2002年12月29日
第9シンフォニーの夕べ

井上道義:指揮
澤畑恵美:ソプラノ
黒木香保里:アルト
若本明志:テノール
三原 剛:バリトン
大阪フィルハーモニー交響楽団
フェスティバルホール 1階GG列L32番 A席

ベートーヴェン:交響曲 第9番

 去年(2002年)は、徹底的にベートーヴェンをさぼっちゃった年だね。コンサートには一回も行ってないし、買ったCDも、3番が2枚だけ。聴いたのだって、3番と7番くらい。
 でも、年末くらいはね。年末にして、じいさんの一周忌。やっぱり第九ですごそうかな。
 数ある第九のコンサートの中で、選んだのはもちろん、フェスの大フィル。もちろん、なんていうほど大フィルの熱心な聞き手ではないんだけどね。

 数日前に大フィルからはがきが来てて、じいさんの追悼文集を、当日会場で売り出すらしい。ずいぶん前に追悼文を募集していて、僕もそれに投稿したのだけれども、ちゃんと載っけてくれているかしら。あまりにも個人的な文章だから、かなり心配。
 その文集に、じいさんの最後の演奏、名古屋でのチャイコフスキー5番のCDがつくらしい。もちろんうれしいんだけど、複雑。どういう演奏でも、名古屋に行けなかったことを後悔しそうだし(二週間後の、同プログラムの大阪公演取ってたからね)、それ以前に聴けないだろうな、しばらくは。

 会場に行って、その文集を購入。ロビーでぱらぱらめくってたけど、だめだ。涙出てきそうで中止。僕の名前も確認したし。( こういう、公の刊行物に、朝比奈さんを偲んだ刊行物に、自分の名前が載るのって、すごくうれしい。自分の文章が、じゃなくって自分の名前がね。ありがとうございました、大フィル協会のみなさん )

 ということで、公演のプログラムをぱらぱら。あ、指揮が井上道義なんだ。ごめんなさい、知りませんでした。何しろじいさん一周忌の第九、だったもので。
 だから、当然第九に関する心の準備なんかしてなくて。出かける前には、じいさんの94年のブル8を聴いてきて。

 駆け込みでチケット取ったからね、B席の端の方。まあいいんだけれど。会場は見渡すかぎり満員。久々の満員の大フィル、よかったね。

 さて、演奏。
 朝比奈と同じく、あたまから合唱もソリストも入れての開始。
 第九って、もちろん終楽章がとっても有名なんだけど、他の楽章も、すごいんだよ。一楽章なんか、もう、これぞベートーヴェン。ミッキーの、力こぶいっぱいの指揮から出てくる、力の入ったベートーヴェン。今年に入ってから、見違えるようにミスのなくなったホルンも、ここぞばかりに力みかえってミストーン。あ、大フィルだなって、変なところに安心したりして。
 今年僕の中で慣れ親しんだブルックナーやワーグナーとはもちろん違う、正統派のクラッシックの響きに、やっぱりいいなあ、って浸っていたのだけれども。
 終楽章。
 3楽章から、ちょっとばかり間をおいて始まった第4楽章。
 もちろん全曲のクライマックスなんだけれども。
 なんか薄っぺらく感じちゃいました。たとえばコントラバスとチェロで歓喜の唄の主題をそうするところとか、歌が出てくるところとか。
 なんでだろ。一昨年聴いたときにはそんなこと思わなかったのに。席がちょっと遠くなったからかな。演奏のせいかな。
 それとも、ブルックナーのせいなのかな。ブルックナーのブ厚いフーガしか受けつけなくなっちゃったのかな。
 まあ、そんなこと思ったのも一瞬で、合唱はいってからは違和感もなくなったのだけれども。
 そして、最後。あおりまくる井上。疾るオケ。おまえはフルヴェンか、っていうくらいの高揚感。
 ブラヴォー、っていうよりは、ヤッターっていう感じだけれども、楽しい終わり方でした。

 なんか、あんまり満足してないみたいな書き方だけれども、帰りにはしっかり、一月定期、ミッキーの革命のチケットを握りしめてました。だって、あのちからこぶいっぱいの革命、聴いてみたいでしょ?

