やっと、今年のページにしました。
今年のテーマは、スペクタクル。
おもしろい演奏会に、いくつであえるかな?

このところ、更新していないないのにもかかわらず、すごい勢いでアクセスが増えています。
皆様どうもありがとうございます。
次回更新予定は今週中(2月3日現在)。ネタは大フィル/ブル8です。

2003年11月28日
大阪フィルハーモニー交響楽団 第373回定期演奏会
シュテファン・ザンデルリンク:指揮
イダ・ヘンデル:ヴァイオリン
ザ・シンフォニーホール 2階BB列31番 A席

モーツァルト:交響曲 第29番
ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲 第1番
     en:バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ アンダンテ
シュトラウス:交響詩 死と変容
シュトラウス:交響詩 サロメより 七つのヴェールの踊り

 本当はこの間に一個あったんだけどね。ちょっとコンサートが続き過ぎちゃったから、一休みして。一ヶ月ぶりのコンサート。
 ちょっと体調が悪くてね。クスリ飲んで、もうろうとなりながらのシンフォニーホール。出し物は、派手な交響曲が並ぶ大フィル定期の中では屈指の小品集。ホントか、それ。

 そのせいもあってかな。二階席から見る客席は、かなり空席が目立つ。クワイヤ席とか二階、三階の横の方は半分も入ってない。まあ、二日公演だからこんなもんなんでしょうけど。
 プログラムと一緒にもらったチラシに織り込んであった、大フィルの来年のスケジュール。来年はほとんどが木、金曜公演。一回だけ金、土。曜日が固定なのはいいことだね。金曜日っていうのは辛いけど。
 オオウエエイジは4回。ハルサイとブル8、オペラにマラ6。すごすぎ。ブルックナーは7じゃなくって8なんだ、うれし。

 さて、曲。
 客席もがらがらなら、ステージもがらがら。弦も管も少なくて、いつもより二回り小さい編成。モーツァルトだからね。しかも、後に控えるのがシュトラウスだからね。用意されているセッティングは大きい大きい。半分も使ってないよね、きっと。
 颯爽と入ってきたのは、今年40になる若手指揮者。でっけー。
 始まったモーツァルトはね。
 心持ち遅めで、ほっとくとどんどん先に進んじゃうような陽気さは全然なくって。きちんとまとまってるんだけど、サウンドがざらっとしていて。
 あ、褒めてるように聞こえない? 結構好きです、この演奏。クスリで朦朧としてたから、ほっとくと眠りの国に行っちゃいそうだったんだけどね。目をつむっていても、どっかに引っかかるようなざらっとした音と、ほっといたら止まっちゃうんじゃないか、っていうテンポが、こっちの世界に引き留めておいてくれる。BGMじゃないんだぞ、今ここで演奏してるんだぞ、って。そういう主張、好きだな、僕は。モーツァルトっぽいかはともかくとして。

 お次はブルッフだったっけ? 知らない人だから、名前なんて記号に過ぎないんだけど。
 ヴァイオリニストは、珍しく、昔若かった女の人。75歳って、オケの中にはいないよね、そんな歳の人。もしかして現役最長老?
 この曲はね、よく分からないんだけど、なんかリズムがいびつ。その、ゆがんだ伴奏から抜けてくるヴァイオリンは、小細工じゃない、唄。もちろん75歳のソリストのために、技巧に満ちた曲を選ぶわけもないのだけれども、しっかりした音と、聴きやすい唄。いいなあ。
 何度目かのカーテンコールで、バッハ、ソナタ、Aマイナー、アンダンテ、って叫んで始めた無伴奏。
 たぶん諏訪内さんがやったのと同じ曲だと思うんだけど。どうしても好きになれないな、この曲。どれだけむつかしいのか簡単なのか知らないけれど、解釈なのかも知らないけれど、2回聴いて2回ともならそういう曲なんでしょう。たどたどしいんだよね。通奏低音とメロディを同時に弾くんだけど、現代の、ビート音楽を聴き慣れた耳には、たどたどしいリズム感が、つっかえつっかえ弾いているようにしか聴こえない。
 音はよくって、はっとするような低音とかも心地よかっただけに、なんか残念だな。

 休憩終わって、がらがらだったステージも満員になって。
 リヒャルト・シュトラウス。
 ラヴェルと対になって、音の魔術師っていうイメージがあるんだけど、プログラムを読んでみると交響詩って、駆け出しのころに書いただけなんだ。そのあと交響曲にいったらどうなってたんだろうね、聴いてみたかったな。彼はオペラに行っちゃったんだけど。
 交響詩と交響曲って、どうちがうの? って思う人もいるかも知れないね。僕にもよくは解らないのだけれども。
 交響詩っていうのは、表題があって、ある風景やら場面を音で描写する曲なんだよね。それに比べて、交響曲は、一曲(いくつかの楽章に別れてるんだけど)で一つの世界。その世界すべてを曲で表現するから、イメージを縛るような題名は要らないんだよね。題名があった方がレコードが売れるから、日本では勝手につけることも多いけど。運命とかロマンティックとか。
 だから、シュトラウスが、サロメの物語を音にします、という暗示を抜きにして、ホントに音楽だけで勝負したらどんな曲を作るのか。ちょっとだけ興味があるな。

 というシュトラウス。リズムと音の色彩感が楽しい彼の曲は、吹奏楽の世界でも人気なんだよね。むつかしいからある程度の実力校じゃないと演奏できないところも含めて、あこがれの曲。僕は演奏したことはないけれど、コンクールとかではよく耳にしたよ。
で、第2部はシュトラウスの2曲なんだけれど、25分の死と変容全曲が前座で、10分の7つのヴェールの踊りがトリ。よくわかんないけどそんなもんなのでしょうか。7つのヴェールの踊りはそれこそコンクールの常連曲だから、有名なんだけどね。

というわけで、死と変容。シュトラウスってきらびやかで豪華絢爛、っていうイメージなんだけど、実は単調。盛り上がり方も大きな山に登るんじゃなくって、小高い丘の上でシート広げてピクニック、みたいな感じ。ってどんな感じや。面白いんだけど我を忘れる訳でもない、ってとこかな。第2部からステージに上ったオーボエの加瀬さんのソロは見事でした。前回でやめちゃった女の人のソロが好きだったんだけど、今日は加瀬さん絶好調。
絶好調の加瀬さんは、続いてサロメでも腰をくねらしながらのソロ。この曲は、吹奏楽版が耳にこびりついてるんだけど、原曲あんまり聴いたことないのかな。すごい響きが新鮮で、しかもきらびやか。やっぱり本物に限るね。
 きらびやかなソロは、オーボエもそうなんだけど、何よりいっとかなきゃいけないのは、ビオラ。吹奏楽版ならサックスのソロになるのかな。実はビオラトップのソロだったんだね。めちゃくちゃかっこよかったです。
  10分の自由曲だって、コンサートのトリになるんだね。最後はもちろん大盛り上がり。そんなに何回もカーテンコールの必要はないだろうって、途中で拍手やめちゃったけど(って気に入らない訳じゃないんだよ。ただ、長すぎるでしょ。朝比奈でもオオウエでもないんだから)オーボエとビオラが立った時にはおっきな拍手を送りました。

 あー楽しかった。

 

2003年11月12日
同志社交響楽団 第75回定期演奏会
〜ブルックナーへの若き情熱〜
ザ・シンフォニーホール 1階C列34番

ワーグナー:トリスタンとイゾルテより、前奏曲と愛の死
ブルックナー 交響曲 第4番

 じいさんの9番から2年ぶりにシンフォニーホールに鳴ったブルックナー。それだけで堪能しました。

 

2003年10月31日
大阪フィルハーモニー交響楽団 第372回定期演奏会
大植英次:指揮
竹澤恭子:ヴァイオリン
佐藤芳明:アコーディオン
ザ・シンフォニーホール 2階BB列31番 A席

アルジェント:ヴァレンティーノ・ダンス
バーバー:ヴァイオリン協奏曲
en. クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ、カプリース
ブラームス:交響曲 第2番

 ふう。
 偶然とは言え、一週間に三回も重なると、大変だね。時間を作るのもそうだし、こうやって書くのもそうなんだけど、何よりもわくわくする気持ちを持っていくのが、ね。
 一週間くらい前から日程を気にして、ちょっと予習用のディスクでも引っ張り出して。睡魔に妨げられないように睡眠時間を調節して。耳を慣らすためにiPodを耳から外して。
 そういう儀式めいたこと、すっ飛ばして気がついたらホールの席に座ってる、みたいなね。なんかもったいない。
 とはいえオオウエエイジだからね。予習はコバケンのブル8に続けて聴いた朝比奈・親日。ブラ2ってあんまりよく知らないんだけど。

