縮刷版2022年12月上旬号


【12月10日】 高市早苗安全保障担当相と言うからには岸田文雄内閣総理大臣の閣僚としてその政策を支持し補佐し意思に従って実行することが役割のはず。それが出来ないのなら以前だったら閣内不一致を咎められて罷免されても当然だったはずなんだけれど、そうした矜持も今はないのか岸田総理が防衛予算の調達に法人税の増税で対応する旨発言した場に呼ばれなかったと言い、それをやったら企業が賃上げだとか雇用に予算を回さなくなると言って反対の姿勢を打ち出した。

 なるほど確かに法人税を上げればそうした方面にお金が回らなくなる可能性はあるけれど、安倍晋三総理の第2期における7年を含めてこの10年くらい、自民党政権がどれだけ企業のそうした内部留保だとかを咎めて賃上げに回すように促し、あるいは正規雇用を増やして安定した賃金を得られるように法改正を行ったり条例なりを制定したかというとまるで逆。非正規雇用をどんどんと増やして賃金が上がらない状態を作り、雇用も不安定にしてあらゆる消費にお金を回したくても回せない状況を作り出した。

 そうした中で企業は過去最高の内部留保を溜め込んだとも言われていて、それらを吐き出すように促すこともしなかった政府がだったらそのお金を防衛予算のためにかっぱぐぞと言うと何が不満なのかそれをやったら行いもしなかった賃上げに影響がと言い出すから分からない。もっと早く言え。そして具体的な施策を通せ。そんな声もがつがつと上がっているし、一方でグングンと上がった消費税の税率アップに反対したのかというとまるで反対していなかったそのスタンスの二枚腰っぷりも指摘されている。

 普通だったら恥ずかしくて外だって歩きたくないところを、安倍元総理の大好きな人たちがこぞって岸田総理嫌いをこじらせ高市大臣を褒め称えているから何というか。これで消費税の税率アップが課題になって自民党が上げて賛成をして、見放すかというと私たちのためにしてくれているんだからと賛成に回るんだろうなあ。そうやって骨抜きにされお金されかっぱがれて残る生存権すら蹂躙されてそれで良いのか。つくづくこの国は奇妙になってしまったよ。これで増税で防衛費なんか払うよりは従業員に還元をと言って内部留保の取り崩しとか賃上げに向かってくれれば良いんだけれど。それくらいの反骨を企業人も見せてくれよ。

 オンワードのバーゲンがあったので芝浦ふ頭まで出かけて行ってスーツとか探してJ・PRESSのチャコールグレーのスーツを3割引で購入。ネイビーは2着持っているのでこれで前に買ったダーバンのチャコールグレーと良いバランスが出来たんじゃなかろうか。裾上げを計ってもらったら前より長くなっていて脚でも伸びたかと思ったけれどきっと長めに計ったんだろう。ちょっとたるむかもしれないけれどダブルにしたから溜まって良い感じになると思いたい。長ければ近所で詰めれば良いし。他にシューツリーとトランクスを購入して帰宅。取材に着ていくから全部経費で落とすのだ。のだ。

 ユーロスペースで「指先から宇宙まで 素晴らしき短編アニメーションの世界」を見る。水江未来監督のETERNITY」にとってどうやらワールドプレミアだったらしい。以前に発表された「水江西遊記」はどうなったのって思ったけれど、西遊記っぽいキャラも混じった映像が約20分、ぐりぐりと繰り出されごろごろと回ってぐんぐんと突き進んで脳を刺す。あるいは素材を使って作らなくちゃいけないことになった20分の映像をひねり出したのかな。

 上映後に水江監督と音楽のトクマルシューゴさんが登壇してトーク。「音楽の様子を聞きながらUnityで動かして録画することもやった。かなり通常のアニメーションとは違う作り方をした」と「ETERNITY」について話した水江監督。「3D空間の中をカメラが入り込んでいくシーンが多く出てくる。どんどんと奥に入って常に移動していくような映像を作りたかった」と言っていた。その理由は、「『できるかな』という番組で沢山トンネルを作って最後のその中をのっぽさんが潜って進んでいくのに、3分の1もいかないうちに番組が終わってしまった」からだとか。

 それを録画して何度も見返すうちにトンネルの中を進みたいという思いが募ったのかもしれないと話してた。聞いて「いい話ですね」と音楽を手掛けたトクマルシューゴさん。途中で逆再生された映像に音楽をつけ、映像を元に戻すと音楽が逆になるような付け方もしたという。「音楽は時間芸術だけど、そんな時間の概念をもういいかなと思った。音が発せられた瞬間にパッと広がって後ろにも広がっていくイメージがあった」とか。そんな音楽と映像に満ちた「ETERNITY」は見ていて広がり進んで流れつつ湧き出る混沌のカタマリを感じさせられる映像。記号や色彩が動くノンナラティブが持ち味だった水江作品にキャラという拠り所が乗ってもやっぱりつかみ所がないまま流される感覚を味わえます。13日にまたトークがあって水尻自子さんと共に登壇するから行こうかな。


