縮刷版2022年11月中旬号


【11月20日】 クロワッサンをかじってから電車で品川へと向かい美少女戦士セーラームーンのミュージカルを見る前に、ホームの立ち食いそば屋で品川丼なるものを食べる。深川丼はアサリが使われた丼だけれど品川丼は何がどう品川丼なのか分からないもののおそらくは天ぷら蕎麦に使われている天ぷらをそのままご飯に乗っけて出して品川駅だけのオリジナルだということで品川丼と言っているんじゃなかろうか。味はまあまあ。出されたお汁は蕎麦の汁を薄めたものなのかそれとも別に作られているのか。ともあれホーム上のコンコースにある飲食店で食べるより安価にしっかり食べられるホームの立ち食いそば屋をJRは消滅させないで欲しいなあ。

 早い時間に並んで入場してまずはグッズ売り場へ。ブラインドの缶バッジを初日と同じように2個買う。初日はスノーカグヤがダブルで出るという最強ワンペアだったけれども今回は欲しかったセーラーちびムーンとそれからネコルナが出て運がめぐってきた感じ。セーラーちびムーンを演じた新津ちせさんが前にセラミューに出た時は、演じたちびちびムーンの缶バッジをちゃんとゲットしていたはずなので並べればその間の差も分かるはずだけれどどこに行ったかよく覚えてないのだった。もう7年も前のことになるので仕方がないとはいえ、そんな7年の間で立って踊って唄う力をしっかりと付けた新津ちせさんが次ぎに何を演じるか、それが目下の興味といったところ。

 日替わりゲストはネルケ版セラミューでセーラームーンを演じた大久保聡美さんとそしてセーラーマーキュリーを演じた小山百代さんが登場して出演をした前の公演の場面がどこかを聞かれてことごとく当てていた。舞台に立って演じればそれがどの場面なのか、身についた演技の記憶によってすぐに蘇ってくるものなんだろう。そんな過去の失敗談として大久保さんが衣装を替えてもティアラをつけたままで真面目なシーンを演じてしまって相手が笑いを堪えるのが大変だったといったことを上げていた。どんな雰囲気だったんだろう。映像を毎回撮っている訳ではないから残ってないんだろうなあ。そういった一期一会もあるから舞台は楽しいのだ。

 くるくると回ってひらひらと翻るスカートの中が見えたり見えなかったりするのを目の当たりにしつつ最後まで観劇。歌も安定して展開もスムースさが増してラス前のこなれっぷりがよく出ていた。本当の千秋楽は涙もあふれるフィナーレになったのかな。そんな興味に引きずられつつ会場を出て、JRで浜松町まで戻ってモノレールに乗り換え流通センターへと行って文学フリマをさらりと見物。滝本竜彦さんとかインタビューをした市川憂人さんとかに挨拶をして、そしてちょっと前に紹介した「斜陽の国のルスダン」を書いた並木陽さんに挨拶をしてSFファンジンを買って帰る。何かとられたアンケートはSFおじいさんを対象にした賞の投票か。「百億の昼と千億の夜」と「ベトナム観光公社」と「ウルトラセブン」を選んだ記憶。さてどうなるか。

 戻ってネットで「機動戦士ガンダム 水星の魔女」。やっぱり何にも知らないスレッタさん状態で進んだようであれほどガンダムじゃないと言っていたエアリアルをあっさりガンダムだと認めたプロスペラさんの腹の底にぞっとする。「娘たち」と言っていたのも気になるところ。やっぱりエアリアルの中かあるいはガンビットの中には人間の脳組織なり神経繊維が格納されていて自律思考をしながら動いていたりするんだろうか。そちらこそがプロスペラにとて自分の“娘たち”でスレッタはそれらを動かすだけのインターフェイスに過ぎないんだろうか。エランの強化人間につきつけられた運命はそのままスレッタの運命と重なるんだろうか。不穏さを漂わせつつ物語は次へ。株式会社ガンダムの社長にグエルが就任して会長のミオリネに振り回される未来が見えます。


【11月19日】 買収して即座に約半分の社員の首を切ったイーロン・マスクが、さらに文句を行ってきたプログラマーを首にしてそして社員に毎週80時間は働け、それができなければ去れと言ったら1000人規模で人が辞めてしまったツイッターの今後がどうなるかを想像すると、昔より増えた利用に耐えられずクラッシュするかサービスが劣化して過疎化するかどっちかだろうなあとは思うもののそれでも2chが5chとなって未だしっかり掲示板としての機能を保っているのを見るにつけ、最低限の機能さえ使えれば命脈は保たれるものなのかもしれない。mixiはそこで使い勝手を悪くしたから過疎化したまま浮上できないんじゃないのかなあ。

