縮刷版2023年3月上旬号


【3月10日】 永野護さんの「ファイブスター物語」最新刊が発売されたので読んだけれども状況がやっぱりあんまりつかめない。マグダルとデプレというダグラス・カイエンとヤーボ・ビートの子供たちが離ればなれになってしまって随分と経ってようやく2人の所在が分かり始めたうちのマグダルは、どこかの炭鉱めいたところに売り飛ばされては明晰な頭脳を発揮し詩女とも呼ばれる存在になって着た感じ。デプレの方はデルタベルンが確保してアマテラスの下でしっかりと成長している中、マキシというカイエンの子をミースが勝手に作ってしまった子供と出会う。

 これがまた往年のデコース・ワイズメルやマドラあたりに並んでピーキーな性格で、箍が外れると気に入らない相手の腕とか平気で引きちぎったりするから手がつけられない。そばにミース・バランシェという名医がいたからくっついたけれども普通だったら死んでいるよなあ。相手が騎士級だと殺されても文句はいえない世界で庶民がいったいどう暮らしているのかが、とにかく異常に強い奴らばかりが描かれるこのシリーズだとちょっと分からないのだった。庶民に見えても実は……ってな存在も多いし。

 そんなマキシだったけれどもアマテラスじきじきに地獄めいたところに叩き込まれて殺され生き返らせられるような仕打ちをうけてとりあえず改心したのかな。なぜかずっと助走していたりするのが可愛いけれど、そんなマキシもその後に剣聖の称号をもらいどんどんと成長していくことになるんだったっけ。歴史は決まっていても刻まれるのはじっくりの「ファイブスター物語」が終わる時は来るのか、今世紀中に。ファンは見守るしかないのだった。そしてそのあいだにモーターヘッドがゴティックメードに変わったような大変革も行われるのだろうなあ。新潟で永野さんが何を言うのかに注目だ。

 東京アニメアワードフェスティバル2023が始まったので池袋へ。あんまり取材が来ていないのは毎度のことで、とりあえず学生CGコンテンストに関連したトークを聞いて驚いたのが「CG」がもはやコンピューターグラフィックスではなく「カレッジジーニアス」という意味合いに変わっていたこと。かつてはCGをツールとして使いこなして作品を生み出した人に向けたコンテストだったんだけれど、今は何にでもデジタルが使われる中であえてCGだけを選ぶことの不可能さと無意味さを感じて変えたのだろう。AMDがマルチメディアタイトル制作者連盟からデジタルメディア協会となてアワードもマルチメディアに限らないエンターテインメント全般になったのと似ているかも。

 会場には「駐車場でアメを食べたよ」とか「ポプテピピック」なんかの作品で知られる関口和希さんと、それから「サカナ島胃袋三腸目」が学生部門で賞をとったらしい若林萌さんが来場してあれやこれや話してくれた。若林さんは関口さんのファンでこれが会うのが初対面だとか。同じ東京藝大院映像学科アニメーション専攻を終了していても会わないものなんだなあ。関口さんは次にコマ撮りでアニメーションを作りたいって話してて、人形を動かすのはしんどいのでコマ撮りだとかクレイだとかを試してみたいと話してたけどどこから出るかは不明。WIT STUDIOとか支援すればいいのに、せっかくストップモーション・アニメーションのスタジオを作ったんだから。

 功労賞の展示もあってスタジオジブリの創設に関わった原徹さん関係だと「となりのトトロ」と「火垂るの墓」のシナリオの準備稿だとかAR台本なんかが飾って合った。あと清川元夢さんはガラスの灰皿とライターとそれからパイプとか。良い趣味をしているなあ。宮武一貴さんも受賞していてマクロスの大きな絵とか始めて描いたイラストとか。「交響詩篇エウレカセブン」の設定がなんかが置いてあった。撮影禁止なので見るだけだけれどそれでもいろいろ学べる過去の偉人たちの仕事ぶり。去年は恟コ三さんが受賞されて表彰式に来られたけれど清川さんはなくなっておられるので、その業績を称えつつ表彰式を迎えたい。


【3月9日】 WHO(世界保健機構)西太平洋地域事務局の事務局長をしていた葛西健という人が解任されたとの方。職員に対する差別的な言動がかねてから問題になっていて、半年くらい前だかに職務停止になっていたのに続いての解任で、つまりは職員からの告発がその通りだったってことになる。フィリピンに拠点があって働いている人にもきっと多くいるだろうフィリピンや東南アジアの人たちを下に見るような言動をぶちまけ中国には媚び新型コロナウイルス感染症に関する情報を日本政府に漏洩したといったことが重なっては、確かに任せておける状況ではなさそう。

 日本人が国連という明石康人道問題担当事務次長や緒方貞子国連難民高等弁務官といった世界からも尊敬される人が多くいただけにちょっと恥ずかしい。今でも中満泉さんが国連事務次長の軍縮担当上級代表を務めていたりして頑張っているのに水を差しかねないだけに、出身母体となった日本の厚生労働省も含めて人事を洗い直してどうしてこういう人が送り出されては出世したのか、そして日本政府とどなやりとりがあったのかを空かして潔癖さを改めて表明して欲しいもの。それにしてもこの葛西健という人、すっかりおじさん顔なんだけれど年は僕より2カ月若いんだよなあ。それであの老け顔ということは僕もそんな風に見られているってことなのかなあ。若いつもりでもすっかりアラカン。

 こちらも僕と同じくらいの木村貴宏さんというアニメーターが死去。「コードギアス 反逆のルルーシュ」のキャラクターデザインで有名すぎるくらいに有名で、他にも「ベターマン」とかいろいろ手掛けて独特のスタイリッシュにクールで可愛いキャラクターをいっぱい世に送り出してくれた。アニメーターとしてもいろいろ活躍しておられたようで、最近でも「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の作画監督なんかを手掛けておられてギギ・アンダルシアの可愛らしさなんかはきっと木村さんのおかげなのかもと思ったりもしたけれど、そんな「ハサウェイ」の続編が出てくる前に亡くなられてどうなってしまったのか、ちょっと気になって仕方がない。

