ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊がんばる

 ロバート・アスプリンの「銀河おさわがせ中隊」やら、hideが主題歌を唄ったにも関わらず放映版のパッケージが発売されず、今や幻と化しているテレビアニメーション「AWOL」やらを挙げるまでもなく、一癖も二癖もある連中をとりまとめ鍛え上げ、いっぱしの部隊に仕立て上げては強大な敵に挑むという、そんな物語の例は枚挙に暇がない。

 なお且つそのどれもが面白く、読む人たちを感動させるのは、圧倒的なエリートたちによる完全無欠の戦いぶりを憧憬とともに楽しむのとはまた違った、自分にもしかしたら眠っているかもしれない才能が引き出され、認められる可能性をそこに見せれくれるからだろう。

 アニメ化されて本編もさらに売上を伸ばしたヤマグチノボルの「ゼロの使い魔」(MF文庫J)も、魔力ゼロと嘲笑されていた少女とその訳の分からない使い魔が、寡黙な少女に恋愛好きな少女にプライドの高い少年と連れだって最強のチームを組む話。ヒットの理由のひとつにはそんな設定があるのかもしれない。

 そのヤマグチノボルの最新作「ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊がんばる」(原作・島田フミカネ&ProjektK角川スニーカー文庫、571円)は、タイトルどおりに”いらん子”と呼ばれ、蔑まれている少女たちがチームを組んで、最強の敵を相手に闘いを挑むという物語。読むまでもなくその面白さが伝わってくるが、読めば想像を上回る面白さに、本を持つ手が震えて来る。

 舞台となっているパラレルワールドの地球では、魔法の使える女の子たちが選ばれて軍人になっては、いずこともなくわき上がって来た正体不明の世界の敵・ネウロイを相手に闘っていた。北の果てにある、現実世界ではフィンランドに当たる国・スオムスにはまだネウロイ来襲はなかったが、隣国で現世ではドイツにあたるカールスランド国境までネウロイの手が伸び戦闘に。もう1歩という事態を受けてスオムスでは援軍を各国に依頼した。

 その世界で戦いに臨んでいるのは魔力を持って生まれた少女たち。ブーツのような飛行脚を履いて空へと舞い上がり、手にした銃器や剣で飛来するネウロイを相手に空中戦を挑んでいた。スオムスの呼びかけに集まって来たのも、当然ならが少女たちばかり。それも各国が誇る精鋭たち……というのは真っ赤な嘘で、いずれ劣らぬ問題児ばかりだったからたまらない。

 英国ならぬブリタニアからは優秀ながらも命令違反の度が過ぎるビューリング。アメリカならぬリベリオンからはナイスバディに楽天的な性格のテキサス娘にして、空を飛べば着艦に失敗し見方の武器をすべて破壊してしまうというキャサリン嬢。ドイツならぬカールスラントからは寡黙で本好きで発明も得意というウルスラちゃんと、癖ありまくりな奴らばかりが、原隊を追い出されるように派遣されて来た。

 そして我らが日本ならぬ扶桑国からも、巨大な機銃を抱えて空に上がれば見方を撃ってしまうドジっ娘の迫水ハルカが選ばれた。そしてもう1人、彼女だけは紛うことなくエースと呼ばれ、撃墜数でも扶桑国におけるトップを記録していた穴拭智子が、どういう訳か仲間の推薦を受けて選ばれた。

 当然にして智子はどうして自分がと激怒。それでも命令だからと出向いたオスムスでも見た、同僚たちのやる気のなさにさらに激怒し、訓練を施し更正させようとして果たせず諦め、彼女たちにはただ見ていろ、手を出すなと言ってたった1人で闘いに臨むようになる。そこに大きな落とし穴が待ち受けていた。

 単機で飛んで遊撃するネウロイもいるにはいるが、それらはしょせんは蚊トンボに過ぎない。だから智子が1人でも相手ができた。しかし現実世界で高々度を飛ぶ「B−29」に戦闘機では歯がたたなかったように、巨大な爆撃機として現れる本体のネウロイを相手にしては、手に剣を持つだけの智子1人ではまるで歯が立たない。

 自分の力だけを信じ、恒に単独での戦闘を好んだ、そんな智子の欠点を見抜いてたからこそ親友は智子を安全なスオムスに推薦した。そんな配慮も今となっては水の泡。立ちふさがる巨大な敵を相手に智子は、絶体絶命の危機を迎える。智子は果たして仲間を得られるのか。そして巨大な敵を相手に戦えるのか。そもそもネウロイとはいったい何者なのか。謎と期待を持たせて1巻は終わる。

 続く展開では”いらん子中隊”が、メンバーのそれぞれが持つ突出した能力を重ね合わせ、1つの強力な部隊となってネウロイに挑みこれを倒していくことになるのだろう。そして少女たちの成長に合わせるかのように、ネウロイもより強力な兵器を擁して現れるのだろう。過酷な運命に挑みそして討ち果たしていく様。楽しめそうだ。


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