EARLY石川賢の部屋-1-
さてさて、『学園番外地』にて本名石川賢一デビューしたケン・イシカワだが、
ご多分に漏れずものすごい量の短編を描いている。
中でも、初期・1970年代初頭に描かれた作品群は荒削りながら
その後に続くケン・イシカワエキスがより濃厚に表れているっ!

集英社「ジャンプ」系
講談社「マガジン」系へ   小学館「サンデー」系へ   秋田書店「チャンピオン」系


Soreyuke Combat-tai それいけコンバット隊

別冊少年ジャンプ 1970.1月創刊号〜6月号


コレが第一回だっ!副題「四匹の兵隊やくざシリーズ」。

後に永井豪先生から明らかにされたところでは、作品冒頭まで豪先生がアイデア状態で止めていたモノを、賢先生が引き継いでデビュー作品として完成させたとか。ともあれ大体、石川賢っていうヒトは映画マニアのようで、その折々に流行っている洋画・外国ドラマの影響激しく受けて換骨奪胎してしまうのを凄く得意にしてません?...でまあ、コレなんかもその典型ですな。あの往年の米国戦争テレビ映画『コンバット』のパロディ的な作品。主人公の軍曹は『学園番外地』の番長先生入ってます。

いかにドイツ軍に合わずにのらりくらりと戦場を行くか、それが軍曹・デーカ ・チービ・ヒーゲたちコンバット隊の基本!新兵のチービなんて ドイツ兵を見たことがないという(苦笑)んで、一回目でアメリカ軍にいかに とっとと捕虜になるか...とやってると、敵の大将・マミちゃんが すんげえ美人!で、大暴れの末マミちゃんも合流して、 以下は5人でのらりくらり。全編こんなチョーシ。

ドッカンバリバリはあるけど、マミちゃんを脱がすのに一本費やさない辺りが師匠・豪ちゃんとの違いかな?

なのだが、第5回。ヒーゲの故郷・ユーゴのゲリラ&避難民と合流したとき全ては一変!
ゲリラに入ったヒーゲを残してのらくら行軍を続けようとした折もおり、ドイツ軍の攻撃!
加勢するもヒーゲは戦死。コンバット隊マジで大活躍!ヒーゲの遺志を継いで、避難民を無事送り届けることを誓うという大マジな展開を迎える!何か描いてるウチに乗っちゃって暴走した気配が...。デビュー作に全てがあるってのはホンマですなあ(笑)で、双葉社の最初の単行本化の時は、なぜかココで終わってしまっている!なんでや!

ちなみに双葉社単行本のタイトルは 『それけコンバット』 なのだが、
本来のタイトルはご覧のように
『それ けコンバット である。

別冊少年ジャンプ1970.6月号掲載、長く幻だった最終回。

ユーゴの連中が国境を越える橋を渡ろうとした折も折、ドイツ軍は妨害工作を展開。ユーゴゲリラはドイツ足止めのため、橋を爆破。混乱に乗じて代わりの仮設橋で逃走...。

子供を救うために爆弾で首を吹っ飛ばされるデーカ。思わず前に出た主人公も集中砲火を浴びながら狂ったように戦車を撃滅・戦死!おいおい。

てなわけで、マミちゃんとチービ残してコンバット隊は、石川エスカレーションの餌食 となったのであった...(合掌)改めて、デビュー作に全てが あるってえのはホンマですなあ。

-単行本はこちら-

パワアコミックス(PC)『それゆけコンバット』

双葉社・1979年3月5日初版発行

KCDX『石川賢初期自薦ギャグ傑作選荒野の出前もち』

講談社・2001年4月23日初版発行


『荒野の出前もち』にて、ようやくその全貌が読めるです。


Dabohaze ダボハゼ

別冊少年ジャンプ 1970.7月号〜9月号
(単行本未収録)


6月号予告より。新連載告知だっ!

連載1回目。ご覧のようにちょっぴり小汚いが天真爛漫な少年が大活躍! …かと思いきや続く1ページ目、いきなり「ギァァァァァァオッ」と街の片隅に響く悲鳴。 続くコマで引き千切られた眼がが飛び、血飛沫飛び散る!