 原発性全身性アミロイドーシスという病気だそうで少し前に亡くなったアントニオ猪木さんもやっぱり同じ病気で亡くなられているから決して若いからといってかかる訳でもなく、かといって年配だけがかかる訳でもなく誰にでも起こりえる病気と分かってそれならどういう人が罹るのかが気になってしまった。遺伝子的なものなんだろうか。他の外的要因なんだろうか。骨髄からタンパク質が出てしまってそれが内臓なんかについて不全を起こすと行った症状。だんだんと弱っていく中で手掛けられた仕事があるなら、それが世に出てくれば心から感謝をして拝見したい。ともあれお疲れ様でした。本当にお疲れ様でした。

 そして始まった野球のワールド・ベースボール・クラシックは大谷翔平選手が投手として投げては4回を無失点に抑えつつ3番バッターとして打席に立ってはフォアボールで出塁したりヒットで追加点をあげたりと投打に大活躍。ひとり野球とまでは言えないにしてもエースで主軸という少年野球そのままの活躍ぶりをプロ中のプロが集まる代表チームでも見せてしまってやっぱりただ者ではないといった様を見せてくれた。凄いものだ。大リーグから来たヌートバー選手も出塁したりとこちらも活躍。ここで頑張れば本国にも届いて活躍できるし日本のプロ野球からも声がかかるかもしれないし。それよりやっぱり選んでくれた日本代表への感謝もあるのかもしれない。

 どこで出ても代表として埃をもって活躍する。それは中国代表として出場した真砂雄介選手もいっしょか。ソフトバンクを放出されてノンプロの日立製作所に入ったばかりでさあこれからという時に、中国代表に呼ばれて辞退も考えただろうけれども世界が目にする大会で活躍することが、次につながるならやってみたいと思って当然。そしてルーツを持つ中国の代表として活躍することで開ける道もあると思えばここで頑張る意味もあるってものだろう。ヌートバー選手と同様にいいところを見せて欲しいなあ。代表といえばサッカーのU−20も試合をしていてその中に諏訪間とう名の選手がいてどこのプロレスラーかと思ったらそのプロレスラー、諏訪魔の息子さんだった。父親もデカいけど子もデカい。日本の壁となって向かってくる敵をバックドロップだ。いやそれは反則か。.


【3月8日】 ラストアイドルというアイドルユニットがあったそうで、秋元康さんのプロデュースの元で厳しい選抜を経て生き残ったものだけがデビューといったような趣向でテレビ番組だか何かが作られていたらしいけれど、まったく知らない間にそんなことが行われては最終的に50人とかいった巨大なユニットとして登場したものの世は新型コロナウイルス感染症が蔓延し、ろくすっぽ活動ができないまま解散へと至ってしまったある意味で悲劇のアイドルユニットだった。

 ファンも大勢いたりして解散も惜しまれたけれどもそれでも次へと続く道を応援していこうと思っていたら、同じ名前を持ったラストアイドルというユニットが、新章という言葉をくっつけて再始動したというからファンは驚いたし、当の元メンバーたちもどうなっているんだって驚き慌てて憤っている感じ。自分たちだって活動したくてもできない状況の中、泣く泣く解散といった道を辿ったにもかかわらず、そんな状況が戻ったらまるで別の面々が、同じ名前で復活するというからこれはやっぱり憤るだろう。だったらどうして細々とでも続けては活動再開を待ってくれなかったんだって。

 解散からの再始動の方が一新されて話題性もあるといった判断が下されたとも言えるけれど、それなりにファンもついていたメンバーの方がそこから一気に大ブレイクへと持って行ける可能性も少なくない。それでも新しいメンバーを選んだのが秋元康さん当人というよりはまるで別のアイドルユニットなんかをプロデュースしている人が、権利を借りるような形で再始動させたからいろいろと気になるところもあるんだろう。名前を売り渡して金儲けに使わせているといったような憶測も浮かぶ中で、果たして再始動してもどれだけのファンから支持を得られるのか。流石にそこまで無節操ではないだろう。騒動になればそれだけ賑わうといった悪名は無名に勝る的スタンスを、夢を見せるアイドルの世界でやって通じるものなのか。引き下げて別の名前にするのか。ちょっと見ていきたい。

 放送法をめぐる総務省官僚の残した文書が捏造されている訳がないのは官僚の記録に対する意識の持ちようからも明かで、そこに虚実を混ぜるなんてことは規範的にも心理的にも許されるはずがないと思っているから、正しくそのとおりに記述しては内部で記録していたはずだろう。それが公開されてちょっと拙いことが書いてあると思った大臣が、いやいやそんなことは言ってないぞこれは官僚が捏造したものだなんて言うのは、そうした何事も規範と心情に即して真っ当過ぎるくらいに真っ直ぐに仕事をしている全官僚への大いなる侮辱であるし、そうやって官僚が公文書を積み上げて国の対面を守っているのを、ぶち壊す革命的で反体制的な仕草に他ならない。

 それを国民の代表たる国会議員であり官僚を束ねる大臣が言ってしまうんだからもはや自家撞着も過ぎるというか支離滅裂。言っててこれはさすがに拙いんじゃないかと思うのが人間として普通の思考なんだけれど、自分の身が大事なのか他のすべては間違っていても自分だけは正しいと言った態度を曲げず貫き通すその様子を、見てこれはちょっとヤバいと与党が動く時が来ているような気がしてならない。もはや国の根幹を自ら破壊する行為な訳だから。これが少し前だったらいっしょになってかばってあげて政治は正しく官僚は間違っているものとされ、そして間違えた官僚が責任を取り物理的に詰め腹を切らされることも起きたかもしれないけれど、そういう状況ではない現在、誰が詰め腹を切るのか。誰かがちゃんと詰め腹を切るのか。それがあって始めてこの国は世界に誇れる国になるのだ。

