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それが傑作でないことは、ちょっと読んだだけでわかったのだけれども。
それがえすえふとしては、かなり致命的な欠陥を持っていることも、すぐに気がついたんだけれども。
この作家のお話としても、とてもじゃないけれど、よくできているうちには入らないのだけれども。
途中で何度も、読むのやめよう、やめよう、と思ったのだけれども。
とにかく、いいたいことはいっぱいあるのだけれども。
でも、最後まで読んで、よかったよ。
うまいなあ、って、いつも思うんだ。この人のお話。それが今回、はじめて、うまいなあ、と、下手だなあ、の間を行ったり来たりして。でも最後の、ほんとに最後の瞬間で、やっぱりうまいなあ。に傾いてしまう、いつものパターンにはまってしまったよ。
最後の場面は、まあ、ネタバレといえばネタバレなんだけど、ばればれのネタバレ。そのものズバリ、まんまタイトルやん、って。もっと言っちゃえばまんま表紙やん、って。おまけに途中に一回、ほとんどおんなじような景色が出てきて。
だからきたきた、やっぱり来た、ってかんじなんだけれども。
おまけに、この景色のためだけの物語なんだな、っていうのが見え見えで、無理な設定、無理な行動、無理な感情が積み重なっていて。さらにだらだら長くって。
つまり、これを書きたいがためのこの分厚さかい、っていう思いが、読んでいる途中にも、読んだあとにもふつふつと浮かんでくるんだけれども。
でも、それでも。
それでもやっぱり、最後の場面には泣いてしまいました。気持ちいい涙でした。
頭に浮かんだ一枚の絵を、これだけのお話に仕立て上げる才能は、ほんとにすごいです。
つまり、新井素子のえすえふってことで過度に期待してたんだけど、ふたを開けたらやっぱ新井素子じゃん、って感じかな。
傑作ではないけれど、間違いなく彼女の代表作になります。
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