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意見書

東拘甲収第1753号回答書に記載された冨山常喜氏の病状等に関し、以下の通り意見を述べます。

1、病名について
病名は(1)高血圧 (2)動脈硬化 (3)慢性腎不全
となっております。現在の病状は食事が摂取できない、歩行ができない、臥床状態である。意識レベルも低下しているとのことです。
病名と病状が全く一致しておらず、いずれの病名も病状(症状)を説明できません。
動脈硬化症はあくまで一般的病名であって病状は説明できません。

2、11月18日の血液生化学検査について
(1)白血球 11,100、CRP 10.7と上昇しており、細菌感染が考えられます。
(2)透析前:クレアチニン 13.1 BUN 111.4
 透析後:クレアチニン 10.6 BUN 81.3
 と、透析効果は認められず、明らかな透析不良です。
(3)赤血球256万、血色素8.5 ヘマトクリット23.1と10月1日に、400mlの輸血をしたにもかかわらず貧血が進行しています。輸血は対症療法であって10月1日より11月18日まで貧血の原因とその治療において何ら処置をしておりません。

3、結論
1)細菌感染が考えられるにもかかわらず、原因菌、感染源について追究がなくファーストシンのような広域スペクトラムの抗生物質を漫然と使用することは結果として耐性菌を招き、危険な状態に陥ってしまう可能性が高いと考えられます。
 感染源をはっきりさせ原因菌を把握し、それに感受性のある抗生物質を使用すべきです。
2)細菌感染による全身状態の悪化のためか器質的な疾患なく消化管出血をおこしています。これは抵抗が減弱している証拠で、病状は悪循環に入っていると考えられます。
3)意識レベルの低下は透析不良のためなのか、脳血管障害の合併なのかを鑑別しそれに応じた治療が必要です。

4、今後についての提言
1)透析療法ができ、感染症に対する診断、治療に熟練したスタッフが揃っている施設への収容が必要と考えられます。
2)具体的には
 (1)理化学的所見の取り直し 胸部、腹部X−P心エコー、腹部エコー、血液ガス、血液生化学的検査、頭部CTを行い、透析処置用ショルドンの入れ替え、抗生物質(ファーストシン)の中止。
熱型の把握、連続した静脈血培養を行う必要があります。
 (2)血液ガス、血液生化学的検査にもとづいた透析療法の見直しをおこなうべきです。
 (3)感染源(呼吸器、消化器、腎尿路系)などの把握と原因菌の感受性を考えた抗生物質の使用が大切です。
 (4)栄養管理として、一日の総カロリーを2000kcalに増加し、血糖に応じ、インスリンを使用して、消化管出血の予防にザンタックを使用すべきです。さらに微量元素(エレネンミック)の投与とエポジン、鉄剤の投与を行い全身状態を改善させる必要があります。
3)当院は循環器専門医、消化器専門医、麻酔指導医、泌尿器科専門医、眼科専門医が揃っており、透析も日常的に行われている集中治療室が完備されています。当院では十分対応可能であることを付け加えておきます。


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