2000年の、マウントウジは、ちょっといい。
                             
あさかわ


 去年、ミレニアムでとことん盛り上がってしまったせいか、本当の世紀末である今年は、いまいち盛り上がりに欠けるね。アルマゲドンもディープインパクトも、世紀末映画はみんな出尽くしちゃったし、宇多田ヒカルや椎名林檎が、高らかに新世紀への希望を唄うわけもない。まあ、もちろん時間っていうのはいつだって区切りなく過ぎて行くものだから、そっちの方がとても正しいのだけれども。
 あ、マウントウジの話だったね。
 じつはね、個人的な話で恐縮なんだけれども、この一年間、記念すべきミレニアムの最初の一年、僕はほとんどジャズっていう場所から離れて暮らしていたんだ。もちろん、音楽は聴いていたんだけれどね。それは椎名林檎であったり朝比奈隆であったり、さらにはマディ・ウォータースであったりエリアデス・オチョアであったり。周辺までは行くんだけれども、何故かジャズまでたどり着かない。
 きっとたいした理由なんてないのだけれども、何となくジャズから遠ざかっていたんだ。
 だから、春の宇治金時のコンサートにも、出かけることをしなかった。演奏を聴いたのは、ライブ盤のCDが出てから。

 なんだ、去年と一緒じゃん。
 CDを聞いてまず思ったのが、これ。なんだ、去年と一緒じゃん。ただし、これは演奏が、雰囲気が去年と一緒じゃん、マンネリじゃん、ということではなくってね。そういうこととはまったく反対で、聞いた後の悔しさ、行けばよかったなって地団駄を踏むような悔しさが、去年とおんなじだったんだ。
 経験から学ばないね、って? それはそうなんだけれどもさ。アマチュアのバンドが、「あたり」のコンサートを何遍も連続してできるなんて思う? ふつう。前回こんなによかったんだから今回は、って思うのだってあり、だと思うんだけどなあ。結果的にははずれたけれど。
 あれ、マウントウジの話だったよね。
 その春のコンサートのなかで、この一曲がなければそれほど悔しい思いをしないで済んだのに、っていうくらい印象的だったのが、Flower Arrangement。過去宇治金でも、フューチャーする人を変えて何度か演奏してるんだけれども、今回のフューチャーは鳥居光。ピアニカ。(あらら、マックに怒られちゃった。ピアニカって商標名だったのね。でもしょうがないじゃん、ピアニカなんだから。鍵盤ハーモニカじゃだめなんだから。)なんか懐かしくって、ちょっと物悲しい。そんな音色がよく似合う、きれいなバラードだったね。
 CDで聴いた僕がこんなに気に入るんだから、会場に来てたお客さんもこれはいいってそう思ったはず。そして嬉しいことに、宇治金、なかでも鳥居光もそう思っていたみたい。今回のマウントウジのプログラムには、鳥居のピアニカがいっぱいだ。

 ああ、やっとマウントウジの話だ。
 今年のマウントウジは、はっきり言って予想もつかないね。これは別に僕がジャズから離れていたから、っていうだけじゃなくって。新顔バンドに、意外な組み合わせがいっぱいで、どんな音になるんだろうね。
 まず、ちるど。編成みると普通のコンボかなって気がするけど、そういちろうさんだからなあ、なんかやってくれるはず。ラテンの、村上さんのボーカルと鳥居のピアニカ、よさそうだなあ。ひさよも大きくなっているだろうなあ。それから、でてくるたびにがらりと違う鳥居の、今回はピアニカバンド。たのしみだなあ。
 そしてなにより。
 プログラムみただけじゃ分からないけれども、今回の宇治金時は、ひと味違うはず。コンサートマスターが、白石琢也に変わって初めてのライブ。新生宇治金時の音と選曲、楽しみだなあ。
 クリスマスの週末を、ちょっといい人と一緒にちょっといい演奏を聴いて、そのあとちょっといいことするもよし。みんなで楽しく踊って盛り上がって、そのあと街に繰り出すもよし。

 20世紀の最後の一週間を、にこにこ過ごせるライブになるといいね。
 たのしみだなあ。

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