マッテオ・B・ビアンキ作品のページ


Matteo B. Bianchi 1966年イタリアのミラノ生。作家、出版人、放送クリエイター。99年ゲイである自らの体験をベースとした青春小説「Generations of love」にて作家デビュー。同作は名だたる作家が激賞、大きな反響を呼び、優れたイタリア語の小説に与えられるストレーザ賞を受賞。個人文芸誌「'tina」 を30年近くにわたって主宰するほか、出版社Accento を創設するなど、若い作家に発表の場を与える活動にも注力。

 


                          

 
「遺された者たちへ」 ★★       
 原題:"La vica di chi resta"        訳:関口英子


遺された者たちへ

2023年発表

2025年07月
新潮社
(2200円+税)



2025/08/21



amazon.co.jp

1998年の8月末、愛し合って7年間を一緒に暮らし、3ヶ月前に別れた元恋人「S」が、2人の部屋で首を吊って自殺する。

元恋人が自殺したというショック、自責の念、いつまでも消えることない彼への想い・・・。
止めどない 悲しみ、苦しみ、悔恨、心の傷、本作ではそれらが何度も何度も、想う角度を変え、書き方を変え、記憶に残る出来事を角度を変えて、繰り返し語り続けられます。
愛する相手を喪うとは、こんなにも苦しいものなのか、こんなにも人生を変えられてしまうものなのか、作者の心の痛みを身近に感じずにはいられません。

Sが死んでから作者が本作品を書くまでに、四半世紀近い時が必要だったという。
その基になったのは、作者が書き留めたノート。
というのは、知り合いの作家からメモをとっておけ、と言われたのだそうです。
いつか必ず書くときが来る。作家である以上、書くことが人生と向き合う術なのだから、と。

最後、ようやく作者がSの幻影から逃れ、新たな人生へ向き合う気持ちになれたのは、どのようなことからだったのか。
その再生を語る部分はほんの僅かですが、同じような苦しみを抱える人たちに、貴重な助言となる言葉だと思います。

読む人の感じ方によって印象は異なると思いますが、私としてはお薦め。

       


    
新潮クレスト・ブックス

      

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