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再審請求の現状

山際 永三(再審事件交流会)

国連総会が1966年に採択、76年に発効した「市民的及び政治的権利に関する国際規約(人権規約)」を、日本は79年に批准した。同規約は、加盟国政府に自国の人権状態を定期的に報告する義務を課しているが、日本政府はたてまえの綺麗ごとばかりを報告して国連規約人権委員会で批判をあびている。93年に同委員会は、日本政府に対して「死刑廃止条約」や「拷問等禁止条約」への加盟を勧告した。しかし、日本政府は、その直後にも死刑を執行して勧告を無視している。「拷問等」には精神的苦痛や「品位を傷つける取り扱い」も含まれており、これに加盟していないことは日本の恥だ。

98年1月末現在、日本には52人の死刑「確定」者がいて、死刑台のある7か所の拘置所に収監されている。そのなかの20人くらいが再審を希望して手続中または準備中である。そのこと自体、日本の司法制度の異常さを示している。冤罪を主張しながら、いまだに再審請求手続きがなされていないケースが3〜4件ある。いまのところ再審請求中の人は死刑執行されていないが、今後も予断を許されない。

死刑再審の中で日弁連に委員会(弁護団)が設置されているのは、福岡の尾田信夫さん・名古屋の奥西勝さん(名張事件)・東京の袴田巌さんのケースである。尾田さんは死因の一つとされる放火を否認しており、70年に最高裁で棄却されてから27年も闘い続けている。奥西さんのケースは全く酷いもので、一審で無罪となり一旦釈放されたにもかかわらず二審で死刑となり再度収監されている。現在第6次再審請求中。袴田さんは、無実を証明する多くの証拠があるが、94年に再審棄却となり抗告審を闘っている。最近は、従来と違った角度から「五点の衣類」のでっちあげが指摘され、補充書が出されている。

日弁連に委員会のない死刑再審で、最も古い事件(「確定」後22年)が波崎事件である。直接的な物証・自白がなく状況だけで死刑という点も波崎事件の特徴と言える。別件の「ハワイ屋事件」が二審で無罪となったことで明らかなとおり、噂が噂をよぶかたちのフレームアップである。当時のマスコミ報道の責任は大きい。再審請求人の高齢(81歳)も重大な人権問題である。


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