1999年
2月23日(火)
ダブリンからバスで日帰り:
ニューグレンジ古墳とドロヘダの町

前日にダブリン市内の観光案内所に行って、『ニューグレンジ古墳を見学できる日帰りツアーがないか?』 を聞いてきた。
答えは、『次は・・・月曜日です』とのこと。 残念ながらその時には日本に帰っている。(冬期間だったから、ツアーが少なかったのかもしれないが・・・その辺は未確認)。

「が〜ん」と落胆しかけたが、その間もなく、デスクのお姉さんは 『大丈夫、バスが出てますよ』 と言って、時刻表のコピーをくれた。

そんなことで、バス遠足を決行したのだった。

10:00AM 国営バス「エーラン」のダブリン・ステーション発。

「エーラン」はアイルランド全土を結ぶ国営バス。主に長距離の移動でお世話になる。
ダブリンのバスステーションは、市の中心部の北東よりにある。
ステーションは全国各地に向かう旅人たちで賑わっていた。

窓口にいって、「ニューグレンジ古墳」を見に行ける往復切符を買い、バスに乗り込む。

11:00AM 乗り換えのためドロヘダで降車。

ダブリンを出て1時間ほどで、北にある町「ドロヘダ Drogheda」のバスステーションに停車。 ここでバスを降りる。
ニューグレンジ古墳を見るには、ここでローカルの路線バス(約1時間おきに出てる)に乗り換えるのだった。

11:15AM ドロヘダ発。
程なくして、乗換えのバスが到着。乗りこむと10分程度で目的地に到着した。


11:25AM 「ブルー・ニャ・ボーニャ」(ボイン渓谷遺跡群)←世界遺産
ビジター・センター着

さっきから「ニューグレンジ古墳」とばかり言っていたが、この古墳は、 「ブルー・ニャ・ボーニャ」(ボイン渓谷遺跡群)と呼ばれる遺跡群の中の1つ。 「ニューグレンジ」というバス停があるわけではない(それでも通じるとは思うけど)。 他にもこの一帯には大小たくさんの古墳があるそうだが、 オフシーズンであるこの時は、「ニューグレンジ古墳」しか見られなかった。

周りには他の建物はほとんど無い静かなところだったので、また地味〜な観光地かと思ったけど、 ここのビジターセンターは博物館になってて、充実したキレイな施設だった。ちょっと感激。さすが世界遺産。

出土品が展示されてたりして、楽しめる。
またカフェで軽食が食べられたり、妙に品揃えの良いおみやげ屋もある(探し物が見つかった)。

目的のニューグレンジ古墳は、このビジターセンターの北西約1km先にある。 古墳見学から帰ってきてから気が付いたのだが、ビジターセンターからも見える。 【写真】

11:45発の見学ツアーに参加。

ニューグレンジ古墳を見学するには、このビジターセンターで券を買って、ツアーに参加しなくてはいけない。

ビジターセンターはボイン川の南岸にある。
ツアーに参加するために、橋を渡って北岸へ渡る。 【写真】

そこから、老若男女10数人ほどが、1kmの道のりをミニバスで「ニューグレンジ古墳」に連れられてく。 ドナドナな感じ。 農道(公道?)っぽい道で、エリア内には民家もあるようだった。

しばらくすると、存在感の有るドームが緑の丘の上に。修復部分もあるが5000年前(BC3000頃)の代物。 墳墓とも、儀式のための施設であるとも聞いた。 【写真】

学芸員に連れられて、観光客一同は、古墳のある丘の上まで。

・丘の上からの景色 【写真】
・古墳の外壁 【写真】
・古墳の入口 【写真】
・入口の紋様石 【写真】

古墳の内部へ

そう、そしてなんと、世界遺産の古墳の中に入れてもらえるのだ。
(残念ながら撮影禁止につき写真はなし。記念に残したい人は絵葉書を購入しよう)

入口から中心部に向けて、幅1〜2mくらいの狭い道を15mほど進むと、石室に辿り着く。 十数人全員が入れるくらいの広さの部屋。
入口以外の3方向に、床の間のようなスペースがある。祭壇だろうか。 意味ありげな石の台。 渦巻き紋様が、石室内のあちこちに刻まれている。

古代人の作品に混じって、それをマネして、あるいはイニシャルの類を彫った落書きもたくさんある。 世界遺産に指定されてからは、ちゃんと管理されるようになったのだろうが、それ以前の観光客たちが刻んだと思われる。 どこにでも、いつの時代もこういうバカ者がいるもんだ、と呆れる。

しかし、そんな低レベルな書き込みによって、 古代人のレベルの高さが引き立てられている。 ちょっと「ざまあみろ」的な気持ちになる。 ちょっとはそっとでは、本物の迫力は出せないだろう。

ところで、通常この石室内までは外の明かりは届かないのだが、 冬至の前後の数日間だけ、太陽の光が差し込むようになっているそうだ。 5000年前の人達がそういう天文学の知識を知ってたというのには驚きだ。
学芸員が、その、冬至の日のシミュレートをしてくれる。 まず、僕らのいる石室内の照明が落とされ、真っ暗闇になる。 と、入口付近にあると思われる照明が付き、一筋の細い光線が石室に刺しこんでくる。 厳かな雰囲気。

