送信者: Shin'ichirou Koubuchi 宛先: Cc: Shin'ichirou Koubuchi 件名 : [klingon 46] Kronos Chronicle #5 日時 : 1997年1月31日 21:23 Eメールによるクリンゴン語情報誌 【クロノス・クロニクル】 第五号 - Qo'noS QonoS 5-DIch - - Kronos Chronicle #5 - 発行者:コウブチ・シンイチロウ 発行日:1997年2月1日 【TKWカセットテープ】 クリンゴンの諺や格言を集めた本『STAR TREK: THE KLINGON WAY』については もう既にご存じだと思います。現在、これのカセットテープ版が発売されてい ます。発売元は本と同じ『Simon & Schuster』で、書籍番号(ISBN)は 『0-671-57380-2』です。価格は12ドルです。2月末には、当ML上で注文 を募る予定です。ご自分で入手するのが困難な方はご利用下さい。 【クリンゴン語会話環境】 アメリカのクリンゴン語研究組織『Klinogn Language Institute』(通称KLI) では、今年からインターネット上でクリンゴン語の音声会話が出来る環境を公 開しています。題して『peja'chuq(会話しろ)』。いわゆるチャットの一種だ と思いますが、文字ではなく、声でリアルタイムの会話を楽しむことが出来ま す。もちろんクリンゴン語が公用語ですが、英語によるクリンゴン語教室など も開かれる様です。参加するには専用のソフトウェアをダウンロードしますが 今のところWindows 95のみにしか対応していません。詳しくは、以下のURL をご覧下さい。   KLI:http://www.kli.org/   peja'chuq:http://www.kli.org/kli/talker.html 【新しい子音連続】 クリンゴン語の音節構造はとても単純で、以下の3種類のみです。 ここでCは子音、Vは母音を示します。    CV    CVC    CVCC(但し-rghのみ) そして、上記に見る様に『1音節内に於ける子音連続は-rghのみ』でした。 しかしQQ2でご紹介したSBXの例文中に『janluq pIqarD HoD(ジャン= リュック・ピカード船長)』というのがあり、ここで『 -rD』という新しい子 音連続が登場しました。しかしこれは異星の人名であり、クリンゴン語から見 れば外国語です。従ってクリンゴン語本来の音ではないものと思われます。つ まり、連邦標準語という外国語に接した結果生まれた新しい音と言えるでしょ う。 日本語にも同様の現象を認めることが出来ます。英語の『family(家族)』は 日本語でもカタカナで『ファミリー』として一般化しています。この『ファ』 という音は五十音表にはなく、外国語のf音に影響されて日本人が新しくつく り出した音節です。英語のf音は、ご存じの様に上の前歯を下唇に付けて発音 されます。一方、日本語のf音は上下の唇を近づけるだけで発音されます。専 門用語では、英語のf音は『歯唇摩擦音』、日本語のf音は『両唇摩擦音』に なります。実は、は行の『ふ』の子音がこの『両唇摩擦音』なのです。英語の f音を持たない日本人はこのふ音にだけ使われている音の適応範囲を拡張して、 f音の代用にしたのです。    は  ひ  ふ  へ  ほ    ファ フィ フ  フェ フォ それまでは母音uとのみ結合していた子音を他の母音aieoとも結合させる ことによって、外国語のfの近似音を再現しているのです。 さて、クリンゴン語には『qorDu'(家族)』という単語があります。この単語 を発音する時に語末の-u'を言わずに途中で止めると、-rDの子音連続が得られ ます。連邦標準語の-rdとクリンゴン語の-rDは違いますが、クリンゴン人は既 に持っているこの近似音で代用しているのです。 【その他の情報】 QQ3でお伝えした『スタートレックXメン』と『DS9のトリブル騒動』の 続報が同時に入りましたので、ここに紹介します。 ◆『スタートレックXメン』これは、コミック上でスタートレックの登場人物 とXメンの登場人物が共演するという話です。スタートレックの代表はカーク 船長たちです。