女の園の星

 個人としては前年の『夢中さ、きみに』(KADOKAWA)に続く2度目のマンガ大賞ノミネートとなるが、今回はまったく別の作品で、それも2作品でノミネートされているという点で、和山やまというマンガ家への支持の広がりが見て取れる。

 その2作、『女の園の星』(祥伝社、680円)と『カラオケ行こ!』(KADOKAWA)からどちらをより強くマンガ大賞に推したいかと考えた時に、あり得ないけれどもあり得そうで、そしてあり得そうだけれどあり得ないようなボーダーを、巧みに拾い上げて描いてのけた『女の園の星』の方が、推して自分が嬉しい気持ちになれると考えた。

 女子校で教師をしている星が、生徒たちの描く日報に添えられた言葉からしりとりを類推するエピソードや、上の教室で教師が預けていった犬を飼っていたのが、ベランダを乗り越えて落ちて来てぶら下がるというエピソードを読んで、経験からあるあるとは言えないけれど、想像からあっても良いかもと思えてしまい、そしてあったら良いなと思ってしまう。

 女子生徒が事業中も描いていたマンガの制作相談に星がのるエピソードも、あるかもしれないけれど教師がマンガを教えるなんてことがあるのかという興味が浮かぶ。そのマンガがどうにもこなれていなくて、登場人物がすぐに死んでしまうシュールさにあふれているということへのおかしみが、笑いを誘って作品へと気持ちを向けさせる。

 星先生のことなら何でも知っていると豪語する女子生徒が、観察の果てに得た星の誕生日だという情報を頼りに、風邪で出遅れながらも午後に学校へと出向き、こともあろうの職員室へとクラッカーのバズーカを抱えていく下りなど、実際にあれば停学だって食らいそうな無茶を、女子生徒がやってしまうというシチュエーションのおかしさに引きずり込まれる。あるいは女子校ならではのハチャメチャさが、こうした状況を実際に起こさせているかもしれないという興味も浮かぶ。どうなんだろう。

 合唱部の少年がヤクザにカラオケ指導を頼まれる「カラオケ行こ!」も、日常と大きくは外れていないものの、どことなくおかしさを感じさせるシチュエーションを巧みに選んで描いている点で共通。どちらも遜色はないけれど、見たことのない女の園の見られたら楽しい世界を描いてくれた『女の園の星』を挙げよう。


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