 「シン・エヴァンゲリオン劇場版」のBlu−rayが発売になったので注文してあったゲーマーズに行ったもののまだ配達されていないとか。発売日どころか前日にだってフライングして売られていたって不思議じゃないものが、届いていないというこの状況にゲーマーズの調達から出荷といった機能が弱体化しているような雰囲気を感じ取る。秋葉原の店も商品が少なくなって映像ソフトなんてほとんど売ってない感じ。同じグループのアニメイトの方は池袋のお店が賑わっているようだけれど、女性向けの店になってもはや男性オタクはどこで何を買っているのか分からなくなっている。そうした状況で店舗のオペレーションにもあまり力を入れてないみたい。はたしていつ届くのか。まあソフト事態はキンクリ堂からもサントラCDほしさに取り寄せたので、ゲーマーズはそのうち入ってくれば良いんだけれど。マリのタペストリーだけちゃんと付いていれば。それがなければ激怒必至。どうなるか。


【3月7日】 種子島から「H3」のロケットが打ち上げられた瞬間に、「のりものニュース」あたりが「『成功だ!』22年ぶりの新型次世代国産ロケット『H3』1号機 3/7打ち上げ」って見出しでニュースを配信したものの、すぐに2段目の点火がうまく行かずこれは失敗かもという空気が漂った。いち早く失敗と伝えて突っ込まれたメディアもあったけれど、この「成功!」も逆の意味で気が早かったと言えそう。瞬間を捉えて是か非かを決断する難しさ。メディアはもうちょっとゆっくりで良い気もするけど瞬間のアクセスが銭になるからやめられないのかな。ちなみののりものニュースは、失敗が分かるや否や見だしも「『無念!』22年ぶりの新型次世代国産ロケット『H3』1号機 3/7打ち上げ失敗 破壊へ」に差し替えやがった。決して引き下がらなかった共同通信よりは実態に合わせるだけまだ良いのかな。そういう身軽さはネットメディアの良さだけど、同時に怖さでもあるなあ。

 ジブリパークに飾ってある人形に対して来場者がエロい行為をした写真をSNSで拡散して、運営が何とかしないのかと問い合わせがいっぱい出てとりあえずノーコメントとしたという事態について思うこと。その行為が公共の場にある建造物の損壊につながるものなら法律に抵触するから注意できるし、騒いで他の来場者の迷惑になっているなら自粛を呼びかけられるけれど、それ自体をわいせつだとか言って取り締まることはできないし、それが実際のわいせつ行為を助長するといっても実際に行われたらそれはそれで犯罪であって、非実在の偶像に対する行為を法に問うことはいろいろと表現の問題に及んでくるので慎重にいかないといけない気もする。

 そうした諸々の思考をすっ飛ばしてわいせつ行為を助長するから取り締まれと言われても返答に迷うだろうなあと思うのだ。長されて実在の存在に行為が及んで被害者が出て悲しい思いをするのはもちろん避けなくてはならないので、そうならないために元の行為をどうにか取り締まるのだとするなら、それは巡回による注意の強化なり行為に及んだ者への社会的な嘲笑を通しての自重化であって、そういった性善説的な空気が広がってくれれば良い。とはいえ一方に、悪事であっても目立てば価値みたいな意識をこそ助長するメディアが発達し、それらを喜ぶ観衆を育成しているような状況もあってなかなか難しい。どうしたものか。ドカベンのケツバットはどうなったんだっけ。

 文春オンラインに昨今のテレビアニメーションがスケジュールの逼迫でボロボロと落ちていることに関する記事が出て、読んだ業界の人から総スカンな声が上がっていたりする。趣旨としてはデジタルでの作画が少ないため、もっとデジタルに移行しないと世界の超リュにおいつけないよといった話みたいなんだけれど、でも紙に描こうが液タブ使おうが上手くない原画は上手くない訳で、そうした技量のない人でも昨今の人手不足の中で原画に起用されることになった関係で、二原だとか道仕にかかる負担は増してパンク気味なところにコロナと春節が来たって話なんじゃないかなあ。

 敷衍すれば動画にもニ原にも人が足りず中国に出さざるを得ない背景があって、それはすなわち業界が抱えている構造的な問題から賃金が安くて業界に入ってきてくれる人が限られることと、加えて昨今のアニメブームもあって作品数が減らず人が全然足りなくなっているといったことがある。すなわち複合的な問題を単純に現場のデジタル化の後れにしてしまったから勘違いだといったことを言われてしまったんだろう。書いた人がアニメ業かの経験もあって取材もしていて結構まともなことを書くジャーナリストで学校の先生でもあっただけに、どうしてそうなってしまったかが分からない。あるいは何か編集の側に思惑でもあったのか。謎めく。

 評判だけれどまだ観られていない「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」だけれど大人気だと聞いた頃からそのタイトルの意味がまるで分からないのでこれで観に行こうと思う人は少ないんじゃないかと言った気がして仕方がない。SF者はマルチバースだと言われればもう十分なんだけれど普通の人はそれが「スパイダーマン:スパイダーバース」だとかMCUだとかに使われた概念だと言われたところでさっぱりだろう。なのでここはやっぱり昔の洋画みたいに聞いてすぐに分かる邦題をつけるべきだった。例えば「どれもこれもどこもかしこもいきなりぶわっと」とか。いやそれも分からないなら「撃殺! 多元宇宙拳!!」とか。サブタイトルに「とんでるおばちゃん」とかくっつけて。