 さて、2003年。大フィルは新しい音楽監督を迎えて、シンフォニーホールに場所を移して新たな局面を迎えます。
 発表になった来シーズンのプログラム、マーラーをはじめとして、ベルリオーズ、ブルックナー、ショスタコなど、大編成の交響曲が並ぶ豪華なプログラムです。ベートーヴェンが一曲もないのはとても寂しいけれど。
 僕は今のところ、会員にはならずに一回券で何回かは見に行こうと思っています。特に新監督のお披露目「復活」は楽しみです。

 では、今年(2003年)も、よろしくお願いします。

 

2002年11月4日
ザ・シンフォニーホール特選コンサートVol.4
大友直人の神秘
大友直人:指揮
京都市交響楽団
ザ・シンフォニーホール 2階AA列31番 A席

レスピーギ    :リュートのための古代舞曲とアリア 第3組曲
ストラヴィンスキー:バレエ音楽 火の鳥 1919年版
ストラヴィンスキー:バレエ音楽 春の祭典

 高校生の頃、僕は吹奏楽少年で。
 同じ境遇の人ってわかってくれると思うんだけれど、あのころって、ストラヴィンスキーってアイドルなんだよね。
 ベートーヴェンとかブラームスなんて聴きやしない。ブルックナーなんて知りもしない。そしてストラヴィンスキーや、ラヴェルやリムスキー・コルサコフ。それからレスピーギなんかが大好きで。

 吹奏楽って、オーケストラ向けのクラッシック音楽を吹奏楽向けにアレンジして演奏するんだけれど、あんまり長い曲はやらないんだよね。やって交響詩。ふつうはそれよりも短い一曲もの。もしくは抜粋。
 それは、演奏技術や音楽解釈の問題もあるけれど、多くのバンドが活動の中心としているコンクールの演奏時間が限られているせい。要は短い曲じゃないとコンクールで演奏できないってこと。
 短い時間で演奏効果を上げなくっちゃいけないから、シリアスな交響曲とはまともに向き合えなくて、絢爛豪華なフランス、ロシアのバレエものを演奏する機会が多い。いや多かったんだな、僕らのバンドは。今は知らないけれど。
 だから、交響曲よりも、そういう曲になじみが深い。

 まあそういうことはおいといて。ハルサイ。春の祭典。
 複雑怪奇なリズムに、いろんな楽器の突拍子もない音。耳障りな不協和音。でもわくわくするほど華麗で豪華。
 吹奏楽からクラッシックに入って、交響曲だと寝ちゃうよ、っていう僕のような人間にはぴったりの曲。
 でも、演奏も指揮も難しいからか、吹奏楽版って聴いたことないな。でも、あの難しいリズムを乗りこなしたくて、大枚はたいてスコアを買って、レコードと聴き比べながら格闘したな。自分のパート(トロンボン)さえも追えなかったけど。

 そうやってずっと好きだったんだけど、実演は聴いたことなかったんだよね。去年の今頃、やっと取った大植/ミネソタのハルサイ、911のテロ事件で来日中止になっちゃったし。

 昔は舶来物好きだったからね、日本のオケのハルサイなんて見向きもしなかっただろうけど。ホームでみれる安心感っていうものもいいよね、ということで楽しみにしていた京都市響のハルサイ。どんなことになるんでしょうか。
 前の日に、待ちきれずにムーティ/フィラデルフィアのCD聴いて盛り上がって。

 結果としては、大間違いだったんだけどね。

 一週間前で、二階席の一列目、ど真ん中がとれたから、まあそうじゃないかとは思っていたんだけれども、二階席はがらがら。身を乗り出してみた一階席はかなり埋まってたんだけどね。もったいないなあ、なのか、しょうがないなあ、なのか。ますます演奏が楽しみ。
 一曲目は、レスピーギ。といっても弦楽だけで、古典っぽい曲。
 これ、いいよ。少人数で、アンサンブルに気を遣って。レスピーギのイメージとはちょっと違う曲だけれども、丁寧できめ細かい演奏で大満足。
 お次は火の鳥。これはLPで持ってるから、ハルサイよりも前に好きだったんだね。でもLPだから、このごろはまったく聴いてないけど。デュトワの火の鳥、聴きにいったな、昔。
 当然管楽器が入って、編成が大きくなるんだけど。それでもあまってる椅子。管楽器だけで17この椅子と譜面台があまってました。もちろんハルサイ用ね、楽しみ楽しみ。
 あ、火の鳥だったっけ。
 もちろんむかしよく聴いた曲だし、ファンタジア2000も何回も見たから、良く知ってるんだけど、こんなに短かったっけ? 1919版だからかなっていっても、持ってるディスクも同じだしな。って思うくらい、すんなり終わっちゃった。バストロンボーンがかっこよかったね。
 でも、終局の盛り上がりとか、もっと派手にやってほしかったなあ。ハルサイに取っておくのかな。