 いつものことだけれども、メインのブラ2だけは気にしてたんだけど、前座が何だか全然知らなかった。アメリカもの? そうだったんだ。
 復活、幻想とお祭りものが続いて、やっとドイツもの。オオウエエイジの真価、見届けますって感じだと思ったんだけど、そうでもないのかな。
 まあいいや、曲全然知らないから、聴いてから考えよう。

 一曲目は、なんとタンゴ。しかもアコーディオン入り。もちろんオーケストラって、タンゴみたいなキレのいい音楽を演奏するための器じゃないからね、本場のタンゴ、っていうわけにはいかないけれど、トラで入ったアコーディオンとサックスのおかげで楽しい音楽だったね。アルトはクラの持ち替えだったのかな。
 驚いたのは、アコーディオンの音量。メゾピアノの弦がブレークしてソロになるんだけど、全然貧弱な感じがしない。チープな音の感じがいいんだなあ。奏者の佐藤さんは、当たり前だけどクラッシック畠ではなくって、CHEMISTRYとか中島みゆきなんかともやってるらしい。
 曲は、三曲の組曲だからって油断してたらすぐに終わっちゃった。もったいない。もっと聴いていたかったな。
 コンチェルトっていう訳じゃないからか、アコーディオンにはそんなに敬意の払われない拍手のあと。
 ヴァイオリン協奏曲。
 竹澤さんのヴァイオリンは、ブン廻すって訳でもないんだけど、シンフォニーの二階席まで十分届いてきた。曲のことはあんまり覚えてないんだけど。
 何度目かのカーテンコールで、アンコールのソロ。クライスラーってアメリカ人? この演奏、すごくよかったよ。ソロの小品っていうか抜粋なんだけど、100%個人芸で観客を釘付け。いろんな技を繰り出すんだけど、どこまでも心地いい、唄。コンチェルトもよく唄ってたけど、こっちの方がもうけものだったな。
 それも含めて長いカーテンコールでね。あ、これから休憩なんだ、って。
 ホワイエが混んでたから、外出券もらって外でコーヒー飲んで。

 さて、ブラームス。
 2番って、朝比奈さんで聴いてるな、そういえば。あんまり印象に残ってないけれど。これは僕の勉強不足なんだろうね。
 ブラームスって、つきあい方がむつかしいよね。イメージ的には古典派の権化っていう感じで、クラッシック音楽のメインストリートなんだけど、生で聴くと、もう楽しくてうきうきわくわく。

 だから、アメリカもののあとのブラームスって、ほんとは違和感ないんだけどね。イメージ的にはちょっと違和感。
 というわけで、オオウエエイジのブラームスは、実はマーラー、ベルリオーズの流れから外れるものでも何でもなくって。そのまんまの完全燃焼系。
 最初はふんぞり返って眺めてたんだけどね。気がついたら前のめりにのめり込んでいた。ホント、楽しい。
 オオウエエイジの操る大フィルは、とっても精巧なアンサンブルで。ホルンをはじめとするソロものびのび吹きやすそう。その反面、チェロを前面に出したどっしりとした響きっていうのが感じられないんだよね。今までは曲のせいかな、と思っていたのだけれども。ブラームスでもそうじゃなかったら、それは意識的にそうしているんだろうなあ。ちょっと寂しい。
 そんなことは、束の間よぎっただけなんだけどね。もうオオウエエイジに好き放題もみくちゃにされてただけだから。

 速くも定番となった、カーテンコール。ソリストを、パートを立たせて、何度も何度も拍手に応じるオオウエエイジ。観客一人一人の目をのぞき込むオオウエエイジ。
 ホント、役者やね。

 ブルックナーかベートーヴェン。はやく聴きたいな。

 

2003年10月29日
大阪国際フェスティバル協会特別演奏会
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ:指揮
ザールブリュッケン放送交響楽団
フェスティバルホール 1階E R7番 S席

ブルックナー:交響曲 第8番

 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキって、言える? ザールブリュッケン放送交響楽団って、覚えられる?
 フェスのプレイガイドでチケット取る時、困ったんだ。どっちも覚えてなくて。
「すいません、シカゴと同じくらいの時に来て、ブルックナーやる人なんですけど」って。小屋の奥にいたお兄ちゃんが解ってくれて助かったけど。

 それにしても、久しぶりだね、ブルックナー。去年の7月の若杉の3番以来だから、一年以上聴いてないんだね。僕が聴いてないってことは、大阪でブルックナーが鳴ってない、ってことかな。なんてことだろう。

 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ、ミスターSって呼ばれてるそうだからSさんって呼ぶけど、一応ブルックナー指揮者ってことになってるからね。外タレのオケってことも含めてかなり楽しみ。フェスっていうのがちょっと難点だけれども。
 直前まで、新聞でかなりしつこく広告打ってたね。チケット売れてないのかな。東京は3デイズ完売だったらしいのに。大阪はブルックナーの本場じゃなかったんやろか。

 僕の席は前から5列目で、目線がちょうどステージの床と同じくらいの高さ。つまり弦楽器しか見えない、ってこと。発売日からかなり経ってチケット買ったからしょうがないかと思ったんだけど、後ろの方は結構空いていて。もうちょっと後ろ目がよかったなあ。そんなに後ろはいやだけど。

 Sさんは聴いたことないんだけれど、BSデジタルで彼が東京のオケを振ったブルックナーをやっていてちょっと見た。とはいえ、8番を2週に分けてやる上に曲の途中にインタビューがインサートされるような、音楽番組とは言えない代物だったのだけれどもね。だからなんにも聴いていないに等しいね。

 このごろじっくり腰を落ち着けてブルックナーのCDを聴くのもさぼっているのだけれども、前の週末に引っ張り出して聴いたのはコバケン/チェコフィル。演奏がどうこう言うよりも、SACDで一枚に収まってる、っていうのがいいんだよね。しかもオケはうまいし違和感が少ない。結構好き。

 会場はいるまではそうでもなかったんだけどね。目の前のステージいっぱいに広がった椅子を見て、ああ、ブルックナーだ、って。にやにや。隣に座ったうんちくおじいさんが、音楽雑誌に書いてある通りのうんちくを垂れ流していたけれどもそんなのは問題にならないくらい幸せ。だって、8番だよ。

 開演前にステージ上で音出ししている大フィルとはちがって、整列してステージ入場。ここで拍手がおこるんだけれども、これっているのかな? 音聴く前は馴れあいたくないや、っていつも拍手しないんだけど。
 そして入ってきたミスターS。

 音の出る前の緊張に耐えきれなくて、目をつむったよ。
 出てきた音は、、あれ。
 フェスの広さになれていないのかな。ちょっとだけ弦がずれてる。10小節目からのビオラとチェロの音型も、官能的と言うよりは健康的で。
 でも、それもブルックナー。
 4列目っていう、今までで一番ステージの近くから見るブルックナーは、響きよりも生音が裸になる。

 そしてホルン。
 ベルが後ろに向いているホルンは、客席のどこにいても反響音を聞くんだけれど、これがいいんだな。僕の席からはよく見えなかったんだけれど、フレンチホルンとワグナーチューバを完全に分けてたのかな? ワグナーチューバよかった。出てくるたびにこれがブルックナーだ、って。フェスの高い天井見上げて喜びをかみしめてました。

 それに比べてフルートはちょっとブレーキ。姿が見えないんだけど、出てくるたびに現実に引き戻されたね。

 演奏はね。最初の弦にちょっと引っかかったけれど、あとは快調。
 二楽章は、あまりの遅さにつまずいてしまったけれど。
 チェロがあんまり強力ではない分、チューバが引っ張っているのかな。トロンボンも音荒いな、と思ったのは最初だけで、ホルン主体のトゥッティをよく支えてたし。

 そして4楽章にかけて盛り上がるんだけどね。
 なんだろう。つん、っていうのがやってこないんだよね。鼻の奥が熱くなるような瞬間が。
 身体は音の洪水に浸りきっているのに、心が目を醒ましている、みたいなね。
 なんでだろ。健康的、なのかな。天国の響きに満ちているのに、このままずっと続いてもウルウルは来ないだろうな、っていう感じ。

 そして、フィナーレ。
 いやあ、びっくりしたね。あれはないでしょ。最後のリタルダンドなしに一気に駆け抜けた。じいさんの、いきなり倍で数えるようなリタルダンドになれている僕は、あっけにとられて。たぶん会場にいる人もあっけにとられたんだろうね、フライングブラボーも気勢をそがれてた。