【3月6日】 「牛に轢かれて善光寺参り」とは平安時代に道を歩いていて牛車に轢かれた男が載っていた貴族を追いかけ善光寺まで行ってお礼参りをしたという故事によるものではないことくらいは知っている。という訳で朝から長野に行って善光寺へ。距離があるのでバスに乗って大門で降りてそこから歩いて山門をくぐり本堂に参って初の善光寺参りを終える。牛はいないのかなと見わたしたら休憩所に鎮座していた。そんなに大きくなかったけれどもこれが唯一? 気になった。
B  お寺といえば有名でもなかなか行ったことがないお寺っていっぱいあって例えば延暦寺なんて京都に行っても寄ったことがない。成田山だって成田までは行っても寄ったことがないし築地本願寺だって庭くらいまでしか入ったことがない。名古屋にいたときも大須観音は行っても笠寺観音には行ったことがなかったなあ。棲んでる場所でもそれだけ行ったことがないお寺があるんだから全国を見わたせばその数はいくらでもありそう。善光寺は長野自体になかなか行かないのでこれまで寄ったことがなかっただけに、今回行けて一生の思い出にはなったかもしれない。

 山門まで続く道とか浅草の浅草寺の仲見世みたいにキラキラしているかというとそうでもなくって落ち着いた店構えであのスターバックスまでもが瀟洒な作りになっていた。山門だとか本堂だとかを見物するコースもあったけれど、そこまですることはないと遠慮。隣に東山魁夷美術館もあってそちらの見物もしたい気はあったけれど、戻って移動しなくちゃいけなかったので適当な時間に引き返す。実は1時間間違えていてもっとゆっくりする時間があったんだけれど、珍しく気温が高くて暑かったので歩き回って体力を消耗する可能性もあっただけに遠慮して良かったのかもしれない。

 帰りはバスを使わず歩いて長野駅へ。途中でお昼ご飯でもとおそば屋さんとか眺めたもののこれという店が見当たらない中で納豆カレー発祥の店という看板をみかけて長野駅に近いところにあった山小屋というカレー屋さんに入る。後で調べたら結構な有名店らしくいろいろな取材記事がネットに挙がってた。今のマスターは3代目らしいけれど店の中にいたのがその人っぽい。店の名前に相応しいウッディな作りで落ち着いていてなるほどこれは老舗の有名店だって印象。午後から取材だったので納豆カレーは遠慮してチキンカレーに白身フライをトッピングしたのを戴く。サラダにスープにアイスのデザートにコーヒーまで付くゴージャスさ。なるほどこれはリピーターも増えるはずだと納豆……じゃなかった納得する。次また行く機会があったら今度こそは納豆カレーを食べてみよう。

 長野電鉄に乗って信州中野という町までいってちょっと取材。長野市から40分くらいかかる場所だけにどれだけ寂れてるんだろうかと思ったら、駅前にはモダンな住宅が並んで東京郊外のベッドタウンと変わらない雰囲気だった。どういう人が住んでいるんだろう。長野市へと通勤する人たちだろうか。天気が良くて気温が高かったこともあってとても住みやすそうな感じ。都会からUターンなりIターンなりしてテレワークだのわーケーションだのに移る人たちが暮らすのも良さそうな気がして取材した不動産系の会社の人に尋ねたら、そういう人も結構増えているとのことだった。リノベーションした家を買えばだいたい2000万円弱。ちょっと良いなあ。考えちゃうなあ。

 2時間ほどで取材を終えて40分くらいかけて長野へと戻って新幹線のキップを買い求め、それから駅弁でもと探してこれも長野では有名店らしい明治亭ってところのソースカツ丼弁当を買って帰る。ソースカツ丼といえば福井にもあるし新潟にもあったりするらしいけれど、明治亭はソースも秘伝のものらしく家に帰って食べたらさっぱりとしてそれでいてしっかり味もあってとても美味しかった。また食べたいけれどこればっかりは長野に行くしかないのでその時に今度はひれカツ丼にも挑戦したい。信州そばはまあ、松本でもどこでも食べられそうなのでその時に。小諸そばならそこらじゅうにあるし。何が小諸なのかはよく知らない。


【3月5日】 恵比寿へと出かけて多摩美術大学グラフィックデザイン科ことタマグラの卒業制作展2023でアニメーションのプログラムをAからDまで観る。Aだと木戸口未歩「HOTTEST TOKYO」が暑さにアイスを買いに出る青年を描いて絵が巧く暑さに歪み溶ける表現が巧くストーリーも良かった。プロになるのかな。藤原カナデさん「繭」も巧い絵を動かして抑圧され気味な少女のある種の脱皮を描いていた。木村優花さん「The only one」はストップモーションアニメーションで気移りしてもやっぱりこの人が1番なストーリーを描いてキュンとさせてくれた。大和田華加さん「Springstome」はインパクトがあった。

 城所晴さん「異星人の冬」はレイアウトも絵も動きも物語も興味をそそられた。雪の山に落ちている円盤の下敷きになったぬいぐるみを引っ張りだそうとして出せず亡く女性。なぐさめつつ家に帰ると異星人が非難してる髭の男性。不思議なことが起こっているのにどこか物悲しくてしんみりとする。良作。Bではりたお「DEMO no.00」がボカロMV的で魅せた。中本朱音さん「ザ・ワンワン・フォー・ミー」は変幻して増殖する動きが水江未来さんみたいだった。後藤香澄さん「follow u」は瞬間的だった。松岡葉月さん「正義のヒーロー」は止め絵を動いているように見せてアクションを描いて楽しかった。

 しちわらさん「ごえんとほこり」は神社の賽銭箱に棲むほこりが御縁玉を受けてお祈りした女の子が友達の描いた絵を飛ばしてしまって気まずくなって謝りたいけど悩んでいるのを助ける物語がキュンと来た。絵本風の絵がしっかり動き、のっぺらぼうだった表情に目鼻が入って感情の動きが目で見えた。良作。中西錦太さん「そうだ地球、行こう」も良作。顔が2つくっついたような美女と目玉が3つあるイケメンが宇宙船で向かった地球で浅草や原宿めいた通りや暮らしている家々や学校を見て回る。その世界はすでに滅びていて、けれども拡張現実によって華やかだった時代が見えたりする中を踊る宇宙人たち。SFだ。