Xメンにも色々なメンバー構成の派生シリーズが多数ある様で すが、こちらも一番古くからのメンバー(だと思います)が代表です。20世 紀のXメンと23世紀のエンタープライズ号が体面する仕掛けは、いわゆる時 空の裂け目によるタイムスリップで、よくある常套手段です。 Xメンでは多くの超能力者やミュータントが登場します。Xメンとは、全盲車 椅子で自らも超能力者であるX教授の下で、その特殊能力を犯罪調査や人命救 助に役立て、自分たちも社会に貢献出来るということを示すことによって、 ミュータントの人権確立を目指した活動を行なうグループです。今ではかなり スケールアップして、全宇宙の支配を企む大帝国と戦っている様です。 23世紀のある時、強力なエネルギー現象が発生し、エンタープライズ号が調 査に向かいます。一方、それは時空の裂け目をつくり、20世紀にも同様の現 象が出現します。そのエネルギーを制御出来れば宇宙を支配出来ると判断した シ・アル帝国(Xメンの敵)も調査に向かい、Xメンはそれを追います。そして、 シ・アル艦とX艇は時空を超え、X艇爆発の直前にXメンたちがエンタープラ イズ号へ『テレポート』し、両者の体面と相成ります。 結局、そのエネルギー現象の元が、かつてXメンに登場した悪役とかつてTO Sに登場した人物によるものであることがわかります。強大な力を持つが宿主 を必要とする(らしい)プロテウスは、その邪悪さに気付いた地球での宿主が 自殺を図ったため、宇宙をさまよい続けた後、今なお怨念の残るゲイリー・ ミッチェルの遺体を発見し合体したのでした。ゲイリー・ミッチェルはTOS の『Where No Man Has Gone Before(光るめだま)』に登場したスタートレッ クのミュータントです。 以降は宇宙艦隊の科学力とXメンの超能力を一つに合わせて戦うという具合で す。単にドンパチやるだけでなく、カークがXメンのテレパス能力者ジーンの 力を借りてゲイリー・ミッチェルの心に入り込み、彼の良心にも訴えかけると ころが一つの見所ではあります。 Xメンの一員だが乱暴で粗野な一匹狼のウルバリンをスポックがいとも軽くあ しらってしまったり、Xメンの知恵袋ビーストの本名がマッコイで、名前を呼 ばれてビースト、ボーンズ両者が返事をしたりと、なかなか楽しめる部分も用 意されています。 以上、ごく簡単なレビューでした。版権がDCコミック社からマーベルコミッ ク社へ移った様で、去年の末から一斉に関連コミックが発売され始めました。 以下にご紹介します。 STAR TREK: VOYAGER   :最新シリーズ『VOYAGER』のコミック版。 STAR TREK: DEEP SPACE NINE   :DS9のコミック版。DS9は以前、イギリスのBoxtree社というとこ    ろからもコミックが出ていました。 STAR TREK: STAR FLEET ACADEMY   :宇宙艦隊アカデミーを舞台にしたコミック。若き士官候補生たちの活躍。    表紙から推測すると、主人公は金髪の地球人青年、黒髪の地球人女性、    バルカン人女性、アンドリア人女性、フェレンギ青年の5人。(但し、    地球人に見えるのはベタゾイドなどの異星人の可能性あり。) STAR TREK: UNLIMITED   :カーク船長たちの物語。 STAR TREK: EARLY VOYAGES   :カーク船長の5年間の調査飛行の前のU.S.S.エンタープライズ号の活躍。    クリストファー・パイク船長、ナンバー・ワン、そして若きスポックた    ちの活躍。(因みに、ライカーがナンバー・ワンと呼ばれるのはこの副    長ナンバー・ワンから来ています。彼女を演じたのはラクサナ・トロイ    役のメイジェル・バレットです。) STAR TREK: MIRROR MIRROR(単発)   :TOSの中でも人気の高い『Mirror, Mirror(イオン嵐の恐怖)』に    関連した物語。今度はスポックがある意図のもとに入れ替わって、    エンタープライズ号の乗っ取りを企てる様です。旧型クリンゴンも登場。 STAR TREK X MEN(単発)   :上述。 取り敢えず情報として、こんなものもあると知っておいて損はないでしょう。 コミックの場合、番組とは全く無関係に勝手なストーリー展開を繰り広げるの が常ですので、入手出来なくても本編理解に全く支障はないと思います。