 休憩終わって。すべての椅子が埋まって。ホルン8ラッパ5トロンボーン4チューバ2。木管はフルートが、アルト、ピッコロ入れて5人、ダブルリードが、オーボエ2、アルトオーボエ?、ファゴット2、コントラファゴットも2だったっけ?クラも何人もいて。パーカッションもティンパニ2組、バスドラ入れて全部で5人。そりゃあもう祭典にふさわしい大編成。
 んでもってでてきた音は。。。

 最初のファゴットのフラジオからいやな予感だったんだよね。もちろんフラジオだからある程度はしょうがないんだけど、鶏の首を絞めたような、苦しげな音。
 でもまあ、そこはいいとして。そのあとは、クラリネットもいい音だったし、バスクラ、コントラファゴットとか聴き慣れない楽器の音はわくわくするよね。どの楽器からどの音がでてるか、確かめるための二階席。視覚的にも楽しんでたんだけど。
 どこだったっけ? 一部の終曲よりも前だと思うんだけど。ラッパのソロが雷みたいに入ってくるところ。
 ここがね。弱いんだよね。遠慮して軽く吹いてる感じ。
 ハルサイでさ、ラッパって効果音じゃない。突然でてくる雷とか、そういう効果音。だから、全体のバランスとか無視して、堂々とでてくればいいのに、少なくとも僕はその方がいいと思うのに、この1stラッパは、最後までバランスを気にして、軽く吹いてました。
 たとえばティンパニとか、tuttiの下のラッパとかは必死に大音量鳴らしてたから、指揮者の指示とは思えないんだけどね。そういえばこのラッパ、火の鳥の最後でも軽めに吹いて、トロンボンの内声しか聴こえないってことになってたな。
 これはね、こういう曲では致命的。聴いてて楽しくないんだもん。
 もちろん、前日に聴いたムーティの演奏に比べて、っていうのはあると思うんだけどね。あそこのラッパはちょっと違うから。
 それにしてもなあ、っていうのがずっと続いて。そうやって聴くと、ティンパニ11連発のあとのファゴットが落ちてたようにもきこえるし。これは確認してないけど。

 最後の終曲は、整然と裁いてたから、聴きようによってはおもしろい演奏だったのだと思うのだけれども。
 僕の好みではなかったなあ。

 でも、ハルサイの生演奏って、おもしろいね。またいろんなオケで聴きたいな。

 

2002年9月16日
尼崎市民交響楽団 第17回定期演奏会
辻 敏治:指揮
尼崎市民交響楽団

ワーグナー  :歌劇 さまよえるオランダ人 序曲
ワーグナー  :楽劇 トリスタンとイゾルテ 前奏曲と愛の死
ベートーヴェン:交響曲 第6番 田園

 あぁ、またやっちゃったよ。
 どれだけ経つんだろう、あれから。聴いたらすぐ書こうって、いつも思うんだけどな。

 去年に引き続き、会社のヒトの所属しているアマオケの演奏会。どうでもいいけどアマオケって入力したら尼オケってでてきたよ。この場合は間違いじゃないんだけどね。
 去年は新鮮なブラームスを聴かせてくれたけど、今年はどんな演奏になりますやら。

 今年のプログラムは、ワーグナーと、ベートーヴェン、6番。どちらもなじみの曲だから、耳も厳しくなっちゃうよ、と思ってプチ緊張。
 結構広いアルカイックホールは、結構な人混み。集客に一生懸命なアマチュアバンドって正しいよね、健全。座った席は、前よりの左側。去年きてた、同じく会社の人は来てるかな、ときょろきょろしたけどわからなかった。いいんだけど。

 さて、演奏。

 ワーグナーは、さまよえるオランダ人とトリスタンとイゾルテ。私事だけどこのごろニュルンベルグの指輪の全曲版CDなど入手して。しかも聴いただけではさっぱりわからないから解説本などに手を出して。さらに堅苦しくて解り難いからと言って松本零士のマンガなどを読んだりして。ついでにアルカディア号のフィギアを飾ったりして、すなわちワーグナーがマイブーム。大フィルの分け解らない抜粋はちょっと欲求不満が残ったから、聴き慣れた一曲もの(?)は大歓迎。

 とはいえ、やっぱり難しいんだよね。弦楽器のことは解らないのだけれども、昔吹奏楽時代のコーチが、「アマオケ行ったってラッパがほえる曲は弦が難しすぎてできないぞ」って行ってたのを良く覚えていて。(コーチも私も大ラッパ吹き)
 そして、オランダ人は泣く子も黙るラッパ(ホルンだけど)が吼える曲。だからきっと弦も難しいんだろうけど。
 でも、それより前に、気持ちよく吹くはずのホルンが苦しがってました。
 以上。