 Cは小嶋美那絵さん「MASTER」はダイナミックな絵でペットの悲惨な境遇が描かれ同情したくなった。くあどらぶるまれ〜さん「ニュー・ローマリン」もデザイン的な絵がぐにゃっと動いて見せられた。藤井圭さん「tick,tick,tick…」は回って増えて動いてと水江未来さんっぽかった。ときどきサボタージュ「幻のトレイン」は合奏する若者たちが生き生きとしていた。眼鏡っ娘が目立ってた。大澤ゾエ夏海さん「from beyound the stage」は舞台で芸を見せる人がいてその姿が龍やら蛇やらのモンスターを相手にした冒険と重なって子供たちを熱狂させる様が巧みな絵と動きで表現されていた。

 Dは君島智歌さん「青と心臓」が映画の予告編だった。アニメ絵が見事に再現されていた。本編作ってよ絶対に。浦川芽生さん「Never mind」は少女マンガ的な絵を動かして見せてくれた。森雄那さん「はじまりのあさ」はザラついたタッチの絵で幻想的なビジョンを見せてくれた。タナカミキさん「REM」はグラフィカルな世界をダイナミックに描いていた。篠崎翔一さん「カタチのないユメ」は母が死没し父と2人暮らしの女子高生の日々を綴りやりたいことって何だろうと迷わせる姿を見せて思春期っぽさを感じさせた。黒電話が使われている時代で懐かしかった。これも良作の1本。

 ピックアップするならドキッとするSF的設定としんみりする展開で静謐の「異星人の冬」と躍動の「そうだ地球、行こう」が挙がり、短編映画としてのまとまりがある「ごえんとほこり」が挙がり、誰でも覚える青春さがある「カタチのないユメ」が挙がるかな。そんな多摩美の2023年卒制展アニメーション。総じてやっぱりレベル高い。東京アニメーションフェスティバル2023ではここから「異星人の冬」が代表としてYOUNG POWERってプログラムに参加するので、気になる人は見に行くと吉。きっといろいろと思えるところがあるはずだから。

 恵比寿でカレー屋さんを調べたらボンベイって柏だとか神田で店を出しているカレー屋さんがあることが分かってさっそく寄ってみる。前に食べた経験からチキンカシミールはとてつもなく辛くて大変だと分かっていたのでインドカレーにしたけれど、それでも舌に少し残る辛さがあってなかなかに美味しかった。先に入っていてすでに注文した品が出ていたカップルは、どうやらチキンカシミールを頼んだらしく食べきれないで難渋していた。そうなんだよあれは食べるのが大変なくらいの辛さなんだよ。でも美味しいので今度は挑戦してみたいけれど、立ち食いだと崩れ落ちそうなので椅子席がある神田にするかそれとも柏に出かけるか。


【3月4日】 せっかくだからと新宿武蔵野館で「ベネデッタ」を最前列で見たらボンボンでボウボウだった。何がとは言わない。「愛の嵐」の妖艶にして鮮烈な裸サスペンダー姿のダンスを見せてくれたシャーロット・ランプリングがすっかりお婆さんになっていたけど経った時間を考えるならそれも当然。そして老いてなお燐とした気高さをのぞかせているところに女優という人たちの凄みを感じる。こうやって若い時の賞賛を逃れてもしっかりと居場所を得られる女優は良いけれど、たいていは40代50代のあたりでちょっとした谷を迎えてしまう。男優だったら渋みが出て来た年を女優は過ごせないのは問題だと立ち上がった女優たちの運動が、だんだんと広まっているのなら良いのだけれど。ナターシャ・キンスキーとか最近あんまり見てないなあ。メグ・ライアンは何をしているんだろう。

 そんな「ベネデッタ」でベネデッタを演じたヴィルジニー・エフィラは案外と年齢がいってて45歳くらい。それであのボディならやっぱり女優は凄いと思いつつやっぱり45歳くらいかもと思わせる熟し具合だったなあと今になって思い出す。そんなベネデッタに迫るバルトロメアを演じたダフネ・パタキアも30歳だから割と行ってた。それでも欧米は子役でもなければ10代からアイドル的な人気で映画に出るってことはなく、勉強をしてレッスンをしてオーディションを受けまくってようやく役を掴んだ時には30歳くらいってこともあるから、そこから売れっ子になっていけばアラサーアラフィフの壁だってひょいと乗り越えられるかというとそこは作品次第なんだろう。

 「ベネデッタ」は体当たり演技もあったしポール・バーホーベンならの聖性を持ったネタと俗っぽくエロティックに描くことにかけては名人なので一般性も持った内容が評価され、カンヌ映画祭に出品されたり日本でもこうして公開されたりして話題になっている。世界的にもそれなりに評価を受けているのならそうした監督を組むことによって女優も長らえていけるってことになるのかもしれない。ヴィルジニー・エフィラの「ELL エル」に続いての起用だし。翻って日本はどうだろうなあ。今が旬の女優が40歳50歳になってどうなるか。あるいはかつて旬だった女優が40歳50歳になった今どうなっているか。42歳の広末涼子さんは大活躍しているし42歳の仲間由紀恵さんも同様ならなるほど、向こうよりは人気も持続しやすいのかも。葉月里緒奈さんはどこ行ってしまったんだろう。