年末 多忙だった私は、片っ端から買い逃しました。 ◆『DS9のトリブル騒動』これは、テレビ上でDS9の登場人物とTOSの 登場人物が共演するという話です。概要は前回お伝えした通りですが、アメリ カのSF映画雑誌『STARLOG』1月号に記事が載っていたので少し紹介します。 この企画もスタートレック30周年記念によるもので、かなり力を入れた目玉 作品の様です。初めにDS9の面々をTOSの話に『はめ込もう』という企画 が挙がった時には、どの話にするかいくつかの候補があったそうです。しかし、 傾向的にギスギスして暗い印象のあるDS9に少しコミカルな要素も持たせよ うという考えになったとたん、すぐに『The Trouble with Tribbles(新種ク アドロトリティケール)』に決まりました。DS9版の題名は『Trials And Tribble-ations』です。 内容は、かつて宇宙ステーションK3で失敗したクリンゴン・スパイのアーン・ ダービンがDS9の時代からタイム・トラベルによって過去に戻りカーク暗殺 を企て、それに気付いたシスコ司令官たちも過去へ潜入し密かにカーク暗殺を 阻止する、というものです。 見所はなんと言っても、過去の再現と過去との共演です。TNGでスコッティ がホロデッキに旧ブリッジを再現した際には背景は合成だったそうです。しか し今回は30周年記念の大義名分の下で予算も沢山出た様で、ブリッジや廊下 などを完全に製作したそうです。DS9の面々も『23世紀』のファッション に身を包みます。つまり、男性はシャツの様な制服に、髪形はサイドバーン。 女性は、ゴージャスな髪形にミニスカートです。私が確認したところでは、シ スコ、オブライエン、ベシア、ダックスが旧制服姿、ウォーフとオドが民間服 姿です。カークたちと一緒に映っている場面はまだ秘密なためか見ていません。 また、TOSでトリブルの話を執筆したのはデビッド・ジェロルドという人で した。彼が脚本を書いた時はまだ大学を出たばかりの若僧だったそうです。こ の話が成功したのを知った時にはもちろんうれしかったそうですが、しょせん はテレビ番組なので30年もすれば皆完全に忘れてしまうだろうと思ったそう です。しかし30年経った今、この話はスタートレックの中でも人気の高い傑 作として世界中で今だに愛され続けているのです。当時、彼は脚本の中にちょ い役で保安部員を登場させ、自分がその役をやるつもりでいました。しかし、 若すぎたかれは華奢で保安部員には見えなかったので、この企ては没にされて しまいました。しかし、今は違います。今では年も重ね貫祿も十分ですし、そ れ以上に『トリブルの生みの親』という黄門様のいんろう並みの肩書きもあり ます。そこで、この企画の相談役として召集された彼は、ついに長年の夢であ るスタートレック出演を果たしたのです。廊下でトリブルと戯れる銀髪の赤 シャツおじさんを見かけたら、それが彼です。 そして、当MLにあって一番の関心事はクリンゴンです。新旧のクリンゴンの メーキャップの違いをどう処理するのでしょうか。上述の様にウォーフも過去 へ行くのですが、民間服でおでこは帽子で隠しています。そして、一枚だけK 3のバーの場面で奥にクリンゴンがいる写真を見ましたが、旧型のクリンゴン はそのままの姿で登場する様です。新旧クリンゴンの違いをどう扱うのかとい うことは、クリンゴニストたちの長い間の問題でした。今までいくつもの仮説 がファンの間で登場しています。今回のこの話でこれを説明する公式な設定が 明らかになるものと期待してよいでしょう。 【略語の説明】 TKW=STAR TREK: THE KLINGON WAY KLI=Klingon Language Institute TOS=スタートレック:オリジナル・シリーズ TNG=スタートレック:ザ・ネクスト・ジェネレーション DS9=スタートレック:ディープ・スペース9 ML=メーリングリスト QQ=クロノス・クロニクル SBX=スカイボックス社のトレーディングカード 内容に関するご感想をお寄せ下さい。 ML宛:klingon@ml.asahi-net.or.jp コウブチ個人宛:Owner-klingon@ml.asahi-net.or.jp Qapla’!