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ロケットガール
天使は結果オーライ
私と月につきあって  野尻抱介


 えすえふって、やっぱ少年少女のためのお話だよね。
 むかし、母親に、「えすえふなんて、どうせおとなになったら読まないんだから」とかいわれて、えらくかちんときた記憶があるのだけれども。まあ、いまをおとなとするならば、やっぱり読んでるんだけど、えすえふ。
 でも、子供のためのお話、というのもうなずけるんだよなあ。小学校の時って、ルパンとホームズとドリトル先生と、それから空想科学小説、そればっか読んでたもんなあ。
 
 もちろん大人向けのえすえふ、っていうのもあって、最近は読むとしたらやっぱりそっちが主になってはいたんだけれども、久々に読んだ、いわゆる少年少女向け(ジュブナイル)のえすえふ小説。
 
 これ、ぶっとびます。
 ジャンプじゃないけど、友情、努力、勝利。そしてなにより科学考証。安心して読めるえすえふのすべてを満たしていて、そして決して子供だましじゃないよ。
「有人ロケット打ち上げをやすくするにはどうすればいいか?」
「乗組員を軽くして、宇宙服も軽くして、多少のトラブルは船外活動で補えばいいんです」
 ということで、軽くて丈夫な日本のぢょしこうせいが宇宙飛行士になる、ってはなしなんだけど、その設定からいくらでもいかがわしい話に持っていけるのに、表紙や挿し絵はその方向に持ってこうとしてるのに、断固それを拒絶して、でもソフトな堂々たるえすえふ小説。恋愛のレの時もないから、ジュブナイル、とは言い難いのだけれども。
 きちんとした考証のなかで、宇宙活劇を見せて、そしてほんのちょっとつん、とくる。お話って、こういうものだよね。
 
 ちょっと入手が難しいかもしれないけれども、是非、みんなに読んでみて欲しいなあ。
 

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