パンドラの筺


 パンドラの筺を開けたら、飢餓、天災、戦争、妬み、ありとあらゆる悪いことが出てきて、世界を襲いました。そして、筺の中に最後に残ったのは?

希望?

 何気なく納得してるけど、けっこうおかしいよね。ありとあらゆる悪いことが筺の中にあって、たったひとつ最後に残ったのは、究極の悪いことのはずなのに、それが希望。ほんと? って、思わない?

じゃあ、なんなんだろうね、最後に残ったの。

 最後まで残ったのは、それが出てこなかったが故に、人間にはまだ希望が残された、っていう究極の悪いこと。

 なんだか知りたい?

それはね、予知。
未来を知ってしまうこと。

 悲しいよね。いろんな、考えられる限りの悪いことがどんどん出てきたのに、それよりもすごい、とっておきの悪いことが、未来を知ることだなんて。
 未来はバラ色だって、ぼくだって信じてるわけじゃないけど、そんなにひどいのかな、ぼくたちの未来。

 でも、未来がわかっちゃったら、もう生きている意味がないから、それは最後のこと、なのかもしれないね。いい悪いはべつにして。
 そう考えてもなんの慰めにもならないけど、それでも悲しいね。最後に残ったたったひとつの希望は、未来を知らなかったこと。

でも、少しだけ、見てみたいな。
やっぱり、やめとこ。

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