【12月9日】 「アキバ冥途戦争」でただのパンダに見えた御徒町さんの“中の人”がようやく声を発して意外にも女性でそして万年嵐子が世話になっていたメイド喫茶の店長を射殺した銃撃犯だったことが判明。そのまま逃げようとして殺し屋に始末されようとしたものの、警察官が通りかかったことでどうにか生き延びパンダに身をやつして御徒町から秋葉原あたりをうろうろとしていて幾年月、今のとんとことんの店長に招かれパンダとして店に入ることになったものの、そこに嵐子が来ていろいろ思うところもあっただろう。

 おまけにそんな嵐子を推す客として通うようになった末広こそが、ヒットマンを務めた自分を暗殺しようとした殺し屋の男だからもう大変。いったい何が起こるかといった展開の中でぼそぼそと喋り始めた御徒町さんお声が、「ガールズ&パンツァー」でサンダース大学付属高校のアリサにどこか似ているなあと思ったらそのアリサの声をあててた平野綾さんだと分かってちょっと驚く。ゴージャスな声優を使い捨てにする番組なだけにもしかしたらここで御徒町さんもご退場? なんて思うもののまだ死んでないからしばらく出てくれると思いたい。でも額に穴をあけたままでとんとことんに戻れるのか。そこも気になる。来週が楽しみ。

 しばらく前に「鬼滅の刃」の竈門禰豆子に分していたタカラトミーのリカちゃんが、今度は「うる星やつら」のラムちゃんになって登場ということで小学館のサイトからとりあえず購入する。だってラムちゃんだもの仕方がないよ。問題はビキニというよりトランクスなところだけれどラムちゃんであってリカちゃんでもあるからそこは仕方がないと思おう。この勢いで「チェンソーマン」のマキマさんのリカちゃんとか出ないのかというとさすがに子供が見られそうもないアニメでは出ないかな。あるいは「機動戦士ガンダム 水星の魔女」のスレッタでというのはバンダイ系だからそこは無理。なのでいろいろ想像しながら次ぎのコラボレーションを待とう。

 何の冗談だとしか思えない航空自衛隊の航空宇宙自衛隊への改名問題。亡くなった安倍晋三元総理がぶち上げたのを遺言さながらに実行しようとしている感じでどうにもこうにも心がささくれるけれど、現実問題として航空自衛隊が宇宙にコミットすることなんてせいぜいが敵基地攻撃用の大陸間弾道ミサイルを配備するかどうかってところくらい。予算を大いに獲得をして国産ロケット作りに注ぎ込んで日本の航空宇宙事業の発展に寄与するとか、あるいは超精密な偵察衛星を作り上げて日本のそうした産業の高度化に寄与するなんてことをするとはとても思えないだけに、単なる看板倒れに終わるのが今から見えてそれもそれで心が萎える。真っ当な発想が出来なくなっているのかなあ。

 「おすすめ文庫王国2023」が発売になって例年通りにライトノベルのベスト10を選んで執筆。竹町さんの「スパイ教室」を2年連続で推したのだけれど年明けからアニメが始まる割にあまり盛り上がってないのはやっぱり世間がライトノベルはなろう系の異世界転生ものくらいしか認知していない現れなのかもしれない。だからこそアニメ化によって大いに知れ渡って本丸の「このライトノベルがすごい!」でも上位に進出して欲しいところ。そうなったらこちらはまた別の作品を推して世に出る機会を作ってあげよう。とりあえず「死亡遊戯で飯を食う。」がトップ級の面白さなので3連覇があるかどうかは続刊次第。それにしても「おすすめ文庫王国2023」の文庫Bリーグうでハヤカワ文庫がB2落ちになってしまったのはちょっとしたニュースじゃないか。大丈夫かハヤカワ。誰か獄門に遭ってないか。


【12月8日】 ひろゆきこと西村博之氏の本を出すのがたとえばPHP研究所だとか産経新聞出版だとかWACだったら誰も驚かないし文句も言わなかっただろうけれど、これが子供たちに健全な知識を学んでもらって健やかに育ってもらうための出版物を長く出して来た小学館の、それも「週刊ポスト」だとか「女性セブン」のようにスキャンダラスな情報を提供して読者を獲得したりアクセスを稼いだりする媒体ではなく、本丸も本丸の児童書として刊行するというから驚いたし呆れかえった。

 つまりは小学館は真っ当に議論すべきことでも脇にそらして本質を見えなくしたり、悪口雑言が垂れ流されたプラットフォームを運営していた責任を問われて賠償を求められても無視を決め込んでいたりする人物を子供たちの教育に相応しい人物だと認めたってことで、今後はそういうスタンスで教育を口にする可能性があるとも言えそう。それはかなわないといった人たちが小学館を離れていっても仕方がない。

 事前に情報をまるで出さずに刊行された時点で公表するような不意打ちに、抵抗できなかった人たちが何か行動を起こすこともあったりするのかな。たとえばポケモン。あるいはドラえもん。そのふたつが引くだけでとんでもない事態になりそう。コナンは……それ自体が殺人事件のオンパレードであまり健全とは言えないからなあ、でもコミックとして中高生から上の世代に向けたコンテンツだからそこはそれ、構わない。やはり児童書として出そうとした判断、そこに引っかかる人がいるかどうかが今後の注目ポイント。どうなることやら。

