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フリージャズの天才、阿部薫の半生を、映画にしたものです。
阿部薫っていう人のサックスを、ぼくはこの映画ではじめて聴いたのだけれども、なんていったらいいか、そう、打ちのめされてしまいました。
こんなに、鋭くて、疾い、それでいて、太くて濁りのない音を出す人。
そんな人は、やっぱり普通に生きていくことができなかったのです。
彼の奥さんは鈴木いずみという小説家で、このふたりの関係はとてもぼくなんかが言葉にできるほど生やさしいものではなく、壮絶、という言葉しか思い当たりません。
そんなふたりの関係を、サントラには実際の阿部薫の音を使って描いた映画です。
安保の時代の雰囲気がよくでてるとか、広田玲央奈と町田町蔵が好演してるとか、そんなことはどうでもよくて、ただ、あの音に身を切られ、ふたりの壮絶な生き方と死に方に圧倒される。そんな映画です。
「速度が問題なのだ。音にしても言葉にしても。どれだけ早く走らせることができるか・・・」
この映画の原作は、稲葉真弓さんの「エンドレス・ワルツ」です。
女流文学賞を受賞したこの小説も、ぼくは大好きです。