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「破れざる旗の下に」 ★★ アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀賞 原題:"Flags on the Bayou" 訳:山中朝晶 |
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2024年11月
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1863年、南北戦争下のルイジアナ。 評判の悪い農園主=ミノス・スアレスが殺害される。 その容疑者と目されたのは、近隣農園の奴隷であるハンナ・ラヴォー、次いでスアレスの解放奴隷であるダーラ・バビノー。 逮捕されたハンナは、奴隷制廃止論者のフローレンス・ミルトンに助けられて脱獄、フローレンスと共に生き別れとなった息子サミュエルを探し出すため、逃亡の旅へと踏み出します。 ハンナに敬愛の念を抱くウェイド・ラフキンはハンナを救おうと巡査のピエール・コーションに決闘を申し込むが、その結果として顔に酷い傷を負ってしまう。 北軍将校のジョン・エンディコットは、執拗にハンナ、ダーラを狙う・・・。 北軍と南軍が激闘を繰り広げた米国内戦争ですが、本作においてその対立はそう感じません。 また、白人が黒人奴隷に対して性的乱暴を行ったり、殺したりすることについて何の呵責も感じていないという点において、白人対黒人という問題もあります。 でも本作で強く感じるのは、結局は人間と人間の問題であるということ。そこに北軍も南軍も、白人も黒人も関係ありません。 独立不羈の心を強く持ち続けている人間、正しい方の選択をしようとする人間もいれば、卑劣な人間もいる、ということ。 本作は、上記のような問題を内含した歴史サスペンス。 ただ、所々突拍子もないと感じる展開があって、すっきりしない気持ちが残ります。 ※フローレンス・ミルトンが望んだ活動が<地下鉄道>。 その活動を描いた小説に、C・コルソンウッド「地下鉄道」がありますが、傑作と言える作品。こちらもお薦めです。 |