なんだこのスプラッタなスタートは…と思いながら次のページをめくると、 主人公「ダボハゼ」が朝食のメニューになった野良犬に感謝しているの図。 現代だと抗議モノだなこりゃ。(『ウルトラマンタロウ』の冒頭とも似てるね)

で、そんなワイルドな朝飯を終えたダボハゼが学校へ行くと、 ホームレス(注:マンガ中では当時の呼び方)の彼に生徒たちは大パニック。 彼に巣食う特別性のノミやダニを移され全身腫れあがるわ、昼飯たかられまくるわ。

…お、ちょっとどこかで見たコトが…?

初連載作品『それいけコンバット隊』も盟友・豪ちゃんとのディスカッションで生まれた…というコトだが、この『ダボハゼ』も翌々年に発表される豪ちゃんのあの怪作『オモライくん』の原アイデアが含まれたやりとりがあったのかもしれない。

ちなみに最終回となる9月号は、担任の先生と番長、男二人に求婚されるという、もはやナンセンスの極みの展開を迎え、二人から逃げ回って終了。 ラストページの欄外で、 「ご愛読ありがとう。こんどぼくは、全国無銭旅行にでかけます。 帰ってきたら、また、おもちろい漫画を書きますからね」とのメッセージが。 アレだ!『ガクエン退屈男』『学園番外地』を離脱し、片や連載終了、片や作家交代を呼んだ"例の件"だっ。

しかし、ギャグ調の全身トビラで始まって、最終回は描き込んだ横顔で終わる というパターンを前作に続いて踏襲。おそらくこの頃は本来この手の絵を志向されていた…という気がしないでもない。それを証拠にダイナミックプロから離脱して描いた1作目・『野ざらし同盟』では最初っから横顔トビラでのスタートなのだっ!


Nozarashi-Domei 野ざらし同盟

別冊少年ジャンプ 1971.1月号〜2月号
(単行本未収録)

なにが昭和元禄だ!

昭和戦国にしてやるぜ!

世直しだっ!

...ちょっと凄いですよ、この作品は。フラワーでネイチャーで政治浄化を唱える「運動家」をけちらし、アメリカンバイクぶっ飛ばしたバイオレンスな連中が暴力・殺戮やりたい放題!主人公が「女は素っ裸にしちまえー 男は半殺しだー!」というが早いか「世直し」を叫び、もう破壊の限り。彼らは「野ざらし族」と名付けられる。

メンツを潰された警視庁、
「ガキのクセしやがって我々を舐めとる!
二度とこんなバカが出てこんようぶっ殺せ!」

平和そうな街にまたもや現れた野ざらし族。が、それはワナだった!一斉に開いたビルの窓から機関銃が掃射される!野ざらしも市民も容赦なし!次々と蜂の巣になっていく。主人公もまた銃弾に倒れ下水道を逃げ回る。
「あ〜人を殺すのはいいけど 自分が死ぬのはいやだよ〜」
この上なく勝手なことを唱えながら足を引きずる主人公。追手が迫る...。(この辺り、『聖魔伝』でユンクが官憲に追われるシーンの原型に違いない)

…と、ナゼか地下水道でオッサンとオカンとおねーちゃんとガキ二人の謎の一家が鍋囲んでいる。匿ってくれと頼む主人公を有無を言わさず鍋の中に押し込み、追手の警官にとぼけつつ、拳銃だ、タマだ、警官のパンツだ、と鮮やかにスリとってしまう。無事見つからなかった主人公、コイツらは使える...と同盟結成を提案。今の世の中をメチャメチャにするコトを誓うのだった...。がその矢先、謎の一家の鍋の具になりそうになって、つづく。

『ガクエン退屈男』も大概暴力肯定作品としてはひどいが、早乙女門土にはかわい子ちゃんは殺せないし、身堂竜馬も怒らせない限り殺人狂にはならない。『極道兵器』の将造だってシマを守るという大義名分を持っている。だが、この主人公はただただ世の中ぶっこわしたいだけだ。人殺したいだけだ。

それは気分だ。クソくだらない、のんべんだらりとした毎日が退屈なだけなのだ。単に壮快感としての暴力だけを描いたこの作品、当時としてもかなりショッキングだったんではないだろか。いや、ひでえひでえ。おもしれえおもしれえ。
賢ちゃんらしいのが、やっぱり主人公の名前がないこと。


このイっちゃった目がまた、たまらないんですう。

2月号掲載の第2回目では、へらへら笑いながら、ヤクザの事務所全滅させたり。で、次号の予告は載ったんだけど、実際には全2回。打ち切りの原因が気になりますなあ…。

同時期、別冊少年ジャンプには創刊以来『ハレンチ学園』が再録されていたのだが、1月号にて大戦争が集結して第1部完結。他にも家庭用ロボットが子供たちに暴力の限りを尽くす、ジョージ秋山『イジワルE』、新人島田よしはる筆、女を殴り蹴り殺すシュミの男が、ある女を「ブス」と女をけなしたばっかりに首叩き斬られる『うちブスちがう』など、かなり寒々しい「新年ジャンボ企画号」だったりする。(しかも以上の作品は「ギャグマンガ」として掲載されている!)


