A:92年の11月に、会の代表の上田さん(車いす使用)が、路線バスに乗車拒否されてしまい、その後、そのバス会社と話し合いを続けたのですが、個人的にやってるだけじゃラチがあかないということで、94年の1月から会をつくって障害者の交通権、特にバスの問題についてみんなで考えていくことになったのです。
A:結局、そのバス会社の方は、乗車拒否事件はあくまでも個人的な問題だから会とは話をしないというばかりで交渉に応じてくれませんでした。私たちは「個別の乗車拒否事件は今のバスが車いすでは乗れないということを象徴している事件だから、社会的・構造的に改善していかないとバスという公共交通としての責任がとれないんじゃないか」といったのですが、バス会社の方は何も聞いてくれませんでした。この交渉に行きづまった私たちはとりあえず、都バスで走りだしていたリフト付きバスからはじまって、各地のバスの乗車ツアーを行ない、リフト付きバスやスロープ付きバスなどの点検活動をすることにしました。
A:リフト付きバスの問題点のうち大きな点は、
の3点が挙げられます。また、スロープ付きバスの場合は、
というところが問題だと感じました。
A:実はノンステップバスのことは、94年の12月にあった交通問題のシンポジウムでヨーロッパの事例報告があったので、そこで知ったのですが、その時は話で聞いただけでもあり「ふうん、世界にはそういうバスもあるのか」といった程度でしか受け取っていなかったのです。しかしその後、95年の10月から11月にかけて、たまたまヨーロッパのバスの視察ツアーに会のメンバーが参加することになり、実際に車いすでノンステップバスに乗ることができたのです。そして帰国後「ノンステップバスに乗って、初めて公共交通機関のバスに車いすでも当たり前に乗れたという実感を得た」という報告を受け、会として「やはりリフト付きやスロープ付きではなくバスはノンステップバスであるべきだ」と考えるようになりました。
A:まず第1に、車いすでバスに乗れるだけでなく、高齢者、歩行困難者、乳母車や子供など誰にとっても乗りやすいバスであるということです。そして第2には、リフトやスロープに比べて車いすの乗車が非常にスムーズだということです。これは、車いす乗車によってバスの時間が遅れるということがないのでバスを運行している側にとってもよいのですが、乗る側にとっても車いすでも他の人と同じように気軽に乗れるという利点ともなるのです。これらの点で、先に述べたような現在のリフト付き・スロープ付きバスの問題点は解決されています(ヨーロッパのノンステップバスは車いす・乳母車スペースが最初から広くとられている)。誰もが当たり前に利用できるノンステップバスこそ本来公共交通としてあるべき姿だったのではないでしょうか。
A:ノンステップバスの弱点といえばまあ車両価格の問題でしょう。現在のバスの1.5倍以上の値段なので、バス会社は「ただでさえ赤字なのにそんなに値段の高いバスはとてもじゃないけど買えないよ」といってノンステップバスを導入しようとしません。価格のアップには、最終的には公的負担をしていく必要があると思うのですが、その公的負担の前提としてまずバスという公共交通がどうあるべきかを考えることですね。今のままのバスでは、車いすの人をはじめ乗れない人や乗りづらい人がいるわけだし、高齢化も進むなかでより乗降しやすいバスを走らせるなど、もっとバスというものの公共性を高める努力が必要です。車体をノンステップにするだけじゃなく、ダイヤのわかりやすさや乗り換えのしやすさなど、みんなにとってより乗りやすい形やシステムをもっと考え、改善していければ、バス利用者ももっと増えていくでしょうし、バスの公共交通としての役割もより大きなものになるはずです。そうなれば公的な負担もみんなが納得してできるようになるでしょう。こうした方向に向かうためには、バス会社側だけではなく、私たち利用者側にとってもバスなどの公共交通やまちづくりに対する意識の変革が必要となるでしょうね。その意味では、ノンステップバスは私たちの社会のあり方についてもかなり深いところまで考えさせてくれるバスだと思っています。