 ミスターSは、脚を引きずりながら何度もカーテンコールに応えてた。僕は2度目くらいで拍手をやめちゃったけれど。でも帰り道ではホルンのコラールが頭いっぱいに響いて、にやにやしていたんだろうなあ。

 そうそう、僕の真正面に見えたビオラの2ndプルトのお姉さん。ミカ・ハッキネンに似たすごい美女でした。

 

2003年9月23日
オーケストラ・アンサンブル金沢 大阪定期公演
岩城 宏之:指揮
ミラ・ゲオルギエヴァ:ヴァイオリン
オーケストラ・アンサンブル金沢
ザ・シンフォニーホール 2階DD列34番 A席

ベートーヴェン:交響曲 第7番
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
西村 朗:鳥のヘテロフォニー(1993年度OEK委嘱作品)

 せっかく途中まで書いたのだけれども、なんとうちのマシンのハードディスクが飛んでしまってね。ちょうどこの文章の半分くらいまで書き終えた時。
 まあそんなことはいいのだけれどもね。とにかく。

 やっと涼しくなったね。のどもと過ぎればなんとやらで、身体はもうすっかり涼しさになじんじゃってるけど。変則的な夏もようやく終わって、秋だね。
 秋といえばベートーヴェン、7番の恋しくなる季節だね。えっ、日本の夏、サドの夏とかいってベト7聴いたやろって? そうやろか? 物忘れ激しいね、このごろ。

 でも、7番は不思議に秋が多いね。お祭りだからかな。リズムの祭典。
 今回は、アンサンブル金沢。振るのはもちろん岩城さん。金聖響でベートーヴェンとかやってるけどね、じいさん好みだから、やっぱり金沢は岩城さんじゃなきゃね。
 とかいって、ベト7の演奏会だと思っていたのだけれども、会場についてプログラム見てびっくり。前座やん、7番。
 ベートーヴェンでも、偶数の交響曲や、5番でも前座になってるの見たことあるけど、7番やで。3番に勝るとも劣らないこの曲。なんで法人現代物の前座なんや?
 まあ、憤っててもしょうがないから、気合いを高めて7番に備えよう。
 ステージには誰もいない。TVカメラと、放送用じゃないだろう、っていう数のマイク。並んだ椅子はこぢんまり。まあベートーヴェンって、そんなに大人数の音楽じゃないもんね。

 拍手とともに入ってきたメンバー。ここの女性奏者はドレスなんだよね。おそろいの、二色から選んだドレス。なんかよそ行きっぽくて好きだな。そういえばお客さんも、祝日なのに普段の大フィルよりもちょっとフォーマル。

 編成はちっちゃいね。ビオラ6にチェロ4。ベースも4だったっけ。どんな音が出てくるんだろうね。

 岩城さん登場。いつだったっけ、前に見た時には病み上がりで元気なさそうだったけど、今日は大丈夫そう、よかったね。

 ベト7。
 弦の合いの手で唄う管のソロ。そしてはてしなく昇っていく弦のフレーズ。
 あれ。
 少人数で、精緻なアンサンブルが売りのオケにしてはちょっと雑。音の合間にのぞく空白。響きじゃなくって、空白。もちろんクラリネットをはじめとしたソロ陣の見事さはあったのだけれども、どうしたんだろう。

 と思ったのは束の間なんだけどね。
 一楽章終わって、休みなしに始まった二楽章。
 耳を疑ったよ。
 何が起こったのか、分からなかった。低弦で始まる、葬送行進曲。十数人だから、豊かな響きになる訳じゃないんだけど。
 でも。
 これが、唄。
 プログラムにもある通り、じいさんが、この曲で送ってほしいっていってた、唄。残念ながら、送る会で僕が聴いたのは英雄を送る曲だったけど。
 僕にとって一番印象深かった演奏会。シンフォニーホールでのじいさんの7番。それから送る会。オルガンにつられたじいさんの写真。
 そういうのを思い出しながら聴いた、葬送行進曲。一楽章と全然違うやん。

 そして。三楽章。
 サドの夏で一番がっかりしたのがここ。だけどね、岩城さんはやってくれました。
 何って、トランペットのロングトーン。全員がタータラ、のリズムを演ってるときに、ラッパの二人だけがロングトーン。二人のロータリーは、後先考えずにとばしまくり。クレッシェンドも何もあったもんじゃい。
 大好きだよ。
 じいさんいなくなって、サドもああだったから、もう聴けないのかと思ってたこのバランス。岩城さんがやってくれるなんて。
 二楽章からここに来て、泪でかかったんだけどね。ラッパのタンギングがもう少しきれいだったら、もう大泣きだね。

 四楽章は、ちょっと失速気味かな。演奏じゃなくって僕がね。もちろん大盛り上がりのフィナーレなんだけど。
 なんだけど、ブラボーはなかったな。なんでだろ。そういうお客さんが来てなかったのかな。演奏は間違いなくブラボーでした。

 休憩あけて、外人のおねーちゃんでチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。尼響の5番からマイブームなんだよね、チャイコ。この曲も期待に違わずいいメロディ、っていうか5番に似てるでしょ。
 ソロはでかい音量でよく唄う。シンフォニーの二階席まで十分に届いてくる。しかも美人。諏訪内ほどではないしろ。
 しかし、長いね。7番と同じくらいあるんちゃうか、っていうくらい長い。楽しかったからいいんだけど。
 次に曲が控えてるからか、ヴァイオリンのアンコールは無し。ちょっと残念だったかな。
 続いて、メインなんだろうね。ポリフォニー。

 現代曲に関しては採点辛いんだけどね、普通は。でも、この曲、好き。
 現代曲のご多分に漏れず、メロディーじゃなくって奇抜な音の断片で構築されるんだけどね。なんていう奏法なんだろう、胴の響きを殺した弦の音だけの弦楽器が、突拍子もないタイミングで聞こえてくる。
 でもそれが不快じゃないのは、たぶんきっちりとした拍子があるのと、奏者が自信に満ちているから。
 たぶんかなりリハしたんだと思うよ。7番のアンサンブルを犠牲にしてね。
 弦の響きも特異なんだけど、会場中に響き渡るスチールドラム。鉄琴を弓で引くと、音は壁を伝うんだよ、知ってた? そういうサウンドのおもしろさ。
 何より演奏の確かさ。ああ、アンサンブル金沢なんだ、って。CDだとたぶん、退屈な曲なんだろうけど、もう一回聴きたいな。出来れば生で。

 何度ものカーテンコールのあと、アンコール。ソリストに負けないコンマスのカデンツァの後は。
 なんと、六甲おろし
 カーテンコールのときに席を外していたラッパ。そのラッパが背広を脱ぐと、タイガースのはっぴ。きちんと編曲された六甲おろし。
 そして、この演奏会初のブラボー。

 ああ、阪神優勝の日から一週間で三回目の演奏会なんだ、俺。
 アンダンテ・カンタービレよりもサービス精神にあふれたアンコールを最後ににこにこしながら会場を出てきました。

 石川音楽堂に、行きたいな。

 

2003年9月18日
大阪フィルハーモニー交響楽団 第371回定期演奏会
大植 英次:指揮
小川 紀子:ピアノ
ザ・シンフォニーホール 2階BB列35番 A席

ベルリオーズ:歌劇「ベンヴェヌート・チェルリーニ」序曲
リスト:ピアノ協奏曲 第1番
ベルリオーズ:幻想交響曲

 サドの夏も終わって、すっかり秋らしくなったね。今回は、秋の夜長のオオウエエイジ。
 前回の、初めてのオオウエエイジで、僕はすっかりファンになってしまったのだけれども、少し日にちが経って、改めて冷静に見に行くオオウエエイジ。しかも幻想。わくわくだね。

 幻想交響曲。今年のテーマはスペクタクル、って考えると、これほどふさわしい曲はあんまりないよね。あとはマーラーの復活、くらいかな(^.^)。
 冗談はさておき、好きなんだよね、この曲。高校生の時、僕が最初にスコアを買った曲。とはいえ、自分のパートくらいしか追えないのだけれども。いくつかディスクも持っているけれど、一番は最初に買ったデュトワ/モントリオールのLPかな。ああ、ベルリオーズってフランスものなんだ、って。

 考えてみると、久しぶりのシンフォニーホール。そして久しぶりの平日のコンサート。これがね、ちょっとした罠。
 一部はね、序曲とピアノコンチェルト。しかもリスト。プログラムにはベルリオーズとリストはつながってるとかいろいろ書いてあったけどね。曲は違うでしょう、まったく。そんなこといいんだけど。
 ここんとこ、奈良や尼崎のデッドなホールで聴いていたから、シンフォニーの豊かな響きが心地いいんだよね。時に鳴りすぎてハレーション起こしてるんじゃないか、って思うほど。その心地よさと、平日の仕事帰りの疲れでついうとうと。だって、気持ちいいんだもん。
 ってなわけで、ごめんなさい。あんまり覚えていません。ピアノのおねーさんは、何度目かのカーテンコールのあと、「このタイガースドレス、どうですか?」って声をかけてから、亜麻色の髪の乙女。これはイージーリスニングやろ。ちなみにドレスは黒と銀の縦縞でした。

 ううむ、眠い。ってことで本日何杯目かのコーヒーを流し込んで。

 幻想。
 これも、曲の前にオオウエエイジが、「全然関係ないんですけど、阪神タイガースありがとうございました」って。まあ、場を和ませる効果はあったけど、あんた近鉄ファンちゃうの?