Dr.KYOKEN Dr.狂賢

別冊少年ジャンプ 1971.4月号〜9月号
(単行本一部未収録)

コレが初回掲載・1971年4月号。表紙にもバッチリカラーで紹介されている。インサイダーなハナシでいささか気が引けるが、別冊ジャンプでの依頼内容は「永井豪的なモノを」というコトだったらしい。 なので、ヒロインが一応(笑)存在するところや、ドッカンバリバリなカンジはやはり豪ちゃんを見本にしたのか?かたや『別冊少年マガジン』(講談社)でも『100円病院』でも病院スラップスティックを描いていたり。当時ドラマ「白い巨塔」がヒットしてる折、病院ギャグということになったのかもしれない。(ただ、豪ちゃんの場合はイタイケな患者がどんなに横暴でひどい目にあうか…というハナシだが、賢ちゃんは主人公・狂賢がどんなにひどいコトして哂うか…という運びになっている点が違うが)

イイカゲンで、いじましくて、バイオレンスな医者・狂賢。ヤツの周りにはケガ人と病人と死人の山が築かれる...。 ラストは狂賢が腹をこわすも、「ココは病院だから大丈夫だ!」とかイイカゲンに言い放つワケだが、いつものヒトをヒトとも思わないバイオレンスな行状から誰も手当してくれず、ついには棺桶の中へ...というハナシ。墓前へ捧げられる日本酒が地中に滴り、しぶとく生きていた狂賢、「らっきー」と喜んで終わり。

ストーリーよりも、スラップスティックな動きある絵とコマ運びがいかにも賢ちゃんらしーぞ!

-単行本はこちら-

KCDX『石川賢初期自薦ギャグ傑作選荒野の出前もち』

講談社・2001年4月23日初版発行

まさかの単行本収録であったが、前6回中5回目のみ現代の視点では内容に問題があるため未収録。(ま、ざっくばらんに言うと精神病院の患者を街に出して…という話なのだが、致し方ないでしょ)


Gokuraku-Taishi ゴクラク大使

別冊少年ジャンプ 1972.1月新年号
(単行本未収録)

天国では今、深刻な資源・人口難が起こっていた。下界の人間どもが悪党ばかりになり、みんな地獄行きになってしまうのだ...。そこで神は大福・金子の二人組を派遣、なりふり構わず死人を連れてくることを命じた!

最後は地獄の悪魔と一騎打ち。ハルマゲドン起こして人類は絶滅、天国は人口大爆発...社会批判だネッ(笑)


Kouya-no-Demaemochi 荒野の出前もち

別冊少年ジャンプ 1972.5月号

コレまたアーリー賢ちゃんが好んだ、かけソバウエスタン。栃木県の荒野(賢ちゃんの故郷ってこーなのか?)に中華飯店をオープンした珍々とそのお父さん。

豪ちゃんのキャラにいる『チャンクン』を荒野に連れてきたような内容。来る客来る客木枯らし紋次郎だの強盗だの夜盗だので、その度珍々たちは料理の材料にしてしまう。最後はかっこよく栃木県警のお姉ちゃんが店で大立ち回り。でも金を持ってなかったからやっぱり料理してしまう(おい)。

-単行本はこちら-

KCDX『石川賢初期自薦ギャグ傑作選荒野の出前もち』

講談社・2001年4月23日初版発行


Jari-Deka ジャリ刑事

別冊少年ジャンプ 1972.8月号

警視庁が特別犯罪者のために編成した、「秘密デカ」!主人公ジャリ刑事もその一人だっ!

...冒頭秘密デカが狙う標的は、魚屋から逃げたドロボウネコ!...とほほ。

続いて狙うは、がま口マスクをかぶった、第一級の手配者(なのか?)「きんちゃく大王」。その闘いは...(想像通り「ぎゃふん」てカンジ)

-単行本はこちら-

KCDX『石川賢初期自薦ギャグ傑作選荒野の出前もち』

講談社・2001年4月23日初版発行


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