Text written in Japanese / teksto japane
二次創作
人形競売会の会場
人形蒐集で有名な老コレクターが人形競売会の会場にやって来る。年老いているが品があり、長い銀髪を後ろで束ねて垂らしている。体は覚束ないが杖は持たず、2体の人形に介助されて歩いて来る。
競売が始まり、門外不出だった乙江が競売に掛けられる。何人かがビッドし、老コレクターもビッドする。競りが続き、値がどんどん釣り上がり、競争相手が次第に減る。
最後に老コレクターが残り、競り落とすかに思えた瞬間、後から現れた青年貴族がビッドする。老コレクターの目に映った青年貴族の風貌に、若い頃の自分の姿が重なる。彼は容姿、才能、財力、身分、全てに恵まれている。礼儀正しく、穏やかで、心も優しそうだ……。
老コレクターは競りを降りる。
競売が終わり、競りに勝った青年貴族が乙江を大事そうに抱えて老コレクターの前を通り過ぎる。その瞬間、老コレクターと乙江の視線が合う。両者ともに喜びとも諦めともつかぬ意味ありげな笑みが微かに顔に浮かぶ。
人形1「ご主人 競りに負けて悲しそうだね」
人形2「そうかい? 僕には嬉しそうに見えるけどな」
翌朝、老コレクターは静かに息を引き取る。葬列には大勢の人形たちが参列したそうだ……。
おしまい
はじめにおことわりすると、二次創作なので原作を知らないと内容が分かりませんし、原作も極少部数の同人誌なので、あまり万人向けの作品とは言えません。ごめんなさい。
同人サークル「よいこ地獄」の一次創作オリジナル同人誌『人形娼館にて』(四谷きりん作)に想を得た物語の構想です。どうせ作品として完成させる暇も技量もないでしょうから、構想のまま発表してしまいますよ。
原作『人形娼館にて』は、自動人形ラブドヲルがサービスを提供する人形娼館を舞台に、身請けされた人形の乙江(おとえ)と、それを洗浄する小間使いの青年アキとの、別れの前の切ない情感溢れる交流を描いた名作です。(注:成人向けです。)
たぶん二人は二度と会うことがないでしょうし、だからこそ、その情愛もより深く激しく甘く切ないものへとなります。全ページ素晴らしいのですが、特に最後のページが心にグッと来たので、ちょっと後日談に想像を巡らせてみた次第です。二度と会うことがないからこそ美しい物語なのですが、それを勝手に再会させてしまい、申し訳ない限りです。でも、やはり結ばれずに終わらせたので、原作の美しさが保たれていればいいなと思います。
結局、アキはヘタレということで……苦笑