 トリスタンはうって変わって弦が主な曲。たとえばこの曲とか、ブルックナーの7番とか、管楽器をがんがん出す作曲家の書いた弦が中心の曲(なんちゅうくくりや)って、泣けるんだよね。この曲、僕が初めて買ったクラシックのレコード、バーンスタインのワーグナー曲集の中で、唯一好きな演奏だった曲。
 もちろん、そんなに大きな期待をしていたわけではないのだけれど。
 でも、それはいい方に裏切られました。結構いいよ、この演奏。
 もちろん個々の技量とか音色とかは、プロのオケと同じ土俵で聴くわけには行かないんだけど、その分、一曲の練習時間だけは、プロにだって負けていないアマオケ。たぶんパート練習もしっかりしたんだろうなあ、というヴァイオリン、チェロ。練習してるなあ、という感嘆の上に、ワーグナーの世界がかいま見える演奏でした。

 休憩のあとの田園もね、すごく楽しく聞けた。
 ここでは、木管のソロ。クラリネットとオーボエと。そして何よりファゴット。このファゴットは絶品だね。達者なソロに支えられて、二楽章だったっけ、小鳥のさえずりも楽しく聞けました。

 十分な練習と、いくつかの楽器の達者なソロと。そしてそれを活かす選曲。楽章ごとの拍手なんて気にしない気にしない。
 来年も、楽しみにしています。

 

2002年7月31日
大阪フィルハーモニー交響楽団 特別演奏会〜朝比奈 隆 追悼〜
若杉 弘:指揮
大阪フィル
フェスティバルホール B席1階C列R7番

ワーグナー :前奏曲、葬送音楽、終曲 パルシファル/ニーベルングの指輪より
ブルックナー: 交響曲 第3番 ワーグナー ノヴァーク版

 かなり長い間遠ざかっていた気がするけれども。
 久しぶりのクラッシック。

 ほんとは、ベルリオーズから復帰したかったんだよね。大フィルの定期会員。ところがちょっと事情が変わって、毎回行ける保証がなくなっちゃって。だからまずは単発ものでリハビリ。

 っていうか、ブルックナーだったからね。日本一のブルックナーオケを自任していたはずの大フィルは、じいさんがいなくなったとたんに定期からブルックナー外しちゃって。だから大フィルのブルックナー、聴き逃すわけにはいかないんだ。

 一応、朝比奈追悼コンサートとはうたっているけれども、会場には別に朝比奈の肖像画があるわけじゃなく、CDなども売ってない。(朝日放送のDVDは売ってたんだけど、もう持ってるからね)あんまり朝比奈朝比奈してなくて、ってもうそれでいいんだけど。

 一週間くらい前にフェスの前でチケット取ったんだけれども、その時はめぼしいS席は満席で。結局前から4列目のB席にしたのだけれども。

 座席について、何気なく後ろを振り返ったら、ちょっとショック。いや、ちょっとどころじゃなくショック。
 空席ばっかりじゃん。
 ボックス席より後ろの、左右のブロックはほとんど空席。見えなかったけど、2階席も似たようなもんなんだろうなあ。
 大丈夫なんだろうか? 大フィル。

 よけいな心配まで抱え込んで、さて、演奏。
 第1部はワーグナー。パルシファルより前奏曲、葬送音楽、終曲ということだけれども、ワーグナーの小品でいつも演奏される何とかの前奏曲とかなんとか序曲とかじゃなくって、長い楽劇の一部分を切り取って、という感じ。所々聞き慣れた旋律が聞こえてきたりするんだけれども、なんかわからんふわふわした感じ。ほとんど印象に残らず。

 休憩の時にびっくりしたんだけれど、次がブルックナーだってのに、椅子減らしてるんだよね。ワーグナーってめちゃくちゃでかい編成だったんだね。

 さて、ブルックナー。前日にじいさんのCD聴いて気分を盛り上げて、楽しみにしていたブルックナー。
 1楽章。最初のラッパのソロ。これがきれいでね。じいさんのCDではほとんど印象に残らないフレーズなんだけれども、すごく芯のしっかりしたいい音でした。
 それからコラールで全休止。
 フェスはあんまり残響がないから、ブルックナー向きじゃないな、って思ってたんだけれども、若杉の全休止は気持ちいいよ。席が前のせいもあるのかもしれないけれど。
 だから最初から引き込まれて。
 金管も良く鳴ってたし、弦も危なげなく。すごく丁寧でさわやかなブルックナー。

