王者の争い


 前回、最終戦のマレーシアまでもつれ込む、と予想したんだけど、見事、鈴鹿で決まったね。

おめでとう、シューマッハ。

 この数年間、何度となく最終戦にもつれ込んだタイトル争い。その大事な最後の1戦。シューマッハは、いつもの勝負強さからはまったく考えられないほど、毎年毎年最終戦を落とし続けた。ポールをとってもスタートで抜かれ、ライバルに抜かれそうになると自ら接触をしかけ、自滅。
 そのシューマッハ。今年は2戦を残して王手。なんとしても決めたい鈴鹿。
 
 今回ばかりは関西でも地上波で中継した予選。これはすごかったね。
 まえにもいったと思うけど、予選は、1時間の間に、最高4回のタイムアタックのチャンスがあるんだ。
 シューマッハとハッキネン。両方1回目が終わったところで、シューマッハがリード。その後、ハッキネン、シューマッハ、ハッキネンと、走るたびにタイム更新。1位がめまぐるしく入れ替わる。
 ハッキネンのタイム更新をみて、シューマッハがコースに入ったのは、予選終了時刻の10分前。3回目のシューだけど、時間的に4回目は無理。そして、タイム更新。
 ラスト3分、最後のハッキネン。猛追及ばず、0.009秒の差で2位。おんなじマシンに乗るクルサードとバリチェロを0.4秒以上彼方に押しやって、二人だけの別次元の争い第一陣は、シューマッハの勝ち。
 そして本戦。今年もスタートで出遅れたシューは、それでも離されずについていく。明暗を分けたのは2回目のタイヤ交換。
 先に動いたのは、2秒前のハッキネン。6秒代でピット作業を終了し、コースに復帰。申し分なし。そしてあとからはいるシューマッハ。この時点で重いミカ軽いシュー。さらにフェラーリが予想した時刻どんぴしゃで降り出した雨。雨に強いシューちょっと弱気なミカ

軽さシューのがんばりと。

 3周後にピットに入ったシューマッハ。出たときにはミカの4秒前。

 この時点で、勝負は決まったのでした。

 ほんとにぎりぎりのレースを戦い抜いて、自分の手でタイトルを勝ち取ったシューマッハ。
 本当に、おめでとう。



 長くなったけど、今のはまくらだったんです。予定としては。
 もちろん、今年の鈴鹿はいいレースで、大満足だったんだけれども、それだけじゃなくって、今年のタイトル争いは、本当に見事でした。
 去年のタイトル争いを、「愚者のレース」と違うところで表していた私ですが、今年はほんとに「王者の争い」をみることができました。

 どういうことかっていうとね。
 参考までに、去年と今年の後半8戦の、タイトル争いを演じた二人の成績を並べてみました。去年はアーバインとミカね、念のため。

1999年   ハッキネン アーバイン
Rd.
  予選 本戦 予選 本戦
9
オーストリア
1
3
3
1
10
ドイツ
1
リタイア
5
1
11
ハンガリー
1
1
2
3
12
ベルギー
1
2
6
4
13
イタリア
1
リタイア
8
6
14
ヨーロッパ
3

5

9
7
15
マレーシア
4
3
2
1
16
日本
2
1
5
3
2000年   シューマッハ ハッキネン
Rd.
  予選 本戦 予選 本戦
9
フランス
1
リタイア
4
2
10
オーストリア
4
リタイア
1
1
11
ドイツ
2
リタイア
4
2
12
ハンガリー
1
2
3
1
13
ベルギー
4
2
1
1
14
イタリア
1
1
3
2
15
アメリカ
1
1
3
リタイア
16
日本
1
1
2
2

 去年は、10戦ドイツで、ミカのリタイアした隙に追いついたアーバイン、その後二人で組んずほぐれつの大混戦。といいたいところなのだけれども、ベルギーではどちらも優勝できず、イタリアでミカがリタイアした、隙に乗じるはずのアーバインが6位がやっと。後半8戦で、二人のワン・ツー・フィニッシュはなんとゼロ。決め手になったのは、ヨーロッパで醜くも6位争いを制したハッキネン。勢いでジェネまで抜いて拾った2ポイントっていうんだから。これじゃあ、結果的にチャンプになったって、王者とは認められないよね。
 その点今年。
 シューマッハ、悪夢の三戦連続リアイアでミカに追いつかれてからは、一位と二位の奪い合い。最初にリタイアしたミカは、チャンプからも遠ざかった。
 これが本当の王者の争いってもんでしょ。手に汗握るってヤツでしょ。
 日本人不在、本田も勝てずに、盛り上がりに欠けても全然おかしくなかった今年のF1。でも、終わってみたら僕が見始めてからの10数年のなかでも、屈指のいいシーズンでした。

ありがとう。ミカ、シューマッハ。

どっちも立派だったよ。

 あ、そうそう。シューにはもう一つ仕事が残ってるんだった。年間9勝、最多勝タイがかかってるんだよね、最終戦マレーシア。

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