 ストーリーは幼い頃はまだ純粋に神様を信じていた少女が修道院に入って、そのイノセントさ故か育っても神様へのエキセントリックな感情が抜けずむしろ高まっては白昼夢的にイエスの姿を見るようになってしまう。それを冷静な修道院長はなかなか信じないんだけれども周囲はあまりなエキセントリックぶりと、それが困じての不思議な聖痕発生から奇跡と思うようになり、あるいは奇跡とアピールすることで巡礼が増えるといった思惑もあってベネデッタは院長に祭り上げられる。本人はそうした権力欲はなくいたって真剣。とはいえ一方で面倒を見ることになったバルトロメアという女性からの性的な刺激を受けてそちらにもハマってしまう。

 ベネデッタのぶっ飛びすぎた感覚をどこか抑制する必要があると院長はバチカンの教皇代理を引っ張りだそうとして、そしてベネデッタの異端審問が始まってしまうと行った展開自体にジャンヌ・ダルクほどのダイナミズムはないけれど、それだけ俗と紙一重の教会なり修道院なりの日常が垣間見えて建前であっても神を唯一とするスタンスを持った宗教家たちのある意味で真面目な姿も見て取れる。俗物というよりは凡人。それだけに異常な神への愛情を見せるベネデッタは疎ましかったんだろうなあ。いちおうは史実に基づいているそうでベネデッタは処刑されずかといって聖人に序列もされないまま軟禁された状態で70歳くらいまで生きたとか。神様の夢を見ながら生きたのならそれは幸せだったのかもしれないなあ。


【3月3日】 DeNAがいつの間にかBリーグの川崎ブレイブサンダースの親会社になっていたことにちょっと驚いたけれど、そんな川崎ブレイブサンダーズがホームにする新しいアリーナが京急の川崎駅のそばに出来ると聞いてもっと驚いた。すでに開発が進んで川崎ラゾーナなんかもあったりするあの当たりにそんな土地なんかあったっけって調べたら、京急とJRの間を多摩川に近いところまで言ったところにKANTOモータースクールってのがあって、その場所が新しいアリーナの建設場所になっていた。

 どうやら自動車教習所を閉鎖してそこに建て直すといった算段。駅から近くてバスケットボールを観に行くには最適な状況は、船橋アリーナが東葉高速鉄道の日大船橋駅から歩いてちょっとある千葉ジェッツをホームタウンに持つ身としてちょっと羨ましい。バスケットボールが開催されない時はライブなんかにも使われるとか。とは言え神奈川はすでに横浜にぴあアリーナMMもあるしもあるしKアリーナもオープン予定。お台場には有明アリーナもあってもちろん横浜アリーナも健在な中で箱物いっぱい作って大丈夫かって思わなくもない。

 2016年問題が言われた時に求められたのは、これからというアーティストがライブをするのにちょうどいい2000人規模の会場だったけど、そっちの報は中野サンプラザがちょっぴり延命したもののやっぱり閉まったりする状況も続いていていろいろと厳しそう。KT ZEPP YOKOHAMAとかZEPP系は健在だけれど基本はスタンディングのライブハウスでホールじゃないんだよなあ。渋谷公会堂にNHKホールに日本青年館に東京国際フォーラムに並ぶ3000人規模のホールとか、新しくできれば山下達郎さんも使ってみようと思うかな。

 イキの電車で依頼のメールが届いているのを見て、帰りの電車でとりあえず仕上げて贈ったのでイオンシネマ市川妙典で「少女は卒業しない:を見る。良い脚本の日本映画はやっぱり好きだ。朝井リョウさんの同名小説を原作としながら登場人物とかガラリと変えて高校の卒業を目前にした少女たちの詰まる思いが漏れ出す様を切り取って描き出していた。

 中井友望が演じる作田詩織はクラスになじめず図書館に入り浸る少女。とはいえ卒業も控え廃校も目前の図書室では教師が本の整理をしていてずっとは入り浸れない。だからといってクラスに溶けこむことも難しいと思っていたけど残り1日となった時、少しだけ動いてみようと考える。小野莉奈が演じる後藤由貴は同じバスケットボール部の寺田という男子と付き合っていたけど彼は地元の大学に進んで教師になりたいと言い、自分は東京の大学で心理学を勉強したと言って気まずくなってしまった。卒業を控えて仲直りしたいと思っていてもどちらともなくわだかまりがあって動けない。けれどもそれでは悔いが残ると後藤は寺田に電話する。

 小宮山莉渚が演じる神田杏子は軽音学部の部長で部員の森崎剛士とは中学校からの知り合い。森崎は軽音部ではメイクしてエアでデスメタルを演じる変人扱いされているけれど、そんな彼らを謝恩会の舞台に立たせようとするイジリが進む中、杏子はそれでも森崎にステージに立って欲しいと思い行動に出る。そして河合優実演じる山城まなみ。料理部にいて彼氏に料理を作って食べさせている幸せものなのに卒業式ではどこか頑な。周囲からも彼女が卒業生代表として答辞を読むことを驚かれている。どういう存在なんだろう? といったところにひとつの仕掛けがあって物語が急転して卒業式前のどこか晴れず留まり進めなかった空気が動き出す。

 本当はみな卒業なんてしたくない。ずっとそのままでいたいと思っていても否応なくやってくる時間の中で決断したり決心したりやっぱり迷っていたりと人それぞれ。そうした多感な少女たちの姿を抑え気味の演技とそしてほとんど音楽を鳴らさない映像によって綴っていく。少しずつ見えてくる彼女たちの事情であり心境にだんだんと寄り添っていった先に向かえる卒業式からのその先に、いっしょになってさあ行こうと思わされる。そんな映画だ。そんな、とても素晴らしい青春映画だ。


【3月3日】 DeNAがいつの間にかBリーグの川崎ブレイブサンダースの親会社になっていたことにちょっと驚いたけれど、そんな川崎ブレイブサンダーズがホームにする新しいアリーナが京急の川崎駅のそばに出来ると聞いてもっと驚いた。すでに開発が進んで川崎ラゾーナなんかもあったりするあの当たりにそんな土地なんかあったっけって調べたら、京急とJRの間を多摩川に近いところまで言ったところにKANTOモータースクールってのがあって、その場所が新しいアリーナの建設場所になっていた。