 思わずにこにこでした。カーテンコールもいつもの定期に比べればかなり多かったんじゃないかなあ。

 こんな演奏会が空席だらけなんてもったいないよ。みんな、演奏会に行こうよ。
 って俺も久しぶりなんだけど、ね。

 

2001年4月26日
大阪フィルハーモニー交響楽団 第356回定期演奏会
下野 竜也:指揮
ラデク・バボラク:ホルン
大阪フィル
フェスティバルホール A席 1階 DD列 R12番

大栗 裕:管弦楽のための「神話」
R.シュトラウス:ホルン協奏曲 第2番
バルトーク:管弦楽のための協奏曲

2002年3月14日
大阪フィルハーモニー交響楽団 第355回定期演奏会
円光寺 雅彦:指揮
梯 剛之  :ピアノ
大阪フィル
フェスティバルホール A席 1階 DD列 R12番

モーツァルト:ピアノ協奏曲 第12番
マーラー  :交響曲 第5番

 すっかり怠け癖がついてしまって、かなり前のコンサートになってしまいます。ごめんなさい。
 記憶の方もかなりあやふやなので、二回分まとめて。

 怠け癖がついたのは書く方だけじゃなくって、聴く方も。何でかっていえばもちろん、じいさんがいなくなったから。
 何日も前からわくわくする感じ、演奏中のスリル、終演後の脱力感。こういうものを期待させる演奏会がなくなっちゃったんだもんね。もちろん、演奏の出来不出来の波は激しかったけれどもね。

 5回通し券の最後の2枚。だからちょっと足取りも重かった。

 まず、マーラー。
 マーラーは、生に限るね。ってバーンスタインの16枚組買っちゃったけど。これだけ華麗で、ステレオ効果があって、しかもダイナミクスの激しい曲は、家じゃあゆったり聴けません。

 とここまででおわかりと思うけど、マーラーの音楽的なこと、ちっとも分かりません。なんでブルックナーと並べられてるのかも、さっぱりわかんない。
 でも、嫌いじゃないんだけどね。楽しいから。

 というわけで、演奏。
 冒頭のラッパのドソロ。この曲はこれにつきるんだけれども、よかったです。もっときらびやかでもいいんだけど。ラッパに限らず、このごろの大フィルはソロがご機嫌だね。棒がわかりやすいから、安心してふけるのかな?
 曲は快調に進んで、結構満足の演奏会でした。

 でも、次の定期のプログラムに「名演!!」って書いてあったのには、ちょっとしらけちゃったかな。快演、くらいならよかったのに。どっちにしても自分でいうな、って。

 さて、その次回。
 下野の単独初定期。
 でもどうして大栗なんでしょうね。大栗指揮者になってしまうのでしょうか、これから。

 その大栗。
 朝比奈の前座やったときにも聴いたけど、吹奏楽なんだよね、この人。今回の神話は、派手なsfzクレッシェンドや大太鼓どんどここそなかったものの、ああ、このヴァイオリンはクラの音なんだなとか、ブラスに編曲したときの音が見え透いてしまってなんかちょっと。。。(ってブラスがもと曲なのか?)
 今回の演奏は、なんか弦楽器の音が聞こえなくて、厚みに乏しかった。席のせいか、そういうバランスだったのか知らんけどね。

 そうそう、この演奏会は、ちょっと客の入りが悪くて、替わりといってはなんだけれども、高校生が多かった。ブラスバンドの人たちかな?
 いいお手本になったかな?

 次のホルン。
 うまい。うまい。うまい!!
 おいしくて満腹でした。
 バルトークは長かった。

 すいません、記憶があやふやなもので。

 というわけで、5回券を聞き終えました。当然更新の時期なんだけれども、今回は、見送りです。また、レクイエムくらいから、ご縁があれば聴きたいと思います。

 そうそう、今回から、定演のパンフにご意見はがきが付きました。なんで今までなかったの、といいたいところですが、非常にいいことだと思います。といってまだ出してませんけど。

 

2002年1月24日
大阪フィルハーモニー交響楽団 第355回定期演奏会
若杉 弘:指揮
大阪フィル
フェスティバルホール A席 1階 DD列 R12番

レーバー :モーツァルトの主題による変奏曲とフーガ
ブラームス:交響曲 第4番

 もう何度も書いてきて、いいかげん、読んでいるあなたも書いているこっちもやめてくれって思ってると思うのだけれども。
 ホントの最後だから、もう一度だけ、書くよ。

朝比奈さんが、振るはずだったコンサート。

 ブラームス4番。
 去年、新日フィルでチクルスをやった朝比奈さんが、その成果を持って帰ってくるはずだった4番。
 僕は、新日フィルとの4番を聴きに行ったよ。無骨な大フィルとはちがう、どこまで行っても柔らかい新日フィルの4番。

