中国帝王図

中国帝王図

 「中国一百后妃図」という本がある。中国で出版されたもので、歴代中国皇帝のお后を、簡単な文章と切り絵の綺麗なイラストで紹介した本だ。僕はこの本を、旅行で行った広州のスワンホテルにある本屋で見て、ひと目で気に入って買ってしまった。

 皇帝100人を取り上げた「中国一百帝王図」や、官女、坊さん、家臣など、他にもいっぱいシリーズがあったけど、流石に坊主はつまらないので、皇帝と官女を一緒に買って、広州から香港へと向かう列車の中で楽しく読んだ。

 今日、本屋で徳間書店から「中国帝王図」(2600円)という本が出版されていたのを見て、「徳間が版権を取って翻訳したのかな」とまず思った。見開きで左に中国皇帝のイラスト、右に皇帝に関する文章を載せる方式が、「中国一百帝王図」とまったく同じだったからだ。

 文章のページの右端に、縦に短冊を入れて皇帝の名を記し、短冊の中程に、左ページの皇帝のイラストの、顔の部分だけをアップにして張り付ける手法も同じ。「中国一百帝王図」が手元になく、比べようがなかったので、翻訳したものだと一瞬信じた。

 しかし徳間の「中国帝王図」には、どこにも翻訳とは書かれていなかった。イラストは皇なつきさんが描き、文章は田中芳樹さん、井上裕美子さん、狩野あざみさん、赤坂好美さんらが書いている。

 家に帰って、「中国一百帝王図」と「中国帝王図」を比べてみた。イラストはまったく違う。皇さんのイラストは、皇帝たちが皆、耽美風にかっこよく描かれている。正直「中国一百帝王図」より好きなくらいだ。構図も絵の細かさも違う。冠の飾りや顔の表情が、やや似ているのも散見されたが、歴史的に正しい装いなのかは別にして、総じて皇さんの方がよく描けている。

 文章も、簡単な伝記が中心となるので、生まれて育って皇帝になって死んでいくという、おおまかな構成が似ているが、だいたいにおいて、「中国一百帝王図」より細かく記されている。

 絵や文章を見る限りにおいては、どうも盗作とはいえないらしい。ただ、基礎となったアイディアは中国のものだ。ちなみに「中国一百帝王図」は、87年に第1版が出ている。オリジナルをもとに、より素晴らしいものを作ったからいいのか。アイディアに著作権はないのか。あるいは徳間が、表には出さないにしても、何らかの形で中国の発行元(新世紀出版社、広東省)の了解を得て、出版したものかもしれない。詳しいことはわからないまでも、何となく釈然としないものが残る。



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