ちょっと聞きかじった知識(+シロート考え)でもあるが、この古墳内の石室というのは、例えるなら子宮で、 ここに光が刺し込んでくるのは、つまりはそういうことを表現してるのかなぁ。
太陽信仰もあったらしいので、神と交配することによって 大地に神様の力を宿らせて豊穣を願う(?)・・・といった想像をして勝手に納得する。

しかし、本当のところはどうだったんだろう・・・。

それと、アイルランドの遺跡=ケルトというイメージが強いが、 ここのように紀元前何千年もの古代遺跡はケルト人のものではない。 それ以前の先住民族の残したものだ。 ただし、彼らが消えた後、この島にやってきたケルト人たちにもインパクトを与えたという。

古墳内部の見学と終えると、波留子がパンフレットに載っているある写真を指して、学芸員に訊ねていた。 彼女が言うには、古墳の後ろ側にも面白い紋様石があるそうで、『この写真のやつはどこだ?』と聞いていたらしい。 しかし見学範囲外らしくて、見せてもらえなかった。(これも絵葉書になってる)。 学芸員に申し訳なさそうな顔をされたそうだ。

ビジターセンターに戻って、食事をして、おみやげも購入。

15:00 帰りのバスに乗る。


15:10 ドロヘダ着。 【写真】

ここでダブリン行きの長距離バスに乗り換えるのだが、時刻表をみると1時間おきぐらいにまだ何本かある。 あわてて帰らずに、この町もぶらぶらしてみることにする。あいにくの天気ではあったが。

バスステーションは、町の中心からはボイン川を挟んだ南のはずれに位置する。 川の南側の一番高いところに「砦」があるらしかったので、まずは行ってみる。

バイキングの砦(ミルモント城塞)
坂道を登るのは結構しんどかったが、丘のてっぺんにある円柱状の建造物は、なんとなくユーモラスでインパクトがある。 デーン人(ヴァイキング)が建てた砦らしい。次回はオープンしてる時間に来てみたい。
・遠くからの撮影した写真 →  【写真】 【写真】

すぐ近くには、この砦のイラストが看板になってる酒場かレストランがあった。

この後は、橋を渡って町の中心部であるボイン川の北岸へ行く。 メインストリートにある食器屋さんなどをひやかした後、次のような所をぶらぶらする。

中世の城門 【写真】
町の東端に残る「聖ローレンス門」。昔はドロヘダの町は城壁で囲まれていたそうで、その門の一つ。 現在は道路が舗装され、車が通っている。

さてこの町には、バス停からの写真からもわかるように、教会が多い。

骸骨のレリーフの教会
「地球の歩き方」でも紹介されていた、墓地に骸骨レリーフがある「聖ペーター・アイルランド教会」へ。 そのレリーフ・・・半骸骨化したお腹から、ハラワタがどろっと落ちていて、非常にゾッとする。 だれもいない墓場というシチュエーションも余計に怖い。  【写真】

聖人の首のミイラがある教会
通り掛った建物「聖ペーター・ローマンカトリック教会」に入って見る。 波留子が内部の見物していると、壁塗りをしていた職人さんに
『これを見てごらん(ニヤリ)』と、ある立派なケース(聖遺物箱)を紹介される。

中を覗くと、そこには人間の頭部だけのミイラ(キャーーーー!!)
(波留子は「ミイラと目が合った。」と言っていた。)

諸事情により迫害を受けて処刑された「聖オリバー」という聖人らしい。 ミイラの唇は苦痛でゆがんでいるかのように端が曲がっており、脳裏に焼き付く。カメラを向けるのは遠慮しておいた。 この町を訪れる観光客は、お食事のタイミングに注意が必要だ。

のっぽの教会 【写真】
中には入らなかったが、この町で一番高い建物。 いや、もしかしたら、これまで見たアイルランド国中の建物の中でも最も高い部類のような気がする。

町の西側の修道院跡
修道院跡の廃墟なのだが、民家が建ったりして、街角の一部になっていて、ちょっと面白い。 【写真】 【写真】

町を東から西に抜けて、南の川辺に出る。 ミルモント城塞は、この辺の川沿い(北岸西側)からよく見える。

・・・というわけで、このドロヘダはかなり古い町らしくて、どことなくよどんだような、古くて重苦しい町という印象を受けた。 たまたま天気が悪かったからかもしれないが、陽気で楽しい町といった感じではない。 でも面白い見所はいっぱいあったので、来て良かった。


17:10 ドロヘダ発。
ドロヘダのバスステーションから、ダブリン行きの長距離バスに乗って帰る。
到着まで1時間弱、ほとんど寝てた。

18:00ころ、ダブリン着。
市の中心部、通り掛かったホテルのレストランで「アイリッシュ・シチュー」を食べる。
どんよりした天気だったからか、温かいシチューは余計においしく感じられた。

満足した後は、市内バスで宿まで帰る。
どうもまだ景色に慣れてなくて、間違って1つ手前のバス停で降車ベルを鳴らしてしまい、バスが止まる。
「そーりぃ、そーりぃ、ねっくすと...」と(運転手の顔を見れずに)前方を指差す。

次のバス停で降りる。波留子の報告によると、運転手は笑ってたそうだ。


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