辞書は安いものだと数百円、しかし高い物になるとそこには値段があってないようなものです。それにしてもその数百円、せいぜい数千円の値段で、あれだけの情報量のものが手に入ると考えると、 こんなすばらしい買い物はなかなかないと思っています。
辞書を買うとまず見るのは、「はじめに」であったり「緒言」だったりする、いわゆるその辞書がいかにして企画され、完成までにどのような経緯を経たのかを書いた部分を読むことにしています。著名な辞書の場合、そこには人間ドラマとも言うべき事柄が書かれていることがあります。挫折や苦難を乗り越えたことが綴られているのです。辞書の執筆は芋辞書でない限り、時間と労力を費やします。そして大部の辞書にいたっては、執筆者の中に黒枠で囲まれた名前があることすらあるのです。また、「〜〜に捧ぐ」などといった言葉が書かれていることもあります。
日本だけでも広辞苑、大漢和辞典、言海、など歴史をもつ辞書があります。そして、緒言があたかも一つの文学作品のような格調高い文章で構成されていることもあるのです。