 その記憶とだぶらせながら、大フィル/朝比奈の4番を楽しみにしていたのにね。
 年末の第九を振った若杉さんが、ピンチランナーとして棒を振って、前プロはレーガーに。っていっても朝比奈さんの予定していた前プロがなんだか分かってなかったから、前プロはどうでもいいんだけどね。(ちなみにブラームス/ハイドンの主題による変奏曲でした)

 さて、ますます空席が目立ってきたフェス。若杉さんもひょろっとしてあんまり元気いっぱい、といった感じの人ではなくて。

 一曲目、レーガー。
 実はもう結構コンサートから日が経っちゃってるから、あんまり記憶に残っていないんだけど、これ、やたら曲数が多い。っていうか一曲一曲が短い。曲そのもの、というか演奏は丸くってやわらかくって、とても気分いいんだけど、気分良くうとうとしてるとすぐ曲が止まって、次の曲へ。きっと感じよく音が流れているんだろうけれど、うとうとしているとそういうのはすぐ過ぎ去って、空白だけが印象に残る。って寝てたのがいけないんだけどね。このごろ眠いんだ、春だからかな。
 あ、いっておくけど、決して文句行ってるわけじゃないよ。気持ちよく寝れる、っていうのもいい演奏の条件だからね。

 とはいうものの、やっぱり交響曲では眠くなってはいかんだろう、ということで少し気合いを入れ直して、4番。

 この演奏、みんなはどう聴くんだろ。
 まあるい、まあるい親日フィルをを基準とすると、音の分解能がものすごくいい。楽器一つ一つが、それぞれ別なところで鳴っている感じ。アンサンブルが乱れているわけじゃないんだけどね。ちょっとまとまりがない。
 と思ったのは、実は最初だけでね。

 そのあとは、すぐにそんなこと忘れてのめり込んでた。
 なんか、ソロの一つ一つが新鮮。一楽章のファゴットも、こんな音だったっけ?って思うくらい違った音。クラリネットもフルートもよかった。
 そして、なんといってもホルン。初めて思ったんだけど、ホルン大活躍のこの曲で、なんとノーミス(たぶん)。しかもぶっとい自信に満ちた音。ビブラートも洒落ていて。
 人変わったかな、ってプログラム見返しちゃうくらいすごい音でした。

 聴いてて思ったんだけど、ブラームスの4番って、派手な曲だよね。なんか、ずっと終楽章みたい。思わず3楽章の終わりで拍手しちゃいたくなって危ないところでした。
 若杉さんの流れるようなフランス的な音と、きれいなソロと、最後まで元気のいいオケで、ブラ4は大満足でした。前回で延長しない方向に固まりつつあったんだけれども、ちょっと迷ってます。
 次のマーラー次第かな。

 そうそう、プログラムといえば。コンマスの言葉がちょっと印象的でした。
 メンバー紹介のページだけれども、もちろん今回は朝比奈さんの思いで、みたいな感じになってしまったのだけれども。
 コンマスの梅沢さんの言葉で。「我々は、朝比奈という音楽的、精神的、そして経済的にも大きな柱を失ったけれども、これから全力で立ち上がっていくよ」って。

 そうだよ。朝比奈さんは経済的にものすごく大きな柱だったんだよ。
 それをかみしめて、ホントに、全力で立ち上がってください。

 それを期待しています。

 
 朝比奈 隆 お別れの会
2002年2月7日
ザ・シンフォニーホール

 もちろん、新春コンサートや定期で、ロビーに肖像画が飾ってあったり、いろんな追悼番組を見たり。いろいろな形で朝比奈さんにお別れをしてきたのだけれども。
 朝比奈さんに、直接献花できる会。ほんとのお別れ会。やっぱり行かなくっちゃ。

 ザ・シンフォニーホール。いつもどきどきしながら入って、呆然としながら出てきたっけ。今日は、いやだな。行きたくないよ。
 いっこうに動かない足を叱咤激励して、たどりついたホール。

