テスト走行

じゃんぼスロットルを付けてエンジン始動後の調整について触れてみよう。

まず、最初に書くのを忘れてのだが、ノーマルスロットルの段階で点火時期を完璧に調整しておいてほしい。こちらに書いたアイドル&点火時期調整完璧版を参考にして調整すると宜しい(笑)。なぜノーマルの段階でやるのかは後ほど...

まず、スロットルボディのアイドル調整スクリューは締め切った状態で始動しよう。完全暖機までやって、冷却水のエア抜きも当然やる。各部の作業にミスが無いのを確認するのも当然だ。

ミスが無かったとして話しを進める。


まずは調整の基本、ダイアグノーシスコネクタのTEN端子とGRD端子をショートさせる。私はいつもクリップを伸ばしたモノを使っているが、ショート出来ればなんでもよろし。この状態にするとISCVのフィードバック補正がカットされてベースアイドルとなる。


ベースアイドルの調整はスロットルボディのこのスクリューで調整する。NA8Cの場合は真横に付いている。ここでアイドリング回転数を800〜850rpmくらいに調整する...が、下がらない(^^;;;;;;;。

マツダの純正スロットルはスロットルバルブとスロットルボディが完全密着するように、その当たり面に樹脂のシール剤が塗ってある。この為、スロットルバルブ全閉時には隙間が無くなり、ベースアイドル分の空気はISCVの基本位置からの吸い込みと、アイドルバイパス部からの吸い込みのみとなる。が、ジャンボスロットルは通常のスロットルと同様にシール剤なんか無い。その為、スロットルの隙間から吸い込んでる分が有るので、バイパススクリューを締め切ってもアイドルが下がらんのだ(^^;。この時点でFire号の場合1500rpmだった(笑)。こうなると点火時期の調整が出来ない。だからノーマルスロットルが付いてる時に調整しとけって事なのよん。

だが、これは心配する事はない。しばらく走るとスロットルのアタリが出てくるので徐々に下がってくる。Fire号では30Kmほど走って1300まで下がり、更に翌日に30Kmほど走ったら1200rpmまで下がった。スロットルとスロットルボディの隙間は非常に小さなモノなので、カーボンの付着などで密着してくると思われる。しばらく走ったらまたベースアイドルを見てみよう。

ベースアイドルが高いままでも特に問題はないのだけどね。ベースアイドルが低いと調子悪いけど、高い分にはそれほど違和感は無い。TEN端子を開放すればアイドルフィードバック制御が開始されてISCVが閉じるので、ちゃんと800rpmくらいでアイドルしてくれます。ご安心を。

さて、この調整が終ったら、TEN端子を開放し、アイドルからゆっくりとアクセルを踏んで徐々に回転を上げてみよう。スムーズに回転が上がっていけば問題無し、回転上昇の途中で2000回転を超えた辺りでいきなりハンチングが始まるようなら、スロットルポジションセンサの調整不良である。IDL接点が早めにOFFになるように調整しよう。やりすぎIDLがフルタイムOFFになると燃料カットしなくなるのでご注意あれ。

問題無ければテスト走行。2500〜3000回転くらいでゆっくりと普通に走りながら、アクセルに足を載せた程度の走り方の時、ガクっと減速しちゃうような場合、やはりスロットルセンサの調整不良だ。もうちょい早目にIDLがOFFになるように調整しよう。

じゃんぼスロットルの場合、僅かに踏んだだけで吸気量が増えちゃう為、ノーマルだと加速しない程度の僅かな踏み込みで加速するわけ。ところが、この時点でIDLがONのままだと、ECUはアクセルOFFなのに回転数が上がってしまったと勘違いし、燃料カット制御を行なう。この結果、加速中にガクっと減速してしまうわけ。だからノーマルスロットルよりも早目にIDLがOFFになるように調整したほうが乗りやすいのだ。

完全に調整できたところでFire号の場合のインプレっション。

まずアイドルからの空吹かしでスゴイ音がする。今までは「ごわっ」って音だったのだが、

わっ」

って音がする。スロットルが風を切る音が聞こえてくるかのよう。これはいい音ですよん。

空吹かしのレスポンスは...俺には良く解からん(^^;。元々フライホイールが軽いから違いがさっぱり解かりません(笑)。

走り始めると、やはり今までよりアクセルを戻し気味でも同様のトルクが出てる。いつもの感じで軽く踏み込むとドンっと加速する。これはABIT氏も書いているように、今までと同じスロットル開度でも開く面積が増えている為にトルクが出ちゃうってだけの事。別に低速トルクがアップしたわけではない。ノーマルスロットルでももう少し踏んでやれば同じトルクが出るのである。んが、軽く踏んだだけでトルクがバンバン出てくるこの感じはクルマの動きがとても軽く感じて面白い。乗り難いとかシビアな印象は無い。面白いのだ。