 背を向けるオオウエエイジ。和んだ場から出てきた音は。
 これがね。いいんだ。
 家のオーディオで聴いてると、何が起こってるのかよく分からないんだけど、一楽章の頭。消え入りそうな弦のフレーズ。停まろうとする音楽。留まろうとする音。とぎれない緊張。
 オオウエエイジが、一歩一歩音楽を前に進めていく。
 ああ、きれいなだけの曲じゃないんだ、幻想。
 もちろん、きれいなんだけど。
 ベルリオーズの頃のフランス音楽って、やたら編成でかいよね。ホルンは4本しかいないけれど、ファゴットも4本。ハープ2台。ティンパニ3セット。金管の数は多くないから、ってチューバ2本か、音量というよりも音色のきらびやかさだよね。求めるのは。

 一楽章の前にすすまなさと。
 二楽章最後の強引なアッチェランドと。
 三楽章のイングリッシュホルンと袖のオーボエのやりとりと。
 あと、どこだか忘れちゃったけど、コンマスとその隣で、ヴァイオリン2本だけになるところ。かっこいいっ。

 ここまではね。もう、大好き。二楽章(だよね?)の最後。控えめにアッチェランドして、最後のランッタッタン、で少し落ち着いて終わるデュトワが結構好きだったんだけど、強引に早くなって駆け抜けるオオウエエイジ。これもいいね。
 三楽章はもう。マーラーの時はホルンの左側にあったモニターカメラが、今度は真正面、ティンパニの前に備え付けられて。それは袖のオーボエ用なんだけど。ステージ上のイングリッシュホルンのおねーさん最高。一部で極上のソロを聴かせてくれたオーボエは袖でがんばってくれてて。何よりも、ここだけ4人になるティンパニの遠雷。音量的にはもちろんおっきくはないんだけど、視覚的に楽しめました。

 そして、四楽章。断頭台への行進。
 ここのチェックポイントはただ一つ。トロンボンのペダルB♭のロングトーンなんだけどね。ここは大いに不満だなあ。軽い。バストロ前に押し出したらもっと響きが締まるのに、って思うのは素人なのかしら。
 でも、それを補ってあまりあるファゴット。何しろ四本だからね。ここは「裏でそっと動くファゴット」なんてもんじゃなくって、四本で雄叫びを上げるファゴット。いい感じ。
 四楽章は大盛りあがりで終わるからね。なんとここで拍手。だめだよ、これからいいところなんだから。

 というわけで五楽章。ワルプルギスの夜の夢。そう、チューバ2本はこの日のため。ただし、シンフォニーの小さいハコではチューバ2本でハレーション気味だったかな。ってベルがのぞき込める二階席だったからだろうけど。
 とかいってそんなこと全然気にならないほど終楽章は楽しいんだけどね。不気味な袖のベルから始まるお祭り。チューバのモチーフの上でみんなが好きなことやって盛り上がっていく。オオウエエイジの派手な指揮で、オケが鳴る鳴る。
 ひさびさに聴いた、ミッキーの革命以上の「あほやなー」状態で終幕。きっと僕は、にやにやして、締まらない顔をしていたんだろうなあ。

 オオウエエイジは、拍手を受ける。オケを立たせて拍手を受ける。会場を見回して、みんなを指さして拍手を受ける。コンマスとの握手はそのあと。
 コンマスと握手をする。ヴァイオリン第一プルトと握手をする。チェロと握手をする。ビオラと握手をする。人をかき分けベースと握手をする。

 クラリネットを立たせる。イングリッシュホルンを立たせる。ホルンを立たせる。ティンパニを立たせる。ソリストを、パートを立たせる。袖のオーボエとベルを呼ぶ。

 何度かのカーテンコールのあと。オオウエエイジが現れた。タイガースのはっぴを着て。会場から渡されたタイガースのタオルを振り回し汗をぬぐうオオウエエイジ。
 でもあなた、近鉄バファ、、、、以下略。

 オオウエエイジが聴衆を熱狂させて、聴衆に愛されることはよく分かった。僕も好き。お次は、オオウエエイジがいわゆるクラッシックをきちんと聴かせてくれるのか。来月のブラームス、たのしみやね。

 

2003年9月15日
尼崎市民交響楽団 第18回定期演奏会
辻 敏治:指揮
尼崎市民交響楽団
アルカイックホール

ウェーバー:魔弾の射手 序曲
モーツァルト:交響曲 第41番 ジュピター
チャイコフスキー:交響曲 第5番

 今回で3回目になるのかな。尼響のコンサート。

 しかし、今日はなんの日だか知ってる? マジック2で、阪神タイガースが甲子園に帰ってきた日。しかも試合開始は、コンサート開始とおんなじ、二時。
 阪神尼崎駅は、でっかいモニター据え付けて、特設応援席。虎のユニホーム着た応援団で埋め尽くされてた。それを横目でみながらアルカイックホールへ。途中の小川に架かった橋に「水深1メートルもありません」って看板、端を固めたロープ。ここは兵庫、阪神沿線。

 3度目だからね。おなじみのアルカイックホール。向かって右手奥の席に陣取って。曲は序曲、モーツァルト、チャイコフスキーの交響曲。アマオケの王道プログラム。
 
 ちょっと遅れて開演。整列して入ってきたオケ。チューニング。
 指揮者入場でウェーバー。
 曲名は有名なんだけどね、たぶん初めて聴くんじゃないかなあ。何となくウィリアム・テルみたいな曲を想像してたんだけど全然ちがくて。弦の上で朗々とホルンが唄う。筈なんだけどね。緊張気味のホルンはちょっと苦しそう。ホルンて難しいんだよね。ちっちゃいマウスピースからでっかいベルで音を鳴らす。唇のちょっとした緊張がでっかいベルに増幅される。大フィルでもN響でもいじめられるホルン。だからいいんだけどね。プログラムを見るとこれは元々弦のパートなのかな?
 ちょっと遅めにとったテンポが、重々しさというよりはじれったさを感じてしまいました。

 相変わらず弦はよく練習してるみたいで、次のモーツァルトは安心して聴けました。木管を中心としたソリストの名人芸も健在で。ただし、僕はよく分からないんだよね、モーツァルト。心地いいのは確かなんだけど。

 休憩を挟んで、チャイコフスキー。

やられました。脱帽。

 チャイコの5番。今となっては特別な曲。名古屋で、じいさんが生涯最後に振った曲。僕が聴けなかった演奏。そのときのCDを僕は持っているのだけれど、未だに聴けない曲。その前に一度、じいさんのチャイ5、聴いてるんだけどね。

 聴く前はそんなこと全然意識してなかったんだけど。始まってから想い出した、じいさんのこと。
  単純で力強い曲。一部ではじれったかった遅めのテンポが、ここでは重厚に響く。もちろん大フィルの力強さには及ばないけれど、まとまった響き。
 こんなに魅力的な曲なんだ、って改めて思ったよ。2つしかないんじゃないかと思うほどおんなじメロディが全体を貫いていて。その単純な力強さを明確に伝える演奏。前に聴いた時よりもすっきりとして胸に迫ってきた。

何より、二楽章のホルンソロ。
完璧。

  音程がちょっとフラットしたり、後半でミスがあったりしたんだけど、そんなこと全然気にならない。これが唄だよ。じいさんの最後の指揮ぶり(想像)とだぶらせて、泣きました。ありがとう。
 もう一ついっとかなくちゃいけないのは、ファゴット。これはチャイコじゃなくてモーツァルトだったかな。リズム感が心地いいんだよね。この人のファンです、私。

