とダイナミックプロROOM
「とダイナミックプロ」的作品

無頼・ザ・キッド
(その2)

サンワイドコミックス(朝日ソノラマ)
(初版発行/1巻・1986.2/25 2巻・3/25 3巻・4/30)
時は当時の近未来・西暦198X年。「暗黒の80年代」と呼ばれるこの時代、 人口爆発と異常気象のため、世界各国は極端な飢餓状況へ追い込まれていた。 いずれ来る「地獄の90年代」に人類はもはや、自滅するしかない。そのため 各国は強烈な「人減らし政策」を実施した。道ゆく人は自衛のため 銃を手に取り、ささいなトラブルでも撃ち合いが始まる…。それは国民 自ら選択した弱肉強食の世であった…

なーんて能書きはさっさと済ませて、タマ取り合戦オーライな バイオレンス設定カマせば、我らがダイナミックワールドの 幕開けであるっ!

時代によって「リアルと感じるお約束」てーのは違うのだが、 ウエスタン趣味な内容といい、国家お墨付き暴力オーライな 世界観といい、国家嫌いで管理社会に挑戦する 主人公たちといい、この作品『ガクエン退屈男』の70年代後半 的アップ・トゥ・デートなカンジがする。

ま、得体の知れない殺人狂・早乙女門土&身堂竜馬&錦織つばさ トリオと石油コンツェルンおぼっちゃま・無頼万次郎&政治家秘 書・五代鉄コンビではバイオレンス指数が50ダイナミックばかし 違うような気もするが、やるこた同じだ。

連載初期は学園マンガ。番長モノをマカロニウエスタンでやる辺 り、いかにもダイナミック。更にガンファイト、格闘技、カーレース、 ヌーディストクラブ、ストリップなどバイオレンスとハレンチ読みきり エピソードの連作でオトナの世界を垣間見せてくれる風情だったが、 後半で政治サスペンスに発展。国家を相手に問答無用のハルマゲドン が炸裂する。

いわれなきバカ強さ、てのがもう爽快でしょうがない無頼だが、 腕だけじゃなくて出自も最強、てのが特徴的だ。

例えば日本一の兵器工場のぼっちゃんが戦車でご通学、鋼鉄ジーグ 並みの身長の番長と拳銃対マシンガンで見事破ったりしながら、そ りゃもうやりたい放題なんだが、一回り器の大きい無頼さん、基本 的に無視。…しかし脱がされ専業のヒロイン・伽羅見純(言うまで もないがカラミティ・ジェーンからね)が誘拐されるに及んでマジに。 「日本一の兵器工場のオヤジが黙っちゃいねーぞ!」なーんて抜かす ぼっちゃんの乗る戦車に、「俺のオヤジは日本一の石油王だ!」 なーんつってタンクローリーぶつけて爆殺。タンクローリーがこんな にカッコいい乗り物だとは知らなんだ。

その無頼石油は無尽蔵に生成できるという秘密を持ってたりするの だが、その設定が妙に細かいのも高円寺さんの趣味かな。


ヤマトコミックススペシャル(角川書店)
(初版発行/1巻・1991.1/7 2巻・2/7 3巻・3/7)
豪ちゃんチックないい意味で思想のない、エンタテインメントな お色気編「踊り子ガンマン」(観客の中に五十子さんがいるぞ) は「ハレンチのダイナミックプロ」らしくてイイっすね。 その一方で、無頼が政府の人減らし計画を初めて知る「人喰い の海」なんてのは、『ゲッターロボG』でも政府開発の細菌兵器 をゲッターチームと百鬼帝国で取り合う話やってる賢ちゃんカラー。

財界人として呼ばれた無頼が日本国大統領・火虎から求められた、 九州全住民抹殺計画への賛同を断ったところから、俄然ハードな 連続ストーリーへと変貌する。

この時期、高円寺モチーフに繰り返し現れる「データ社会の恐怖」が 前面に出るにつれ、絵柄も石川・よしかわ・安田カラーがぐんと強く なり、顔のタッチが増える増える。台詞回しも語尾の「〜よ」が 多くなって賢ちゃん風だやね。

火虎もサイボーグなら、政府自体がコンピュータ。それに人類愛を 叫ぶ無頼という、突き詰めればそうなっちゃうかな、つーオチでは あるが、「このすばらしい体を!」とかいって着てる背広破り捨て る火虎や、「ウオッ!」と髪逆立てて怒る無頼、小さな虫ロボット が工作員喰い荒らす、やーな描写なんて細かいところが一々ダイナ ミックなので、OKだってば。

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