でかすぎるスロットルだと、軽く踏んだだけでフルパワーに近い状態となり、そこから先は更に踏んでも同じっていう事になりやすい。しかし、今回の60mmではそんな印象は無く、違和感も無いしとても良い。この感じは面研して圧縮を上げたエンジンとノーマルエンジンの違いにとても良く似ている。或いはROMセッティングを完璧にやったエンジンとノーマルROMの違いとも言える。

全開の領域ではどうなったかというと、ハイカムのせいで3000rpm前後にトルクの谷が有ったのだが、それが綺麗に消えた。これはなぜだか良く解からん(@_@)? そこから更に回していくと、5000を超えた辺りから今までよりシャープな印象、7000から8000にかけてのノビは明らかに違うような気がする。

じゃんぼスロットルの本来の目的と効果は、全開にしても足りない領域で更に空気を吸う為である。つまり、全開高回転の時に差が出てくるわけだ。ハーフスロットルの領域や低回転では関係ない。4000回転と8000回転では空気流量は2倍の違いが有るわけで、低回転ではスロットルバルブ面積の20%程度の違いなんかどーでも良い事なのだ。

しかーし、軽く踏んだだけでトルクがモリモリ出てくる感じ、全開で回した時にシャープに吹け切る感覚、これはまさにハイコンプエンジンそのもののフィールじゃんか!(^^) 乗って楽しいならそれでOK。シャシダイでは多分全開高回転でしか差が出ないだろうけど、乗ってる分には低速からガンガントルクが出てるような気がするし、クルマは軽く感じるし、レスポンスビンビンだし、こりゃ面白いんだからOKですよ!(笑)

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FireRoadster的テスト

FireRoadsterのテストで、月並みなインプレ文句だけで終らせてはは読者も納得できまい。と言う事で、いつものようにいろんな機材を使ってデータを採った。ノーマルスロットルでデータを採取しておき、2週間後にじゃんぼスロットルをインストールしてから同じ方法でデータを採った。当然、データを採った日が違うので気温な湿度などの条件に違いは有るが。


空燃比計、オシロスコープ兼デジタルマルチメータ、512KB表示のマップアクセスモニタ、などを接続してのテスト走行。久しブリに椅子を付けたのだが、この翌日外すハメに...(^^;。

エアフロ電圧をデジタルマルチメータで計測、2速全開加速中にデジタルマルチメータのHold機能を使って表示を固定させ、その数値を記録した。7000rpmと5000rpmで計測。バラツキが有るようならサンプル数を増やしてデータ精度を上げようと思ったが、やってみたら意外と正確でバラツキはほとんど出なかった。という事で、7000rpmは3回、5000rpmは5回計測した。

じゃんぼスロットルによって吸入空気量が増加しているのならエアフロ電圧に変化が現れる筈である。尚、フラップ式のエアフロの場合、吸入空気量の増加=エアフロ出力電圧の低下となる。エアフロの特性として、吸気流量が多い領域では流量変化に対する電圧変化の割合が小さく、吸気流量が少ない領域では流量変化に対する電圧変化が大きくなる、と言う事を頭に入れておいて頂きたい。つまり、全開高回転では流量が大きく変化しても電圧変化としては小さな変化としてしか現れないって事である。

- φ55mmノーマルスロットル φ60mmじゃんぼスロットル
エアフロ電圧 at 2速全開7000rpm TEST1 0.405V 0.391V
エアフロ電圧 at 2速全開7000rpm TEST2 0.411V 0.394V
エアフロ電圧 at 2速全開7000rpm TEST3 0.409V 0.392V
- - -
エアフロ電圧 at 2速全開5000rpm TEST1 0.481V 0.493V
エアフロ電圧 at 2速全開5000rpm TEST2 0.486V 0.489V
エアフロ電圧 at 2速全開5000rpm TEST3 0.481V 0.482V
エアフロ電圧 at 2速全開5000rpm TEST4 0.482V 0.484V
エアフロ電圧 at 2速全開5000rpm TEST5 0.480V 0.486V