 すでにテレビの人気者なんだから目くじらを立てるなって声もありそうだけれど、今という時流にのって持ち上げられていたとしても垂れ流される毒のような言説なり態度はジワジワと子供たちにしみこんで何年か後に絶望的な状況を招かないともかぎらない。たとえ間違った言説でも垂れ流し続けることで知らずしみこんでは真っ当な人すら毒するのは、あの加藤登紀子さんが日本の水源地が諸外国の勢力に変われて安全保障に問題があるだなんて認識を、平然とツイートしていることからも伺える。

 原野商法めいたものに引っかかって荒れ地を交わされたり、遠く離れているにもかかわらず近い場所が変われたかのように情報を操作して危機感を煽って商売をしているメディアがあったりして、違うと否定してもしつこく続けけたことでどうやら本当かも知れないといった認識を持つ人が広がり始めている。ライト方面がそれで躍起になるのはまあ仕方がないとして、レフトもレフトな加藤登紀子さんまで及んでいるとしたらいったいどれくらいの人が引っかかっているんだろう。これは本当に大変かもしれない。どこから情報を得ているんだろうか。やっぱりワイドショーなんだろうか。周囲に真っ当な人はいないんだろうか。いても逆方面に過激だと拙いしなあ。かといって無関心ではどこに連れて行かれるか分からない今の時代。どうしたものか。どうしようもないものであるのか。

 北海道が危ない対馬が危ない沖縄が危ないと危機感を煽り続けているメディアが前に沖縄で芸人を誹謗したら訴えられた裁判の判決が出てやっぱり敗訴。一部認められたなかった判決もあるけれど、賠償金を求められたのならそれはやっぱり敗訴であってこれは一応は全国紙を名乗る媒体として恥ずかしい。おまけにこのメディアは色々な誹謗中傷をしては抗議されても訴えられるまで改めず、裁判になって敗訴するなんてことを過去にも繰り返して来たから何ともはや。もはや体質としか言い様がないんだけれどその結果が大変なことになっても改められないのは何なんだろう。好きで崖っぷちへと向かっているとしか思えない。来年どうなっているかなあ。

 せっかくだからと新宿武蔵野館で「マッドゴッド」。御大フィル・ティペット監督のインタビューにインタビューして個人的にしっかりとしたストーリーはあるけれど、分からなくても仕方がないから何度か見て感じてくれれば良いよと教わっていたので、試写に続いて2度目の感傷もゆったりと構えてみていたらやっぱり大筋は分からなかったけれど、ラストの宇宙が創造されるような感じとか、途中のアクアリウムみたいな場所で暮らしている家族の団欒と残酷めいたパートとか、個々に面白いところが発見できてとても良かった。逆ピラミッドみたいなところを降りていったマスクの男はどうなったかなんて気にしない。世界は混沌としていてそれでもどこかに向かって進んでいるのだ。そういうことにしておこう。


【12月7日】 あはははははは。スペイン代表のルイス・エンリケ監督。過去にスペインのチームがワールドカップで3度、PK戦に挑んで破れていることも有り、そしてスペイン代表を破った日本代表がPK戦で敗れたこともあってPK戦は決して運でも宝くじでもなく、真剣に練習をすれば突破できるものだと会見でぶち上げてしまったものだから、実際の試合になってモロッコ代表を相手に延長でもリードを奪えず同点のまま突入したPK戦で、3人が連続して外してモロッコ代表に敗れてしまったことに、スペインのみならず世界中のメディアが突っ込みを入れている。

 何でもチームに合流する選手には1000回の練習を要請していたとかで、それでも選手たちは言うことを聞かなかったとか、意味がなかったといった言説が蔓延っていったいどうすればいいのかってことをサッカー好きの間にも問いかけている。実際のところ相手のキーパーがどちらによく飛ぶかを数値でもって理解し、それは蹴る相手が右利きだったら何パーセントは左に飛ぶとか、逆に左利きだったらどうといったこともしっかりデータとして持った上で望む必要があるんだろう。

 もっとも、野球だったら平気でやる野球でもサッカーだとPK戦になること自体が希なので真剣に取り組んでいるチームはなさそう。あるいはワールドカップで対戦相手が決まったら、そうしたデータをとりまとめて売るようなビジネスも成り立つかも知れないと思ったけれど、機会の少なさから高いものになって変われない可能性もあるからなあ。だからやっぱり大舞台に望んで激しいプレッシャーの中でも動じないメンタルを鍛え挙げる方が先決だし、それ以前に試合の中で得点をして勝ちきるための練習なり必要なデータの収集を行う方が良さそう。

 ともあれこれでベスト8が出そろって、フランスイングランドブラジルアルゼンチンと欧州と南米のトップチームが並びそこにオランダポルトガルクロアチアの欧州勢とモロッコのアフリカ勢が載ってそれなりに見どころを持った試合になりそう。最終的にはやっぱりブラジルとフランスの戦いになるのかな。それともブラジルとポルトガルという同じ言葉を話す国々の対決になるのかな。見守りたい。

 企業の人相手のオンライン会議があって部屋の中が乱雑だとちょっと失礼と思い近所の駅に置かれたワーキングステーションを利用。前にフィル・ティペット監督のインタビューにも使ったのと同じ箱で、ネットは使えたもののライトが足りず結構不気味な顔をさらしてしまったかもしれない。次はだからリングライトを自前で持ち込もう。15分275円で1時間使って1100円、1時間半なら1650円は原稿料が1万5000円くらいのインタビュー仕事だったら使ってなんとか織り込めそう。

