【彼の背負っているもの】


 人は、いろいろなものを背負って生きている。
 その人の背負っているものが、その人のモチベ−ションであることが多い。
両親を病気で失った少年が医者を目指すように、食べる物に辛い思いをした少年が
料理人になるように、建築家になった人のなかには、建物をつくることで、そこに
癒される部分があったとか、スポ−ツ選手になった人には スポ−ツ選手でなけれ
ばならない理由があったのかもしれない。

 この物語は、僕の友人の涙無くては語れない物語である。

 友人の名前は 高田公一くん(仮名)。年齢28歳 会計事務所勤務。
 彼は、先生から最近 新しい仕事を任された。しかし、彼は自信が無かったのか
俺には無理だ、荷が重いといつも口にしていました。
 そして、何日後か 彼は夢にうなされるようになったそうです。
 その夢とは、数字が彼を追いかけてくるそうです。最初の夢の時、8と9が
すごい形相で(顔があるらしい)彼を追いかけてくるのだそうです。彼は必死で逃
げるのですが、幸いその8と9は 足が遅いらしく(足があるらしい)、軽く逃げ
切ったそうです。
 
 2日目、今度は6と7が追っかけてくるそうです。今度は 前より少し足が速い
らしいのですが、ケラケラ笑いながら追っかけてくるので とても気味が悪かった
らしいのですが、今度も逃げ切ることができて目が覚めたそうです。
 
 3日目、彼は寝汗をかいていたそうです。4と5は結構足が速く、無表情のその
顔は鳥肌が経つくらいだと後日語っていました。そして あっ捕まるかなと思った
瞬間 夢からさめたそうです。
 
 4日目、この日は 数字の3 一人だけでした。(この場合も一人とか二人とか
いうのだろうか)このナンバ−3は、いままでのどの数字よりも雰囲気が違って、
何がしたいのかよくわからないけど、とにかく 追っかけてきて、とうとう捕まっ
てしまいましたが その捕まった瞬間に目が覚めたそうです。
 彼は 日に日にやつれていくのが 解りました。
 目はとろんとして、ため息が 仕事中多くなり、辛いんだよとへへと笑って僕に
その話をしてくれました。そしてついに最悪の日がきたのです。
 
 5日目、今までの数字より最強最悪の2が追っかけてきたのです。そのナンバ−
2は、あざ笑わすかのように、すぐには捕まえず、彼の前を追い越したり、追い越
されたり、いつでも捕まえることができるんだよ というパフォ−マンスをすると
いう阿漕(あこぎ)な 悪魔のような 奴だそうです。それでも 彼は逃げて、逃
げて 逃げまくって あともうちょっとで逃げ切れると思ったら とうとう、その
2に捕まってしまいました。そしてその数字の2は 友人高田君の上にのっかり
どんどん重くなってきたそうです。そしてついには歩けなくなり、倒れてもなお、
数字2は重くなり 彼は息絶えそうになりながら言ったそうです。
 「2が重い、俺には2(荷)が重い ああ荷が重い」だそうです。
ハイハイ、、、
 聞いてた私が バカだった。
 ご静聴 ありがとうございました。m(_._)m


                          1999.04.22
                            北久里浜クロベ