ほぼ予想通りの結果となった。5000rpm時には変化は見られず、高回転では大きく差が出ているのが解かる。吸気流量が多くなってくる高回転高負荷域ではスロットルバルブ拡大の効果が出るが、低回転では元々ノーマルのφ55mmで空気が足りていると言う事。

1速で1000回転くらいから全開加速で8000rpmまで引っ張り2速にシフトアップするまでのエアフロ電圧変化のログを採ったのでそれも見て頂きたい。画面の左端の方は電圧が高すぎて画面からハミ出している。波形が画面に入ってきた辺りが2000回転くらいの時である。画面右の方で再び波形が画面からハミ出しているが、これはシフトアップの瞬間のアクセルオフで、ここが約8000回転。その更に右側が2速全開である。グラフの縦軸は1目盛りで500mV、横軸目盛りは1秒である。縦軸は全体的に500mVのオフセットを付けている為、真ん中の水平線がちょうど500mVになる。

右がノーマルスロットル、左がじゃんぼスロットル装着後。

注目すべきは、3000回転前後の山と谷が消えた事。これはハイカムのせいで発生している3000回転前後のトルクの谷がそのままエアフロ波形となって現れていたのだが、それがじゃんぼスロットル装着で消えてしまった。実に滑らかな波形を描いている。なぜじゃんぼスロットル装着で3000回転の谷が消えたのかは理解に苦しむのだが、サージタンクとの共鳴効果などの複雑な要因が絡んでいると思われる。したがって、これはFire号のカムとバルタイとインテークパイプ&サージタンクその他の容量による偶然の結果カモしれない。

しかし、Fire号の場合、エアクリーナ直後のパイプ、インテークパイプ、スロットルバルブ、サージタンク入り口までがすべてφ60mmで構成されている。この事が吸気効率において悪い影響を与えるとは考え難い。むしろ、すべてのパイプがφ60mmで構成されていながらスロットルバルブだけがφ55mmだったら悪影響が有っても不思議はなかろう。

続いて点火マップの縦軸方向をどれくらいまで使っているかを調べた。ここからはちょっとマニアック過ぎるので解かる人だけ喜んでください。解かるヒトでもマップトレーサを使った事が無いと解かり難いかもしれない(笑)


↑ご存知のようにロドスタの点火マップは通常14X15で縦軸は15マス有るわけだが、これは実はノーマルだと全部は使ってない。下の半分はあんましアクセスしないのよ。空気充填率が上昇すれば下に進み、回転数が上がると右に進む。マップ左上がアイドル、マップ右下が全開高回転となる。じゃんぼスロットルで空気充填率が上昇すれば、今までよりも下の方までアクセスするようになるハズ。尚、下のアクセス状態は空ぶかしの時であり、実走行時にはまったく違うアクセス状態となる。また、Fire号は基本噴射補正係数をいじってるので縦軸のスケールも通常とは異なる。ノーマルROMでのアクセス状態はまた違った形になる筈だが、スロットル交換前後のテストでは同じROMを使用している為、データの比較としては問題無かろう。。

Fire号の場合、このマップを16X16に拡大している。その16X16のマップ領域をそのまま表示させちゃうのが下のマップトレーサだ。残念ながら、ノーマルスロットル時の写真は無い。

上が点火マップ、下が燃料マップである。アドレス表示開始位置の都合上、上の点火マップは15X16の領域が表示された状態で、上側表示部の下1行はマップ領域ではない部分が表示されている。

で、この状態は、アイドルからいきなり8000まで空ぶかしして、その時にマップをアクセスした位置を、長時間シャッター撮影によりその軌跡を写し止めたモノである。通常は一度にこんな広い領域にアクセスしているわけではない。アクセス位置が移動していった足跡だと思ってほしい。

左上のアイドルからいきなり空ぶかし、その瞬間にアクセス位置は真下に移動し、そこから回転上昇に伴い右に移動、空気充填率の上昇に伴い徐々に下方向に移動しながら左下へ、リミッタが効いてアクセルオフにした瞬間にアクセス位置は真上へと移動、アクセルオフで回転が下がっていく過程は一番上の一列を読みながら左へと移動している。さて、これを見ると、上表示部の点火マップの一番下一行はマップ領域ではない為、マップ領域だけを見ると1マスしか余ってない状態である。これが実はノーマルスロットルの時には3マス余ってたのだ。という事は、それだけ空気充填率が上昇してマップの下まで使うようになったという事である。ちなみに下表示部の燃料マップはアイドル付近やマップの上の方でアクセスしてないが、これは正常。高負荷増量フラグが成立しない場合は燃料マップにはアクセスしてないのだ。