 葬儀屋さんの丁寧な道案内で、エスカレーターをどんどんのぼって、一階席、ステージ右側からはいる扉。
 そこで、白いカーネーションをもらって、ホールに。

 ステージ上段、パイプオルガンのところに据えられた朝比奈さん(の写真)。いろんな勲章、銀杯。

えらい人だったんだね、じいさん。

 ステージにはメンバーのいないままオケの形の椅子と楽器。その前に献花の机。
 初めてだよ。シンフォニーホールのステージ。哀しいステージ。

指揮台の真後ろまでいって、じいさんに花を捧げた。

 写真のじいさんのいるところ、僕が悲愴を聴いたのも、ちょうどあのくらいの位置だったっけ。
 これが20回目だよ。ステージ上のじいさんみるの。もう、動かないんだね。

 花を捧げても、立ち去りがたい人たちが、客席に座ってる。僕も、そのまま席に座って。

  一階席って、天井高いんだね。
  僕は、じいさんのベートーヴェンも、ブルックナーも、みんな二階で聴いたからな。だからかな。あんなに上にじいさんが見えるよ。おまけに、あんなに大きいのにかすんでる。

 僕がベートーヴェンを、ブルックナーを聴いた指定席、もう一度あそこに座りたかったな。あそこに座って、じいさんをみて。
 こんな、スピーカーから流れてくるブルックナーじゃなくて、ほんとのブルックナー、聴きたいな。

 残念ながら、二階席にはいけなかったけど。

 献花の人たち。喪服を着てるのは女の人。お葬式だもんね。喪服着るのが当たり前だよね。スーツ姿の男の人たちは、みんな一人で来て、ステージに立ちすくむ。
 
泣くなよ。大のオッサンがさ。みんながみてる前で。ステージの上で。

俺がこらえてるのに。

 しばらくして、テレビ屋さんが騒がしくなったと思ったら、オケのメンバーが入ってきて。
 外山さんの指揮で、ベートーヴェンの3番、2楽章。
 葬送行進曲
 あれ、7番じゃないんだ。でも、やっぱり3番かな。(7番の2楽章は息子さんの指揮で演奏したそうです)
 このシンフォニーホールで、一歩一歩見事に時間を切り取って見せたじいさんの3番。今でもはっきり覚えてるよ。

 それに比べれば、って比べちゃいけないね。
 じいさんに捧げた葬送行進曲のあとは、もちろん拍手も礼もなく、楽団員は去っていって。

僕も、会場を去りました。

 今年の、モーツァルトとチャイコフスキーになるはずだったチケットを払い戻して。
 そして、じいさんの土臭いドヴォルザークのCD買って、帰りました。

逝っちゃったんだね、じいさん。朝比奈さん。

 今まで、本当に、ありがとね。

2002年1月24日
大阪フィルハーモニー交響楽団 第354回定期演奏会
尾高 忠明:指揮
神尾真由子:ヴァイオリン
大阪フィル
フェスティバルホール A席 1階 DD列 R12番

ヴォーン=ウィリアムス タリスの主題による幻想曲
ドヴォルザーク ヴァイオリン協奏曲 イ短調
シベリウス 交響曲 第5番

 朝比奈さんがいなくなって、僕の手元にはあと4枚の大フィル定期のチケットがあって。

 定期会員をこのまま続けるのかどうか。あと4回の演奏会で僕は決めていくのだろうけれど。

 今回の演奏会は、何も残りませんでした。
 去年は飛び跳ねながら元気なシベリウスを聴かせてくれた尾高さんは、なんかおとなしくなっちゃったし、ヴァイオリンのお姉ちゃんは、まだまだ子供で、全然色気がないし。

 ヴァイオリンのソリストって、若いおねーちゃんが多いよね。何でだろ。昔若かった人たちって、どこ行くんだろ。オケに入って弾いてるのかな? ちょっと不思議。

 前回の定期もそうだけど、もうちょっと気合いの入った演奏してよ。
 今回がらがらだったけど、まだまだみんな迷ってるんだよ。朝比奈さん亡き後、それでも大フィル聴くのかって。 そういうときに、どうしてこういう演奏会なんだろうなあ。

 書けばこうなるのは分かってたから、書くのやめようかと思ったんだけど、次の演奏会が近づいてきたからね。

 今度こそ、期待してるよ。ブラームス。

 

2002年1月13日
大阪フィル新春名曲コンサート
 〜朝比奈隆氏を偲んで〜

下野竜也:指揮
若林 彰:ピアノ
大阪フィル
フェスティバルホール 1階L列 L30番

ベートーヴェン エグモント序曲 〜朝比奈隆に捧ぐ〜
ベートーヴェン ピアノ協奏曲 第5番 皇帝
ドヴォルザーク 交響曲 第9番 新世界より
en J.S.バッハ G線上のアリア