 どうやら自動車教習所を閉鎖してそこに建て直すといった算段。駅から近くてバスケットボールを観に行くには最適な状況は、船橋アリーナが東葉高速鉄道の日大船橋駅から歩いてちょっとある千葉ジェッツをホームタウンに持つ身としてちょっと羨ましい。バスケットボールが開催されない時はライブなんかにも使われるとか。とは言え神奈川はすでに横浜にぴあアリーナMMもあるしもあるしKアリーナもオープン予定。お台場には有明アリーナもあってもちろん横浜アリーナも健在な中で箱物いっぱい作って大丈夫かって思わなくもない。

 2016年問題が言われた時に求められたのは、これからというアーティストがライブをするのにちょうどいい2000人規模の会場だったけど、そっちの報は中野サンプラザがちょっぴり延命したもののやっぱり閉まったりする状況も続いていていろいろと厳しそう。KT ZEPP YOKOHAMAとかZEPP系は健在だけれど基本はスタンディングのライブハウスでホールじゃないんだよなあ。渋谷公会堂にNHKホールに日本青年館に東京国際フォーラムに並ぶ3000人規模のホールとか、新しくできれば山下達郎さんも使ってみようと思うかな。

 イキの電車で依頼のメールが届いているのを見て、帰りの電車でとりあえず仕上げて贈ったのでイオンシネマ市川妙典で「少女は卒業しない:を見る。良い脚本の日本映画はやっぱり好きだ。朝井リョウさんの同名小説を原作としながら登場人物とかガラリと変えて高校の卒業を目前にした少女たちの詰まる思いが漏れ出す様を切り取って描き出していた。

 中井友望が演じる作田詩織はクラスになじめず図書館に入り浸る少女。とはいえ卒業も控え廃校も目前の図書室では教師が本の整理をしていてずっとは入り浸れない。だからといってクラスに溶けこむことも難しいと思っていたけど残り1日となった時、少しだけ動いてみようと考える。小野莉奈が演じる後藤由貴は同じバスケットボール部の寺田という男子と付き合っていたけど彼は地元の大学に進んで教師になりたいと言い、自分は東京の大学で心理学を勉強したと言って気まずくなってしまった。卒業を控えて仲直りしたいと思っていてもどちらともなくわだかまりがあって動けない。けれどもそれでは悔いが残ると後藤は寺田に電話する。

 小宮山莉渚が演じる神田杏子は軽音学部の部長で部員の森崎剛士とは中学校からの知り合い。森崎は軽音部ではメイクしてエアでデスメタルを演じる変人扱いされているけれど、そんな彼らを謝恩会の舞台に立たせようとするイジリが進む中、杏子はそれでも森崎にステージに立って欲しいと思い行動に出る。そして河合優実演じる山城まなみ。料理部にいて彼氏に料理を作って食べさせている幸せものなのに卒業式ではどこか頑な。周囲からも彼女が卒業生代表として答辞を読むことを驚かれている。どういう存在なんだろう? といったところにひとつの仕掛けがあって物語が急転して卒業式前のどこか晴れず留まり進めなかった空気が動き出す。

 本当はみな卒業なんてしたくない。ずっとそのままでいたいと思っていても否応なくやってくる時間の中で決断したり決心したりやっぱり迷っていたりと人それぞれ。そうした多感な少女たちの姿を抑え気味の演技とそしてほとんど音楽を鳴らさない映像によって綴っていく。少しずつ見えてくる彼女たちの事情であり心境にだんだんと寄り添っていった先に向かえる卒業式からのその先に、いっしょになってさあ行こうと思わされる。そんな映画だ。そんな、とても素晴らしい青春映画だ。


【3月2日】 幸福の科学の大川隆法総裁が死去したとの報。とりあえず清水富美加さんであるところの千眼美子さんが還俗を果たして「龍の歯医者」で聞かせてくれたような声優も含めた演技を見せてくれるようになればと思うんだけれど、あれだけ信奉していた以上は戻れないし戻る場所もないだろうなあ。かといって総裁の後妻さんと2人で組んでデビューしたところで教団向けでしか活躍できそうもないし。ってか何をやれば似合うんだろう。ピンクレディーさろうかWINKだろうか。ダーティーペアだと世界が滅びちゃうからちょっと拙いか。それだけの霊感はありそうだし。

 パチンコ販売の西陣が廃業を決めたそうでメーカーとしてはすでにソフィアという会社に製造部門を分社化しているから続くことは続くんだろうけれど、西陣というブランドで出るパチンコ台やパチスロ台はなくなってしまってことだからそれはそれでひとつの時代の終焉といったことになるんだろう。何を出していたのかは知らないけれど。ただ最近はずっと「交響詩篇エウレカセブン」の版権台を出していたのでテレビシリーズで終わらずゼロからさらに劇場版のシリーズへと発展した背景に、それをささえるパチンコパチスロマネーがあったことは事実。そのおかげでなかなかにグッとくる映像を見られたわけで感謝はしなくちゃいけないのかも。ありがとうございました。

 池袋に出ようと大手町で降りてリトル小岩井に立ち寄ってカレーと野菜のパスタを頂戴する。相変わらずのぐにゃっとした麺だけれどそれがまた良い。量もほどほど。食べ過ぎないで済んだので良かった。池袋ではスターダンサーズ・バレエ団が`島邦明さんの音楽を得て演じる新作とそれから前に作った「Dgi−Meta go go」の2幕を見た。まずは新作。`島さんへのインタビューでは1960年代のソウルミュージックを使ったディスコのようなバレエになるって話だったけれど、それで全編を通すんじゃなうって最初はブラックコンテンポラリーから始めてソウルフルな雰囲気になったあとはニューエイジというかアンヴィエントな静謐な雰囲気の中で男女の成長が描かれるような作品になっていた。

