tlhIngan may'Duj, qItI'nga'

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wa'DIch tlhIngan Dujmey luleghlu'pu'bogh rur qItI'nga' Duj. tera' vatlh DIS poH cha'maH wej HochHom lo'lu'taH. tera' vatlh DIS poH cha'maH loS bong QongmeH qItI'nga' Duj tI'ang ghompu' DIvI' 'ejDo' 'entepray'.

クリンゴン戦艦クティンガ級
クティンガ級の艦は初めて見られたクリンゴン艦船に似ている。地球歴23世紀のほとんどの間使われ続けた。地球歴24世紀に連邦航宙艦エンタープライズ号が睡眠用クティンガ級艦船のトング号に偶然遭遇した。
クリンゴン語の文章はスカイボックス社が作文した英文をマーク・オクランド博士が訳したものです。以下に英語の原文も載せておきます。複雑な構文をどの様にぶつ切りにして単純な文で言い替えるかの参考にしましょう。単語、表現ともに、まだまだ少ないクリンゴン語での作文においては、この「言い替え」が非常に力を発揮します。

Klingon Battlecruiser, K'Tinga-Class
Similar in configuration to the first Klingon vessels encountered, the K'Tinga-Class remained in use for most of the 23rd century. A sleeper ship of this class, the T'Ong, was encountered in the 24th century by the U.S.S. Enterprise.
(初めて遭遇したクリンゴン艦と形の似たクティンガ級は23世紀の間中使われ続けた。この等級の睡眠船であるトング号は24世紀にU.S.S.エンタープライズ号によって発見された。)


解説

tlhIngan may'Duj, qItI'nga'
クリンゴン戦艦クティンガ級
tlhIngan:Klinogn:クリンゴン
may'Duj:battle cruiser:戦艦
qItI'nga':K'Tinga-Class:クティンガ級

クティンガ級とはクリンゴン艦の等級で、映画の1作目の冒頭に登場した型のことです。旧TVシリーズに登場した型は連邦側ではD-7型と呼ばれ、これの前身です。

因みに英語表記のK'Tingaの読み方ですが、「クティンガ」が一番近い様に思えます。(但し、私はこの単語を作品中で聞いたことはありません。)

ご存じの通り英語は綴りと発音が滅茶苦茶なことが多い言語です。このためスタートレックに登場する固有名詞には読めないものが非常に多く、情報の大半を本に頼っている私はいつも苦労させられます。K'Ehleyrが「ケーラー」だなんて聞くまで分かりませんでした。Kahless(ケイリス)も長年「カーレス」と読んでいました。Ka-ではなくKah-と綴るからには「カー」であることを強調してるのだとばかり思っていました。

おそらくは、異星・異文化の感じを出すために奇妙な綴りが選ばれるのだと思います。

これらのスタートレック独特の奇妙な綴りの代表格として、語頭の「子音+’」があります。K'Tinga, K'Vort, T'Ong等のクリンゴン以外にも、バルカンの女性名の「T'-」等、他にも沢山あります。クリンゴン語の出来る人ならば、この「’」を「声門閉鎖音」と思う人もいるでしょう。しかしこれはどうも「曖昧母音(schwa)」の様です。これは舌や唇の力を抜いてただ声を出すだけのもので、「あ」とも「う」ともつかない音が聞こえます。例えば、aboutのa、kingdomのo、movementの後ろのe等です。

スタートレックの固有名詞には、英語では普通語頭に立たない子音連続を使って雰囲気を出しているのです。英語話者にとって、もともと英語にない子音連続は発音しにくいらしく、丁度日本人が外国語の子音を発音する際に「u」を付けてしまうのと同じ様に、この「曖昧母音」を付けて発音する様です。これを綴りの上に反映させたものが「’」ではないでしょうか。

上の例で、movementの前の「e」は発音が消滅してしまっていることからも分かる通り、英語話者にとっては「e」は音的に弱い印象があるらしく、「曖昧母音」の発音記号には「e」を逆さまにした記号が用いられます。日本人が子音に「u」を付けがちなのは、日本人にとっては「u」が弱く思えるのでしょう。実際、日常会話では語末の「u」は消えがちです。つまり、「〜です」は早口になると「〜desu」よりも「〜des」に近くなります。

オクランド博士の用例を見ていると、クリンゴン語ではこういう場合「I」が使われる様です。従って、K'TingaはqItI'nga'、T'OngはtI'angになります。クリンゴン語の音節構造上、1音節内に子音連続はありませんので、日本人が子音に「u」を付けるのと同じ様に、クリンゴン人は「I」を付けます。これにより、「glob」は日本語では「gurobu」、クリンゴン語では「ghIlab」になります。

wa'DIch tlhIngan Dujmey luleghlu'pu'bogh rur qItI'nga' Duj.
クティンガ級の艦は初めて見られたクリンゴン艦船に似ている。
wa'-DIch:first:一番に、初めて
tlhIngan:Klingon:クリンゴン
Duj-mey:ship, vessel-plural:船-複数
lu-legh-lu'-pu'-bogh:they=it-see-indefinite subject-perfective-which:それらは=それを-見る、会う-不定主語-完了-関係辞
rur:resemble:似ている
qItI'nga':K'Tinga-Class:クティンガ級
Duj:ship, vessel:船