 とはいえインタビューによっては待機時間を求められる上に前のインタビューが押して時間どおりに始まらず、予定時間で終わらないケースもあるのでボックスを予約するのもちょっと一苦労。相手がエンタメ系なら本がうずたかく積まれた部屋でも大丈夫だからそこは割り切るしかないかなあ。本当は仕事場が欲しいんだけれど、って言うくらいなら部屋を片付けろ? それが出来れば世話ないぜ。


  【12月6日】 そして見たFIFAワールドカップ2022カタール大会の決勝トーナメント1回戦、日本代表対クロアチア代表の試合は日本代表が前田大然の蹴り込みによって1点を先取するという幸先の良い出だしを見せながらも高さのあるクロアチアのヘッド1発でもって同点に追いつかれ、そこから抜け出せず抜け出させもしないままPK戦へ。日本代表は出る先取のことごとくが相手GKによって止められてしまう状況で、結果として破れて残念ながら初のベスト8進出はならなかった。

 前半の相手がまだゆるやかな守備を強いている間にサイドをえぐってゴールを奪ってリードできれば勝てたかもしれない試合。実際にクロアチアは枠を外すシュートはあまりなくてそれでいて枠内は正面からと危ないシーンはそれほどなく、ヘッドからの1発さえ外れれば無得点に終わった可能性もあった。逆に日本は枠内に飛べば得点だったところを横や上に外してしまうところがあって、そうした意味でのシュートの正確性が欲しかった。

 PKを外すのは度胸がないとか練習が足りないとかいった声もあるけれど、試合で走り回った後にあのプレッシャの中で蹴るのだって大変なこと。そして相手はあのディナモ・ザグレブという負けたら命が危ないようなハードなチームで正GKを張っているメンタルの持ち主で、そんな相手に止められるのも仕方がないといえば仕方がない。一方の権田修一選手は日本でずっとやってきたGK。経験値の差もあったんだろうなあ。

 オシム監督はサッカーそのものではないという時論からPK戦を認めたくない心理もあってあれはくじ引きだと言っただけで、運だけではないメンタルや実力も必要なプレーであってそこは確かに日本は足りなかった。<でもサッカーという競技そのものではないところも確かで、試合に勝つためだけにそれを鍛える意味と、別のところを鍛えて試合に勝とうとする意思のどちらを取るかってところで両方と言えれば良いけれど、それが無理ならやっぱり試合そのもので勝つための努力を積んで欲しいもの。あと1点を奪えるメンタルと技術ってことで次ぎの大会にはそれを持って乗り込んでいって欲しい。それにしても久保建英選手がいなかったことが残念。後半のサイドで送り込んでは三笘薫選手あたりとキレキレの攻撃を繰り出して欲しかったなあ。それもまた運ってことで。

 飯田橋あたりで取材をしてからイオンシネマ市川妙典で2回目の「THE FIRST SLAM DUNK」。IMAXの最前列は初日にもとっていたけれど、他の用事があって行けなかったのでリベンジに行ったのだった。たちのギザった輪郭線は手描きを再現しているのかシャギーなのか分からないけど顔立ちも表情もとりわけ口の開き具合とか視線とかなんかに人形っぽさがなくて漫画家の手描きならではの筆配りをよくもまあ再現したものだと感心することしきり。最後のシュートシーンで桜木花道の口は「左手は添えるだけ」って言っているのかな。気になった。

 宮城リョータから始まるストーリーに三井が絡みゴリが絡んで広がっていく展開によってたとえばこれが文字通りの“ファースト”な「SLAM DUNK」という人でもそれほどキャラクターたちの背景を知らずとも入っていけるようになっている気がした。ってか漫画でもテレビアニメでも完全無欠な主人公の桜木花道を周囲で騒いでいる痛い奴に見て取ることが可能な案配。それでいて見ている内に半端ない奴だと分かってきてそして「s「SLAM DUNK」が桜木花道の物語だと知った人は漫画に立ち返り、テレビシリーズに戻って見返してどんな作品かを知っていくことができるのだ。羨ましいなあ。

 ドラマ部分の静寂から試合部分の喧騒へと緩急もあってぶわっと弾けて感動もひとしおな展開も上手い。安西先生がガッツポーズを見せて周囲が驚くところも面白い。そうした細かな見せ方の調整は井上雄彦さんが自ら行っているのか演出が指示しているのか編集が仕切っているのか気になるところ。トータルではやっぱり井上さんのスタッフワークが優れていたってことになるのかな。そんな部分の”力量”も知りたいと思うのだった。


【12月5日】 エムバペが凄いとは分かっていたけどこんなに凄いのかとワールドカップのフランス代表対ポーランド代表の試合を見ながら思う明け方。日本にだって堂安律というシューターがいるにはいるけど蹴ったボールの質も速度も段違い。すっと振り抜いたボールがギュイーンとゴールに向かっていってゴールキーパーがどうするまもなくゴールネットに突き刺さるのを見るにつけ、筋肉なり瞬発力の大切さってやつを強く痛感する。

 いつかのブラジル代表ののロベルト・カルロス選手とかもフリーキックが凄まじかったけれど、エムバペ選手はそれを試合の中でやってしまからなあ。目下の得点王でもあってワールドカップの後、改めて超ビッグクラブへの偉績が取りざたされているだろうなあ。パリ・サンジェルマンからの移籍がなぜか飛んで残ったけれど、その時よりも確実に値段は上がっていて、それでもやっぱり欲しいチームは少なくない。史上最高金額が動くことになるだろうなあ。