 だったらマストドンはというと中心となるプラットフォームが1つではないところがあってどこに行けばどんな情報があるか分からないのが難点。ある意味で昔のニュースグループに近いところがありそうで、そういうのを細かくチェックしていけば自分にとって有用な情報源になるのかもしれないけれど、探すのも面倒だしねえ。その点で、Redditはテーマ毎に部屋があってそこに行けば並んでいる情報を閲覧できるから楽は楽。ひたるらROMっていても飽きないんでそちらに日本語版めいたものが生まれれば、一挙に利用も広がりそう。画像だって添付できるしね。ただ違法画像にエロ画像もてんこ盛りなんで日本向けには無理かなあ。どうかなあ。

 溜まっている原稿を書かなくちゃと家を出て幕張あたりの喫茶店でしこしこと原稿書き。どうにかこうにか形が出来たのでパンチョにおりてナポリタンの上にアルボナーラのソースをかけるというカロリーばか高そうなパスタをもりもりと食べ、アウトレットを舐めつつ何も買わずに別の喫茶店にこもって原稿をフィニッシュにまで持っていく。これでどうにか今週稼がなきゃいけないくらいのお金は稼いだかな。そのまま電車に乗って帰る途中で「うる星やつら」の単行本がボックスになったシリーズのだい2巻目を購入。大昔に買って揃えた単行本がそのまま復刻されてて、バリエーション豊かな表紙絵を眺められるのでこれは揃えておかなくちゃいけにあと思ったのだった。でも開けずに読まずにおきそうだなあ。だからといって買わないと売り切れて変えなくなるので見つけたら要チェック。

 「人間は愚か」を改めて見せてくれた今朝の「PUI PUI モルカー DRIVING SCHOOL」は交通刑務所じゃなかった自動車運転教習所に入れられたモルカーたちが海底トンネルの見学に行ったらサメが現れ大騒ぎ。でもちょっとおかしい動きをしているサメが体内に人間が捨てたゴミをいっぱいのみこんでいるのを見たテディが、トンネルをぶち割りサメの体内に飛び込んではゴミを全部平らげてサメを元気にしたという心温まるストーリーが繰り広げられた。でも食べたテディはあのあとが大変そう。まあそこは出すだけなんで迷惑を被るのは周辺くらいかな。場所を制限して撮影の大変さを減らそうとしたのにこうやって違う場所を作り海底だなんて凝った舞台設定にした上にグルグルと迷路みたいな演出もつけて撮影大変だっただろうなあ。そんな成果が人気に現れているようで善哉。見里朝希さんだけでなく小野ハナさんが次に作る作品も楽しみになって来た。

 足立和平さんの「飯を喰らひて華と告ぐ1」(白泉社)に笑う。定食屋を営む男は料理の腕は良いし客の抱えていそうな悩みに心底から応えてあげる人情家だけどその認識の悉くが勘違い。地下アイドルが客としてやって来てもう辞めたいと思っていて、その理由としてファンの男達と握手するのが嫌で臭くてもう握りたくないとぶつぶつ言っていたところから勘違いしたその職業がどうしてそうなるんだと言えそうで、なるほどそうかもしれないと思える絶妙なもの。そして垂れる説諭の筋は違っても心に響くから面白い。呆れたか諭されたか少女アイドルは30歳になってもアイドルを続けていく覚悟を決めた模様。結果良ければすべて良いのだ。ブリ照り美味しそうだったなあ。


【11月18日】 スクウェア・エニックス方面でインサイダー取引があったとかで誰かが捕まったというニュースが前にあって、その時は誰も知っている名前が出てなくって安心していたら続報で中裕司という名前が飛び出してきて吃驚仰天。「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の生みの親にして「ファンタシースターオンライン」の作り手にして「ナイツ」のクリエイターではないですか。つまりは一時のセガを代表するゲームクリエイターである意味では任天堂で「スーパーマリオ・ブラザーズ」を作った宮本茂さんに並ぶ世界で知られるクリエイター。それが、280万円だなんてショボい金額のインサイダー取引に引っかかって逮捕されるなんて状況に、どうすれば追い込まれるのかが分からなくて唖然とする。

 なるほどセガでソニックチームを率いて「ソニックアドベンチャー」なんかを作って名を上げたものの「ドリームキャスト」向けに「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」の正統なる続編は出せずソニーの「プレイステーション」シリーズが「ドラゴンクエスト」とか「ファイナルファンタジー」を抱き込んでデカくなっていくのを横目にセガがハードもろもと沈んでいくひとつのきっかけを作りだしたと言えなくもなかったりする。とはいえ『ファンタシースターオンライン」は今も続くオンラインゲーム人気の中核としてセガの柱になっていたりする訳で、これで「ナイツ」を蘇らせていたらどうなっていたか分からないけれど、いつの間にやらセガを去って任天堂の「Wii」向けのタイトルなんかを作るようになっていた。