この文は以下の様な構造になっています。
目的語動詞主語
wa'DIch tlhIngan Dujmey luleghlu'pu'boghrurqItI'nga' Duj

更に目的語の部分は以下の様に分析出来ます。
説明語目的語動詞主語
wa'DIchtlhIngan Dujmeyluleghlupu'(-lu' = 誰か)
上の文の意味は「誰かが初めてクリンゴンの艦船を見た」です。より自然な日本語にすると「クリンゴンの艦船が初めて見られた」となります。動詞に関係辞-boghを付ければ、「誰かが初めて見たクリンゴンの艦船」になります。より自然には「初めて見られたクリンゴンの艦船」です。

接頭辞 lu- は「三人称複数主語−三人称単数目的語」を示すものですが、この文では接尾辞 -lu' により「不定主語−三人称複数目的語」を表わしています。

tera' vatlh DIS poH cha'maH wej HochHom lo'lu'taH.
地球歴23世紀のほとんどの間使われ続ける。
tera':Earth:地球
vatlh:hundred:百
DIS:year (Klingon):年(クリンゴンの)
poH:period of time:期、期間、時間、時限
cha'maH:twenty:二十
wej:three:三
Hoch-Hom:everyone, all, everything:全て、全ての者/物
lo'-lu'-taH:use-indefinite subject-continuous:使う-不定主語-継続

この文には注目すべき新しい表現が2つ含まれています。

先ず、「〜世紀」は「vatlh DIS poH 〜」と表現します。これは直訳すると、「百年期」となります。因みに英語のcenturyのcentも百という意味です。この文の場合、地球の西暦なので頭にtera'が付いています。

参考
tera' vatlh DIS poH cha'maH:(地球の)20世紀
tera' DIS wa' Hut Hut vagh:(地球の)1995年
もう1つはHochHomという表現です。これは「Hoch:全て」に縮小辞-Homが付いたもので、「ほとんど」という意味になります。ここら辺の語の派生の仕組みがなんとも面白いところです。
tera' vatlh DIS poH cha'maH loS bong QongmeH qItI'nga' Duj tI'ang ghompu' DIvI' 'ejDo' 'entepray'.
地球歴24世紀に連邦航宙艦エンタープライズ号が睡眠用クティンガ級艦船のトング号に偶然遭遇した。
tera':Earth:地球
vatlh:hundred:百
DIS:year (Klingon):年(クリンゴンの)
poH:period of time:期、期間、時間、時限
cha'maH:twenty:二十
loS:four:四
bong:accidentally, by accident:偶然に
Qong-meH:sleep-for:眠る-ための
qItI'nga':K'Tinga-Class:クティンガ級
Duj:ship, vessel:船
tI'ang:T'Ong:トング号
ghom-pu':meet, encounter, assemble, rendezvous:出会う、遭遇する、集合する-完了
DIvI':federation, organization:連邦、組織、団体
'ejDo':starship, starship class:航宙艦、スターシップ級
'entepray':Enterprise:エンタープライズ号

QongmeHとあるのは、トング号の乗員たちが長期任務のために冷凍睡眠を施されていたからです。英語のsleeper shipからのほぼ直訳でしょう。

T'Ongはクリンゴン語ではtI'angになります。これにより、英語のT'OngのOはaに近い発音であることが分かります。日本語で表記する場合、「トング」よりも「トゥオング」の方が近そうです。

ghomは副詞「bong:偶然に」があることで、「偶然に出会う」つまり、正に「遭遇する」という意味です。

DIvI'はここでは英語のfederationに当たり、スタートレック用語ではFederation、つまり惑星連邦のことです。

参考
tlhIngan wo' Duj
:Imperial Klingon Vessel (= I.K.V.)
:クリンゴン帝国艦

DIvI' 'ejDo'
:Federation Starship (= U.S.S)
:連邦航宙艦

但し、U.S.S.はUnited Star Shipの略と言われています。Federation Starshipと同じ様な意味です。因みにアメリカの艦船にはU.S.S.が付きますがこれはUnited States Shipの略です。(単にU.S.というのもあった様な気がします。)更に言うと英国の艦船にはH.M.S.が付きます。これはHer (又はHis) Majesty's Servise (又はShip)の略です。女王陛下(又は国王陛下)の軍(又は船)という意味です。


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Ver.1 Jul 7th. 1996
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