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不夜城


 見たよ、不夜城。
 読んだよ、不夜城。
 僕としてはめずらしく、見てから読んだんだけど、それは、あんまり期待しないで見て、でも、結構おもしろくって読んだ、ってことかな。
 いいね、映画。すごいね、本。
 映画ではよくわからなかった人間関係とか、せりふの背景とか、実はそういうものがこの作品のいのちだったりするんだけど、すごいディテールの積み重ねで説得力を持たせてしまうんだ、小説のほうは。それから、映画ではちょっと滑稽に見えた、主人公たちの生きることへの執着。それが綺麗なんだなあ、小説では。
 とにかくすごい小説でした。久々に。

あれっ、映画のほうを褒めてないね。

 おもしろい映画だったよ。まあ、日本映画だから見る人は少ないんだろうけど。ちょっとお気に入り。
 新宿の書き方が、たとえば鮫にくらべて、ちょっと無国籍ふうで、アジア映画の「色」をスパイスにしてて、ちょうど「イェンタウン」みたいで。
 ものすごく忠実に映画化してあるんだけど、二つだけ、明確に違っていて。
 ひとつは、小説では実現しなかった健一と夏美の一時の休息と、もうひとつは、大沢在昌が絶賛したあのラスト
 どっちも綺麗で、好きだな、僕は。もちろん実現しなかったり、より即物的だった小説のほうが、よりハードボイルドで、そうでなくっちゃ、っていうのもあるんだけど。
 要は、どっちも好き、ってこと。

 あっ、知らない人がいたらごめんなさい。不夜城って、歌舞伎町を巡る中国系マフィアの抗争と、その間をかいくぐろうとした二人のハーフの物語です。

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