 ポーランド代表のレバンドフスキ選手が最後の最後でPKに立って1度は失敗したもののキーパーの動き出しが早かったとうことで蹴り直しになったものをしっかりと決めて、今大会2得点目となって今までの無得点から一気に複数の得点を獲得した選手となった。でもこれがワールドカップではきっと最後。だからこそジタバタしたって決まって嬉しいと思ったに違いない。レバンドフスキ選手だって外すんだからPKってやっぱり運と度胸なんだなあ。サッカー的ではないけれど。

 イングランドがセネガルに勝ったのを茫洋とする頭で聞きながら起き出して早めに仕事場に行ってカット袋を整理したり、棚からとある作品の版権セルを取り出したりして並べて時間を過ごして夕方になったので、新宿へと回ってTOHOシネマズ新宿のIMAXで「すずめの戸締まり」を見る。4回目。「新海誠本2」がもらえるからってが理由で読むと当人へのインタビューではなかったけれど、サダイジンが取り憑いたおばさんがどうして豹変したかといった解説があってあそこでぶっちゃけることによって一気に理解を進めたってことらしい。それで諍いが残らないくらいの信頼があったからこそできること。しこらなくて良かったねえ。

 結局のところダイジンもサダイジンも一種の招き猫で、それが要石として封じられていたのだけれどもダイジンはまだ若いこともあって逃げたくて仕方がなかったらそこいすずめが来て助けてくれたので好感を持ちつつお邪魔虫の草太を要石にしてしまったらサダイジンが出て来てお前何やってるんだと叱って丸めて転がしたので、一緒に東北まで行って再び要石になることを了解したって話になるのかもしれない。自由になりたかったネコちゃんの夢が破れる可哀想な話でもあるんだなあ。せめてすずめと草太には何度も常世に出向いてダイジンと時々遊んでやって欲しいなあ。

 月曜日なので「週刊少年ジャンプ」。さっぱり訳側からない領域へと足を踏み入れている「呪術廻戦」はバトルロイヤルが終わった後で誰が誰と戦うのか、それでどうなるのかってあたりが見えづらくてすこし間を置いてもいいかなって思わせてしまっているところがあって厳しかも。渋谷事変だって単体でみればバトルアクションが楽しめるけれど、その先に来るのがこの惨状だと興味も抱きづらいんだよなあ。「ONE PIECE』はついにベガパンクが脱走を言いだし大事大事。ロブ・ルッチやカクがルフィと再会して起こるかバトル? そしてかけつけようとしているくまの真意は? 毎週の連載から目が離せない。


【12月4日】 フランス映画祭2022横浜ではアラン・ウゲット監督のストップモーション・アニメーション映画で富川国際アニメーション映画祭でグランプリを獲得した「イヌとイタリア人、お断り!」という作品も見る。なかなかに刺激的なタイトルで日本なら使う側の過去を掘り起こして差別意識を刺激するのは避けろと言ったり、使われる側が傷つくから使うのはタブーといって過去に葬りかねない言葉でも、過去にそういうことが実際にあったのだからと使ってそこにあった差別意識を再確認しつつ今はどうか、未来はどうなのかを考えさせようとする監督の意図めいたものが感じられた、って実は監督にはそのあたり聞いてあるのでいずれ出るインタビュー記事をお待ち下さい。

 イタリアのピエモンテ州といってフランスとの国境に面した山間部に暮らす家族が貧困の中にありながらも家族の結束でもって生き抜いて生きた歴史は、ある意味で悲惨で悲痛だけれどもそれが人形で描かれることでふわっとして楽しくユーモラスなものに感じられ、けれども同時に強い絆であったり厳しい環境といったものがすっと入って来てより深く考えるきっかけをくれた。これがアニメーションの効能というものなのだろうなあ。それは「この世界の片隅に」にも言えることで実写にもなったけれど俳優の演技が醸し出す情熱といったものが時に重たくなりがちなのが、アニメーションだと見た目のふわっとした感じに緩和され、それでいてジワジワと厳しかったあの時代の日々がしみこんできて見終わった後の理解度が深くなる。

 戦争なんかも経験した家族の歴史という意味でも「この世界の片隅に」に近いところあがあり、あっけのう人がいなくなっていくところも「マイマイ新子と千年の魔法」と重なる。その意味で片渕須直監督にご覧になっていただいてコメントももらって日本での公開へとこぎ着けて欲しいところだけれど、やっぱりタイトルがいろいろ言われることになるのかなあ。それ以前に興行成績が期待できないからといって見送られるのを避けるため、是非にインタビューを公開してそして大勢の賛同を集めて公開へとこぎ着けて戴きたい。そういうアプローチが出来る配給本が得られるか。僕にできることは紹介の原稿とかインタビュー記事とかを書くことだけなのでそれだけでも頑張ろう。

 帰りがけに「THE FIRST SLAM DUNK」も見て思ったのは誰もがアニメで観たかったものを観せてくれる映画だったということ。それはレテビアニメの「SLAM DUNK」そのままではないけれど、バスケットボールというものを磨いて磨き抜いて観せてくれるものだった。「バガボンド」で剣豪のバトルという部分を研ぎ澄まし、ストイックさを得てそして「リアル」でリアリティを持った描写を伸ばした井上雄彦さんならではの現在地だと思った。とても良かった。

