新年になると、いろんなチームから続々と新車が発表されて、気分はもう開幕だね。
せっかく去年がんばった琢磨は今年はテストドライバーになっちゃったからレースには出ないし、ホンダはジョーダンへのエンジン供給を止めちゃったから1チームしかなくなっちゃったし。ジャパンパワーはちょっと縮小気味だけど、そんなことには関係なく新しいシーズンはやってくる。
今年はね、かなり大胆なルールの変更があったから、かなり戦い方が変わると思うよ。楽しみ楽しみ。
ルールの変更は、去年フェラーリのシューマッハが速すぎて、レースにおもしろみがなくなったせい。史上最速でチャンピオンを決めて、しかもそのあともえげつないほど勝ち続けたシューマッハとフェラーリ。もちろん他のチームがだらしないのだけれど、消化試合が多くって興行に支障をきたすらしい。どんなルールを作ったって、シューマッハは強いと思うけどね。
そんな、ルールを変えてしまうほどに強かった去年のシューマッハ。どこがそんなに強かったのか、ちょっと振り返ってみたいと思います。例によって僕のあやふやな記憶で書いていくので、怪しいところもあるかもしれませんが、気がついたら教えてね。
たくさんすぎて、すべてをあげることなんかできないけれど、去年のシューマッハの成績。
全17戦完走。
全17戦ポイント取得。
全17戦表彰台。
優勝回数11回。
バリチェロとのワン・ツー・フィニッシュ5回。
バリチェロとのツー・ワン・フィニッシュ4回。
第11戦で7月中のチャンピオン決定。
獲得ポイント144ポイント。2位のバリチェロにダブルスコア。
こんな所かな。
もうこれだけで、シューマッハの偉大さについては十分伝わると思うんだけど、僕なりの感想を添えつつ、いくつかについて解説していきたいと思います。
まず、全戦完走。
つまり、シューマッハのフェラーリは、レース中に一度も致命的なクラッシュをしていない。シューマッハも一度も致命的なミスをしていない。これってすごいことなんだよ。
2001年、ジャン・アレジが最終戦の手前まで全然完走をやっていて、はらはらしながら見てたんだけど、鈴鹿でクラッシュ。毎回数台がリタイアして、悪いときには完走率半分以下なんていうレースもある中で、全戦完走したのはいつの誰以来だろう。ちょっと思い出せません。しかも、チャンピオンをねらっていくハードなレースの中での偉業。
偉大なドライヴァーと、偉大なチームが一緒にならないとできない記録。僕の中では一番驚いた記録でした。
全17戦表彰台。
もちろんシューマッハが全戦完走ということは、おまけとしてこういうことだってついてくるんだけど。
実は、2002年のシーズン当初、フェラーリは型落ちのクルマを使っていたんだ。2001年モデル。非常に完成度の高いといわれていた2002年モデルは、耐久性に合格点が出せなくて、耐久性万全の2001年モデルでスタートすることに。
F1って、毎年毎年マシンが進化するから、一年落ちのマシンってもうクラッシックカーに近い。あえてそのクラッシックカーでスタートしたフェラーリは、優勝なんてもくろんでなくって、ポイントとれればなあ、っていうくらいの計算をしていたと思うんだけれども。
第一戦、優勝。
あんまりあっけなく勝っちゃったもんだから、次の2戦目も型落ちを使ったんだけど、これは苦戦。最終周回まで4位につけたシューマッハ。最後にスローダウンしたJ.バトンを抜いてようやくの表彰台。
そのあとは、2002年モデルに乗り換えて勝ちまくり。3位だってこの一回しかない。
だから、史上最高の全11回優勝も当たり前。
あたりまえなんだけれども、ちょっとみそが付いちゃったよね。第6戦、オーストリアで、最終周回までトップを独走するバリチェロを、チームオーダーで譲らせての優勝。6戦中5勝目。
今でこそ、他チームを寄せ付けない強さを持つフェラーリだけれども、ドライヴァーズチャンピオンになったのは、2000、2001年だけ。その前は、ことごとく最終戦で機会を逃がしていたんだよね。
今年はもうこの時点では独走状態だったのだけれども、2000年、開幕3連勝から中盤、悪夢の3戦連続リタイアでミカ・ハッキネンに一時ポイントを追い越された悪夢が脳裏から消えていないフェラーリ。30秒近く前を行くバリチェロにスローダウンを命じた。
これは命令なのかバリチェロの意地なのかはわかないけれども、その30秒を最後のホームストレート「だけ」で縮めたわざとらしさと、シューマッハが表彰台の中央をバリチェロの譲ったのがかなりバッシングをされたのだけれども。
僕は、チームオーダーはありだと思うのだけどね。その前後のわざとらしさとかはおいといて、30秒もチェッカーの前に待てるなんて、他のチームが屈辱に思うべきだと思うしね。
ともかくも、こうして譲られた1勝もカウントして、史上最高の年間11勝。
ただし、この借りは大きな利子を付けてこのあと返すんだよね。
それが、バリチェロとのツー・ワン・フィニッシュ4回。この4回、すべて1,2位の差は0.5秒以下。これは、シューマッハとバリチェロが最後の最後まで優勝を争っていた結果、ではないよ、もちろん。つまり、シューマッハはバリチェロに勝ちを4回譲ったんだ。前半の、譲られた1勝のために。もちろん、バリチェロには4回勝つだけの資格も速さもあったのだけれどもね。
その、4回のツー・ワンも含めて。
シーズン全17戦のうち、フェラーリのワン・ツーは何と9回。16戦15勝を飾った1988年のマクラーレンのセナ・プロのときでさえワン・ツーは7回だから、いかに突出した強さがシューマッハじゃなくってフェラーリというクルマにあったかがわかるよね。
その、フェラーリというクルマ、フェラーリというチームにモチベーションを与え続けられるシューマッハ。
多少ルールが変わったくらいじゃ、止められないとは思うけど。
今年は史上最高タイの50年ぶりの4年連続チャンピオンをねらうシューマッハ。新ルールがあたえる影響については開幕してから考えてみたいと思います。