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冨山さんのこと

佐藤 敏昭(三多摩労法センター)

 冨山さんの病が篤いと聞いて心配している。

 冨山さんは一刻も早く、我々と同じ条件で治療を受ける権利がある。そして再審に備えなくてはならない。我々にもその状態にさせる責任がある。

 監獄という言葉がいつまでも存続している日本社会の人権感覚は薄弱である。ちょっと前の戦前では獄中死は殆ど権力による殺人(現在でもその可能性がある)であった。哲学者三木清は一九四五年、共産主義者を庇護したとの謂(イイ)で逮捕され、八月十五日敗戦で即時釈放さるべきなのに、一ヶ月以上留め置かれ、九月二十六日亡くなった。同じ監獄にいた寺尾五郎によると栄養失調による皮膚病のカサブタが三木のまわりに積っていたという。作家の小林多喜二は一九三三年、二月二十日、路上で逮捕され、その日の中に築地署でリンチを受け、亡くなった。

 葬儀も権力の介入で十分にできなかったという。


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