 その頃に文化放送の上にある事務所へと取材に行ったことがあって、いろいろと湧き出る発想に感嘆したものでその後にスクウェア・エニックスに入って何かゲームを作り始めたと聞いて、これは凄いものを送り出してくれると期待していたらいろいろあったみたいで今も引きずる問題を抱えてしまった。そんな最中でのインサイダー取引問題。意図的なのか知らず取引をしたら引っかかってしまっただけなのか。同じ案件で人が捕まっている報道を知りながらもぶれず動じないでツイートをしていたところを見ると自分が関わる案件とは思っていなかったようにも考えられるけれど、いずれにしても逮捕されたことは事実。そこからどういう経緯を辿るのか。今は見守るしかない。

 それはそれとして今のソニックシリーズとは関わっていないから、「ソニックの開発者」とか「ソニックの生みの親」と呼ばれるのは迷惑だといった声が上がっていたりするけれど、今よりも日本のゲームが世界で輝いていた時代に、その先頭に立って世界でナンバーワンの人気を誇ったメガドライブ向けで最も人気のあった「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」を作ったクリエイターであることには変わりがない。その意味から中裕司を「ソニックの生みの親」と呼ぶのは、ソニックという今も愛されるタイトルと、中裕司という希代のプログラマーに対する敬意でもあるからそれを否定されるのはちょっと辛い。円谷英二が今のウルトラマンい関わっていなくても、やっぱり「ウルトラマンの生みの親」と呼び続けるようにそこはそうだと理解しつつ、でも罪を負うなら罰を受け、そして出直して下さいな。

 三鷹で6時間ほど仕事をしてから原菜乃華さん、松村北斗さんも参加しての新海誠監督の「すずめの戸締まりの舞台挨拶をTOHOシネマズ新宿で中継で見る。現場で草太の祝詞めいた言葉とそして鈴芽の「お返しします」といったセリフを生で演じさせて松村さんの入り込みぶりがなかなかに凄まじかった。喋れば軽い声も演じるとあの凜としたイケボイスになるんだなあ。そんな2人がメディアで良く”声優初挑戦”と書かれるに新海誠監督は「そういうことではない」と指摘。「自分は2人の初挑戦が欲しかったのではない。2人が欲しかった。菜乃華さんと北斗くんに鈴芽と草太をやっていただけることが重要なんです」と役に合う声を選んだら2人になたっということを強調していた。

 「ガチのオーディションで選びました。その沢山の人たちの中から選ぶ時、技術が上手いとか芝居が出来るといったことは大事だけれど、上手いだけでは面白い映画にはなりません。鈴芽や草太と一緒に自分で良いんだろうかと考えながら不安を抱え悩み映画を完成に導いていって、一緒に届けてくれるのが2人だと確信した」ことが選んだ理由。そこから2カ月、アフレコを行いだんだんと完成に近づけていったという。「自分が書いた脚本は自分の子供のようなものなんです。1000人の候補がいても、自分の子供がすぐに見分けられるように、誰が合っているかは聞いてすぐに分かります。この人たちが僕たちの作品にとって大事な人なんだと分かりました」。聞いて原さんは「嬉しい」と感嘆。そうやって乗せたからこそのあの迫真の演技になったのかもしれない。


【11月17日】 WOWOWとクランチロールであの冲方丁さんのファンタジーにして多分SFでもある「ばいばい、アース」がアニメーション化との報。2000年の暮れも押し迫った12月25日に分厚い上下巻で刊行されたのを手に取って、読み始めてあまりに面白くって年末のコミケの会場にも持ち込んで読み継いで年内に読み終えてこれは傑作と歓喜したっけ。後に文庫にもなって最近はコミカライズもされたけれど22年も昔の小説ということには変わりない。

 それだけバリューも乏しくなっていながらアニメ化というのはひとつには冲方丁さんの名前がこの間で抜群にアップしたことがあるし、本編自体が無類の面白さを持っているってこともある。ファンタジー調の世界なんだけれどどこかゲームの中のようにも思えるところは飛浩隆さんの「グランバカンス」とも重なるところがあって、あちらがSFで高評価されるならこちらだってと思いながらもあまり知られてないのが残念だった。僕は確か電撃アニメーションマガジンの書評コーナーでレビューしたっけ。そんな作品だけにこうして改めて有名になってくれるのは嬉しいところ。どんなビジュアルになるかなあ。今から楽しみ。

 ヤフー!やらグーグルやらが新聞等のニュース記事を転載する際にちゃんと真っ当なお金を払っているかと公正取引委員会が調べるってことを新聞なんかが報じてて、それだけ美味しいところを持って行かれて自分のサイトにまるでお金が入らないことをうっとうしく思ってチクったのかって想像も浮かぶけれど、そうやってポータルに出さないことにはまるで世間に広まらないのも実際の所。現実にTwitterでガンガンとモーメントを流していたハフポストだのバズフィードだのがまるで見えなくなって息絶えたよにすら思えるところに、ポータルに露出してなんぼってところがネットにはあったりする。

