EARLY石川賢の部屋-1-
さてさて、『学園番外地』にて本名石川賢一デビューしたケン・イシカワだが、
ご多分に漏れずものすごい量の短編を描いている。
中でも、初期・1970年代初頭に描かれた作品群は荒削りながら
その後に続くケン・イシカワエキスがより濃厚に表れているっ!
集英社「ジャンプ」系
講談社「マガジン」系へ
小学館「サンデー」系へ
秋田書店「チャンピオン」系
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パワアコミックス(PC)『それゆけコンバット』 |
KCDX『石川賢初期自薦ギャグ傑作選荒野の出前もち』 |
なにが昭和元禄だ!
昭和戦国にしてやるぜ!
世直しだっ!
...ちょっと凄いですよ、この作品は。フラワーでネイチャーで政治浄化を唱える「運動家」をけちらし、アメリカンバイクぶっ飛ばしたバイオレンスな連中が暴力・殺戮やりたい放題!主人公が「女は素っ裸にしちまえー 男は半殺しだー!」というが早いか「世直し」を叫び、もう破壊の限り。彼らは「野ざらし族」と名付けられる。
メンツを潰された警視庁、
「ガキのクセしやがって我々を舐めとる!
二度とこんなバカが出てこんようぶっ殺せ!」
平和そうな街にまたもや現れた野ざらし族。が、それはワナだった!一斉に開いたビルの窓から機関銃が掃射される!野ざらしも市民も容赦なし!次々と蜂の巣になっていく。主人公もまた銃弾に倒れ下水道を逃げ回る。
「あ〜人を殺すのはいいけど 自分が死ぬのはいやだよ〜」
この上なく勝手なことを唱えながら足を引きずる主人公。追手が迫る...。(この辺り、『聖魔伝』でユンクが官憲に追われるシーンの原型に違いない)
…と、ナゼか地下水道でオッサンとオカンとおねーちゃんとガキ二人の謎の一家が鍋囲んでいる。匿ってくれと頼む主人公を有無を言わさず鍋の中に押し込み、追手の警官にとぼけつつ、拳銃だ、タマだ、警官のパンツだ、と鮮やかにスリとってしまう。無事見つからなかった主人公、コイツらは使える...と同盟結成を提案。今の世の中をメチャメチャにするコトを誓うのだった...。がその矢先、謎の一家の鍋の具になりそうになって、つづく。
『ガクエン退屈男』も大概暴力肯定作品としてはひどいが、早乙女門土にはかわい子ちゃんは殺せないし、身堂竜馬も怒らせない限り殺人狂にはならない。『極道兵器』の将造だってシマを守るという大義名分を持っている。だが、この主人公はただただ世の中ぶっこわしたいだけだ。人殺したいだけだ。
それは気分だ。クソくだらない、のんべんだらりとした毎日が退屈なだけなのだ。単に壮快感としての暴力だけを描いたこの作品、当時としてもかなりショッキングだったんではないだろか。いや、ひでえひでえ。おもしれえおもしれえ。
賢ちゃんらしいのが、やっぱり主人公の名前がないこと。
このイっちゃった目がまた、たまらないんですう。
2月号掲載の第2回目では、へらへら笑いながら、ヤクザの事務所全滅させたり。で、次号の予告は載ったんだけど、実際には全2回。打ち切りの原因が気になりますなあ…。
同時期、別冊少年ジャンプには創刊以来『ハレンチ学園』が再録されていたのだが、1月号にて大戦争が集結して第1部完結。他にも家庭用ロボットが子供たちに暴力の限りを尽くす、ジョージ秋山『イジワルE』、新人島田よしはる筆、女を殴り蹴り殺すシュミの男が、ある女を「ブス」と女をけなしたばっかりに首叩き斬られる『うちブスちがう』など、かなり寒々しい「新年ジャンボ企画号」だったりする。(しかも以上の作品は「ギャグマンガ」として掲載されている!)
コレが初回掲載・1971年4月号。表紙にもバッチリカラーで紹介されている。インサイダーなハナシでいささか気が引けるが、別冊ジャンプでの依頼内容は「永井豪的なモノを」というコトだったらしい。
なので、ヒロインが一応(笑)存在するところや、ドッカンバリバリなカンジはやはり豪ちゃんを見本にしたのか?かたや『別冊少年マガジン』(講談社)でも『100円病院』でも病院スラップスティックを描いていたり。当時ドラマ「白い巨塔」がヒットしてる折、病院ギャグということになったのかもしれない。(ただ、豪ちゃんの場合はイタイケな患者がどんなに横暴でひどい目にあうか…というハナシだが、賢ちゃんは主人公・狂賢がどんなにひどいコトして哂うか…という運びになっている点が違うが)
イイカゲンで、いじましくて、バイオレンスな医者・狂賢。ヤツの周りにはケガ人と病人と死人の山が築かれる...。
ラストは狂賢が腹をこわすも、「ココは病院だから大丈夫だ!」とかイイカゲンに言い放つワケだが、いつものヒトをヒトとも思わないバイオレンスな行状から誰も手当してくれず、ついには棺桶の中へ...というハナシ。墓前へ捧げられる日本酒が地中に滴り、しぶとく生きていた狂賢、「らっきー」と喜んで終わり。
ストーリーよりも、スラップスティックな動きある絵とコマ運びがいかにも賢ちゃんらしーぞ!
-単行本はこちら-
KCDX『石川賢初期自薦ギャグ傑作選荒野の出前もち』
講談社・2001年4月23日初版発行
まさかの単行本収録であったが、前6回中5回目のみ現代の視点では内容に問題があるため未収録。(ま、ざっくばらんに言うと精神病院の患者を街に出して…という話なのだが、致し方ないでしょ)
天国では今、深刻な資源・人口難が起こっていた。下界の人間どもが悪党ばかりになり、みんな地獄行きになってしまうのだ...。そこで神は大福・金子の二人組を派遣、なりふり構わず死人を連れてくることを命じた!
最後は地獄の悪魔と一騎打ち。ハルマゲドン起こして人類は絶滅、天国は人口大爆発...社会批判だネッ(笑)
コレまたアーリー賢ちゃんが好んだ、かけソバウエスタン。栃木県の荒野(賢ちゃんの故郷ってこーなのか?)に中華飯店をオープンした珍々とそのお父さん。
豪ちゃんのキャラにいる『チャンクン』を荒野に連れてきたような内容。来る客来る客木枯らし紋次郎だの強盗だの夜盗だので、その度珍々たちは料理の材料にしてしまう。最後はかっこよく栃木県警のお姉ちゃんが店で大立ち回り。でも金を持ってなかったからやっぱり料理してしまう(おい)。
-単行本はこちら-
KCDX『石川賢初期自薦ギャグ傑作選荒野の出前もち』
講談社・2001年4月23日初版発行
警視庁が特別犯罪者のために編成した、「秘密デカ」!主人公ジャリ刑事もその一人だっ!
...冒頭秘密デカが狙う標的は、魚屋から逃げたドロボウネコ!...とほほ。
続いて狙うは、がま口マスクをかぶった、第一級の手配者(なのか?)「きんちゃく大王」。その闘いは...(想像通り「ぎゃふん」てカンジ)
-単行本はこちら-
KCDX『石川賢初期自薦ギャグ傑作選荒野の出前もち』
講談社・2001年4月23日初版発行