発を防ぐためにどのような対策をとっていくのかを伺います。
○ 教育長(横山洋吉)
 石器捏造事件に関します三点の質問にお答えします。
 まず藤村氏が関与した遺跡についてでございますが、当該遺跡は稲城市坂浜に所在しまして、「多摩ニュータウン・ナンバー四百七十一のB遺跡」と命名された遺跡でございます。東京都埋蔵文化財センターが昭和六十二年に発掘調査を行いまして、南関東最古の約五万年前とされる旧石器十三点が出土しております。この調査に藤村氏は二回参加し、藤村氏自身が発掘した石器もあるとの報告を受けております。
 次に、当該遺跡に関する都教育委員会の対応についてでございますが、この遺跡は既に開発によりまして現存せず、その実態の解明は困難を伴いますが、藤村氏が関与した発掘調査の信憑性を明らかにするため、外部の学識経験者等による調査委員会を発足させ、石器の出土状況等について検証してまいります。あわせて関係者への事情聴取についても、文化庁等関係機関と協議の上、進めていく予定でございます。
 次に、今回の事件に対する認識と再発の防止策についてですが、お話のとおり、遺跡調査によって発見される文化財は、地域や日本の歴史を明らかにする貴重な歴史的財産でございます。正しい調査や資料に基づくべきものでございます。
 今回の事件は、遺跡調査に対する信用を著しく損ない、文化財の活用や歴史教育に重大な影響を与えるものでございまして、まことに遺憾なことと認識をいたしております。
 都教育委員会としましては、今回の事件を契機とし、遺跡調査の実施機関に対しまして、その調査体制や調査方法について指導を強化するなど、このような事件の再発防止に努めてまいります。

このページへの御意見は早傘(HFC03726@nifty.com)までお寄せください。