 新聞とかだってそうやってポータルに出して知名度を得つつお金をもらっていた訳で、それでもっと寄越せというならだったら出してもらわなくて結構となるだけのような気がする。あとはそうやって転載するなら金をクレというなら、新聞やテレビが取材をする際に情報をタダで入手するのはケシカランからちゃんとギャラを支払えって声も出て来たりする。媒体力があるから載せたら広まりますよという声がけも可能ではあったけれど、部数が減って影響力が下がっている一方でネットには幾らだって媒体があるし自分でだって発信できる中で新聞にロハで協力する意味って何? って話になる。

 そこは新聞という媒体が持つ公正性と中立性、そして教養がある程度保障される環境の中で情報を流通させることで信頼を得て尊敬も得られるといった効能を期待することは可能だし、中立公正を旨とする新聞に協力することでこの国の情報環境を健全に保とうとする意義に殉じることも可能だろう。もっともそうやって読者の側が信頼したくても新聞等が広告めいた記事を載せたり特定の政権に肩入れしたり不動産等の事業で儲けたりしてその金で高給を配ってウハウハしていたりするのを見ると、それでどうして協力してやらなくちゃいけないのって話になってくる。身ぎれいにして健全性を保ちつつ情報提供をお願いするようなスタンスにならないと、理解されないんじゃないかなあ。まあ高給ってのはもはや一部に過ぎない気もするけれど。

 昼になったので品川へと出かけてミックスランチを食べてからステラボールでセーラームーンのミュージカルを見る。前にちびちびムーンで出ていた新津ちせさんが今回はちびムーンとして出演していてその歌が巧くそして演技も巧くて驚いた。大きいお姉さんたちにも遜色がないどころかそれ以上といった感じでこれは末恐ろしい。セリフを喋っても声音がほとんどプロ声優にも聞こえるくらい。そんなハイクオリティな演技を見られてなかなか嬉しかったし、今回はセーラームーンのミュージカルがバンダイ版も含めて30周年ってことでいろいろと過去のファンから今のファンまで楽しめるしかけがあったみたい。そのあたり、詳しくないけれども立体としてのセーラー戦士たちがくるくる周りながらスカートをひらひらさせて踊る姿はなかなかの眼福。それを平日昼間から見られるリタイア人生も悪くないと思ったのだった。もう1回行くつもりなので公演の中でさらなる成長があるかに期待しよう。


【11月16日】 ポーランドにミサイルが落ちたそうでロシアから飛んできたんじゃないかと言われNATOに加盟するポーランドへの攻撃はNATO加盟国の参戦を招いて第三次世界大戦の勃発だなんて話も飛び出して朝から不穏な空気が漂ったけれど、どうやらポーランドに落ちたのはウクライナの迎撃ミサイルみたいでその意味では攻撃ではなく防御のミスということで落ち着きそう。ロシアがミサイルなんて撃たなければといった意見もあるけどそこはそれということで。しかしいつまで続くのか。ウクライナが占領されるかロシアが引くしか終わりの選択肢がないのがどうにも厳しいなあ。

 日本代表が出場するサッカーのFIFAワールドカップ2022カタール大会が20日にも始まる予定だけれどもそんな日本代表がどんな成績だったとしても、森保一監督を続投させるような雰囲気が出て来て日本代表の人気がこれでさらに下がってどん底の底に入りそうな予感に打ち震える。あと1週間もないのにまるで盛り上がってない状況がひとつ日本代表の不人気ぶりを表しているにも関わらず、そんな日本代表を作った監督が予選で苦戦したからこそ入ってしまった死のグループで成績が悪くても不問に付すのって、もはや一切の責任を問わないに等しい愚行と言えるだろう。

 西野朗監督ですらどうにかこうにか予選は勝ち上がっても辞めて譲った代表監督の座。それを4年かけてまるで成長させられず世界で活躍する凄い選手を揃えながらも予選で苦戦して自分の責任って奴を感じないものなのだろうか。監督も日本サッカー協会の会長も何かがズレているとしか思えない。会長の方はそうやって人気を削り倒した挙げ句にせっかく入ったJAFハウスを出なくちゃいけないはめになった。会社を潰したに等しい振る舞いをしながらもトップに居座り続けられる神経って……。我らがジェフユナイテッド市原・千葉の母体となった古河電工の出身ながらもこれは認められない。岡ちゃんだって認めちゃならないとクーデターでも起こして会長の座を奪い取って欲しいなあ。