 アニメが好きだった人にはあのコミカルさが足りないって言われそうだけれど、原作者の今の全力を否定するならどうして大好きなアニメ版でチーフディレクターを務めた西沢信孝さんが2015年に亡くなった時に少しでも話題にしなかったのかとちょっと言いたい。もういないのだから作れないんだよ。声優さんの訃報は話題になってもテレビシリーズのアニメ監督は話題にされないこの高低差がずっと気になって仕方がない。映画で話題の人たちだけがアニメ監督ではないってことを改めて思って欲しいなあ。

 ってのが昨日まで。明け方にワールドカップのアルゼンチンとオーストラリアの試合をぼんやりと眺めてから、少し寝て起き出して町へと出てアラン・ウゲット監督のインタビュー記事をまとめてから、町をうろついて帰宅して「機動戦士ガンダム 水星の魔女」。拡声したエアリアルを見てプロスペラが涙を流したのはそこにきっとエリクトの姿を見たからだろう、ってことはつまり……。いろいろと浮かぶ恐ろしい事態だけれどだからこそプロスペラのスレッタへの上っ面だけの愛情めいた態度の背景も見えてくる。そんなプロスペラの真意をしらず母親が好きだと言い続けるスレッタの不憫さがいつ炸裂するか。怖いなあ。本当に怖い「機動戦士ガンダム 水星の魔女」。第1クールはどんな衝撃で終わるのか。怯えて待とう。


  【12月3日】 せっかくだからと横浜で始まったフランス映画祭2022横浜で上映されるアニメーションのプログラムを見に横浜へ。キノシネマ横浜みなとみらいってどこにあったっけって調べたら横浜美術館よりは新高島寄りの建物に入っているみたいであの当たり、しばらく行ってない間にウエスティンホテル横浜なんてものも出来て大賑わいになっていて、そんな場所のお洒落なミニシアターというのもなかなかいいアイデアかもしれない。これが幕張ではちょっと雰囲気がビジネスより過ぎるからなあ。まあ幕張は幕張でユナイテッドシネマがあってイオンシネマもあるから良いんだけれど。

 ランドマークタワーの下にあるマクドナルドでメガマフィンのセットを囓ってさあ出陣。見た「フランスのストップモーション・アニメーションの世界」はフランスで作られている新しめの短編ストップモーション・アニメーションを6作品上映するプログラムで、それぞれのクリエイターが来てはいろいろと喋ってくれて作品の裏話とか制作の意図なんかも聞けてグッと印象が深まった。まずはエロイーズ・フェレルという女性監督の「風の娘たち」。テレビ局が依頼して作った12本のオムニバスのうちの1本で、アンドレ・ジイドの詩がモチーフになっているらしい。羊毛フエルトで作られた少女が風の娘たちに刺激されて空へと羽ばたく。思春期の抑圧から抜け出ていく解放感が漂う作品だった。

 2本目は同じフェレル監督の「くすんだ海」でこちらは12分30秒ある作品。やっぱり羊毛フエルトだけれどストーリーはどこか鬱屈していて見る人を刺激する。夫がないシングルマザーの母親には息子とその姉の娘がいるけれど、精一杯に育てているというよりはどこか虚ろなところがあって夫のことを思っているのか、それとも生活に膿んでいるのが子供たちをネグレクトしているところがある。遂には家を出て車でどこかに行こうとしたので、これはヤバいと感じたのか息子が乗り込み姉も乗り込んでいっしょに走る暗い道。そこで子供たちがパパに会いたいだなんて騒ぐものだから母親は壊れて運転を誤り森に突っ込む。

 リアルならそこで哀れ一家全滅となるところだけれど象徴性を持った人形によるアニメーションでは全員がとりあえず無事で、そして3人は海へと行ってそこで汚れか海藻か何かをなすりつけ合いながら少しだけ心を解きほぐす。それで理解が深まったかは分からないけれど少しは良い状況に進んだかも。見ていると単純にネグレクトをする母親が悪いとは思えず子育ての大変さも感じられてもうちょっと子供としてしっかりしてよと思えてくるところに作り手の誰かを悪者にはしたくない優しさも見えた。

 3本目はルイーズ・メルカディエ監督とフレデリック・エヴァン監督による「姉妹」で平原が続く荒れ地に住んでいる三姉妹の横をある日男が波が襲ってくるといって走り去っていく。逃げろとも言っていたけどまさかそんなと思っていたらだんだんと潮の香りが洗濯物につくようになりそして平地に水が染みてきていた。やっぱり波が来るのか。逃げるべきだったのか。大丈夫と言ったり逃げるべきだといったりして食い違う三姉妹の意見は人の中にある迷いとも正常性バイアスの発露とも取れて人間、難しい局面にはやっぱり戸惑うものなんだなあということが伺えた。

 地球温暖化への警鐘かといった質問もあったけれど、そうした具体的なものではなく、大きな変革に対して家族がどのように受け止めるのかを描いたものとして割と普遍的なテーマ性を持った作品。人形はどこか東京藝大院を卒業した副島しのぶさんが手掛けるものに雰囲気が似ていた。フランスの中世の彫刻を参考にしたけれどその彫刻自体がアジアや日本の彫刻というか仏像から影響を受けたものだというからユーラシア大陸を挟んで同じルーツがそれぞれの形で発言したものなのかもしれない。