 音楽はとってもポップなのにダンスはとってもクラシック。トゥシューズを履いて回ったり脚を上げたりリフトをしたりといった技を幾つも見せては綺麗なステージを見せてくれた。服装もレトロモダンでとっても可愛くて、見ていて本当に心が癒やされるステージになっていた。キャラクターダンサー的な人が最初から看板を持って立っていたりステージを横切って歩いたりしてきっとひとつの案内役だったんだろう。そんなダンサーに導かれるように進んで行った先、何組ものペアが踊りながら高め合う姿を楽しむことができた。2日間だけのステージでは勿体ない気がしたので再演があればまた行きたい。

 そして「Degi−Meta go go」は聞いていたようにノイジーな音楽の中を激しい動きで踊り続ける凄まじさを存分に味わった。とてもモダンでなおかつスリリング。音楽も耳をほじくりかえして頭を蹴飛ばすような雰囲気の中、ひたすら踊り続けるダンサーたちが半端なく凄く思えた。一瞬終わったかと思ったらまた動き出すその虐めっぷり! なるほど終わったらもう動けなくなるくらいのステージだよと`島さんが言っていたのが分かった。これを1日2公演とかやって1週間は踊れないよなあ。その意味でも2日間になったのは仕方が無いか。あるいはまだバリューがないのだとしても今回のこの2幕構成はなかなかのパッケージングだったので、しばらく待って再演があれば観に行こう。今度はもっと前目で見たいかも。


【3月1日】 恟コ三さん死去。去年の東京アニメアワードフェスティバルで功労賞を贈賞されて式典に来られた時にお顔を拝見し、車いすながらも好好爺然とした表情でトロフィーを受け取っていた姿が思い出されるだけに、それから1年も経たずに亡くなられてしまうとはちょっと思わなかったし、やっぱり残念で仕方がない。役柄としては例えば「機動戦士ガンダム」のリュウ・ホセイであったり「人造人間キカイダー」のハカイダーであったりと野太さを持った声質の役が多くって、いずれも作品の中で強烈な印象を残すだけに声とともに深く記憶に刻まれていたのだった。

 前に「千年女優」のイベントが行われた時にゲストとして登壇されたのを見聞きした記憶があるけれど、外部公開まかりならぬといったお達しが出ていたんだろうかSNSに記録を残していないのでどういう雰囲気だったか覚えていない。ただラストで千代子さんが追いかけている相手と言うより追いかけている自分自身が好きなんだといったいかにも女優といったセリフに違和感を覚えているようなことは話していたんじゃなかろうか。僕自身は「あり」派だけれども役として千代子さんを追いかけて来た役だっただけに思うところもあったんだろう。今はだからきっと千代子さんを追いかけて千光年の彼方へと向かっている最中なのかもしれない。合掌。

 恟コ三さんが日本一の大悪党声だとしたら、日本一の小悪党声はやっぱり千田光男さんといったところ。怩ウんと同じ日に訃報が発表されて時代をささえた声優さんの相次ぐ訃報に一時代の終わりを改めて感じてしまうのだった。ありとあらゆる作品に顔をというか声を出していたから何が当たり役かとは言えないけれど、その名前がタレントのせんだみつおさんと重なるということもあって誰よりも名前を覚えつつ、これにも出ているあれにも出ているといった印象を強く持ったみたい。突出していないからこそずっと出続けて最前線で活躍し続けた名声優にも黙祷を。

 声優といえば「モノノノ怪」の新シリーズに出演予定だった櫻井孝宏さんが降板したもよう。いろいろあったことが影響しているようで、声さえマッチしてれば私生活なんて向かいと言えるかというとやっぱり日頃の振る舞いが声に滲んで見えてしまってはお客さんも納得しない時代に来ていると言えるんだろう。だったら代わりに誰が良いかと考えた時にど美声な宮野真守さんではない妖しさが必要だというならそれこそ鈴村健一さんかというと、櫻井さんの事務所の代表を務めているからこれは無理。かといって神谷浩史さんでは出過ぎていてすべてが暦か絶望先生になってしまう可能性が高い。いまだと諸星あたるか。そういう時代だけに相応しい誰かが気になるところ。梶裕貴さんあたりかなあ。

 昼頃に家を出て近所に去年の秋くらいにできていた丼物を出す店で「とじないカツ丼」をいただく。どうやら流行っているらしくごはんの上に溶き卵を載せてその上にトンカツを載せるといった構造で、言い様によっては玉子丼のトンカツトッピングと言えなくもないけれど、トンカツ自体にしっかりと味がついている上に卵の方もふわふわなのでトンカツを囓って玉子丼を掬って食べてといった連係によってしっかりとカツ丼を食べているような気にさせられる。とにかくトンカツが分厚くてそれでいてサクッと食べられるのでこれはなかなか。1100円と高いのが玉に瑕だけれど余裕が出来たらまた行こう。ソースカツ丼も悪くないかも。

 「はだしのゲン」の記述が削除された広島県の被曝を伝える教材から、あの第五福竜丸のビキニ環礁における水爆実験での被曝の記述までもが削除されることになったとか。仮に第五福竜丸の久保山愛吉さんが肝不全で亡くなったのは被曝の影響ではなく輸血による肝炎感染だからとかいった理由で削れと誰かが言っているなら、輸血をせざるを得ない状態まで追い込まれたことこそが被爆の恐ろしさだと返すべきでありましょう。想像するならアメリカによる水爆実験からの被害といった色を極力消したいんだろうなあ、「はだしのゲン」もそれは同様だし。って行っていたら広島の原爆投下そのものを教えることができなくなってしまうけど、そうしたい勢力がいるのかもしれない。確実に何かがズレていっている。


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