 表現に対して圧力が加わっているように見える案件が続出。オンラインで同人誌とかの販売を可能にしているプラットフォームが、決済に使っているカード会社の方針で公序良俗に反するものの決済をさせないことを受けてそうしたコンテンツの取り扱いをしないように求めたとか。ゴア描写とか恋愛描写とか別に18禁でもないような描写であっても決済システムが勝手にそれは許さないと言えばプラットフォームから排除するのがプラットフォーマーとして果たして適切か、といった問題がまずひとつあり、そして決済会社がどうしてそこまで表現に関わってくるのかといった問題があってなかなかに解決の糸口が見えない。

 児童ポルノは現実に存在している人を傷つけたり搾取したりするようなものだと規定されていて、それの決済に“協力”することは当然に止めなくちゃいけないとは思うけれど、そうした児童ポルノを絵にまで広げて規制しようとしているのがプラットフォーム。議論すれば東京都を相手に大論争が起こったような問題が、さらっとプラットフォームの客変更で通ってしまいそうな状況がひとつ恐ろしい。やっぱりいろいろと声が起こるんだろうか。一斉引き上げとなってプラットフォームが枯れれば考え直すのだろうか。直さないだろうなあ。それくらい必要不可欠となっているから。そうやってイニシアティブを得てから絞ってくるやり口が、いろいろなところで起こってくるんだろうなあ。やっぱり同人誌は自分のHPで告知して定額小為替で通販が1番なのかも。

 昼前あたりから中野で仕事をして、さて昼食にしようと思い阿佐ヶ谷でパスタ以外を食べる時によってた「キッチン男の晩ごはん」がリニューアルされたという話を聞いてどんな感じになったのかと立ち寄ったら、阿佐ヶ谷ダイニングキッチンという店名になって前みたいな山盛りの揚げ物やら焼き肉やらパスタやらがなくなって、唐揚げとか生姜焼きといったおかずと美味しいご飯をしっかりと食べさせる定食屋さんになっていた。値段も上がって1000円くらいを中心に上だったり下だったり、唐揚げが開店記念で7個になるランチもやっていたけど普段は5個でそれなりの値段だから、からやまあたりと変わらない。前のカロリーが滅茶多くてボリューミーながっつりお昼ご飯を楽しみにしていた人には辛いかも。でも今時はそんなに食べる人もいないのかなあ。今後の評判の推移に注目。


【11月14日】 公開から3日で133万人が見て興行収入18億円をあげた新海誠監督の「すずめの戸締まり」は、「君の名は。」を動員数で38.7%、興行収入で47.4%上回っているのことでこれはとてつもない数字が出そうって思うけれど、実は「天気の子」はそんな「君の名は。」を上待っていたそうで、その「天気の子」よりも観客動員で14.9%、興行収入で14.7%上回っているとはいっても、最終的にどうなるかは「天気の子」がロケットスタートを切りながら最終的には「君の名は。」は上回らなかったことを考えると、今はまだ分からないと言えそう。

 最初の動員は評判やら口コミやら今回は多めに見せた予告編やら事前に配信された冒頭映像やらの影響もあって上々だけれど、見るとなかなかにシビアな東日本大震災への言及もあってこれはちょっと怖がる子供とか嫌がる大人も出て来そう。そうした評判が広がってなおいきたいと思う人がいるのかどうか、これはちょっと遠慮しておこうといった感じになるのかで最終的な到着地点も変わって来るんじゃなかろうか。逆にいうならそんなストーリーであってもしっかりと興行収入や観客動員を得たとしたら、11年が経過して日本人はひとつ鎮魂と慰霊を終えて次ぎを目指すフェーズに入ったと言えるかもしれない。

 震災をエンターテインメントにして商売にするなといった声もあるにはあるけれど、別にそれで稼ごうとして映画を創っている訳ではなくて、映画監督としてエンターテインメントを作るのはひとつの手段ではあっても、そこで描く大震災は別に娯楽として消化しようとして描いているものではない。受けた衝撃や感じた痛みを乗り越えて和らげて次ぎへと進む道を指し示せないかといった思いが先に立ってのものだとしたら、それを受け入れた人が大勢いた結果として興行収入や観客動員がついてくるだけ。そう思えば良いんじゃないのかなあ。エンターテインメントと鎮魂は相反しないってことを、「Wake Up’ Girls」だって示していた訳だし。だからもっと、エンターテインメントの人はいろいろと作って欲しい。新海誠監督だけが突出しているから言われるだけなんだからここでひとつ、越える意気込みで是非。

