富士山噴火降灰予想図

気象庁推計 富士山噴火で都心降灰10センチ予想図

毎日新聞 2018年7月30日
「宝永」級の富士山噴火による最大降灰量の分布予想図
 江戸時代に発生した富士山の大規模噴火(宝永噴火)を、現代の実際の気象状況に当てはめて降灰量を推計したところ、東京都心部でも10センチ以上積もる可能性のあることが気象庁気象研究所のシミュレーションで分かった。
経済活動に大きな影響が予想され、政府は今秋までに中央防災会議に有識者検討会を設置し、気象研の推計も参考に富士山の降灰対策に本格的に乗り出す。

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 火山灰は1ミリ以上で道路が覆われ、5ミリ積もると鉄道が運行できなくなるとされる。
気象研の新堀敏基主任研究官は1707年12月に発生した宝永噴火の噴煙の高さや継続時間の推定値と、気象庁が2015~17年に解析した日々の風向きや気圧などの詳細なデータを用いて推計。
1096の降灰パターンを導き出し、東京・大手町はうち3%の36パターンで降灰量が10センチを超えた。


 全パターンを重ね合わせた最大降灰量の分布図も作成し、神奈川県のほぼ全域と、静岡、山梨、東京の3都県の一部で30センチ~1メートルに達する可能性があった。千葉県のほぼ全域や茨城県と埼玉県の一部などは最大10~30センチと見積もられた。
 降灰の範囲は季節で異なり、冬は季節風の影響で東方向に集中。夏は全方位に降る傾向となった。春や秋に多い、富士山から北東方向に風が吹くケースでは、都心に厚く積もる。

 気象研は約15年前にも同様の試算を実施したが、日ごとの気象状況までは考慮せず、都心の降灰を数センチ程度と推定していた。実際の宝永噴火も都心の降灰は数センチだったとされる。新堀主任研究官は「各地の最大降灰量の確率を新たに見積もることができた」と話す。
 政府はこれまで大規模火山噴火に対する具体策を検討してこなかったが、大きな被害が予想される富士山をモデルケースに除灰対策などを考案する方針だ。【池田知広】

気象庁推計 富士山噴火で都心降灰10センチ

2010年6月10日

富士山噴火 経済被害2兆円超 中央防災会議が試算

 富士山噴火の中で最大規模とされる江戸時代の「宝永の噴火」クラスが今起きると、人的損害を含めない経済的被害だけで2兆円を超えることが、中央防災会議(会長・小泉首相)の富士山ハザードマップ検討委員会の試算で分かった。
首都圏に近いだけに、雲仙・普賢岳の約3千億円、有珠山の約300億円など過去の被害とは、けた違いとなる。富士山直下で低周波地震が多発していることを受けた取り組みで、噴火の被害額の試算は初めて。

 宝永の噴火は、1707年の12月16日から16日間続いた。火山灰はふもとでは1メートル以上、西風で運ばれた江戸でも1~2センチ積もった。
 検討委は、同じ事態が現代に起きた場合の被害を、北海道の有珠山(00年)や長崎県の雲仙・普賢岳(90~94年)など最近の例を参考に、関係者から聞き取り調査するなどして調べた。
 その結果、(1)雨が降ると、降灰1センチ以上の地域では、電線のがいしから漏電し家庭や事業所の18%が停電(2)雨が降ると降灰が1日5ミリ以上の地域では車両がスリップし通行不能(3)降灰が5ミリ以上の地域では鉄道が運行を停止(4)0.5ミリ以上の地域では稲作に被害(5)降灰が少しでもある地域では航空機が運航不能--などが判明した。
 こうした条件下で経済的被害を計算すると、噴火の16日間に一度も雨が降らない場合は、農林業の直接被害を中心に約1兆1千億円になる。雨が3日降る平均的なケースでは、交通マヒや停電などによる産業への影響が大きく、灰の除去費用などを除いても被害は約2兆円に。他の火山による過去の被害に比べ巨額になる。噴火の規模が大きいうえ、首都圏は人口密度が高く、経済活動も活発なためだ。
 試算結果について検討委の委員の一人は「被害額は仮定の置き方で変わってくるが、噴火中の降雨の有無で大きく違うことなどがはっきりし、対策を考える上で意味がある」と話している。