群馬県議会会議録に見る捏造問題

群馬県議会会議録から、神の手事件に関連する質疑を転載しました

2000 12月定例会12/07 同12/08


平成12年12月定例会 12月7日 一般質問 (転載元

○宇津野洋一
 次に、埋蔵文化財問題について、知事のお考えをお聞きします。  世間をあっと言わせたあの捏造石器問題の人物が本県の5ヵ所の遺跡にかかわりを持ち、その中の1つの記録がある町の町史にも載っているとなると、このままでよいのかという気持ちに駆られます。本県には相沢忠洋氏のようなさん然と輝く業績が存在するがゆえに、今回の事件による否定的な影響、リアクションもより大きいのではないかと感じます。今、県民の心にまといついている埋蔵文化財や考古学そのものに対する漠然とした不信を取り除き、一段と高いレベルからの県民の信頼を取り戻すにはどうしたらよいのか。今こそ県は、この間の膨大な発掘資料に基づいて本格的な研究・活用体制をつくるべきときではないでしょうか。  長年の懸案だった県立考古学研究所、博物館とも言われましたが、この構想をぜひこの際具体化するとともに、古代東国についての調査・研究を集大成するための研究者や専門家の体制を立ち上げるべきではないでしょうか。それは、これからの県民のアイデンティティーとして他に比類のない大きな役割を果たすに違いないと確信し、問題提起をいたします。一郷一学を提唱する小寺知事の御所信のほどをただしておきます。
○知事(小寺弘之)
 それから、次が埋蔵文化財の問題でございます。  このたびの旧石器発掘捏造問題は、これまで長年培ってきた我が国の考古学に対する信頼を大きく傷つけたものでありまして、まことに遺憾なことであったと思います。群馬県の考古学は、尾崎喜左雄先生や相沢忠洋氏を初め、多くの立派な考古学研究者を生み出しております。そして、現在も民間を含めた学界の方々が黙々と地道な調査・研究をまじめに続けていると私は思っております。  御質問にありました埋蔵文化財の調査・研究体制の充実については、これまでにも県は埋蔵文化財調査事業団や歴史博物館の充実・強化ということで努めてきておりまして、市町村におきましても、文化財保護専門職員の設置・増員等により調査・研究体制の充実を進めてきているところでございます。今後も民間を含む研究者の皆さんの意見を十分に聞きまして、望ましい調査・研究体制を築いてまいりたいと思っております。  また、発掘資料や研究成果の活用については、歴史博物館や埋蔵文化財調査センター発掘情報館の整備・充実を進めるとともに、市町村が設置しております博物館や郷土資料館とも連携をして、一般の方々がその成果を十分に見学できるように努めていきたいと思っております。  調査・研究の集大成につきましても、平成4年度に終了した群馬県史の編さんにおいて、多くの研究者の協力を得て多大な成果を上げたと思っております。今後とも、これらの実績を踏まえてよりよい普及・活用が図られていくように努力してまいりたいと存じます。  歴史は正しく真実を伝えるものでなければならないと思いますので、もしそういう疑念を挟むようなことが起きますれば、それはきちんと調査をして是正していかなければいけないと考えております。

平成12年12月定例会 12月8日 一般質問 (転載元

○荻原康二
 次に、教育長にお伺いいたします。
 去る11月5日、東北旧石器文化研究所前副理事長藤村新一氏による前期旧石器発掘の捏造事件が発覚し、大きく報じられたことは記憶に新しいところでございます。本県は古代遺跡が数多く存在し、これまでにも相沢忠洋氏のような県民の誇りとする学者を輩出すると同時に、数多くの人や機関によって県内全域にわたりさまざまな遺跡調査が行われてまいりました。岩宿遺跡は、その中でも本県に旧石器時代が存在していたことを証明する貴重な遺跡として、その学術的な高さでも多くの人たちに知られるところでございます。
 仄聞するところによれば、本県においても藤村氏が主導的な立場で関与し、発掘が行われた遺跡が5ヵ所あると言われております。しかし、藤村氏の関与したそれらの場所での石器発見に当たっては、公共機関が調査したものは1件もなく、石器の出土状態などについても情報が明らかにされていないものが多いということであります。今回のような事件が発覚してみると、純粋に学術的成果として積み上げられ、学説として定着したものにもう1度メスを入れ、検証を図らなければならないという事態も至るところで生じてくるのではないかとも思われ、そうした混乱を招いた藤村氏らの責任は非常に重いものがあると断じなければならないと思うところであります。
 そこで、教育長にお伺いいたしますが、1つに、今回の事件についてどのようにお考えになっているか、第2に、本県の名誉のためにも、こうした疑念の持たれるような場所があるとするならば、当事者を除いた県の機関の専門職員によって徹底的な再調査を行う必要があると思うが、そのお考えがあるかどうか、第3に、今後もこうした事件が生じる危険性に対して再発防止のための措置を講じる必要があると思われるが、その辺についてのお考えはどうか、以上についてお答えいただきたいと思います。
○教育長(高井健二)
 荻原議員の御質問にお答えいたします。
 古代遺跡発掘問題にかかわる県の考え方と対応についてお答えいたします。
 今回の遺跡発掘調査における捏造事件については、日本で初めて旧石器時代の存在が明らかになった岩宿遺跡を擁する本県にとっては、極めて遺憾なことであると考えております。歴史は事実の積み重ねの上に成り立つものであることを改めて認識する中で、一連の事件を冷静に受けとめ、本県の埋蔵文化財に関する調査・研究がだれからも信頼され、その成果が豊かな郷土文化の形成に結びつくようにしていかなければならないと考えているところであります。
 次に、藤村氏が県内で関係した5遺跡の再調査についてのお尋ねでありますが、県教育委員会としては、遺跡の検証や石器の真贋問題は、まずは当然のことながら当事者が明らかにすべきであることと考えております。このため、調査主体者に対し、本県に係る遺跡についての発掘調査報告書・踏査報告を早急に出していただきたい旨、要請を行ったところであります。
 また、全国組織である日本考古学会においても、前期・中期旧石器問題調査検討特別委員会を発足し、真相解明に当たることとしております。それらの状況等をよく見守りながら総合的に検討したいと考えております。その上で、行政として新たに学術調査を行う必要があれば、県教育委員会としても、専門家の皆さんとよく相談して、国の重要遺跡確認緊急調査補助金等を活用して所要の調査を行うなど、適正な対応を図ってまいりたいと考えております。
 次に、再発防止についてでございますが、文化庁長官から今回の事件に関して全国都道府県教育委員会教育長あてに通知が出されております。これによると、県教育委員会で発掘届を受理した段階で、調査体制が適正であるのか、また、発掘調査の必要性に応じて客観性が確保されているかどうかを確認し、調査段階においては必要かつ適正な指導を行い、調査終了後には調査報告書を速やかに提出させ、出土品に関する事務を適切に処理させることが求められているところであります。
 さらに、必要があると認められる場合には学識経験者や専門家等による委員会を設置し、第三者の意見を聞くことなどを求めているところであります。本県でも、市町村教育委員会文化担当者を今月14日に集め、文化庁長官通知の趣旨を徹底させるとともに、この通知の内容に沿って適正な発掘調査が実施されるよう努めてまいりたいと考えております。 以上でございます。

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