 またしても名古屋へと行ってお仕事。昼過ぎからだったので実家には泊まらず直接新幹線で行ったけれど朝って結構満席が多くて人の移動が増えているってことがうかがえた。名古屋駅ではJPタワーの下にあるヨコイでピカタとソーセージがのったのを食べる。ここん家のソースって錦にある本店よりも辛さが際立っているような気がするなあ。それこそヨコイのレトルトを食べているような感じ。あるいはレトルトの原料を持ってきてソースに浸かっているのかな、でもって本店は店で作っているからもうちょっとマイルドな感じになっているとか。よく分からないので次ぎに名古屋に寄ったらまた本店に行ってみよう。

 仕事では津島へと出かけて行って工場見学とかいろいろ。大昔に八開村に住んでいたから津島もよくいったはずだけれど5歳までの時だったのでよく覚えてはいないのだった。少なくともあれほど沿道に店はなかったはず。今はそれこそチェーン店の飲食店がずらりと建ち並んでいるからなあ。セブンイレブンなんてほんと、名古屋で見かけることなんてずっとなかったんだよなあ。それを言うならコメダ珈琲店だって名古屋にあるにはあったけれど郊外型の店が中心で今みたいにビルの隙間に入ってルノアール一本槍だった東京の大人のくつろぎの場所を奪うなんてことはなかった。このコメダといいCoCo壱番屋といい名古屋初の飲食チェーンで成功したところには何があったんだろう。逆にはびこれなかったあんかけスパや何が拙かったんだろう。気になります。


【11月13日】 北村龍平監督が手掛けてのんさんが主演した「天間荘の三姉妹」をようやく見る。話には聞いていたけれど、同じ年の日付も近いところで公開となった『すずめの戸締まり』とこうも絡み合うストーリーだったとは。高橋ツトムさんの「スカイハイ」シリーズに位置して不慮の事故に遭った人がしばらくこの世とあの世との間に留まって生き返るか死ぬかを選ぶという設定がまずあって、その上に、三ツ瀬という町がひとつそのままそんな中間地帯にとあるような状況がまずは構築されていた。

 そして、その三ツ瀬で旅館を営んでいる大女将と若女将とその妹のところに客が来て、どちらに行くかを決断するまで寝泊まりしているという前提のところにやって来たのん演じる小川たまえ。実は若女将やその妹の母親違いの妹だったというところから始まって、そんなたまえが自分自身も迷いながら天間荘にやってくる人たちの迷いを解きほぐしていった先、三ツ瀬の町全体がある意味で抱えていた迷いを払うといったストーリーになっている。

 そして三ツ瀬は「すずめの戸締まり」で岩戸鈴芽という少女がかつて住んでいた場所にも重なる震災が起こって津波にのまれた場所で、そこで死んでしまいながらもあの世にはいかず留まり惑う魂たちの思いを、たまえが受け継いていくんだと決意し意識していく道を選んだあたりが、常世に迷い現世でも表面的には穏やかでも内面には闇もあった少女を通して過去を過去として認めつつ、今を、そして明日をいきていくんだと思わせた「すずめの戸締まり」重なった。

 たまえも表面的には明るくてはつらつとしているけれども、それが決して自発的なものではなく母親を亡くし父親が失踪し施設で暮らし卒業はしたものの目標もなくただ生きている中で獲得した、軋轢を起こさずにいきていく一種の仮面に過ぎないことが物語の中で暴かれる。それは同様に叔母と姪という関係で仲むつまじく暮らして来たように見えても、双方に遠慮やら面倒やらを感じていたことが吐露されお互いにぶつけ合う「すずめの戸締まり」で起こったことだった。

 そうした本心の吐露や過去との訣別を経て歩き出す映画が2本このタイミングで公開されたことに、あの日から11年が経ってあの日のこともよく覚えていない人が増えてきた今という時期が感じられるのだった。もちろん忘れてはいけないことは沢山あるし、間違えてはいけないこともいっぱいあるけれど、そこに縛られてばかりでは前に進めないというのも実際のところ。今一度振り返って何があったかを考え直し、だからどうして悲しいのかを確認しつつそれでも自分たちはこの世界をいきている、そしていきていくのだという自覚を持たせる映画だと、「天間荘の三姉妹」と「すずめの戸締まり」は言えるのかもしれない。そして門脇麦はやっぱり良い。

 なごみとビラ配りの場所で知り合って割と仲良くなってそして名札交換の契りまで交わしたライバル系列のメイド喫茶で働くねるらちゃん。ヤクザ極道まるだしなメイドたちにあって比較的真っ当な子だと思っていたけどやっぱりそこはアキバのメイドの仁義に生きる任侠だったみたいで、兄弟分となったなごみのために秘密を売っては咎められ、赤バットを振り回す赤い超新星に対して引かず向かっていっては銃で撃たれて臆さない。それが当然だと思っているところを妙だと思っているのがなごみ一人だけだというあの空間にひたってしまうと、秋葉原でメイドさんたちがビラ配りをしている風景がいつ銃弾の飛び交う鉄火場になるんじゃないかと思えてしまう。罪なアニメだなあ、「アキバ冥途戦争」は。