 大団円のフィナーレのあとは、アンコール。アンダンテ・カンタービレ。先週もこの曲聴いたけど、弦楽合奏だった先週に比べて、今日のは管楽器も入った彩り鮮やかな編曲。きれいだけど退屈なこの曲では、僕は今日の編曲の方が好きだなあ。

 プログラムを見ると、来年はドヴォ8と英雄。欲張ったねぇ。演奏者冥利に尽きる2曲。どんな演奏を聴かせてくれるんでしょう。今から楽しみです。英雄のトリオ、今日みたいな見事な唄いかたしてよね。

 

2003年9月6日
佐渡裕:指揮
ダニエル・ミューラー=ショット:チェロ

京都市交響楽団
やまと郡山城大ホール 1階O席3番 S席

ドヴォルザーク:チェロ協奏曲
ベートーヴェン:交響曲 第7番

 いやあ、九月だというのにまだまだ暑いね。
 というわけで、日本の夏、サドの夏、第二弾。行って来ました奈良、郡山。

 なんか、ベートーヴェンが聴きたかったんだよね。それも、5番6番とかじゃなくって。3番は当たりはずれが大きいかな、ってちょっと警戒して、じゃあ7番。チケット取ったあとから、シンフォニーでもおんなじ組み合わせでやるって知ったんだけどね、サドの夏、ってことで行って来ました。

 郡山までは電車で一時間ちょい。なんだけど、雨が降ってたり駅から遠そうだったりで、えい、車で行っちゃえ。
 まあ普通に行けば良かったんだけどね。高速があまりにも順調に流れてて、一時間も前に着きそうやん、って思っていつもの悪い癖で下道に。生駒山のあたり、地図に「車両通行困難」って書いてあったんだけど、まさかなあ、国道だもんなあ、って思ったのが運の尽き。大変な目に遭いました。これ国道? 通行困難じゃなくって、通れないだろ、普通。280ps,MTの愛車が、坂道発進できずに煙吹いてしまいました(大泣)。もういや。
 やっとの事で15分前にたどり着いたホール。駐車場に入るのに13分間待たされて。チケット切ったのが1分前。トイレに駆け込んで座席にたどり着いたのが5時2分。息を整えるまもなくオケ入場。

 開演前にはロビーで佐渡さんのトークショウみたいのもやってたようなんだけどね。まあ演奏に間に合ったから良かった良かった。

 どんなホールなんだろう、ってあわてて周りを見回すと、普通の市民会館くらいの大きさなんだけど、両端には横向きの二階席。シンフォニーホールみたい。さすがにステージ後方にはないけれど。真新しくってきれいなホール。あんまり反響はなさそうだけどね。

 さて、ドヴォルザーク。佐渡さんと一緒に入ってきたチェリストは、でかい。佐渡さんとおんなじ背丈。ロン毛をポニーテールにしてた。佐渡さんはいつもの詰め襟。
 指揮台の隣にソリスト用の台があって。その椅子に座るソリスト。
 ギィーッ。
 椅子が鳴る。高さを調節しても、何度座り直してもそのたびにギィーッ。そんなことで笑い取らなくても。大阪じゃないんだし。
 オケのチェロと椅子を交換して一件落着。集中力がとぎれないといいけどね。

 さて、おすまし顔に戻ってもう一度。
 ドヴォルザークのチェロコン。
 前にも書いたかもしれないけれど、クラッシック音楽って二通りあって。ブルックナーのように旋律なんてまるでなくって、オーケストラの音の厚みと構成を聴かせるタイプの音楽と、それからドヴォルザークのように魅力的な旋律に伴奏をつけていくようなタイプの音楽と。
 もちろんブルックナーみたいなのは例外なんだけどね。
 僕はブルックナーは好きなんだけれども、だからといって旋律のきれいな音楽が嫌いなわけではまったくなくて。ドヴォルザークは大好き。あんまりディスクとか持ってないけど。
 そのドヴォルザークの協奏曲。
 もうちょっと期待してたんだけどね。会場もそこそこ狭くて、もっとチェロの音が会場を震わすかな、って。
 ところがね。出てきた音は、なんか。
 即物的、っていったらいいのかな。残響がまるでなくって生音だけが聞こえてくる、みたいね。弦や、ホルンとか。
 そんな中で出てきたソロ。
 これもね。もっと朗々と響いてもいいだろう、と思うんだけど。会場のせいなのか、指揮台の脇に置いたソロ用のひな壇のせいなのか。床を震わせて音を出すチェロは、ひな壇にのせてはいかんだろう、って思うんだけどね。
 とにかく、ちょっと期待はずれ。初めて聞いたこの曲は、いかにもドヴォルザークでいい感じだったんだけどね。

 何度かのカーテンコールのあと、ソロでのアンコールは、バッハの無伴奏やってくれるかな、って思ったんだけどそうではなくって知らない曲。フロスポの、プレイヤー(祈り)っていうらしいけどね。
 これはよかったよ。中音域で朗々と鳴らすチェロ。なんだ、こういう音出せるんじゃん。オケの音に消されちゃったのかな。

 20分の休憩のあとは、本日のメイン。7番。

 細かいことはいいんだけどね。
 僕は、ベートーヴェンの7番が好きなんじゃなくって、朝比奈のベト7が好きだったのかな、って。そう思ってしまった演奏でした。作曲時の編成なんてお構いなしに、ステージからあふれ出さんばかりにメンバーを載っけて(ちょっとオーバー)、遠慮なしに鳴らすベートーヴェンが。
 佐渡もそうだと思ってたのにな。2楽章の弦とか、3楽章のラッパとか。
 ザ・シンフォニーで秋にあるんだよね、おんなじプログラム。今回良かったら行こうかと思ってたけど、いっか。

 アンコールは、チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレ。室内楽的なこういう音楽が、この編成のこのオケにはあってました。

 

2003年8月9日
佐渡裕 ヤング・ピープルズ・コンサート Vol.5
リズムをつかもう! 〜I Got Rhythm!!〜
佐渡 裕:指揮とお話
原 朋直:トランペットとお話
オリン・エバンス(p), エリック・リヴィス(b), ナシート・ウエイツ(d)
シエナ・ウインド・オーケストラ
ザ・シンフォニーホール 2階CC列21番

リムスキー・コルサコフ:交響組曲 シェエラザード より第4楽章
チック・コリア:スペイン
アダム・ゴープ:メトロポリス 他

 暑いね。夏だね。
 台風一過でも、ぐずぐずした天気だし。
 というわけで、日本の夏、サドの夏。
 行ってきました佐渡裕のヤングピープルズコンサート。

 どういう趣旨のコンサートかよく知らなかったんだよね。佐渡のシエナと、ラッパの原君、っていう出演者だけ見て購入したチケット。お子様料金がめちゃくちゃ安いから、中高のブラバンな人たちがたくさんかな、って思っていたのだけれども。
 予想は大外れ。
 なんと会場を占拠していたのは、就学前と小学校低学年の子供達! しかも子供には、佐渡の似顔絵のついた丸い段ボールと、バチをプレゼント。鳴り物付きのコンサート。

 しかもロビーは黒山の人だかり。何がなんだかよく分からないけれど、次回パンフレット用の撮影会をやってたみたい。黒山の中心にはたぶん佐渡さんがいたんだろうけど、ちょっと離れてラッパ持った原君がぽつんとしてたのにはだれも寄りつかず。

 ホールにはいるとね。ステージはこぢんまりとしたセッティング。そうだよね。吹奏楽って、一番大きい一部編成でも50人だもんね、オケに比べるとちっちゃいちっちゃい。それにハープと原君カルテット用の太鼓とかピアノ。
 どんな曲をやるのかも知らなかったから、パンフレットを見ると、シェラザード、スペイン等々。なるほど、I got Rhythm。

 開演直前になって、ロビーにいたちびっ子達がわらわらと客席に。鳴り物を持った子供達は当然しずかになんかなんなくて。バンドがはいって、サックスのコンマスがチューニング。
 そして、佐渡さんがやってきた。
 静寂は訪れないから、自分のテンポが消えないうちに指揮棒を振り下ろして、シェエラザード。
 吹奏楽ではおなじみの曲なんだけど。オケの響きになれたシンフォニーホールで聴く吹奏楽は、軽いね。トゥッティもそうだし、ヴァイオリンのかわりのサックスのカデンツァも、いかにも軽く響く。やっぱり演奏する音楽なんだなあ、吹奏楽って。大フィルじゃ絶対聴けないトロンボンsoliの軽さとか、楽しめるところもいっぱいあるんだけどね。

