qualifying session after the rain
雨のあとの予選。
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路面はまだ濡れていて、でも雲はもうない。
こんな時の予選は、大変だよ。
あっ、予選ってね、1時間だけ時間があって、その中で各車12周走ることができるんだ。
それで、一周の速さのはやいほうから順に、決勝のスタートにつくんだ。
コースインした周回は、タイヤを暖めなくっちゃいけなくて、最後の一周は、ピットインするために使うから、タイムトライアルを一周すると、最低三周、コースを回らなくっちゃいけない。つまり、最高で四回、コースインできるってこと。
昔は、予選専用タイヤとかを使っていて、それは、ものすごくはやく走れるかわりに、タイムを出すのは一周だけ、っていうものだったから、みんな三周かける四回、コースにでていたのだけれども、このごろはレース用タイヤを予選に使わなくっちゃいけないから、一発の速さはないけど、耐久性はある。だから、タイムトライアルも一周だけじゃなくて、二周、三周っていうても使える。
そこが作戦。
で、今回。
雨上がりの予選。クルマは当然、路面が乾いてたほうがはやく走れる。濡れているコースは当然、クルマが走って、雨を払いのけてくれれば、はやく乾く。
ってことは、みんなが走ってくれたあとのほうが、はやいタイムがでるってこと。
つまり、あとからコースインすればするだけ有利なんだけど、でも予選って1時間しかない。
そこが、駆け引き。
みんな、残り時間をにらみながら、だれか先にでろよ、っておもってるんだけど、待ちきれずにでていくのは、たいてい、ここ一発に自信がない下位チーム。つまり、一発じゃなくて、二発も三発もやらなきゃいけないところ。
まあ、たいてい高木虎が最初にでてくんだけど。
今回、トラが最初にでたのが、1時間の予選の、もう半分も過ぎようかっていうところ。トラは、二周目でちょっとコースアウトしてしまって、いいタイムがでなかったのだけれども、そのあと、みんな走り出す。
でも、まだ路面が乾ききってはいないんだ。
そこで、ドライのタイヤではなくて、ちょっと濡れた路面用、っていうタイヤででていったのがシューマッハー。この時期に、それがぴたりと当たって、トップタイムを叩き出した。
でも、安心はしてられないんだ。路面はどんどん乾いていって、っていうことは、どんどんはやく走れるようになってくる。だからみんな、終了直前の、短い時間が本番だって、よく知っている。
予選は1時間なんだけど、きっちり1時間じゃないんだ。
正確には、「予選開始後1時間で振り始められるチェッカーフラッグを受けるまで」っていうこと。
どういうことかわかる?
つまりね、コースは長くって、一周するのに時間がかかるじゃん。そして、タイムをとる区切りっていうのは、本番レースのスタート地点。そこに、チェッカーフラッグを持ったおじさんがいて、レースを終えたクルマみんなに、祝福のチェッカーを振ってくれる。
そのチェッカーが、振り始められるのが1時間後だってこと。
だからね、たとえば、1時間の、1秒前にそのスタート地点を通過していれば、ゴールをするのが1時間を過ぎてても、その周回のタイムは有効だってこと。
さっきもいったように、こういう予選では、あとのほうがより有利になるから、みんなこの、1時間を過ぎてのゴールっていうのを目指して、コースインの時間を調節するんだ。そうすると当然、コースが混むよね。混んだコースは、遅い車と速い車が混在するから、速い車にとっては邪魔者が多いことになる。はやいラップは、出にくいよね。
そういう、いろんな要素を詰め込んで、でも最終的にはドライバーの一発の腕頼み、っていうのが予選。おもしろいでしょ。
今回は、1時間たったその時点で、コース上に22台、ってことは、全部のクルマが走ってたんだけど、その、混み始める時間の直前に、狙いすましたように信じられないような完璧なコース取りでベストラップを叩き出したシューマッハーが、終了時間と前のクルマとシューのタイムという三重のプレッシャーにつぶされたミカとクルサードをかわして、今期初のポールポジション。おまけに、マクラーレン軍団との間には、ジャックビルヌーヴが飛び込むおまけ付き。
つい何戦か前まで、高速サーキットでは全く歯が立たなかったフェラーリ、やっぱりやってくれたね。
ここ関西では、地上波で予選ってやってないけど、おもしろいよ、予選って。