 4作目が問題作。サラ・ヴァン=デン=ブーム監督による「レイモンド、もしくは縦への逃避」は純潔で潔癖であることを教え込まれた女性が歳を経てもはや老境に達して抱く寂しさと神への怒りを表した作品。どうにかしたいと自宅に郵便物を撮りに来る配達員に迫っては拒絶され泣いたりする姿が哀れでならないけれど、その郵便物が遠く日本から依頼を受けた使用済みパンティに見せかけてチーズケーキなんかを塗りつけ女優のブロマイドを添えてそれに女性がキスをしたものを封入したもの。つまりは偽物なんだけれどそれでも受け取る側は使用済みだと信じて喜ぶらしい。

 監督に寄れば日本にはそうした趣味の人がいるらしいと聞いたから描いたそうで、実際のところどうなのと同席した「記憶」のブリュノ・コレ監督が聞いていたけどそこに大声ではいそうです使用済みパンティは別名ブルセラといって1990年代から日本の名物で今もエロ本屋とかの自販機で売っていたりエロ本のムックに付属していたりしますとは言えなかったところに怯懦があったかもしれない。動物にしたのはそこにモデルとなった動物の属性を反映させたからで女性がふくろうなのはきれいだけれど表情が読めずコミュニケーションに問題があることを示したかったから。そしてふくろうは野生で配達員とかは犬のような家畜なり愛玩動物なのもそこにコミュニケーションのあるなしを込めたかったら。ってことはラストでふくろうの遠吠えを聞くカラスはどっち? 気になった。

 コレ監督の「記憶」はアルツハイマー型認知症になった老人がだんだんと自分を忘れていくその視線を人形の変化によって表現したもの。最後は妻が半ば透明になって一部に色を残しているのが示唆的でありつつどこか人間のすべてを忘れて無へと変える終末を感じさせてくれた。元になったのはアルツハイマーの画家、ウィリアム・ウテルモーレンの作品でそれを立体にするとこんな感じになるのかと思わせてくれた。若い人の反響があったようでわがことのように感じる年配者ではなかったのが意外だったらしいけれど、聞くと祖父母なり家族全体の問題だと感じ取ったとのこと。フランスは開明的だねえ。

 ラストはクロエ・アリエズ監督の「崩れる関係」でスイッチを顔にした造形が独特だったけれど面長でスイッチ部分になった鼻がなるほど人間っぽさがあり、そしてスイッチによって顔の形も人種も違うように表現できるのが面白かった。たぶん学生でどこかの家にパーティで集まったけれどもその中で飛び交う誰が好きとか誰に好かれたいといった感情。その中でひとりの少女には割とイケメンという設定の男が迫ってくるんだけれど、少女はどうやらいつもいっしょにいる少女のことが気になっているらしい。そういう性質があっても言えず誘われれば男に靡いているように見せなくてはいけないコミュニティの規範の堅苦しさとも抑圧ぶりともいったものが漂う作品だった。


【12月2日】 さあ決戦だ、っても相手がスペイン代表では勝つのはもちろん引き分けですらおぼつかないまま大量失点を食らうんじゃないかと心配もしたFIFAワールドカップ2022カタール大会のグループリーグ第3戦、日本代表はトップに前田大然選手をたててプレスをかけつつスペインには回させながらもゴール前を守って得点を許さないようにしたものの、フリーキックからのヘディングで1点を決められこれで負けも仕方がないなあと諦める。

 でもそこから追加点を許さず折り返した後半、日本代表が入った堂安律選手のシュートで1点を奪うと今度はゴールラインを割ったかどうかというボールを三笘薫選手が書き出すようにしてゴール前に送りそれを田中碧選手が押し込んで逆転。これは割ったかどうかを調べる必要があったけれど、最先端のテクノロジーが真上から見た時のボールの縁がゴールラインにかかっていることを“証明”して見事にゴールが認められた。

 人によって判断が分かれるところでもあって、副審が残っているとみるか出たとみるか判然としいないところも出そうなプレーだっただけに、こうして科学と技術が“証明”すれば誰も文句は一応は言えないのでありがたい。もちろん相手にそのメリットが向かう場合もあるから手放しでは喜べないんだけれど、少なくとも公平性は保たれた中での勝利ということで、後味を悪くすることなく次の戦いに進むことが出来た。今度はクロアチアが相手。前にもワールドカップで戦ったことがある相手で1998年は破れたものの2006年は引き分けた。今なら勝利だって可能な相手を粉砕して初のベスト8をブラジル相手に戦いたいなあ。頑張れ日本。眠れない日々が続きそう。

 TOHOシネマズ新宿で始まった上映から40周年を記念する「スペースアドベンチャー コブラ」の4Kリバイバル上映。公開時に劇場では見ておらずテレビで見たような薄ぼんやりとした記憶はあるもののほとんど忘れていたので新鮮に展開を見ることができた。野沢那智さんの声が強く印象に残っているから松崎しげるさんのコブラってどうなんだろうと思ったけれども見ているうちに引き込まれていってあのキャラクターと一体になるのは100分の映画だらかってこともあるんだろう。俳優女優を声優に起用して合う合わないの論争もあるけれど、見ている間に馴染ませそう感じさせることができるのが映画という表現の利点でもあるので気にしないことにしているのだった。