こちらは瞬間的に全開にして空ぶかしした時のアクセス軌跡である。下表示部は関係の無いデータ領域が表示されているだけなので気にしてはいけない。

そして点火マップアクセス位置は見事に一番下まで行っている。左上のアイドル状態から、いきなり全開、その瞬間にアクセス位置は一番下までワープ、回転上昇に伴い右に移動するが、そこでアクセルを戻しているので上方向に移動、アクセルOFFで一番上に張り付き、回転低下に伴いアイドル位置まで戻っていく、この一連の動きがスローシャッタによりすべて映し止められている。(これも一番下一行はマップではない。右下隅の2個のアクセスはもちろんマップ以外の部分である)ノーマルスロットルの時には下1/3〜1/4くらいは余っていたのだ(笑)。これはじゃんぼスロットルのハイスロットル効果と言えよう。瞬間的な空ぶかしでもじゃんぼスロットルは大量の空気が入るわけだ。これが「空ぶかししたくなる」と言われる由縁であろう(笑)。ちなみに瞬間的な空ぶかしではスゴイ音がする。

空燃比も測定してみた。2速全開加速中に1000回転毎にログを採り、スロットル交換前後でその変化を比較したのだが、狂いは出なかった。フラップ式のエアフロでは、吸気量が変化した分だけフラップの動きが変る為、自動的に丁度良くなるのだ(笑)。ホットワイヤのエアフロでも、エアフロから最も遠いスロットルバルブの変更ではホットワイヤのセンシング特性に影響が出るとは考え難い。ホットワイヤの場合、エアクリーナやインテークパイプ等のエアフロ前後の流れを変更してしまう事の方がスロットル交換よりも燃調に対する影響が大きいだろう。D-ジェトロやスロットルセンシングなどのシステムでは、じゃんぼスロットル装着によりセッティングが目茶苦茶に狂うので一からセットアップし直す必要があるのは当然である。

と言うわけで、ジャンボスロットルの効果は、体感したモノ、理論的予測、実測データ、すべてのスジが通る結果となった。まさにその効果が実証されたと言えよう。

まとめ

スロットルセンサ、スロットルストップスクリュー、アイドル調整、などのインストールに伴う微調整作業が一般の人には難しいかもしれない。が、スロットル交換やインマニ交換に挑戦するくらいの気合いが有るヒトであれば特に問題なくインストール出来ると思われる。調整不良でも大きな問題とはならないのでいろいろ試しながら調整すれば宜しいかと。

スロットル微少開度でも大きな空気流量となってしまう為による不可抗力により、軽く踏んだだけでバンバントルクが出るような錯覚を得られる(笑)。これによるデメリットはほとんど無く、そこから更に踏み込んだ時にもちゃんとリニアなトルクが出てくれる。乗って面白いフィールと言える。

じゃんぼスロットルの本来の効果である全開高回転での吸気量増大はデータにより証明されたように確かに効果が出ているらしい。ノーマル車のシャシダイテストでは2馬力アップとの事だが、吸気パイプをちゃんとしたモノに交換すればφ60mmスロットルの効果は更に大きなモノとなる筈。ちなみに、ちゃんとしたパイプで構成されているFire号での変化は2馬力アップとは思えないくらい綺麗に回るようになった。

空燃比の狂いは無いので、セッティングの問題はない。ノーマルECUでもチューンドECUでも大幅なリセッティングを必要としないのは有り難いといえる。(D-ジェトロ&スロットルセンシングシステム車は大幅なリセッティングが必要)

面研してハイコンプ化したエンジンのようなフィールが得られるが、この効果が5万円程度のスロットルバルブ1個で得られるのならリーズナブルなのではなかろうか? 特に非線型スロットルにより動きが重く感じるSr1、インマニ加工が必要無いNBシリーズ、1839ccのくせに1597ccのNA6と同じスロットルが付いてるという1800シリーズ全車、このあたりのクルマにはイチオシのパーツである。え? つまりNA6CEだと一番おいしくないって事じゃんかーっ!(^^;

でも排気量がでかいほどじゃんぼスロットル効果は大きい筈なんだよねー。或いは高回転まで回すエンジンとか。Fire号ではノーマルより10%以上高い回転数まで回してるのでそれなりに効果的カモ?(笑) じゃんぼスロットル+1mm面研+ROMチューンだけでかなり面白いエンジンになるような気がするなー。誰か試してください。

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