 一曲終わったところで原君のカルテットがはいってオリジナル一曲。それからリズムの練習。ドラムセットをバスドラ、シンバル、スネアに分解してみんなでツービート(曲何だったっけ)とか、4、8,8/12,16のビートで原君が Isn't She Lovely? やったりとか。8ビートのボサノバ風Isn't,,は、結構よかったよ。
 リズムで遊んだあとは、三角帽子スペインで一部おしまい。スペインってニューサウンズインブラスの譜面かな? ポップスの吹き方、ちゃんと練習してね、シエナの皆さん。

 第二部では、今度は鳴り物使って練習。あれ、Isn't She,,は、このときだったっけな。四分音符はパン。8分音符はネギ。三連符のトマト、16分音符のタケノコも登場してリズムの変化を身につける。タケノコタケノコの原君のソロは、クリフォード・ブラウンみたいでかっこいい。二小節だけだったけど。
 そして最後の曲は、メトロポリス。吹奏楽オリジナル曲なんだろうなあ。現代っぽい複雑なシンコペーションの曲。お客さんも参加する最後の部分を練習して、いざ曲へ。
 変拍子と変アクセントで成り立つこの曲、最後はみんなで盛り上がって。

 アンコールは、原カルテットでフットプリント。そして、楽器持参のお客さんをステージに上げて吹奏族状態で星条旗よ永遠なれ。ここらへんはシエナではおなじみみたいだね。僕は初めてだったけど。

 鳴り物持ったちっちゃい子が多かった、っていうかその子達のためのコンサートだったから、ちゃんと曲聴けるかどうか不安だったんだけどね。ちっちゃい子をも惹きつけたシエナの演奏と、佐渡さんのMC。たまにはこういうコンサートもいいね。

 そうそう、ひとつだけ。やっぱりここにもいたブラボーおじさん。今回は、年端もいかない子供達にブラボーの神髄を教えなくては、と張り切っていたのか、常に「ブラボー・ブラボー」と二回セット。どうでもいいんだけど、スペインとかでブラボーっていうのはやめなさいな、みっともない。

 

2003年6月11日
大阪フィルハーモニー交響楽団 第369回定期演奏会
外山 雄三:指揮
ミシェル・ベロフ:ピアノ
大阪フィル
ザ・シンフォニーホール 1階R列29番 A席

プロコフィエフ:組曲 三つのオレンジへの恋
プロコフィエフ:ピアノ協奏曲 第3番
  en. プロコフィエフ:つかの間の幻想より No.8
プロコフィエフ:交響曲 第5番

 

もし、この演奏会を聴いて、感銘を受けたとか、なかなかよかったとかお思いの方は、
以下の駄文は読まないでください。お願いします。

 

 オオウエエイジの指導する楽団のコンサートは全部聴く、っていうわけでは全然ないんだけれどもね。何気なく出したはがきで当たったコンサート(半額だけど)。
 絢爛豪華な曲の並ぶ大フィルの今年のラインナップで、1,2を争う地味なプログラム? とか思ったのだけれども、予習盤を聴いたら結構派手な交響曲で、ちょっと楽しみにしてた。プロコって、ロミジュリくらいしか知らないんだよね。あと、15年も前にムーティが振った3番。だからどんな作曲家だかよく知らない。

 会場は超満員というわけにはいかないけど、8割以上は入ってるんじゃないかなあ、一階席しか見てないけれど。二日公演にした甲斐があったね。ちょっと安心。送られてきたチケットは、一階席やや後方。いつもは二階席に座ることが多いから、ちょっと聴き慣れない席。どんな音が聞こえてくるのかな。

 さて、演奏。
 外山雄三。

 あの時間を、今更思い出したくもないんだけどね。
 最初の一音、なにかの間違いじゃないかと思った。そそくさと出てきて、会場が静まりかえらないうちに振り下ろされた指揮棒。だから耳の方も音楽用にゲインを上げる準備が出来てなかったからなのかな、と思った。

 そう思いたかった。

 なんか、音が届いてこない。速いパッセージの弦も、ラッパの金切り声も、緞帳の向こうから聞こえてくるみたい。
 プロコの曲はね、つまらない。1.3拍をピチカートで刻む弦と、金管のこけおどしのsfzからのクレシェンド。伴奏と旋律の乖離。僕のイメージの中のつまらない吹奏楽オリジナルそのもの。そしてかっちりしたリズムを、少しもゆらすことなく、常に踵を地につけながら指揮する外山。その割に合わないアンサンブル。

 まるで、ちょっと気の利いた高校の、コンクール十日前の練習風景。
「ハイ、ピッチとアインザッツに気をつけて。ラッパそこもっと出して。じゃあ練習番号Gの三つ前からもう一度」とかやりながら『最後の一週間は唄い方とかやりたいんだけどな』って内心焦る指揮者。みたいな。

 つまりはまったく聴く価値のない演奏。席が通路側だったら一音で席を立ってました、きっと。寝てやり過ごそうにも寝苦しくて。当然拍手はしませんでした。
 お次はピアノ。
 もうどうにでもなれ状態だったけどね。
 冒頭、クラリネットソロ。リードミス気味に出たクラリネットだけど、低音に下がっていった時の響き、ゾクゾクしました。そこはもうソロじゃなかったのかな? このソロで少し気を取り直して。
 伴奏の相変わらずのつまらなさも曲のせいだと割り切って。
 ソロピアノは結構楽しめました。鍵盤の見える位置じゃないからどういう風に手が動いてるのかよく分からないのだけれども、軽やかにクロスする腕から奏でられるやたら音数の多い、修飾音符だらけの音。楽しい楽しい。
 アンコールのソロも修飾音符出ずっぱりで、ドン・プーレンのこぶし奏法を思い出してにやにやしてました。

 休憩時間。
 飲まなきゃやってられないや、ということでひさびさにビールを流し込んで。

 交響曲。
 どこか忘れちゃったけど、ここでもクラリネットのソロはよかったです、ハイ。ただそれだけ。
 拍手を受ける外山は、オケ全体を立たせるだけで、ソリスト、パートなどを立たせる気配は全くなし。クラだけには、特別に拍手をしたかったな。

 次の定期にいく予定はないから、今回を聴いて後期会員になるか決めるはずだったのだけれども、もしこういうコンサートが一回でもあるのなら、僕は会員になることは出来ないな。
 三月いっぱいでミュージック・アドヴァイザーを降ろされた外山の、復讐だったのかな、と勘ぐりたくなるような演奏会でした。

 半額しか払ってないから、文句も半分と思っていたのだけれどもね。

 

20003年5月10日
大阪フィルハーモニー交響楽団 第368回定期演奏会
大植 英次:指揮
管 英三子:ソプラノ
寺谷 千枝子:メゾ・ソプラノ
大阪フィルハーモニー合唱団(岩城 拓也:指導)
大阪フィル
ザ・シンフォニーホール 2階BB列31番 A席

マーラー 交響曲 第2番 復活

オオウエエイジがやってきた

 最初に断っておかなくてはいけないのだけれど、僕は現在、とても冷静ではありません。だから書く内容も、譫言のような戯言のようなものになるかと思いますが、ご了承下さいね。だって、、、おっとっと、先を読んでね。。

 気がつけば朝比奈さんが亡くなってから一年半にもなろうとしていて、大フィルも音楽監督不在の一年を過ごしたあと、正式な音楽監督を迎えた。その人はもう、ずいぶん前に発表されて、今年度のプログラムや、定期がシンフォニーホールに変わったことにも関与しているのだとは思うのだけれども、指揮者として僕たちの前に立つことはなかった。
 今までは、ね。

 そう、今日は大フィルの新しい音楽監督、オオウエエイジのお披露目音楽会。
 でも、音楽監督って、何する人なんだろう?