 そしていきなり出ア統監督ならではの3回パンによるジェーンによる拳銃発射があって最初からブサメンなコブラと出会って始まる冒険は、ドミニクにキャサリンといった原作にも出てくる三姉妹をまるで違った役割にして映画の中に落とし込んで順繰りに出す意味も乗せつつきれいに終わらせて楽しませてくれた。陸五郎さんのクリスタル・ボーイも聞いて小林清志さんぽさもありつつ威厳もある感じ。やっぱり強くてカッコ良いけどコブラにはかなわないのだった。

 原画の中に荒木プロダクションがあって荒木伸吾さんの名前もあって昨日が命日だったりすることもあっていろいろと感じいる。そりゃあ今ほど最初から最後までばりばりきれいで整っている訳じゃないけれど、レイアウトだとか見せ方だとかで動きを出して派手さも感じさせてくれるところが1982年のアニメ映画ならでは。4Kになってザラつきがなくなり発色も良くなり黒も締まって最前列でも隅々まで目をやって飽きることなく楽しめた。「スタ・ウォーズ」でハン・ソロを演じた松崎しげるさんならではの飄々とした演技を見聞きしつつ、そんなハン・ソロの脇でみずみずしさを出していた渡辺徹さんもふと思い出したのだった。本日死去。まだお若いのに。健康第一にいこう。


【12月1日】 「RRR」へと至るインドの歴史がちょっと知りたかったので、気になっていたウィリアム・ダリンブルの「略奪の帝国 東インド会社の攻防」という本を借りたらマイソール王国のティプー・スルターンに関する記述が割と多くて驚いた。渡辺建夫の「インド最後の王」を読んで35年くらい経つけれど、その本ほどではないもののその本に比肩するくらい詳細なティプーの偉績を紹介した本がなかっただけに、ティプーの凄さに感嘆して卒論をティプーが収めた南インドの統治形態でもって書いた身として嬉しくなった。何を書いたか覚えてないけれど、英語の本を図書館で探し論文を集めてカードを使って5日で50枚の卒論を書き上げた冬を思い出して熱くなった。実家を掘れば原稿の束とか出てくるはずなんだけれど。どこに仕舞ったかなあ。

 名古屋にある七五書店が閉店するとかいうことで話題になっている。文筆家の人が愛した書店らしいけれど、弥富通から新瑞橋の途中なんて車でもなければ行けない場所に就職した1988年に作られた本屋なんで1度も行ったことがないからどれくらいの充実度かわからないけ。とはいえ書店が消えるのは寂しいことであるなあ。個人的にはいりなかの三洋堂書店の充実した漫画売り場に助けられて今があるのでそこがどうなっているのかが気にかかる。あとは緑図書館。高校の真下にあって海外SFシリーズを随分と借りて読んだっけ。あの時の経験が今につながっているとしたらやっぱり優れた本の在処が消えるのは未来を奪うことでもあって勿体ないと思うのだった。

 何か依頼があったので、横浜で始まったフランス映画祭2022横浜へと出向いて「イヌとイタリア人、お断り!」いうちょっと刺激的なタイトルのストップモーション・アニメーションを作ったアラン・ウゲット監督にインタビューする。ランス国境に近いイタリアの山岳部に暮らす家族が戦争やファシズムを経験しフランスに移住するまでを孫の世代の監督が聞き描いた作品。詳細は3日に映画を観てから描くけれど、片渕須直監督の手掛けた「マイマイ新子と千年の魔法」や「この世界の片隅に」といったアニメーション映画に通じる歴史と向き合いつつアニメーションの持つユーモラスさの中に描こうとした意識が感じられる。日本での公開未定が残念なので誰か詩って動いて欲しいなあ。

 インタビューをした横浜美術館裏にあるホテルから横浜駅まで歩く途中に向こう側から割とこぎれいな男女が歩いてきたので何かIT企業でもあるのかと見たら神奈川大学がキャンパスを持ってきていた。県名がつきながら私立大学というある意味で母校の愛知大学と似た状況にある神奈川大学だけれどみなとみらいだなんてお洒落な場所にキャンパスを移せば学生もこぎれいになるものらしい。ってことは名古屋駅の側にキャンパスを移した愛知大学の学生もそこはこぎれいな人が集まっているのかな。名古屋大学の学生を本山原人呼ばわりしていた時代は過去で学生は誰もがこぎれいになっているのかな。気になるけれど縁遠いので気にしない。

 横浜駅から亀戸まで出てVELOCHEでインタビューのテープを起こしたり原稿をかいたりして過ごしてから、DIVEへと言ってぎっしりと詰まった弁当を買って帰って食べようとしたら食べきれなかった。やっぱりちょっと多すぎた。胃が弱っている訳ではないので単純に量的な問題だろう。むしろ今は少しだけしか寝なくても昼間に眠くなることがまるでない。ワールドカップで頭がサッカー脳になってドーパミンだかアドレナリンが出まくっているのかもしれない。ある種のドーピング状態。これが大会の終了後にどう出るか。どっと疲れが襲ってくるのか。怖いけど今は浮かれ気分で日本代表の試合を待とう。スペイン戦。勝てるかなあ。


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