【11月12日】 今日も今日とてMOVIXさいたままで出かけて行って新海誠監督の新作アニメーション映画「すずめの戸締まり」を見る。2回目。新海誠監督のティーチイン付き。その前に近くのマクドナルドへと入ってハッピーセットを買って絵本をもらったけれど、読むと映画の見方が変わるんだろうか。ちょっと気になったものの読まずに映画を見てなるほどやっぱり凄いと感動した後で、新海監督によるティーティインを聞く。

 何でもこの2年くらいは刑務所に収監され監禁されているかのような厳しさだったそうでそこまでやって完成にこぎ着けられたとか。プロデューサーさん頑張った。いや監督が1番頑張ったんだけれど。そんなティーチインは30分くらいみっちり喋ってくれて、とりあえず芹澤役の神木隆之介さんが最初は瀧役を大切にしたいから断ったということが興味深かった。

 でもやっぱり神木さんしかいないと連絡して違うトーンの声が出せれば受けると言われ電話口で出したのを聞いて電話だから分からなかったけれどちょい低いトーンも出せるならそれでいけると思いオファーしたとのこと。結果はもう最高。舞台挨拶で誰について聞きたいかで鈴芽も草太も上回るぶっちぎりの人気を芹澤が得てたのだった。それなのにグッズ関係に芹澤がないのはちょっと問題。あとダイジンも少なすぎ。サダイジンはなぜないんだ。これからの期待だ。

 気になる震災の直接的描写については過去、「君の名は。」でもある種メタファーとして描いた災害だけれど、やはり震災で考えざるを得ないかとがあったから描いたものだった。エンタテインメントの中で難しい言葉ではない僕達の言葉で描くことはできないかと挑んだ。そして今回、今度こそ直接描きたい、描いてもみてもらえるのではないか、観客に受け取ってもらえるのではないかと思ったという。それは半ば賭けだったけれど、観客を信じてみたかった、過去2作を続けてきたから今、こうしたテーマを投げても信じてもらえると思った、皆さんが作れと言っているようにも思えたと話してくれた。

 葛藤がありそれでもという冒険があって突破したこの物語はだから届くのだ、大勢に。あと観客が好きなシーンとしてあげた、子鈴芽と鈴芽が出会うシーンは原画を小林直樹さんが手掛けて、泣きじゃくり腰を曲げる子鈴芽を描いて映像を豊かにしてくれたとのこと。音楽では野田洋次郎さんが手掛けたルンルルのメロディのモチーフを共同で音楽を手掛けた陣内一真さんが引き取り子鈴芽の気持ちに添うようなシーンに仕上げたとのこと。CGチームも頑張り一瞬で春の草原にかわるような場面を描いたりと個々に全力を尽くしたシーンがあそこだとか。なおかつセリフと作劇が凄いからこそ感動感涙感激するのだ。そこへとたどり着くまでを楽しみに味わいに映画館にまた行こう。

 そんな「すずめの戸締まり」は口噛み酒だのラブホテルだのといった全体にフェティッシュな描写を抑えて、そうしたものにマイナス方面で敏感な人を刺激していないところがあったけれど、おそらく唯一くらい煩悩めいたものを刺激される場面が、神戸のスナックでひと戸締まりを終えた鈴芽が戻って来て焼きうどんを食べる場面で、敢えて草太が変じた椅子に座るところ。にょいっと座面にのっかるお尻もアップになって、なんてこの椅子羨ましいんだと思わせつつ、草太=北斗はちょっと苦しいかもと思わせかねない場面を当初、周りのスタッフは入れるのに反対していたと新海誠監督がティーチインで話して、なるほどそうかもと妙に納得した。

 もう全員が「何で座るんですか?」と言ってきたそうだけれど、椅子なんだし男の子と女の子の双子を乗せて動いているのを見て鈴芽も座りたいと言って反対されたほど、座りたかったんだから座らせたいと思って反対されながら我を通したとのこと。僕個人は2人の距離がさらにぐっと近づいたように思えたんだけれど、反対した人の気分も分からないでもないけれど、そこで我を通す新海誠監督の感性に僕自身は近いのでこれで良いのだ。椅子があったら座りたいのが人情ってものなのだ。あるいは椅子になったら座ってもらいたいのが煩悩というものなのだ。うん。


【11月11日】 11年と8カ月目の月命日を意識しての公開だったという訳ではないんだろうけれど、この「11日」という日が持つ意味を強く強く感じさせる映画だった新海誠監督の長編アニメーション「すずめの戸締まり」。珍しく結構長めの予告編を見せては内容において結構キーとなるはずの宗像草太という青年が、悪魔的な子猫によって椅子にされてしまうんだという意外な展開を分からせてしまって、それって映画で見て驚くんじゃなかったのと思わせた。