 まあ、今年から定期が二日間公演になったから、同じコンサートが昨日もあってそれがほんとのお披露目なんだけど、僕の行ってないコンサートは無いも同じだからね。僕にとっては今日がお披露目。オオウエエイジは一昨年かな、ミネソタフィルのハルサイのチケット取ったのだけれども、911で来日中止。その時に聴いておけば、どんな人なんだろうって、期待と不安が入り交じったわくわく感を楽しめなかったかも知れないね。

 さて、今回の公演は二日とも満員御礼。僕がとったのは二階席の二列目、ほぼど真ん中。超満員のシンフォニー、二階席と来れば、じいさんのベートーヴェンやブルックナー。たくさん並んだ椅子も、いっぱいつり下がったマイクも、テレビカメラも。何もかもが朝比奈隆の軌跡シリーズそのもの。これで嘘でもいいからじいさんが出てきてくれたら。
 あ、いかんいかん。今日は新生大フィル「復活」の日だったんだ。

 土曜日だということもあって、開演一時間前から入場して、どんどん埋まっていく客席を眺めていた。
 ステージの上には合唱用のひな壇と、オケ用の椅子が所狭しと並んでいたけれど、団員さんはまったくいなくって。あれ、シンフォニーになったからちょっとおめかししてオケ入場、とかやるのかな? と思ったらそのうち一人、二人と出てきた。そっか、いつもはもっと差し迫った時間からしか見ないからね。

 そのうち、合唱がステージ上の2階席に入場。道理で人が居ないと思った。その上ステージにも乗るから、すごいな、全部で合唱200人。そして、チューバ1,トロンボン4、ラッパ6,ホルン6人並んだ横には、まだ4個の空き椅子。いつ入ってくるんだろう、わくわく。
 いつの間にやらステージにメンバーがそろっていて、バンマス登場。今日はマリオじゃない方です。

 チューニングすんで、オオウエエイジの登場。若い、ちっちゃい。かっこいい、かどうかは音が出てからね。
 満場の開場を見回して、暗譜の指揮棒を振り下ろした。

オオウエエイジが大フィルにかけた魔法

 え?
 復活の始まりは、ヴァイオリンのトレモロの中を、チェロとコントラバスの「ダカダカダン」っていう音型が登っていくんだけれども。僕はブルックナー開始のイメージがあったからなのかな。その、チェロとベースのあまりの力強さに仰天。目が点。
 チェロとコントラバスって、脚のはえた弦楽器。自分の脚でステージに立って、ステージの床まで反響板として使う。その振動が床から壁を伝わって、空気と一緒に二階席に届いた。切れ切れのフレーズの余韻のあとに残るのは、こんなに小さく演奏できるの、っていうほどのトレモロ。リズムのある静寂。
 要は、最初の数小節だけで、虜。

 オオウエエイジのマーラーは、あまりに遠慮無し。ティンパニもシンバルもバスドラムも、クレッシェンドの果てのトレモロ、っていうところだってお構いなしにフルパワー。
 だけど、そのトレモロの音の隙間にしっかり弦の刻みが聞こえていて、満場のホールを音で満たす。
 この、弦の音がね。今まで聴いていたものとまったく違う。一言で言えば、クリア。明るい音色。マーラーだからこう、なのかは分からないけれど、マーラーにはよく似合ってました。次のベルリオーズにも似合ってるだろうけど。

 オオウエエイジの指揮は、軽やかで大振り。暗譜をいいことに指揮台を駆け回る。右のコントラバスを励ましたかと思えば次の瞬間左のセカンドヴァイオリンと一緒に歌い、後ろの手すりをつかんで前に身を乗り出してラッパをあおる。
 指揮だけ見てても面白そうなんだけどね、今日ばかりはそうも行かないんだ。

 なぜって?

 マーラーの曲はね、面白いんだ。人が多い上にダイナミックレンジは広いし、ソロも至る所に用意されていて、ステージをきょろきょろ。とても指揮者ばかりを見てはいられない。
 オオウエエイジが、ホルンよりももっと左、パーカッションの頭の上を指して指揮してるんだよね。出てくる音はホルンのコラール。でもホルンはそこじゃないよ、ってホルンを見ると、あれ? 吹いてない。
 なんとホルンは舞台袖にいるらしい。といってもステージに乗り切らなかった訳じゃないよ。バンダ。ステージ端にちっちゃな固定カメラがあったから、それで指揮をモニタしてるんだね。
 あとになるとバンダはホルンだけではなくて、ラッパと、ティンパニも出てきて(ってでてこないんだけど)。ヴァイオリンのお姉さんも一人、途中で袖から席に戻ってたからバンダだったのかしら?(これは、弦が切れてしまったために楽器を取り替えに行ったのだと、早速メールで訂正をいただきました。ありがとうございます。そうだよね、Vn一人でバンダやっても聴こえないもんね)

 バンダのホルンは時折ステージの開いた4個の席に入ってきて、ホルン10人のベルアップなどしてまたバンダに戻ったり、忙しそうでした。
 バンダで好きだったのはね、5楽章なのかな? 合唱のはいる直前。フルメンバーのバンダでティンパニ入りのコラールやってるところに、ステージ上のフルートとピッコロが絡む。ここの緊張感がね、何とも云えずによかったな。
 もうね、おいしいところがいっぱいありすぎて訳わかんなくなっちゃってるけど(時間が経ったら訳わかんなくなる、と思って珍しく当日に書いてるんだけど、あんまり意味なかったね)、イングリッシュホルンのソロがすごくきれいだった。トロンボンもね。

 しかし、長いね。
 深遠なアダージョとか、踊るようなスケルッツォとかじゃなくって、全編これフィナーレっていう盛り上がりだから(いや、緩いところもあったんだろうけどね。演奏がそう感じさせなかったのかな?)、疲れるのなんの。演奏する方もなんだろうけど、聴く方も汗だく。健康的なんだよね、一本調子ともいうけれど。

 曲は、やっとの事で合唱までたどり着いて。合唱はそんなにテンション一筋っていうわけでもないのだけれど、200人のメゾピアノって、とてもいい。あと、女声合唱の中をソロのソプラノが駆け上ってくるところ、ゾクゾクしちゃいました(曲をよく分かって無いから、どこの部分かわかんないね、すみません)。

 そして、コーダのトゥッテイ。
 前にも書いたけど、打楽器を含めてなんの遠慮もなしにみんな鳴らす。その中で、今までは金管楽器だけ埋もれてたんだよね。反響音を使うホルンは十分なんだけど。
 それが最後の部分では、トロンボンががんばった。それでこそ大フィルのトロンボン。ラッパはもう一息。これは好みだけど、あれだけの人数がいたらトゥッティの上の輪郭を支配できるはずなのに。

 でも、聴いてる時にほんとにそんなこと思ってたかは、覚えてないや。ただ、音を浴びてた。正面だけじゃなくって、横からも後ろからも降り注いでくる音(フェスにはこれがないんだよね)を、全身で受け止めてた。

 音が消えたあとの余韻も、全身で受け止めたかったんだけどね。

オオウエエイジが復活させたもの

 お決まりのフライング拍手。ブラボーはちょっと少なめ? こんなにいい演奏なのに。

 と、最初は思ったのだけれど。拍手の圧力がものすごい。笑顔で応えるオオウエエイジ。合唱指導者もステージに登って拍手を受ける。
 何度も続くカーテンコール。合唱を立たせ、几帳面にソリスト(コンマスも)を全員一人ずつ立たせ、パートを立たせ。オケを立たせ歌のソリストを何度もたたえて。
 それでも鳴りやまない拍手
 客席を一回り、指さしながら見回して拍手を受けるオオウエエイジ。
 それでも鳴りやまない拍手

 もう一度出てきて、オオウエエイジは懐からなにかを取り出した。
 小さい、写真。
 楽団員にかざして、客にもかざしたあと、コンマスの譜面台にのせて、譜面台ごと客席に向けて立ち去った。

朝比奈隆の、スナップ写真。

 それは反則だよ、オオウエエイジ。と思いながらも、じんと来た。

 それを合図に、オケは解散したけれども、まだ鳴りやまない拍手
 オオウエエイジは、片付け途中のステージに一人で現れ、全身に拍手を浴びて観客全員の目をのぞき込んだあと、朝比奈隆を回収して立ち去った。それで、拍手は消えていったのだけれども、僕は、たぶん最後まで、拍手をしていた一人だと思うよ

 オオウエエイジが復活させたもの。
 それはきっと、わくわくする感覚。今日はどんなコンサートになるんだろ、って楽しみにシンフォニーホールに向かう感覚。そして、じんじんする両手と、にやける顔でホールから出てくる感触。

 音楽監督って何する人かわかないけれど、楽団の顔になる人だよね。あの人が指導してる楽団、あの人が振るコンサート。
 僕はむつかしいことは分からないけれど、オオウエエイジの振るコンサート、オオウエエイジの指導する楽団のコンサートにはできるだけ足を運びたいな。

 にわかミーハー、いっちょ上がり。

 

2003年2月19日
コルボ「レクイエム」
ミシェル・コルボ:指揮
ローザンヌ声楽アンサンブル:合唱
ローザンヌ器楽アンサンブル:管弦楽
ザ・シンフォニーホール 2階AA列15番 A席

