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坂本敏夫さんの講演を聞いて
東京 小鍛冶 格

 2月14日の『人権を考える集い』には東京から参加させていただきました。

 正直なところ何年ぶりかの土浦で、やや興奮気味でしたが、坂本敏夫さんの講演を聞いているうちに、自分の位置が少しずつ見えてきた感じがして落ち着きを取り戻しました。

 この2年間、私は職場の学校(埼玉の定時制高校)を離れて、労働組合の専従の仕事をしているものですから、連日会議や集会を設定してその運営に気を使うことが多く、ある意味で“集会慣れ"してしまってよくないのですが、今回は一参加者としてじっくり話をきくことができたのがよかったのだと思います。茨城の皆さん、どうも有り難うございました。

 講師の坂本さんから、刑務所内の具体的なお話しを伺えたのは大きな収穫でした。

 想像はしていたものの、入所者の半数以上が中卒者で、高校中退者を加えると70%になるとか。これは明らかに日本社会全体の構成比とは大きく異なっている数字です。97%の高校進学率を考えれば、たとえそのうち1割の中退者がいたとしても、高卒・大卒で世の中に出て行く人は、現在80%以上のはずです。また戦後のある一時期までを除いて、過去30年以上、約7割の高卒・大卒者を世に送り出してきたとすれば、刑務所の塀の内と外では数字が完全に逆転しています。学歴と犯罪を短絡させることは極めて危険ですが、それでもなお現実問題として、十分な教育を受けられなかった人や、裁判の過程で法律に関して一定の知識をもった人の支えを得られなかった人達がより多く収監されているという事実を表しているのでしょう。

 4月から学校現場に戻る私にとって、このことは深刻です。20年余り定時制高校に勤務していますが、生徒は中卒の資格で働いています。ほとんどが3K(汚い・きつい・危険)と呼ばれる厳しい仕事に就き、そして残念ながら、半数が途中で学校をやめていきます。事件を起こし家裁送りになる生徒も、全日制の数倍はいます。家裁の審判に立ち会いながら少年院送りや鑑別所行きになるか、保護観察処分で済まされるのか、生徒がまるで拘置所・刑務所の塀の上を歩いているような錯覚に陥ることもしばしばです。事件を起こした後、塀の向こう側に落ちるのか、こちら側で受け止められるのかハラハラするのではなく、できればその前に、十代の彼らをそこまで追い込まないよう、普段の接触を心掛ける必要性を感じます。非常に勉強になりました。

 私にもできることを、ひとつひとつやっていくしかありません。

 冨山さんとの面会を4月から再開したいと考えています。次回のニュースでは面会報告を送りますのでよろしくお願い致します。皆さん、お元気で。


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