 あるいはsixTONESという人気グループに所属する松村北斗が声を演じる、東京に住んでるイケメン男子が姿を変えてしまうことへの衝撃を和らげ、すんなりと展開に入っていけるようにしたのかもしれないと思ったらとんでもない。そんなものが衝撃でもなんでもない展開が怒濤のように繰り出されては観る人を揉んで揺さぶって翻弄しつつ、心の底にだんだんと下がっていたあの2011年3月11日の記憶を呼び起こして来た。もしかしたらそれに驚き衝撃を受けて立ちすくんでしまう人もいるかもしれないにも関わらず。

 過去、「君の名は。」で彗星の衝突によって壊滅する町を登場させ、そして「天気の子」で激変する気候によって東京の街を水に沈めて自然災害が持つ理不尽さを問いつつ、それからどうやって逃げるのか、あるいはむしろ積極的に受け入れて共存する道を選ぶのかといった判断を促した。それらは過去にあったあの震災の記憶をくすぐりつつ昇華させる役割を果たしていたけれど、一方でそんなに簡単にひっくり返せもしなければ、受け入れられもしないんだちう声を呼び起こした。

 もっと真正面から描いて苦しみを、悲しみを、痛みを受け止めつつそれに対する解を示せといった声。それに堂々を答えたのが「すずめの戸締まり」という作品だった。宮崎に始まって愛媛から神戸、そして東京から福島、宮城といった地域を経由して猫のダイジンを追いかける少女と椅子のコンビが、ドタバタとした展開の中に彼の地の人たちとの交流を持ってそこで過去に人の営みがありながらも廃れていった場所に生き、渦巻いていた思いをいったん閉まって再起を促すようなロードムービーという体をひとつ、取ってその中で阪神・淡路大震災なり関東大震災といったものへの記憶に触れつつ今を生きる人たちの精一杯な日々を見せた。

 そしてあの11年前の大災害とその後に起こった大事故へと矛先を向けてひとつ、またひとつと“戸締まり”をして慰霊し鎮魂をしていった先に訪れる、それでも自分たちは生きるんだという決意めいたものをくれる物語になっていた。それをどのようなギミックによって見せたかはまだ公開されたばかりなので触れないでおくけれど、日本ならではの神話的民話的な設定を使いつつ分からせようとしているところがあって入って生きやすかった。護るが祟る神様という設定は日本人には馴染みがあっても外国だとどうだろう、と思ったものの「もののけ姫」が世界であれだけ人気なら、たぶん大丈夫だろう。

  原菜乃華さんが演じた岩戸鈴芽は天岩戸のアメノウズメを思い起こさせる名前でむしろ踊って引っ張り出す役割じゃないかと思わないでもないけれど、なるほど冒頭で引っ張り出したからこその戸締まりだったのだと思えばそれで腑に落ちるか。良い演技だった。松村北斗もイケメンな顔にバッチリと合っていただけでなく、椅子になっても失わないカッコ良さと、椅子だからこそにギャップがしっかり感じられて巧かった。良い声を選んだなあ。鈴芽のおばさんの環は深津絵里さんが演じてこちらも色香と若さと強さと脆さが混じった良い声だった。

 吐き出すような場面のあの声音、そしてあの表情。新海作品きっても名演だろう。草太の友人の芹澤朋也も良かったなあ。しかしなぜに1980年代ポップス&歌謡曲? シティポップじゃないところが逆の意味でお洒落かも。そんな感じに良いキャラと良い声が満載なので見ていて飽きない。フェティシズムめいた部分がなくて見入れないところはあるものの、そうしたオタク男子へのサービスを削って一般が観ても安心できるアニメーションになったと言えそう。そうした中で「もののけ姫」のエボシ御前に感じた色香を環さんに感じ、エンスー的なフェティッシュを朋也が駆るポンコツスポーツカーに覚えるのだった。また行こう。

 見終わって朝ご飯を囓りそれから池袋駅の構内にあるステーションボックスでストップモーション・アニメーションの偉い人にインタビュー取材。とりあえず4回は見ろ、話はそれからだ的な言葉を戴いたので4回見よう。終わってからお茶の水へと出て聖橋から地下鉄丸ノ内線がトンネルへと入っていくところを観たけれど、ミミズは飛び出していなかったし椅子も少女も飛んでいなかった。残念。カツカレーを食べてVELOCHEで議事録をまとめてそして戻ったら聖橋から撮影している人が何人か。きっと観た人たちだな。東京だとあそこが象徴的な場所になっているから。草太は朋也と同級だから立教大生ってことなんだろうけれどお茶の水に住んでいるのは古本屋が近いから? 気になった。


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