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獄中から
冨山常喜さんのメッセージ

メッセージは便箋8枚にビッシリと書かれた長文のものである.全文を掲載できないので,冨山さんの思いを損なわない限度で大幅に省略した.滲み出る冨山さんの苦悩と怒りが伝わるであろうか.(文中()の部分は編集部の注)

 地元の多くの皆様方が色々と幅広くご支援下さっております旨は、予てから良く存じ上げており深く感謝している次第です。厳しい規制の壁に阻まれて直接皆様方に御礼状並にその他のコメント等を差し上げることが出来ないことだけが口惜しく、只ただ心苦しく益々やり切れない焦燥感に苛まれて欲求不満は募る一方です。

 私も突然このような災難に見舞われて、不当に自由を束縛されてから今年で丁度36年を数えてしまいました。

 不遇な少年時代を経て朝鮮へ渡って、最下級の二等兵からの軍隊生活、そしてソ連の侵攻による捕虜となり、シベリアでの苛酷な厳寒下における強制労働生活、昭和24年の12月に帰還を果たし、それなりの曲折の後、やっと将来に一筋の燭光らしいものが見え始めたと思える矢先の降って湧いたようなこの事件の発端でした。まるで何ものかに呪われていた かのような、この半世紀にもなんなんとする悪夢のような私の人生は一体なんだったのでしょうか。ふり返る度に我が身の不運もさることながら、むしろ、それ以上の今回の事件における刑事達の傍若無人な偽証工作や、公然たる調書の偽造行為の悪辣さほど肝に据えかねるものはありませんでした。

 この調書の偽造について申し上げますと、調書の作成の後、本人に読み聞かせることが義務づけられておりますが、これが曲者で、どうしても自分(刑事)たちの意図する供述が欲しいような時の非常手段として、参考人や被疑者の供述を歪曲して記入しておき、これを読み聞かせる際には供述者の供述通りの文章を空読みして聞かせるという(相手の無知につけこんだ)まことに卑怯な手法で平然と偽の調書をデッチ上げてしまうのであります。(このあと約60行に亘って八馬 証人の供述書の偽造が綴られているが、この部分はニュースレター編集部が解析の上、後日発表することとして割愛する) こうした詐術による冤を着せられたままで果ててしまいましては、折角皆様方の温かいご支援にお応えすることも適いませんので、これからの私の命題 は気力のすべてを尽くして、生きて冤をかち取る、ということを残された寿命との毎日毎日の対決とせめぎ合いということになりそうです。私の心境は正に「日暮れて道遠し」の悲哀と焦燥そのものであり、何とも心細い限りですが、できる限りそれらを精神力で補って頑張り抜いていきたいと存じます。 今後とも変わらぬ御支援方、安斉さん大仏さんを 始め多くの皆様方に、くれぐれも宜しく御伝言お願い申し上げます。

98年3月12日

「生きて冤をかち取る」されど「日暮れて道遠し」


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