 年も改まって。あっ、あけましておめでとうございます。

 改めて、年も改まって。新春名曲コンサート。

 朝比奈さんが倒れてから、僕は、朝比奈さんの振るはずだったコンサートのうち三回をキャンセルして、一回は見に行った。見に行った一回は、大フィル定期。ブルックナーの3番の代わりにシューベルトのザ・グレイト。このときの演奏には、触れたくないな(って前に触れてるがな)。そこには朝比奈さんが乗り移っていなくて、さらに朝比奈さんがいなくなっても自分たちががんばろう、っていうオケの気概も感じ取ることも出来なかったから。
 だから、今回のコンサートも、どうしようか迷っていた。迷っていたときに、大フィル事務局に電話した。

「13日の名曲コンサートなんですが」
「この日のコンサートは、曲目はそのままで、指揮者を下野竜也に変更して、朝比奈隆を偲ぶ会として行うことになりました」

 決めた。聴きに行く。

 これが外山でも若杉でも、たぶん行かなかっただろうと思うけれども、下野ならば、行く。
 下野竜也って、そんなに聴いたことがない。朝比奈さんのブル4のときに、前座で大栗さんの短い曲を聴いただけ。だから、演奏のことは分からない。でも、テレビのインタビューとか、プロフィールをみると、朝比奈さんへの尊敬がにじみ出てる。そして、若い。偲ぶ会は、そういう人にこそ、振ってもらいたい。

 会場は、予想に反してほぼ満員。ロビー正面に朝比奈氏の肖像画が掛かっていて、CDと書籍のブースに人だかりがしてるのがいつもと違うくらいかな。その肖像画で、うるっ
 開演前のアナウンスで、演奏のあたまに、朝比奈氏を偲んでエグモント序曲を演奏するとのこと。朝比奈のエグモントは、ディスクでしか知らないけれど、ちょっとうるっ

 いつもの通り、ステージには何人かの団員が音出しをしていて。2ベルとともにバラバラと他の団員も入ってくる。チューニングを終えて、下野氏登場。
 追悼のアナウンスも、黙祷もなく、曲が始まった。

 一番緊張とプレッシャーを感じていたのは、下野氏、なのかな。とっても力の入った指揮振りに、楽団がついてこないところがいくつもあって。とくに音の出だしが揃わない。それでも、音楽は流れていって。
 ああ、この流れていく、っていう感覚。これが、朝比奈さんとは違うんだな、って。

 朝比奈さんの音楽は、流れない。一歩一歩、踏みしめて踏みしめて。朝比奈さんの棒がなければ、一歩だって先に行かない。そういうスリリングさがたまらなかった。

 あ、もちろん、だから下野氏じゃだめだ、っていってるんじゃないよ。音楽は一つじゃないからね。下野氏を初めて聴いたのが、さっき書いた朝比奈の前座で大栗さんの曲だったから、吹奏楽系の指揮する人、っていうイメージがあったんだけど、エグモントでもそう。音の出だしとアクセントでビートを作る指揮は、弦が多いオケではちょっと辛いかな。

 序曲のあと、ピアノが入って皇帝。
 僕は、朝比奈さんの指揮でこの曲、二回聴いてるんだ。去年の名曲コンサートと、札幌公演。ピアノは、どちらも伊藤恵。二回聴いてる割には、あんまり印象に残らない。協奏曲って、よく分からないんだよね。ソロ楽器よりもオケの方に興味があるからね。
 ただ、今回はよかったよ。ちょっと席のおかげでピアノの音がまわっちゃってたけど、若林さんのピアノはとってもタッチがはっきりしてて心地いい。いつもは眠くなっちゃう皇帝も、面白く聴けました。

 休憩をはさんで、新世界。
 結論からいっちゃえば、これが大当たり。ドヴォルザークのわかりやすい曲と、下野氏のわかりやすい指揮が一体となって、これぞ名曲コンサート。アインザッツの乱れも多少あったけど、思い切りのいい指揮でぴったり合ったときの快感に比べれば全然気にならない。この曲、聴く毎にアメリカの風景じゃなくてドヴォルザークの故郷、モルダウの景色なんだな、って思うんだけど、今回はもろにそう。ただし、土埃の匂いまではしなかったけど。
 それまでは全くなかった、ブラヴォーコール。ちょっと控えめだったけど、あってよかった。いい演奏でした。

 カーテンコールに応えて、G線上のアリア。じいさんを送る曲としてはあんまりふさわしくないけど、しんみり心地よかった。

 ほんとは、泣きに行ったんだよね。もっとじいさんじいさんしてくれるかと思って。
 でも、期待はいい方に裏切られました。

 八割方朝比奈を聴きに来た客の前で、自分の演奏を貫き通してくれた下野氏に、乾杯