フォーレ   レクイエム
モーツァルト レクイエム

 ひそかに、「今年のテーマはスペクタクルだ」って思っていたのだけれども。2月のコンサートはスペクタクルから一番遠いところを選んでしまいました。だって聴きたかったんだもん。

 とはいえ、僕はコルボっていう人をぜんぜんしらなくって。ただ曲目だけで選んだんだけれども。チケット発売から少し経ってからでも二階席の最前列だったし、5桁もする高額チケットだったし、結構すいてるのかなと思った会場は満員。コルボってもしかして有名?
 僕がいつも行く国内のオーケストラとは客層がかなり違ってて。ジーンズにセーターっていう格好の僕はかなり浮いていて。
 会場のCD売り場は大混雑。つまり普段コンサートに来慣れない人たちが多いってことかな。ああ、外タレのコンサートなんだ、って実感。

 二階席から見下ろすステージには、こぢんまりと椅子が並んでた。どんな編成なんだろう。
 オケが入り、合唱が入って来た。オルガン、ハープ、ティンパニ。それからビオラ6、チェロ4,弦バス1、ヴァイオリン1(!)の弦楽器に、ラッパ2,トロンボン3,ホルン2。だったっけな。合唱は15,15の30人にソリスト。
 ソリスト、合唱のコンマスに続いて、コルボが入ってきた。チラシで見るよりかなりおじいさん。不自由そうに足を引きずって。

 パンフレットには、モーツァルトの方が先に紹介されていたからね、僕は当然最初がモーツァルトだと思っていた。そしたら、全然知ってるメロディが聞こえてこなくって。ああ、フォーレだ、って思ったのはしばらくしてから。
 フォーレのレクイエムはね、ひたすらやわらかい。ビオラを主体とした弦も、ホルン中心の管も。そしてそれと溶けあう人の声。つまりはひたすら心地よくって。うとうとしてたら最後のホルンのロングトーン。夢見心地にブルックナー8番のアダージョを思い出していて、このホルンがずっと消えなければいいな、って思ってた。
 思ってたよりもさっぱりとホルンが消えていって。一部終了。にわか仕込みの耳には、フォーレの深さは難しかった。

 休憩時間にがんばってうとうとして、眠気を追い払って。

 二部は、オルガンとかハープがなくなった分、ヴァイオリンも木管楽器も入ってきて。といってもファゴットとバスクラ?4人だけど。金管は、昔風のベルの小さいピッコロトロンボン、テナー(アルト?)トロンボン、そしてバストロ。ラッパ2本は何とバルブなしの管だけ。突撃ラッパの長いやつみたいなの。ホルンはなし。そうか、この時代の金管楽器って、まともに音階ふけるのはトロンボンだけだったんだ。過日のトロンボン吹きとしてはちょっとうれしい発見。
 フォーレの時には一人だったソリストも、各パートで4人に増えて。さて、モーツァルト。

 最初の一音から思ったんだけど。モーツァルトって、楽しい。それが死者のためのミサ曲であっても、映画「アマデウス」にあったようないわく付きの曲であっても、やっぱりモーツァルトって、楽しい。
 こんなちっちゃい編成の管弦楽から出てくるとは思えないような彩りにあふれた音。フォーレに比べると俄然動きの大きい合唱。
 僕の好きなキリエ。シャバダバシャバダバっていうところ。ピッコロトロンボンが合唱とユニゾンしてた。ちょっとトロンボンの音が聞き分けられなくて残念だったけど、発見。それからこの曲の目玉(?)、トロンボンのソロ。昔、教則本に載っていて一生懸命にさらったソロ。僕が思っているのよりちょっと速くて、おまけにフレーズの終わりを速くするものだからゆったりとはしていないけれど。一カ所へくったところもあるのだけれど。それでもいいんだよ。この何日間かずっと口ずさんでいた音楽が目の前で奏でられているんだから。
 4人のソリストが前にいるのって、たとえば第九と同じなんだけど。オケが小さい分、歌が前に出てきて。人の声って、いいな。

 なんかとりとめないんだけど。
 ずっと身を乗り出して、わくわくしながら見続けてました。

 曲の終わり。
 こんな楽しい曲が終わったのに、なんで余韻をかみしめない人たちがいるんだろうなあ。僕の隣のおじさんは、曲が終わる前に拍手の準備。フライング拍手は別の所からのものだったけど。曲の終わりを覚えてることを見せつけるのが、教養の印なのかしら。

 何度も続くカーテンコール。脚の悪いコルボじいさんは、4人のソリストともに何度もステージに戻ってくるのだけれど、ちょっと辛そう。でもお客さんは許してあげない。何度目かに、オケを解散させても、許してあげない。そして。
 オケが撤収中のステージに、一人でやってきたコルボじいさん。もう一人のじいさんの定位置だったステージの左側で、拍手を受けるコルボじいさん。
 思わず立ち上がって、おっきな拍手を送りました。

 深さとか、よくわからないのだけれども。
 あったかくなったコンサートでした。ありがとね。

 

2003年1月30日
大阪フィルハーモニー交響楽団 第364回定期演奏会
井上 道義:指揮
長岡 純子:ピアノ
大阪フィル
フェスティバルホール B席 1階 JJ列 RL27番

ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第3番
ショスタコーヴィッチ 交響曲 第5番

 去年の年末、第九の時に買ったチケット。久しぶりの大フィル定期。
 第九の時には、残席わずか、みたいな感じで。そんなわけないだろうと思いながらもあわてて買ったのだけれども、やっぱり。空席がかなり目立ってます。会員席の中も。
 来年度からのシンフォニーホール二日公演、大丈夫なのかしら、と不安になるけれども。その不安を振り払うように、会場には新音楽監督のポスター、エイジオブエイジがでかでかと貼られている。

 それはおいといて、ミッキーの革命。もちろん元気な若手はいっぱいいるのだけれども、勢いだけで演奏するにはちょっと重いものを背負いすぎている(というイメージのある)ショスタコの5番。第九を捌くきびきびとした指揮ぶりに、ミッキーなら楽しそうだな、って思ったんだよね。その期待を裏切らないといいな。

 プログラムの最初は、ピアノ交響曲。年始の聴き初めがベートーヴェン。これの冒頭が、弦から始まるんだけど、驚くほどいい感じで。なんていうかな、鳴り響いた瞬間に満たされる、っていうか。広いフェスが、小編成の弦の音でいっぱいになった。
 ソリストは、珍しく昔若かった女性。きつくなくそれでいてふにゃふにゃではない音も心地よかった。曲は、僕にはちょっと退屈だったから、音の心地よさと相まってうとうとしちゃったけど。

 休憩時間で眠気を振り払って。さあ革命。

 袖で高めた集中をとぎれさせないようにか、足早に入ってきたミッキー。指揮台から棒を拾い上げて、客席への礼もそこそこに曲を始めた。
 結構テンポをいじってたのかな。ちょっと速いなと思った冒頭から、すぐに重厚なテンポになった。

 それにしても、ショスタコの曲はおもしろいね。楽器の重ね方が、ベートーヴェンやブルックナーとぜんぜん違う。弦楽器(ビオラだっけ?)のユニゾンにピッコロを重ねて輪郭をつけたり、チェロのピチカートの反響をホルンにさせたり。ファゴットが吼えたり。
 あと、ホルンの低音のsoliってかっこいいね。

 2楽章では、演奏よりもミッキーのダンスを見てる方が楽しかった。スケルッツォで、踊る道義。

 さて、4楽章。金管が吼えまくる4楽章。ちょっと遠い僕の席まで迫力が伝わってくるのかちょっと心配だったけど、それは杞憂だったね。吹きやすい音域(ちょっと低めで張りにくいのかな、逆に)で、ごりごり吹いて。ミッキーの指揮も丸投げ状態。楽しそうだな。
 第九の時には本番に弱かったホルンも、今回のソロはばっちり決まって、かっこよかったし。大満足の革命でした。

 カーテンコールで、今回で定年のファゴットさんとホルンさんに、ミッキーから花束とお酒が。
 大活躍の曲で締めくくれて、よかったですね。

 なんかの本で、演奏が終わったあとの拍手の受け方にも、かなりのテクニックがいるんだ、ったかいてあったけど。もちろんそのテクニックの第一人者は朝比奈さんなんだけど。ミッキーは下手だね。すぐ袖に帰りたがっちゃう。

もういい歳なんだから、ゆっくりと拍手受けてよ。今日みたいな演奏した日にはさ。