歌姫たちの系譜 U

            リヒャルト・シュトラウス:歌劇『ばらの騎士』

U 第二次大戦前後に活躍した歌手たち
マリア・ライニング マリア・ライニング マリア・ライニング マリア・ライニング
◆ 元帥夫人:マリア・ライニング (S:1903-1991)
 現在入手できるCDで最も多くマルシャリンを歌っているのが、このライニング。しかも、ジョージ・セル、クレメンス・クラウス、エーリッヒ・クライバー、ハンス・クナッパーツブッシュという錚々たる指揮者達と録音を遺しています。なぜかオーケストラはすべてウィーン・フィルハーモニーかウィーン国立歌劇場管弦楽団ばかりです。

エレナ・ベルガー
◆ ゾフィー:エルナ・ベルガー  (S:1900-1990)
 シュトラウスから歌劇『アラベラ』の初演を任されたエルナ・ベルガーはゾフィーも得意とし、ウルスラークの元帥夫人、レミニッツのオクタヴィアンとよくトリオを組んでいます。1933&1938年にはコヴェントガーデン王立歌劇場にゾフィー役で出演、1949年にメトロポリタン歌劇場でデビューし(この公演はテレビ中継され、現在はCD化もされています。)、1954/55年のシーズンまで歌っています。なお、彼女の歌う姿は、ヴイヘルム・フルトヴェングラーが指揮するモーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』の映像で見ることができます(ツェルリーナ役)。

R.シュトラウスとC.クラウス  ウルスラークとC.クラウス  ウルスラーク

◆  ヴィクトリア・ウルスラーク (S:1894-1985) 
【左】 リヒャルト・シュトラウスと指揮者クレメンス・クラウスとのツー・ショット 
【中】 クレメンス・クラウスとその夫人ヴィクトリア・ウルスラーク 
【右】 ヴィクトリア・ウルスラーク ヴェルディの『ドン・カルロ』での衣装姿
 リヒャルト・シュトラウスの信任の厚かった指揮者クレメンス・クラウスはウィーン国立歌劇場で活躍。ウルスラークは1929年から1934年までウィーン国立歌劇場で女王として君臨。その後、1941年と1951-1952年に復帰。『アラベラ』、『カプリッチョ』、『ダフネ』などシュトラウスのオペラの主役を得意としました。1942年には夫君の指揮で『ばらの騎士』をレコード録音しています

マリア・チェボタリとティアナ・レムニッツ(1937年)  マリア・チェボタリ  マリア・チェボタリ

◆ マリア・チェボタリ (S:1910-1949)
 チェボタリは1944年、カール・ベームの指揮でリヒャルト・シュトラウスの『インテルメッツォ』のウィーン初演で伯爵令嬢を歌っています。
【3枚とも】  ゾフィー:マリア・チェボタリ(S:1910-1949)  ルーマニア出身
【左の右側】 オクタヴィアン:ティアナ・レムニッツ(S:1897-1994)  ドイツ出身

リゼ・スティーヴンズ  リゼ・スティーヴンズ  リゼ・スティーヴンズ

◆ リゼ・スティーヴンズのオクタヴィアン(Ms:1913-2013)
 リゼ・スティーヴンズはニューヨーク生まれ。『ばらの騎士』のウィーン初演でオクタヴィアンを歌ったマリー・グートハイル=ショーダーの弟子で1938年にメトロポリタン歌劇場デビューします。1949年メトロポリタン歌劇場でのオクタヴィアンの歌をCDで聴くことができます。映画『カーネギーホール』にデリラ役で出演しています。

      

【左】 リゼ・スティーヴンズ(Ms)
【中】 スティーヴンズのポ−トレートを画くロッテ・レーマン
【右】 元帥夫人:エリノア・スティーバー(S:1914-1990) 
    オクタヴィアン:リゼ・スティーヴンズ

      
◆ヤルミラ・ノヴォトナー(Ms:1907-1994)のオクタヴィアン

      
◆ エリナー・スティーバー(S:1914-1990)
【左】 ゾフィー:
【中】 元帥夫人: 1948年撮影
【右】 元帥夫人: 1949年撮影
 スティーバーはアメリカのウエスト・ヴァージニア出身。1940年12月7日メトロポリタン歌劇場にゾフィー役でデビューし、その後指揮者ブルーノ・ワルターの指導で『アラベラ』のアメリカ初演で歌います。1949年メトロポリタン歌劇場での元帥夫人の歌をCDで聴くことができます。

         

◆ ローザ・バンプトンとコネツニ姉妹
【左】 ローザ・バンプトン(S:1909-2007)
【中】 アニー・コネツニ(S:1902-1968)
【右】 ヒルデ・コネツニ(S:1905-1980)
 ローザ・バンプトンはメゾ・ソプラノからソプラノに転向し、主にメトロポリタン歌劇場で活躍し、その3オクターヴにわたる広い音域は有名でした。バッハのロ短調ミサのアルト・パートも楽々歌ったとか。人気ソプラノ歌手ビドゥ・サヤンと同時期にニューヨークで活躍し、アウトゥーロ・トスカニーニの指揮でドビュッシーの『選ばれし乙女』、レオポルド・ストコフスキーの指揮でシェーンベルクの『グレの歌』のアメリカ初演などに参加します。ブエノスアイレスのコロン劇場でマルシャリンをエーリッヒ・クライバーの指揮で歌った録音があります。

 第二次大戦の空襲で焼けたウィーン国立歌劇場は戦後アンデア・ウィーン劇場でその活動を再開させますが、最初の公演はハンス・クナッパーツブッシュの指揮でモーツァルトの歌劇『フィガロの結婚』を上演します。その時の伯爵夫人をヒルデ・コネツニが歌いました。またその時、スザンナはイルムガート・ゼーフリート、ケルビーノはセーナ・ユリナッチが歌いましたが、後に二人とも『ばらの騎士』を得意とするようになります。このコネツニ姉妹は共にワーグナーを歌う他、マルシャリンも得意としていました。


◆ ウィーン国立歌劇場で最も数多く指揮したハンス・クナッパーツブッシュ(400回以上)が『バラの騎士』を上演した記録の一部を以下に紹介します。この指揮者、日本ではワーグナーとブルックナーでしか知られていませんが、それだけではなかったのですね。

1936年4月22日 ロッテ・レーマン(元)/エヴァ・ハドラヴォーヴァ(オク)/エリザベス・シューマン(ゾ)
1936年9月14日 アニー・コネツニ(元)/エラ・フレッシュ(オク)/エリザベス・シューマン(ゾ)
1937年6月13日 ヒルデ・コネツニ(元)/マルギット・ボーカー(オク)/エリザベス・シューマン(ゾ)
1937年7月27日 ロッテ・レーマン(元)/ヤルミナ・ノヴォトナ(オク)/エステル・レーティ(ゾ){ザルツブルグ}
1937年8月 6日 ヒルデ・コネツニ(元)/マルギット・ボーカー(オク)/エステル・レーティ(ゾ){ザルツブルグ}
1937年8月 4日 アニー・コネツニ(元)/マルタ・ロース(オク)/エリザベス・ルトガー(ゾ){ザルツブルグ}
1937年8月10日 アニー・コネツニ(元)/マルタ・ロース(オク)/エリザベス・ルトガー(ゾ){ザルツブルグ}
1937年8月15日 アニー・コネツニ(元)/マルタ・ロース(オク)/エステル・レーティ(ゾ){ザルツブルグ}

1937年8月21日 アニー・コネツニ(元)/マルタ・ロース(オク)/エステル・レーティ(ゾ){ザルツブルグ}  


                          
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