高松伸
展覧会名:高松伸展
会場:東京ステーションギャラリー
日時:1995年5月5日
入場料:1000円



 東京ステーションギャラリーで建築家の展覧会を見たのは、数年前の磯崎新に続いて2度目になる。画家や彫刻家とは違って、作品の大きさがケタはずれの建築家の展覧会には、いったい何が展示されているのか疑問に思われる方も多かろう。説明すれば、やはりスケッチや模型やらが中心になる。

 模型を見て面白いのかと言われれば面白くないとしか答えられないが、それでも見に行く理由は、建築家の思考の過程が、こうした展示物からひしひしと伝わってくるからに他ならない。完成した作品からは、決してうかがい知ることのできない建築家の逡巡が、スケッチや、いくつもいくつも作られた模型から、伝わってくるのである。

 高松伸は、今キリンビールの本社を建てている。まもなく完成するその建物は、高い柱に挟まれた入り口を持った、摩天楼のような外観の建物なのだが、塔の数が最初と途中と最後では違ってくる。エンパイア・ステート・ビルのようであったり、東京都庁のようであったりと、案によって形状が変わるし、入り口の形状もまた、模型ごとに違ってくる。それはたとえば依頼主の要望を受け入れた結果であったり、あるいは本人の考え方の変化が具現化されたものであったりするのだが、素人目には何故、変えなくてはいけないのかという理由が解らない。

 絵画だったらあの赤の色の持つ意味は、解らないなりに納得できる理由がありそうなものだと推測できるのだが、こと建築になると、さっぱり見当がつかないのである。それが見なくてはいけないという動機につながるのである。


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